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様々な種類の金属がある中、私が勤める自由鍛造の世界で最もメジャーなのはやはり「鉄」である。
古くから用いられているこの材料が、今もなお第一線で取り入れられている大きな理由としては、加工性に優れていることが挙げられる。
鉄を火で熱したメルト(溶解)点は約1.370℃とされているが、約1.000℃〜1.300℃という比較的広い範囲の温度帯で、鉄は溶けずに軟化した状態を保つことが出来る。
他の金属はこの軟化状態の温度帯が極端に狭く、鉄だけが特出した特性をもっている。
そのため自由なフォーミングを行うことが可能になってくる。ちなみに鍛造加工の適正温度は850℃〜950℃で行っている。
そんな鉄のもう一つの特性は「錆」である。鉄は酸化物である鉄鉱石として存在するのが自然の姿であるが、鉄鉱石を炭素と加熱還元して鉄を得られる。しかしその鉄は不安定であり、再び安定した状態の酸化鉄に戻ろうとする。その際、空気中の酸素と結合しようとする働きにより「錆」が発生する。
私は、錆た鉄の表情には意図的には生まれ得ない自然の美しさがあると思うが、建築構造体の劣化や、錆汁によるシミや汚れなど時と場合では”負”の産物であり、大きな悩みの種である。
旧字体の「鐡」は、意符の金(金属)に音符のテツ(赤黒い意・漆)を加えて、赤黒い錆の出る金属「てつ」の意を示すらしい。
今日の金(カネ)を失うと書いて「鉄」と読むのは、俗字であって意味は無い。とは言うものの、効率性や日々の暮らしぶりと照らし合わせてみると、大いに考えさせられてしまう。
加工性に富むものの錆易いという特性を理解し、いかにバランスの良い状態で仕上げまで持ってけるかが、制作の上で重要になってくる。
作品は鉄の熱し方、組み方の順序とその工法そして仕上げまでの全工程の流れと、イメージするマチエール(肌感)のマッチングで出来上げっている。
要となる「火」は鉄にとって重要なエレメントであり、鉄に気を吹き込み命あるのもにしてくれる、鉄と会話が出来る大切な「言葉」であると思っている。
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鉄と錆と火



Essay