キン肉マン特別編
ザ・サイキョー超人の挑戦
最終話「筋肉闘気発動! 意外な幕切れ」


これまでのあらすじ
正義超人VSサイキョー超人シリーズ第6戦。テリーマンはサイキョー超人の大将・ドラゴフェニックスと戦うが、その圧倒的な力の前に敗北を喫する。テリーに代わってキン肉マンがリングに上がるが、キン肉マンは戦いの最中ドラゴフェニックスの正体を暴く。その正体は…?

『あーっと! サイキョー超人最後の刺客・ドラゴフェニックスの正体は、キン肉アタルだったーっ!』

「痛ててててて!」

医務室ではブロッケンが悲鳴を上げていた。ブロッケンの肩の関節をいじっていたラーメンマンが驚きの余り捻ってしまったからだ。

「ラ、ラーメンマン…」

「おおっ、すまないブロッケン。」

「ラーメンマンが驚くのも無理はない。まさかドラゴフェニックスの正体が、キン肉アタルだとは。だが、ドラゴフェニックスの圧倒的な格闘能力と威圧感…キン肉アタルが正体なら全て納得がいく。しかし、何故キン肉マンの実兄であるキン肉アタルが…?」

ロビンが首を傾げて言った。

(ソルジャー…)

肩の痛みから解放されたブロッケンは、無言でテレビ画面を見つめていた。


一方、リング上では――
アタルさまとスリーパーを解いた王子が対峙していた。

「兄さん、なぜなんだ。最近、行方不明だと聞いてはいたが…」

王子の言うとおりだ。王位争奪サバイバルマッチ終了後、アタルさまは罪ほろぼしとして自らキン肉星の政務を執っていた。そしてしばらく経ってからのことだ…アタルさまが失踪したのは…

「フフフ…わたしはお前の兄・アタルなどではない。お前の持つキン肉星の王位を奪い取るために再びこの姿…キン肉マンソルジャーとなったのだ。だが、さすがはスグルだな。やはりドラゴフェニックスのオーバーマスクを着けたままで勝てる相手ではなかったか。」

そう言うと、アタルさまはボディスーツをバッと脱ぎ捨てた。迷彩服に鉄甲…アタルさまは完全にキン肉マンソルジャーとして王子の前に立ちはだかろうというのだろうか。

「キン肉スグルよ。お前のバカ王子ぶりに国民は愛想をつかしている。これではお前や大王の代わりに政務を執っていたキン肉アタルも浮かばれんわ。あいつも言っていたぞ。『わたしが王位への道を譲った弟は政務も満足に執らんヤツだったのか』…と。」

な…何て事だ… アタルさまの気持ちも分からないでもないが、こんなバカバカしい理由で戦いを仕掛けられたのではたまったものじゃない。

「ア…アタル兄さん。何を言ってるんだ。いくら兄さんでも悪ふざけが過ぎるぞい。」

「だまらんかー! スグルー!!」

アタルさまの突然の怒声にビクッとする王子。そのまま、王子はへたりこんでしまった。

「お前の知るキン肉アタルは死んだ。ここにいるのはキン肉星の王位を奪おうとするキン肉マンソルジャーだ!」

アタルさま…いや、今やキン肉マンソルジャーとなったこの男は、改めて王子に宣戦布告を行った。

「へっ、そうかい、そうかい。あくまでソルジャーのつもりで戦おうというのか。兄さんがそのつもりなら…」

王子はゆっくりと立ち上がると…

「わたしも遠慮なくいかせてもらうぜーっ!!」

ファイティングポーズをとった。

「面白い。わたしも本気でお前と闘(や)ってみたかったのだ。来い!」

血を分けた兄弟が戦うなんて…こんなことがあっていいのか… だが、ボクの思いとは裏腹にリング上では王子とソルジャーが戦いを再開していた。

「逆賊・ソルジャーよ。受けてみるか、キン肉星次期大王・キン肉スグルの威力を!」

王子のドロップキックだ。だが、ソルジャーも肉のカーテンで応戦。ドロップキックを易々とはね返した。

「その程度でわたしを倒そうとは百年早いわ!」

「なんの!」

王子がラッシュをかけてきた。だが、ソルジャーは肉のカーテンを解除すると王子の攻撃に応えるかの如くラッシュをかける。

ガッ…ガガッ…ガガガガガガガガ…!!

激しくぶつかり合う力と力。その衝撃はリングサイドまでビリビリと伝わってくる。気を抜いたら見ているこっちまで吹き飛ばされそうだ。もしや、敢えて肉のカーテンを解いたのは短期決戦に持ち込むためなのか…

「キン肉マン、ソルジャーは左利きだ。もう少しレフトの方を攻めたらどうだ。」

テリーがアドバイスをする。

「そ…そうか、よし。」

王子は左…つまり、ソルジャーの右側を攻め始めた。王子の怒濤のラッシュに耐えかねて体勢を崩すソルジャー。

「いい攻めだ、スグル。良き友人を持ったな…」

「兄さん…」

一瞬、王子の攻撃の手が緩んだ…まずい…

「だが…その油断が命取りだぞーっ!」

ソルジャーが左腕を振りかぶった。この技は…

「デス・グレネード!」

ソルジャーの一撃がテリーに続いて王子にもヒットした。そして空中に吹っ飛ばされる王子の首根っこを掴むと…

「ガトリング・レイダー!!」

赤く輝く左拳から繰り出される目にも止まらないパンチ攻撃が王子のボディに吸い込まれるように入る。

「さあ、まだ戦う力があるのなら、この技を破ってみるんだ。」

ソルジャーは意識朦朧となった王子を抱え込むと、そのままジャンプした。ソルジャー必殺のバックドロップ、デュランダール・ドロップだ。しかもジャンプによる高さが加わっている分、その威力はテリーに決めた時とは桁違いだ。

「キン肉マン!」「キンちゃん!」「スグルさま!」

リングサイドで観戦している面々が叫ぶ。そして…

「王子ーっ!!」

ボクは叫んだ。兄弟で殺し合うなんて…そんなことは…やっぱりあってはならない!

「仲間も呼んでいるぞ。さあ、目を覚ますんだ。スグルよ!」

王子の脳天が今にもキャンバスに突き刺さろうとする瞬間、王子の体が炎のようなオーラに包まれた。そして、そのままデュランダール・ドロップから脱出すると、今度はソルジャーにタックルを食らわせた。

「ぐわっ!」

「兄さん、今こそあなたを破らせてもらうぜ。この筋肉闘気(マッスル・オーラ)でな…」

「どうやら体得したようだな、伝説の筋肉闘気を…」

王子はソルジャーにタックルした体勢のまま高く舞い上がった。そのまま足でソルジャーの首と左足を極め、両腕も極める。この体勢は間違いなく…

「マッスル・オーラ・スパーク!!」

王子の筋肉闘気を伴ったマッスル・スパークが決まった。王子はそのまま、ソルジャーをアタル版マッスル・スパークに固めると、キャンバスに向かって急降下を始めた。

「兄さん…ありがとう…兄さんはこうやってわたしに…」

「な…何のことだ… わたしは何も…お前は自分の力だけで…」

王子とソルジャーは何か話しているようだが…よく聞こえない。と、その時…

「い、痛いだわさー」

入場門の方から何か声が聞こえてきた。何処かで聞いたような…

「こりゃあー! アタルにスグル。何をやっとるかー!!」

大王さまが突然、キン骨マンとイワオをヘッドロックに極めて乱入してきた。王子はビックリしてマッスル・スパークを解いた。もつれるように落ちる王子とソルジャー。

「パ…パパ… どうしたんじゃ!」

「事情はぜーんぶこいつらから聞いたぞ! まったく、いい歳して兄弟ゲンカなどしおって。」

「パパ…わたしはアタル兄さんから戦いを仕掛けられて…」

「わ…わたしは正義超人の友情パワーに喝を入れようと…」

「やかましい! アタルもスグルもさっさと戻ってこい。お前らがおらんせいで政務がたまってるんじゃ。」

「おわー! ミート、助けてくれい!!」

「父さんの迫力の前には返す言葉もないよ…」

王子とソルジャーはそのまま、大王さまに引きずられて会場から姿を消してしまった。程なくして応急処置が終わった両軍がお互いの健闘を讃え合う握手をして、大将なき戦いは幕を閉じた。

こうして王子は、キン肉星の次期大王としてキン肉星に帰っていった…はずだったのですが、3日後にひょっこりと帰ってきたのでした。なんでも政務次官にスーパーフェニックスこと、フェニックスマンが就任したことで王位争奪サバイバルマッチ以前より3ヶ月分もたまっていた国内の政務が半日で片づいたそうなのです。王子はまたしばらく地球で暮らすことになり、色々な事件に巻き込まれることになるのですが…また別の機会にお話ししましょう。

あとがき

何とか完結しましたね、特別編。いやー、こうしてみると長かった、長かった。最初から読み返してみると、ミートの喋り方も随分変わっています。結局最後はムリヤリ完結させた感じがしますが、このオチ自体は実は結構前から温めてたんですよね。むしろウソがマコトになったのは筋肉闘気の方で… もっと時間があったら医務室の連中の会話も膨らませたかったのですが、ちょっと残念です。これを最後に一旦更新を終えますが、次回作は考えてます。ラーメンマン編です。前にもどこかで書きましたけど、「キン肉マン」と「闘将」の両シリーズを繋げる話にする予定です。というわけで、復活第一弾を楽しみに待ってて下さい。

ノベルリストに戻る