警視庁・特殊バイク開発史

 過去スーパーヒーローと呼ばれる者たちが駆った超高性能なマシンはそれこそ数知れないが、いざ「警察関の手により誕生・
開発された」とくくると、途端にその数は激減する。自動車ならまだ数があるのだが、バイクとなると更に少なくなってしまう。

これは良くも悪くもバイクが「風を体に感じる」乗り物である事に起因する。マシンは通常時のパトロールにも使用されるが、
追跡こそがその主な任務であり、その為の大前提として「高速走行が可能」というのが挙げられる。
しかし、四方を囲まれた自動車に対して風圧を直接体に受けるバイクでは、まずその風圧に耐えられる必要が出てくる。
自動車ならば装甲強度の向上等でどうにかなるが、バイクの場合はそれ以外に乗り手自身にも強靭な体を要求するのである。
(マシンは高速走行のみが目的ではないため「フルカウルにする」等は却下)
もう一つ問題なのが「容積が小さい」と言う事。同じ大出力のエンジンを開発したとして、シート等を取り払えばスペースを
確保できる車に対してバイクの場合はある程度小型化されなければ搭載できないのである。

自動車の方は1973年の「ジョーカー[ロボット刑事]」まで遡ることができる。
当時すでに陸海空を制するスーパーマシン(実際に開発したのは警視庁ではないのだが)として製作されているが、
やはり安全性にまだ疑問が残ったのか搭乗するのはロボット刑事のKであった。一方バイクの方は、途中登場した
様々なヒーロー達のマシンを参考にしつつもやはり開発が遅れ、
実用に漕ぎ着けたのは平成に入ってからの事になる。

・1号車(1989):バイカン[機動刑事ジバン]

 記念すべき特殊バイク第1号は、搭載された第6世代のコンピュータによって 自我を持ち、バルーガ砲を装備した
 重戦闘用バイクとして開発された。搭乗者は対バイオロン用サイボーグ刑事の機動刑事ジバン。
 だがジバンには同時に特殊パトカーのレゾン、小型ジャイロのスパイラスと言う同じく自我を持ったマシンが支給されており、
 最高速度も武装もバイカンより上。あまりバイカンの存在には必要性が感じられないようだが、やはりこれは未だに
 特殊バイクが試験的運用段階から脱却しきれておらず、ジバンが登場者に選ばれたのも、人間
が乗るには未だ安全性が
 確保されていなかった為なのだろう。

・2号車(1999):ウィンチェイサー[特警ウインスペクター]

 バイカンが他の2台に比較して能力的に魅力がなく、埋没してしまった結果を重く見た 特殊バイク開発陣は「重武装」という
 コンセプトを捨て、「走破性」と「運動性」に重点を置き、オフロードバイクをベースとして再び開発を開始する。
 しかし大出力のエンジンの小型化や耐久性の向上、尚且つ可能な限りの軽量化といった トータルバランスの調整には
 思いの外時間を費やす事となるのであった。
 実用化された試作2号車は、警視庁特別救急警察隊・通称ウインスペクター(以下WSP)の第2次装備計画に合わせ
 WSP所属のサポートドロイド・バイクルによって運用される事となる。
 WSPには初めて人間が装着する特殊装甲(クラステクターと言う)を装備(着化)した行動隊長ファイアー(香川竜馬)も所属
 しているのだが、彼が2号車のテスト被験者に選ばれなかったのは安全性の問題と言うよりも、クラステクターの着化限界が
 5分程度と短く、またバイクでは着化システムを搭載する事ができなかった為と思われる。
 バイクル自体には、元々うつ伏せになる事で腹部のホイールによりある程度ならば高速走行できる能力があったのだが、
 視界が下がるため目標を喪失しやすかったり、EN消費効率が悪かったりした為に代替となる移動手段が求められていたので
 彼が選ばれたのは至極当然の成り行きと言えるだろう。
 バイクルが搭乗者に決まった事で追加された機能があった。それは彼が背中に2本装備している「バイスピア」と呼ばれる
 バイクのハンドル型の特殊警棒を始動キーとするというもの。(この機構は後に「アクセラー」と呼ばれるようになる。)
 晴れてWSP配属の決まった2号車の名称に付いては、同じくWSP所属のファイアー専用特殊パトカー・ウィンスコードに習い、
 また追跡:チェイスという使用目的を考慮した『ウィンチェイサー』が与えられた。 ウィンチェイサーは期待された以上の
 活躍を見せ、以降開発された特殊バイクには「チェイサー」の名を冠するのが基本となる。

・3号車(2000):トライチェイサー[仮面ライダークウガ]

 ウィンチェイサーの成功を受け、3号車の開発は順調に進められた。
 まず起動キーとしてアクセラーを残す事は早くから決まったが、両方を脱着式にした場合、普通の警官では所持場所に困る事、
 またメンテナンス性向上やコスト面からも片方のみ外れる方式へと変更された。
 他にも隠密性向上の為、特殊な形状記憶合金による「マトリクス機能」と呼ばれる外装の色彩を変更できる機能が装備された。
 エンジンにも以前から研究が進められていた無公害エンジン「アレグロ」を試験的に搭載。この新開発された強力なエンジンと、
 強固ながら軽量な装甲材の使用により、3号車は驚異的な登坂性能を獲得する。最高速度も300km/hをマークした。
 こうして誕生した3号車は「3(トライ)」と、その高い走破性と機動性を掛け「トライ(アル)チェイサー」(以下TRC)の名が
 与えられることとなる。

 だがここで事態は思わぬ方向へと推移して行く。ウィンチェイサーの成功を受けTRCの次期主力白バイ化が決定したのである。
 ついては量産化に向けての機能のシェイプと低コスト化が図られる事になるのである。
 交通機動隊の職務上、あまり必要でないアクセラーやマトリクス機能は廃止され、コストのかかるアレグロや特殊装甲材も
 通常のものへと変更される事となる。この量産型はTRC2000A型と呼ばれる。
 こうして1台のみ試作されたTRCは、そのまま倉庫で眠る事になる・・・はずだった。が、またも事態は急変するのであった。

 驚異的な能力を駆使して殺人を繰り返す異形の「未確認生命体」と、それに対抗する「4号」と呼ばれる赤い戦士の登場である。
 戦いの場は長野から東京へと移り、高速で駆け廻る未確認生命体第5号が出現。これを捉えきれない4号に対し、一条刑事の
 英断によって供与される事となるのである。以後TRCは4号の鋼の脚となり、未確認達を追い詰めていくのだった。

・3号車改(2000):ビートチェイサー[仮面ライダークウガ]

 4号に供与されたTRCは予想をはるかに上回る成果をあげていたが、またしても予期せぬ出来事に襲われてしまう。
 4号のしもべ・装甲機ゴウラムの登場であった。定期メンテナンスの際に発見されたのだが、TRCとゴウラムとの合体
 (4号が乗る物と融合し、その性能を向上させる能力がある)及び分離の際に、より合体に適した形態へ強制変化をさせる為、
 金属疲労が急速に進行してしまっていたのである。(一般に確認されているTRCとゴウラムの合体は対24号戦、対36号戦、
 対39号戦の3回だが、おそらくはそれ以外にも数回の合体が行われていると思われる。)
 それは近い将来TRCが動作不良に 陥る事を意味し、とり急ぎ TRCに替わる マシンの開発が行われる事となる。
 (本来、警察機構に属さぬどころか敵やも知れぬ4号に対して、このような待遇がされるのは異例の事であるが、彼が未確認に
 対する唯一有効な存在である事実と、彼が信頼するに足る者であるという現場からの強い声もあったと思われる。)

 アクセラーやマトリクス機能はそのまま引継ぎ、アレグロを更にチューンナップした エンジン「ブレスト」を搭載、
 最高速度は420km/hへと跳ね上がった。これは常人に扱える限界を超えており、まさに4号専用のマシンと言えよう。
 完成した形状記憶合金・BT鋼によりゴウラムとの合体も約500回まで耐えられるようになり、分離後はエネルギーを
 使い果たしバラバラになってしまうゴウラムの為に流体金属タンクも設置。緊急停止用パラシュートも内蔵している。
 こうして急ピッチで完成した3号車改は装甲に使用された完成形の特殊装甲材・BT鋼と、ゴウラムが甲虫(ビートル)の形状を
 している事から「ビートチェイサー」(以下BTCと表記)と命名された。

 ところが、完成に前後した未確認生命体第39号戦において赤の金の力を使用した4号により、半径3kmに及ぶ大爆発が発生。
 人的被害こそ無かったものの、上層部はBTCの4号への供与を停止してしまう。
 だが、特殊バイクに乗って殺人を行う未確認生命体第41号戦においてTRCが機能停止するに至り、4号を信頼する者たちの
 懸命の説得もあって遂に4号へと託される。

・4号車(2001?):ガードチェイサー[仮面ライダーアギト]
 4号によって未確認生命体の長であると思われる第0号が倒されてから後、再び同様の脅威が現れた場合に備えて
 未確認生命体対策班(SAUL)が創設される事となり、主戦力として強化スーツの開発が行われる事となる。
 並行して搭乗するマシンの開発も行われる事となったのだが、ここで問題が 発生する。
 つまりはマシンのコンセプトをどうするかという問題である。

 4号は相手に合わせて自ら能力を変化させていたので、マシンは高速移動の 手段としての能力があれば良かったのだが、
 今回開発される強化スーツでは状況に合わせて武装を変化させる場合、手近な場所にそれを保管した場所がなければならず、
 また人間が装甲服を着ている以上避けられない重量過多を考慮した結果、武器庫を兼ねた重装甲型として開発はスタートする。

 前任であるTRC及びBTCとは設計思想から違う訳であるが、起動の際は前2機同様にアクセラーを使用している。
 名称についてはストレートに防衛を意味する「ガード」に「チェイサー」を合わせて「ガードチェイサー」と決定。
 後にアンノウンと呼ばれるようになる豹に似た怪人との戦いにおいて初陣を飾る。最高速度は300km/h。

<BACK