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その後、たまたま見ていたネットオークションに、あのイタリアで使っていたような手回しブロアが出品されているではありませんか!何がなんでも落札せねばと入札。流石に使用目的が無いのか、競り合うことなく私独りでなんなく落札。数日して送ってきた現品は未使用で完品。サイズも丁度いい。早速設計図を引いて制作開始。そしてオリジナルコークス炉の完成となりました。その名も”LPF-1”(Libra portable forge)画像のは”LPF-3”少しずつ改良してこの形になりました。現在は脚の取り外しが出来るように改良中です。
はじめて使った手回しブロアの付いたコークス炉(結構ボロボロ)。
土を中に入れて、コークスを入れる部分を円筒状に明け、土が乾かないように途中水で湿しながら使います。
鉄を叩いては突っ込んでグルグル回す、これの繰り返し。たまにコークスを解し、そして水を足していきます。まったく休む暇がありません。
始めた頃は1時間もするとクタクタに疲れ、おまけに冬でも全身汗だくになりました。
それだけではなく、空いた時間にはコークスを割る。20〜30mmの小塊を15mm角程度に揃える。要は半分に割っていくのだが、袋の7〜8割り方は割ることになる。篩いに掛けてあるのだから必要とは思わなかったのですが・・・。

だが、しばらく使っていくうちに要領も掴み、体もなれてくるとどこか楽しくなってきました♪♪。
電気式のブロアは楽なのですが、風速が一定で微調整には変調器や可変弁などの操作が必要になってきます。しかし手動は調整が効くので面白いです。そういえば最上部で紹介した鞴と同じ様なものを、今だに使っている鍛冶屋さんに話をきいたことがありますが、風の調整が効いて扱いやすいので、手放せないと言っていたことを思い出しました。ロートアイアンのロート(wrought)とはworkの古い過去・完了形だそうで、アンビルにハンマーを振るうイメージが先行します。しかし火を扱い、調整することも体で働きかける、奥の深いそして情景が浮かぶような素晴らしい言葉でることを改めて感じました。
コークスも粒が揃っていることで、焼きたい鉄に密着性が良く、均一に焼ける。そして温度の上昇も速い。時間を掛けて割ることでフォージングの作業性もUPって訳です。割るのも長時間掛かるわけでもないので、結果的には効率的に良くなります。刃物などをつくるときは木炭を5割程度混ぜると、火力が丁度良い感じがします。
携帯式の鞴(樺山鍛冶工場所有)
長さ=900cm、高さ=600cm程度あるが、非常に軽く出来ています。
薄く割いた木の板で組んであるが、反りや隙間などは見られず、今でも問題なく使えます。
「鍛冶屋は二坪あれば出来る」といわれるくらい、火床(炭などで火をおこすところ)と金床(鉄を叩くところ)があれば大体のことは出来る仕事です。
その昔は、農閑期に納屋を借りて農作業で痛んだ農具などを、携帯式の鞴(フイゴ)を持ち込みその場で修理する、「出張鍛冶屋」をしていたそうです。
以前、ある方が保管されている人吉球磨地方の鍛冶台帳に私の祖父の名を発見したことがあり、現場に出掛けていってその場で鍛冶をするということに興味を覚えました。現代的な仕事のスタイルや効率を考えると、電気や機械無しでは考え難く、また作業場もそれなりの広さが必要になってきました。しかしそれらに反して、本来の鍛冶仕事のシンプルさを求めるようにもなりました。ただ漠然とした思いだけで、具体的な手法は特に考えていないのも事実でしたが・・・。そんな折、イタリアで本格的な鍛冶を学べるチャンスを得、早速現地へと乗り込み現代の西洋鍛冶を体験できるのを心待ちにしていました。
ところが、マエストロが私に用意したのは、アンビル(金床)とハンマー、縦万力そして手回しブロアーが付いたコークス炉だけでした。
「これじゃ中世の鍛冶屋だ」とマエストロは笑ったが、「お前の実力ではここから始めないとダメだ」と釘を刺され茫然自失、「俺は何しにここまで来たんだ」と情けないやら腹立だしいやらで気が動転し途方にくれてしまいました。あの時見たイタリア中部の夕日は複雑な心境と共に、強烈に記憶の中に焼きついています。
 01.序章
 
〜炉をつくる〜
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