キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第14話 新たなる珍特訓!?の巻
いくつかの波乱の末、第3回超人オリンピックAブロック1回戦が終了した。一方、オリンピックの裏で動く悪の正体も少しずつ明らかに…?
――田園調布・某工事現場――
土砂の山の上でキン肉マンはドラム缶の中に入れられたまま横たえられていた。渋い表情のキン肉マンと無表情のアタル。下ではミートが固唾を呑んで見守っている。
「のう…兄さん…」
「スグル…今更、後戻りはできんぞ。」
アタルはドラム缶を足で軽く転がした。
「おわ〜〜〜〜〜っ!!」
ガロンガロンという音とともにドラム缶は猛スピードで山を転がり落ちる。キン肉マンの目の中には渦巻きが回っている。ドラム缶はしばらく地面を転がった後、ようやく止まった。大方の予想通りキン肉マンはのびていた。
「王子、王子、しっかりして下さい!」
ミートが駆け寄り、キン肉マンの体を揺さぶる。
アタルは山から飛び降りると、キン肉マンの入ったドラム缶に近づいた。そうしてドラム缶の縁を無造作に掴むと、それを引きずりながら再び山の頂上へ昇った。先程と同じくドラム缶が転がろうとしたが…
「待ってください!」
ミートはアタルの前に回り込み、両手で行く手を阻む。その目はキッとアタルを睨みつけていた。
「何だ、ミート…」
「アタル様、もう黙ってられません!」
「王子に特訓をつけてくれるのは感謝しています。しかし…これはやり過ぎですよ! 1回戦は何とか勝てたからよかったものの、リングに上がるのもやっとの状態だったじゃないですか!!」
「わたしの行う特訓が間違っているとでも…」
アタルの表情は唯一露出された目からしか窺うことができない。しかし、それは雄弁に揺るぎない信念を語っていた。ミートは一瞬たじろいだが…
「そうは言いません…ですが、せめてこの特訓のねらいを教えていただかなければ納得は…」
アタルはドラム缶の縁を放した。
「ミートよ、覚えているか? 1回戦もスグルは特訓の意味こそ理解できなかったが、見事に自力で危機を打ち破った。スグルの力は特訓で培われるが、引き出されるのは実戦でこそだ。しかし…わたしが特訓の意味を最初から話していたら…?」
「そ、そうか…王子は意識してしまい、余計に力を出しにくくなる…」
「それだけならまだいい。だが…わたしを頼りきった状態で…わたしでもどうしようもならん危機に陥れば…もはや何もできなくなる!」
「アタル様…」
「今回の大会では、わたしの考えなど及びのつかない力を持つ者が隠れている。そんな気がしてならないのだ。だから…せめてわたしはそのお膳立てをしてやるしかできない… スグル…こんな兄を許してくれ…」
(アタル兄さん…)
いつの間にか目覚めていたキン肉マンは、無言でアタルの名を呼んだ。しかし、次の瞬間…ドラム缶は転がされた。
「おわ〜〜〜〜〜っ!!」
この特訓に何の意味があるかは分からない。だが、もはやミートが止めることはなかった。キン肉マンの絶叫は連日のように続いたという…
その頃、アメリカでは…キン肉マンと2回戦で戦うノーティー・ブラットが師匠のテリーマンと特訓を重ねていた。
「ようし、いいぞノーティー! 燃えているな!」
「へへっ…相手が他でもない、キン肉マンはんやからな。」
「そうだな…」
「それに、先生はキン肉マンはんの事は誰よりも知り尽くしてるし。」
「ああ…だが、キン肉マンほど不思議な超人は他にいない。」
「へ!?」
「どれだけ研究しても、キン肉マンは常にオレの想像を超えた強さを身につけていく。いや…それこそが真の超人というものかもしれん。」
「ふーん、ま、どうでもええけどな。」
「お…おまえな…」
半ば呆れ顔のテリーだったが、ある事を思い出した。
(そういえば、ノーティーも一戦一戦ごとに強さを増している気がする。最初は試合慣れしているからだと思っていたが、それにしては伸びが著しい。そしてロビンVSマイナーラスク戦での口調の変わり様。あれはオレの勘違いなのか!?)
「…おーい、おーい、先生ー。どうしたんやー?」
ノーティーの呼びかけで現実に引き戻されるテリー。
「あ、ああ…すまない。それではもう一度復習するぞ。キン肉マンの必殺技、キン肉バスターそしてキン肉ドライバーの攻略からだ。」
「はいな!」
一方、他のライバル達も来るべき戦いに向けて着々と準備を進めていた。
「ロビンマスクを一瞬でフォールしたそのスピードは驚嘆に値する! だが、このバッファローマンさまに通じるか!? どりゃあーっ!!」
バッファローマンのパワー溢れる特訓は大木を次々に薙ぎ倒していく。
同じく、バッファローマンと共にブロッケンも大木を切り倒していく。ベルリンの赤い雨の切れ味に一層の磨きがかかっているようだ。
「アシュラマンのあの一言が気になるが…オレはオレの戦い方で試合に勝つだけだ! 悲願のベスト4進出は必ず果たしてみせる! てぁりゃあーっ!」
二人の特訓によって富士の樹海の大半が消えてしまったという…
「どうした、どうした! ケッ…もうみんなバテちまったのか!?」
「ギャ…ギャラクティカ…もう、これくらいに…」
「エレガントマンの言う通りです。休憩も立派な練習の一つですよ。」
「何を言ってやがる! こんな事じゃあの野郎に…」
「グヘヘ…ネプチューンマンの事となると目の色が違うのう…」
「全くさ。特訓に付き合わされるボクらはいい迷惑だよ。」
「こ…こんな事ならザ・サイキョー超人軍団に入るんじゃなかったゾナねぇ。」
対ネプチューンマン戦に備え、ギャラクティカはザ・サイキョー超人軍団を相手に激しいスパーリングを繰り返していた。その飛ばしぶりは他のメンバーの息が絶え絶えになるほどだ。
そのギャラクティカと対戦するネプチューンマンは…ザ・サムライであった頃に身につけた特訓方法なのであろうか…とある山頂で一人座禅を組んでいた。
(テリーマンのことだ。スグルの必殺技を徹底的に研究してくるだろう。だが、あえてその作戦に乗ってやる。わたしの特訓が間違っていなければ…きっと…)
目を回しているキン肉マンを見つめながら、アタルは確信していた。
1週間は瞬く間に経ち、鍛え上げられたパワーとパワーとが交錯する2回戦…その日が来た!!
☆激闘の予感!
キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第14話
…/おわり
キン肉マンの特訓の成果は!?
次回、「灼熱の2回戦」!
巻末言
アイスが美味しい季節になった。最近のオス
スメは超激レモンというシャーベット。食後
に残るほんのりとした甘さがたまんない!!
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