The Complere BEATLES
ステレオリマスター評
2009年9月9日、号外発行・即日売り切れと、歴史的事件よろしくマスコミ報道も騒然と、鳴り物入りで、リリースされたビートルズの新譜、オリジナルアルバムのステレオリマスターBOXセットがこれである。あわせて、モノラル音源リマスターの白いBOXセット(分売なし)monoBOXも発売された。
発売前から話題騒然ではあったが、ビートルズの音源は数え切れないほど所蔵しているし、まして、ビートルズはレコード盤ターンテーブルで聴くのがベストというポリシーを捨てていなかった私は、さほど気にとめていなかった。まずは聴いてみた人の評判を聞いてからでも遅くはないだろういうくらいに構えていた。
発売の数日前に某テレビ局が放送する記念特別番組にこの新譜の音源が使われるとの情報得て、偶然にもこのリマスター音源を耳にする機会に遭遇した。
テレビのスピーカーでも歴然とわかる音とバランスの違いを目の当たりにして、「なるほど、今回のリマスターとはこういうことかぁ」という遅ればせながらの大きな期待感に包まれた。
「やっぱり持っておこう!」と思ったときは遅かりし由良の助^_^;、当然売り切れで1ヶ月以上の入荷待ち。輸入版なら在庫ありでしかも円高の影響か一万円安い。これで十分!対訳付きの歌詞カードいらないもんね(^^♪
めでたく数日後に到着した宝箱を開け、早速聴いてみた。

1、旧盤のCDと同じBGM程度のボリュームで聴いた時に、音痩せしない。
2、アルバム別の録音レベル(音量)の差が是正されている。
3、ボーカルの音に張と艶が増している。
4、いままで聴こえなかった楽器の音が聴こえる。
5、控えめだったジョージのコーラスが前に出ている曲がある。
6、レコード特有のすこし奥の方から出てくるような音の感覚が蘇っている。
7、リッケンバッカー、へフナーベースの音に臨場感が増していて(本人たちの生音は聴いた  事ないけど)、ライブを聴いているような感覚。
8、全体的にデジタルデジタルせず、サウンドに自然なクリアーさや立体感が出ている。

最初のリマスターが、CDプレーヤーの爆発的普及で、CDでもビートルズが聴けるようにという、いわばCD鑑賞ありきの作り変え的な再録音であったのに対して、今回のリマスターはデジタルで音楽を聴くことが常識化した時代にあって、以前よりも飛躍的に進歩したデジタル技術と、ビートルズサウンドに精通した優秀なスタッフが、その技術を駆使し、且つ楽曲の解釈や作曲の背景等、音以外の要素までもが再考察された、臨場音源に近いサウンドに仕上がっていると思われる。例えば地道な考古発掘によって明かされる新事実のような学術性すら感じる、いわばデジタルの中に鮮明に蘇るバーチャルビートルズといえるのではないだろうか?まさに、新譜名に冠された「コンプリート」を目指していることが計り知れるのである。

そして、ビートルズフリークとしてひとついえることは、どんなに優れたリマスターでも、元々の音源をどれだけ聴いていたか、すなわち耳の経験値がなければその違いは殆どわからないということだろう。
嬉しい事に、所蔵する楽曲と2重3重に重複するであろうリマスター音源に、今なおこれだけの話題とセールスが集中するという事実は、世界にビートルズフリークがいかに多いかを示しているし、またクラシック音楽において楽曲を違った演奏家と指揮者で聞き比べ、批評、薀蓄するそれに似て、ビートルズサウンドが一流行歌にとどまらず音楽史における学術的要素を帯びてきた事を物語っていることに他ならないのではないだろうか。