(3)

暗く鬱葱と木々の茂る森の中を歩いているのは、あの黒い怪人。
と、その前方の木陰に、もたれかかって立つ影がある。それに気付き黒い怪人は歩を止めた。
『オワッタ・カ』
黒い怪人の方を向くでもなく、影は問い掛けた。
『・・アア』
くい、と人差し指を上空に向ける。と、何時の間に飛来したのか赤い怪人が
あの青い石を持って枝の上に立っていた。
『コレデ・ソロッタワ』
木にもたれていた影は、2人の方に歩き出した。木陰を抜けた時、月を隠していた雲が払われ、
月光が差し込む。
月明かりに照らされた影の主は隻眼の白い虎のような怪人であった。
『・・・「センシ」ハ・イタカ?』
『ワレラノ・サガス「センシ」ハ・マダ・ダ』
『セイナル・イシノ・センシ・ネ・・』
3人の怪人が近づくと、青い石が急に明滅を始めた。まるで3人に呼応しているように・・・。
『マズハ・コイツノ・フッカツ・ネ』
『エサヲ・サガス・カ・・・』
青い石を見つめながら相談している黒と赤の怪人に背中を向けて、白い怪人は月を仰いだ。
『「センシ」・・・カナラズ・タオス!』

「???何だ?」
3人の怪人が集結したの時を同じくして、津上翔一の変身ベルト・オルタリングに納められた霊石、
賢者の石が反応し始めた。
「アンノウン・・・の感じじゃないな。一体これは・・・」

同時刻、葦原涼のベルト・メタファクターの賢者の石も反応していた。
「何だ?今までの感じと違う・・・。まさか、終わりが近いのか・・!?」
度重なる変身で崩壊していく体を引きずりながら、それでも涼は歩いていく。
「まだだ・・・オレにはまだ、やる事がある・・・!」
今の涼を突き動かすもの、それは・・・
「殺す・・・アギトを・・・!!」

そして・・・
「この感じ・・・なぁんか嫌な予感がするなぁ。よっし!急ごう!!」
腹の辺りを擦りながら、走り出す一人の青年の姿があった。
肩にしたディバッグには、たくさんの御守りがぶら下がっていた。

次回予告

『イレギュラー』と命名された未知なる敵の出現に対し、警視庁はかつての未確認対策班を召集する。
一方、誠は『イレギュラー』出現を警告していたという女性を訪ねてとある大学の研究室に向かうのだった。

第1章・『蒼(あお)』

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