【丹 参】


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【原植物】
シソ科、丹参(Salvia miltiorrhiza BUNGE)、多年生草本、根は肥厚し外面朱紅色で内部は白い。丈40〜80cm。海抜120〜1300mの山野の日当たりの場所に生育し、遼寧、華北、陝西、華東、湖南に分布する。日本産のものは栽培品になる。

【古 典】
神農本草経(200年頃)では上品とし、味は苦、微寒、心腹の邪気、腸鳴、悪寒、発熱、積聚(腹中のしこり)、徴(固定した腹中のしこり)を破り、殷(移動する腹中のしこり)を除き、煩満を止め、気を益すると記されている。唐代(1000年頃)には、養神定志、通利、開脈、冷熱労、骨節疼痛、四肢付随を治し、排膿、止痛、生肌、長肉、宿血を破り、新生血を補し、生胎を安くし、死胎を落とし、血崩(女子生殖器の熱性大量出血)、帯下、婦人経脈の不整、血邪、心中煩悶、悪瘡、疥癬、嬰贅(甲状腺腫大)、腫毒、丹毒、頭痛、赤眼、熱温悶を整える。本草綱目(1600年頃)には、宿血を破り、新血を補い、生胎を安んじ、死胎を落とし、崩中(月経期ではない急激な大量出血)、帯下を止め、経脈を整える。

【性 味】
味苦、性微寒、(帰経:心・心包経・肝)

【主 治】
活血化於血・涼血・養血安神/狭心症・肝脾胃腫大・月経不調・心煩・不眠・瘡瘍腫毒

【主成分】
tanshinonA〜C・Vit.E

【薬 理】
・血管拡張・血圧降下:動物実験で末梢血管を拡張し血圧を下降する。モルモット及びウサギの摘出心臓に対し、冠状動脈を拡張する作用があり、モルモットの冠状脈管血流量は25%増加し、ウサギでは20.4%増加する。また心拍度数(1分間)を減らし心収縮力は短時間の抑制後、漸次増強される。

・中枢神経系:マウスに対して明確に鎮静作用を示した。バルビタール系睡眠剤の睡眠時間を延長する。

・抗菌作用:ブドウ球菌・大腸菌・変形菌に対し強力な抑制作用があり、チフス菌・赤痢菌も抑制する。エタノールエキスは10万倍の濃度で結核菌を抑制し、マウスの結核に対し治療効果がある。

【臨 床】
・於血を除去し血管を拡張する作用により、冠不全の疼痛・狭心症・心筋梗塞・冠状動脈性の心臓病などに用いる。

・去於作用により慢性肝炎や肝硬変初期で肝脾腫大・肝機能障害、肝鬱による脇痛に用いる。急性肝炎に使用することもあるが、慢性期にもっとも適している。末梢血管を拡張し、門脈圧力を降下することで肝臓の血液循環を改善し、肝細胞の栄養と酸素供給を増加させる。

・気滞血於による月経困難・月経痛・産後の悪露停滞・疼痛などに用いる。

・神経衰弱で動悸・不眠・煩躁・不安など心血虚の症状、軽症の血栓性静脈炎、高血圧症などに用いる。

【用量・用法】
中医では煎じて6〜15g、増量して15〜30gとしているが、1/3くらいの2〜5g(5〜10g)で充分である。粉末はさらに分量を減らして構わない。1回1.5〜2gを1日2〜3回。毒性はなく大量・長期服用でも害は少なく、煎じて服むより粉末のほうが手軽で少ない量で済む。粉末は老酒または白湯で服用する。老酒とは3年以上熟成した紹興酒のことでアルコール度数は14〜18度。日本酒、梅酒、ワインなど同じくらいの度数があれば良い。酒服するのは油脂成分の吸収を高め胃腸の働きを促すためと言われている。

 

 

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