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最近「パニック障害」という病気の人が増えています。 息苦しい、動悸、手足のしびれ等、死んでしまうのではないかという程の症状が出るのがパニック発作です。 発作が起こった場合、7〜8割の人が救急車を呼んでいます(図参照)。
何の理由もなく予期せぬ時に激しい精神身体症状を突然発作的に生じ、これを反復して慢性に経過する病気です。
もっと具体的に言うと、突然心臓がパクパクしたり、動悸や呼吸が出来ない、息苦しい、目の焦点が合わない、耳鳴り、吐き気、汗が異常に出る、気分が悪い、真っ直ぐに歩けないなどです。
そこで一番キーとなる症状は、「息苦しい」と言うことです。そのため、よかれと思って大きく深呼吸したり、呼吸の回数を増やしがちですが、逆にそのことによって症状が急激に悪化します。
その結果、手足もしびれてしまい、どうしようもなくなり救急車を呼んだりするようです。 これだけだと過呼吸症候群と全く一緒で、病院でいろいろ検査をしてもらっても異常がないことが多いようです。
しかし患者さんにとってはそこからが不安のどん底に落ち込んでいく始まりなのです。
例えば、初めての発作がたまたま高速自動車道で起こった人は、以後高速道に乗れず、飛行機や新幹線に対しても恐怖心が募り、次第に発作が起こるような場所・場面を避けるようになり、生活範囲が狭められていきます。
こうしていつ起こるか、もし起こったらどうしようかという不安が、不安を増長させ、次第にちょっとしたことがきっかけで呼吸回数が増え種々の症状が起き発作となるのです。発作のないときも常に緊張感が高まった状態が続き、予期不安、人によっては広場恐怖症(例えば、エレベーターの中、密室で検査を受ける、買物に行く、人が大勢いる所、逆に自分一人でいる時など)を伴う人も多いようです。一見、地震が起きた時の人間の体と心の反応に似ているようです。
なぜなら、大地震が起こっているときは「どうなってしまうのだろう。」と思い、地震がおさまっても余震への不安とともに「またもっとひどい地震が起こるのでは・・・」という不安が増長します。 ところが地震とパニック障害の違いは、地震はコントロールできませんが、パニック障害は最終的には自分でコントロールしてしまえる病気だということです。だから怖くはなくなるのです。 |
パニック障害の治療の基本は薬による治療です。 すでに1962年に、クラインらは抗うつ薬で効果を発見しています。 また、他の抗うつ薬・抗不安薬でも有効性が確認されていますし、パニック障害に効能を持った薬も発売されています。
しかし、薬物療法のみでは不十分で、本人の努力と治療者のサポートが必要となります。 パニック発作を患者さん自身がセルフコントロール(呼吸回数が多くなりすぎないようにする)することで、時間はかかりますが、そのうちに症状は消失していきます。 その時こそが治療の終結になります。
治療者側と信頼関係を持って、患者さん本人が努力すれば完全にコントロールできる病気なのです。 |
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