D 文科省の著作物が現場に
文科省の著作物がすべての学校現場で一律に使用されることは、国家による教育への介入といえる。こんなことが認められることになれば、他の教科書だって国定教科書になってしまう。
「国家主義、滅私奉公が色濃く出るのではないかと警戒していたが、そのへんは配慮して作られている」が「文科省は教材に対するスタンスを変えた。多種多様な教材の中から選ぶという、これまでの原則をないがしろにするものだ」(日教組の教育文化部)
E 画一的な子ども像の実現
「『心の専門家』はいらない」などの著書がある日本社会臨床学会学会運営委員の小沢牧子さんは「心のノート」について次のように語る。「ノートには意識せずに自分の言葉のようにさせられる心理学の仕掛けが巧妙に入っている。洗練されている分、戦前の修身教科書よりもたちが悪い。心理主義による柔らかな管理だ。輝く人間ばかり強調しているが、実際の人間は落ち込むこともあるし、子どもも怒りたい時はそうすればいい。文科省は一握りのエリートをつくろうとしている。進路選択などでいい思いができない圧倒的多数の子どもの悔しさや社会不安を封じ込むため『状況が好転するかどうかはあなたの心次第』『肯定的になろう』と、社会の仕組みから目を遠ざけている。文科省が求める画一的な子ども像を、(ノートを使って)本気で実現しようとしているのではないか。」と
F 道徳教育を国民総運動へ
全国で1000回の授業特別講座を計画。文部科学省は来年度、スポーツ選手や文化人など著名人らが、今年4月に全国の小中学生に配布した道徳用教材「心のノート」を使って授業をする特別講座を全国で1000回実施する方針を決めた。「心の授業」と銘打って保護者や地域住民、教師らに公開し、新しい道徳の授業のあり方として普及させる方針。同省の作った教材「心のノート」を使い、全国の小中学校で1000回の授業を実施し、教員が「心のノート」を使って指導する際の参考にするため、授業を公開する。講師の人選は都道府県教委などに任せる。
「現場の校長は『指導力を問われている』と考えるだろう。来年からは心のノートを使う学校が増えるのではないか。国が固定の道徳を教育で刷り込むのはおかしい。」