【当たるも八卦・八割漢方】


いつの間にか当たり前のように、漢方薬や薬草のアドバイスや調剤をするようになってしまった。薬草とそれを運用する東洋医学の混沌とした世界を前にして、素人だった私はどのようにしてこの世界の住民となったのだろう?たとえ偉い先生でさえ、最初は素人だったに違いない。その先生たちの漢方入門書には決まって似たようなことが書かれている。東洋医学的理論で運用しなければ、効果がないどころか誤治の危険性がある。病名や症状に隠れた真の病態を見極めないで漢方薬を服用するのは危険である。そして、「生兵法はケガのもと」と結ばれている。にも関わらず漢方薬の副作用や危険性が取り沙汰されると、、本来薬草に危険なものはない。副作用と思われるものでも発生頻度は極少なく、可逆的である。などと弁明する。東洋的理論と言葉を弄していてもいつの間にか西洋医学的手法で考え、その技術の恩恵を蒙っていることもある。西洋医学的処方の運用を揶揄する言葉に「病名漢方」というのがある。また、漢方薬のメーカーが番号で漢方処方を分類しているのを取りあげ「番号漢方」といって嘲笑する漢方家も居る。この人達はきっと生まれた時から大家(たいか)だったに違いない。

「門前の小僧習わぬ経を読む」....来る日も来る日も漢方薬を扱っていると自然に使えるようになるらしい。しかし努力が要らないというわけではない。早く正しく多くを覚えるためにはそれなりの工夫は必要である。西洋医学の病名や薬理学の知識があれば、それを利用するのは当然である。また素養がある以上、利用するつもりがなくても学習に反映してくる。不肖、私は「病名漢方」から入門した。完璧に西洋医学の知識を捨て去り取り組むことは不可能であった。風邪に葛根湯、桂枝湯。こじれた風邪には柴胡桂枝湯、参蘇飲。咳には麦門冬湯。婦人病には桂枝茯苓丸、加味逍遥散。下痢には半夏瀉心湯・・まさにお経を唱える如く暗記し、恐る恐る使い、効果と不効果を確かめ暗記を続けた。今も、初心者の域を脱する事が出来ず同じ繰り返しである。

そこで「証を診たか?」と問われると、「診ていない」。診るほどの技量もなく、診る演技をしながら、覚えた記憶を掘り起こす作業であった。東洋医学的証の把握などと口にする頃には、すでに反射的に処方が浮かび、慣れや惰性の域に入っている。このようにして業務の輪郭が浮かび上がると、意外なことに治癒率は初心者の頃が高かったのではないか?と思うようになった。仕事を続ければ続けるほど治らない症例を知る事になる。初心者のうちは規矩にもとづいて用いれば、治らない病気はないという期待効果も加算されるのである。

西洋医学はひとつの症状について多くの病名が考えられる。漢方はひとつの症状について多くの病態が考えられる。方法論は違っても多様な分類の下で多様な治療法が考えられる。漢方の風邪の病態の分類をみてもかなりの数である。寒によるものか熱によるものか?その病邪が体の何処にあるのか?患者の体の抵抗力の程度は?これに対する方剤がそれぞれ用意されている。しかし、実際に訪れる病人はそれほど多様ではない。別の言い方をすれば、現場では教科書で分類されるほど多種の病態を弁別出来る余裕もなく、人間の認知能力の限界も考えられる。これは私に限った事かもしれない・・・日々学習に励んでも道半ばの状態は続く。教科書での勉強は臨床モデルを想定したトレーニングでもある。例えば、冬の風邪なら寒冷を受けて始まるものが多く、次に暖房器具などの乾燥によって咽喉が炎症を起こし発熱するものが見られる。こじらせた場合は、やや複雑な様相を呈するが、初発の風邪はそれほど多様な薬を用いなくても、凡そ解決できる。特に煎じ薬であれば数種類の基本薬方に生薬を加減することで解決できる。別のページで漢方薬のプラシーボ効果の報告が60〜80%という話をしたが、これ位の治癒率は上げられるかも知れない。これが「八割漢方」の言葉の根拠である。

あとの2割は名人芸と言われる漢方の大家にお任せして良いのではないか?その為の大家である。病名漢方と揶揄されても、「ハイ申し訳ありません。あと2割をヨロシク」とお願いするのに躊躇はいらない。治せないものを四苦八苦するよりどれほど気が楽か知れない。八割治せるなら、名医と言っても良いのではないか?健康雑誌の漢方自己判断チャートなどみていると案外こんなものでいいかも知れないと思うことがある。順番に素人が使って行っても、いずれどれか適合する漢方薬に当たり、八割とは行かないまでも五割でも効果があれば、下手な新薬を延々と服むより利点はある。「当たるも八卦」の言葉の根拠である。

また病気によっては、病態や証など殆ど考慮せずに使えるものがある。○○病に○○湯、△△症に△△湯等々。これは病気そのものが一定の証に収斂されることもあるという例である。生薬には本草的な効能の他に薬理学的に確認されている作用がある。この作用に基づいて運用すればより証拠は確固たるものになるし、病態や証の考慮なしに病名や症状で使っても一定の成果は上げられるだろう。薬理作用がヒトに於いても確認されている生薬ならば薬理作用をもとに使って差し支えはない。未だ動物実験の結果が中心であるが将来が期待されるところである。参考までに生薬に確認されている薬理作用の代表的なものを薬効分類でいくつかあげてみたい。これらの生薬は表記の薬理作用を持ち、これらが配合された処方にも期待がもてるかもしれない。これを手がかりにヒトへの臨床応用が可能になれば、誰が使っても証に関係なく一定の効果が期待出来るようになるだろう。薬草の特徴としてひとつの生薬に相反する薬理効果が確認されていることも付け加えておきたい。しかし、実際は大量濃縮した成分による動物実験の結果なので、あくまでも参考に留めておくべきであろう。

 

神経系に対する作用

中枢抑制作用 延胡索・黄柏・黄連・甘草・桔梗・桂皮・厚朴・柴胡・山梔子・升麻・酸棗仁・芍薬当帰・薄荷・附子・半夏・牡丹皮
鎮静・催眠作用 延胡索・黄柏・黄連・甘草・桔梗・桂皮・厚朴・柴胡・山梔子・升麻・酸棗仁・芍薬・当帰・薄荷・附子・半夏・牡丹皮
鎮痛作用 インチンコウ・延胡索・呉茱萸・桔梗・荊芥・柴胡・山梔子・半夏・附子・当帰・麻黄
解熱作用 オウゴン・黄柏・葛根・甘草・桔梗・桂皮・柴胡・知母・ヨクイニン
抗痙攣作用
筋弛緩作用
厚朴・葛根・十薬・辛夷・センキュウ・当帰・ヨクイニン
中枢興奮作用 茶・人参・ビャクシ・檳榔子・麻黄
交感神経興奮作用 麻黄
鎮痙作用
平滑筋弛緩作用
延胡索・オウゴン・黄柏・黄連・葛根・甘草・枳実・桂皮・柴胡・芍薬・升麻・木香・熊胆・半夏
発汗作用 檳榔子・麻黄
止渇作用 石膏
抗ストレス作用 柴胡・酸棗仁・大棗・杜仲・人参

循環器に対する作用

強心作用作用 乾姜・附子
心循環改善作用 葛根・人参
血圧降下作用 黄耆・オウゴン・黄柏・黄連・葛根・苦参・紅花・山梔子・釣藤鉤・当帰・杜仲
末梢血管拡張作用 黄耆・桔梗・桂皮・芍薬・センキュウ・釣藤鉤・当帰・杜仲・附子

血液系に対する作用

血液凝固抑制作用 阿膠・艾葉・葛根・桂皮・山梔子・地黄・シャ虫・大黄・当帰・桃仁・牡丹皮・芒硝
線溶系亢進作用 甘草・桂皮・山梔子・地黄・シャ虫・センキュウ・当帰・桃仁・芒硝
線溶系抑制作用 阿膠・艾葉・桂皮・大黄・牡丹皮

呼吸器系に対する作用

鎮咳・去痰作用 遠志・甘草・桔梗・五味子・柴胡・竹ジョ・麻黄
気管支拡張作用 麻黄・木香
消化器系に対する作用
健胃・消化機能
増進・腸管蠕動運動
促進作用
茴香・黄柏・黄連・葛根・乾姜・芍薬・生姜・センブリ・人参・半夏
鎮嘔吐作用 半夏・生姜・乾姜
瀉下作用 大黄・センナ・巴豆・芒硝
止瀉作用 阿仙薬
抗消化性潰瘍作用 延胡索・黄柏・黄連・甘草・桔梗・柴胡・山梔子・蒼朮・厚朴・大棗・人参・半夏・茯苓・木通
肛門潰瘍抑制作用 升麻
肝障害予防・
改善作用
インチンコウ・オウゴン・何首烏・柴胡・五味子・山梔子・沢瀉
利胆作用 インチンコウ・オウゴン・葛根・山梔子・五味子・センブリ・熊胆
胆石溶解作用 熊胆・連銭草

内分泌・代謝系に対する作用

蛋白質生合成促進
作用
黄耆・人参
脂質代謝改善・高脂
血症改善作用
黄連・何首烏・枸杞子・柴胡・山梔子・蘇木・沢瀉・猪苓・人参・忍冬・木通
動脈硬化予防・改善
作用
オウゴン・黄連・何首烏・枸杞子・山梔子・沢瀉・人参
血糖降下作用 桔梗・山茱萸・地黄・知母・人参・麦門冬・茯苓・牡丹皮・麻子仁
脂肪分解阻害作用 桂皮・山茱萸・茶・牡丹皮
ステロイドホルモン
様作用及び
増強作用
甘草・杏仁・柴胡・山薬・人参・附子
BUN低下作用 芍薬・大黄・麻黄
電解質代謝促進
作用
蒼朮・沢瀉・猪苓

泌尿器・生殖器系に対する作用

利尿作用 黄耆・桂皮・十薬・石膏・蒼朮・沢瀉・猪苓・白朮・茯苓・木通
子宮筋収縮作用 牛蒡子・丁字・当帰・益母草
性ホルモン様作用
及び増強作用
甘草・杏仁・山薬・人参

抗炎症・抗アレルギー作用

抗炎症作用 インチンコウ・オウゴン・黄柏・黄連・甘草・桔梗・荊芥・桂皮・紅花・厚朴
柴胡・紫根・芍薬・升麻・前胡・大黄・桃仁枇・杷葉・防已・防風・牡丹皮・木通
抗アレルギー作用 黄耆・オウゴン・甘草・枳実・桂皮・厚朴・牛膝・柴胡・細辛・辛夷・大棗・陳皮・当帰・麻黄・竜胆・連翹
免疫系に対する作用
免疫賦活作用 黄連・艾葉・瓜呂仁・紅花・山茱萸・紫根・芍薬・蘇葉・トウガシ・当帰・人参・半夏・茯苓・牡蛎・牡丹皮
免疫抑制作用 升麻・防已
補体活性化作用 艾葉・紫根・センキュウ
インターフェロン
誘起作用
黄耆・遠志・艾葉・瓜呂根・瓜呂仁・羌活・苦参・紅花・呉茱萸・柴胡・紫根・車前子・升麻・センキュウ・蝉退・桑白皮・蘇葉・大黄・天麻・天門冬・冬瓜子・当帰・半夏・ビャクシ・白朮・防已

抗腫瘍・突然変異抑制作用

抗腫瘍作用 紅花・紫根・冬瓜子・山椒・当帰・ヨクイニン・センキュウ・竹ジョ
突然変異抑制作用 甘草・大黄・茶

プロスタグランディン代謝に対する作用

プロスタグランディン
生合成阻害作用
オウゴン・乾姜・桂皮・香附子・厚朴・紫根・縮砂・生姜・川骨・牡丹皮・麻黄・人参・良姜

環状ヌクレオチドに対する作用

cyclicAMP値上昇
作用
阿仙薬・遠志・甘草・桔梗・荊芥・柴胡・細辛・山椒・大黄・大棗・竹ジョ・知母・陳皮・連翹
cyclicGMP値上昇
作用
黄柏・檳榔子
抗菌・抗ウイルス作用
抗菌作用 インチンコウ・黄柏・黄連・桂皮・厚朴・紫根・芍薬・蒼朮・蘇葉・大黄・丁字
牡丹皮・木香・連翹
抗ウイルス作用 丁字・牡丹皮

その他の作用

強壮・疲労回復
促進作用
黄耆・人参
細胞寿命延長作用 人参
放射線障害回復
促進作用
人参
腎透析時の愁訴
改善
桃仁
月経困難症改善 牡丹皮
抗浮腫作用 紫根・前胡
皮膚温上昇作用 センキュウ

【参考図書】生薬ハンドブック 津村順天堂 学術部

漢方家に限らず医療に携わる人なら、より良い治療を求めて日々努力を怠ることはないだろう。学習と現場での実践を経て磨かれていくのである。教科書の分類のようにはいかない混沌とした現実の壁を乗り越える事こそ学習の意義である。漢方界の重鎮と言われる先生の講演会には努めて出席した。そこで聞くことが出来たのは漢方薬の理論や臨床応用であるのはもちろんだが、話の端々に飛び出す先生の貴重な経験則であった。「この病気は、このような事が考えられるので○○湯と△△湯を合方し、さらに□○という生薬を2倍量配合する。」といった具合である。先生の著書には決して書かれていない「いい話」が聞けた。しばらくは、来る人、来る人が同じ薬方の証に見えたりして、使う薬方も偏ってくる場合がある。先生の「いい話」が有効という確信に変わり、プラシーボ効果を発揮するのだろう。薬方が師匠の思い込み処方でも一向に構わないのである。師匠を中心に○○流などと名のつく漢方学習会が幾つもある。驚いたのは陰陽の分類が全く逆の流派のある事だった。例えば附子は熱薬とされているが、これを寒薬と言う。大した根拠はなく寒証に使うから寒薬と言うのだ。流派をなす為には奇想天外な理屈も必要不可欠なのであろう。こうして独自の勉強会で独自の治療理論を学んでゆくのは治癒率を上げる「心のトレーニング」の一翼を担っている。そこでの先生(師匠)の経験則を端的に表現したものを、昔から「口訣」として重宝がられた。

口訣を辞書で調べると「文書に記さず、口で言い伝える秘伝。口伝・クデン。口義・クギ」とある。なるほどいつの時代にも秘伝はありがたいものなのだ。それは治療家と患者双方の期待効果を高めずにはおかない。あまりにも有名な口訣集に明治初期に書かれた浅田宗伯の「勿誤薬室方函口訣」と言うのがある。文書になっているので、もはや口訣と呼ぶのが正しいのかどうか迷うところである。

他に有名なもので江戸時代初頭・曲直瀬道三の「衆方規矩」がある。まさに実践の書で難しい理論など書かれていない。病気別に分類され、その項目を開くと、運用のポイントと様々な症状に対応する生薬の加減方が記されている。現在の雑誌や一般向け漢方図書、あるいはテレビドクターの語り口に似ている。一般向けとは言え運用の勘所が記され、一応淘汰されてきた処方には違いない。素人がこれを見て「○○湯を下さい」と漢方薬屋を訪れる。これを素人判断だとして。「それでは治らない△△湯がよい」と、専門家の誇りを見せ付ける。にもかかわらずなかなか治らない。ついに○○湯に辿り着く。そしてこれが見事な効果を発揮するという経験は何回もある。専門家として素人判断を笑えるほどの能力があるのだろうか?また予測のつかない癒しの現場で素人判断を排除してよいのか?漢方薬で治らないものが、薬草茶で治ったり、養命酒で治ったり、甚だしきは、どこかの神社の御札で治ったりすることだって大いにあり得る。再び、「当たるも八卦」の言葉の根拠である。

参考のため、雑誌などでよく出てくる病名・症状と漢方薬の薬方を紹介したい。「実」とは体質・体力の強い傾向を指す場合もあれば、病気の勢いを指す場合もある。「虚」については逆である。曖昧な感じはするが、強い←→弱い。強壮←→虚弱。著しく常識から外れない限り、対立項として判断していただいて構わない。「間」というのは判断に迷ったり、どちらとも言えない中間の状態である。「繁用」はまさによく用いられるもので、証など気にせず使ってもそれほど危険もなく、「当たるも八卦」の処方と思われるものである。(中医関連の処方は入手がやや困難なため除外)

 

高血圧・動脈硬化

三黄瀉心湯・防風通聖散・柴胡加竜骨牡蛎湯
黄連解毒湯・釣藤散・七物降下湯・桂枝茯苓丸・温清飲
八味地黄丸・当帰芍薬散・真武湯
繁用 黄連解毒湯・釣藤散・七物降下湯

心臓神経症・動悸

木防已湯・柴胡加竜骨牡蛎湯・大柴胡湯
炙甘草湯・冠心二号方・加味逍遥散
桂枝加竜骨牡蛎湯・半夏厚朴湯
繁用 炙甘草湯・冠心二号方

感冒・風邪

葛根湯・麻黄湯
桂枝麻黄各半湯・小青竜湯・柴胡桂枝湯・香蘇散・参蘇飲・銀翹散
桂枝湯・五積散・補中益気湯・麻黄附子細辛湯
繁用 参蘇飲・柴胡桂枝湯・補中益気湯

気管支炎

麻杏甘石湯・神秘湯
小青竜湯・柴朴湯・桂麻各半湯・柴胡桂枝湯
麦門冬湯・苓甘姜味辛夏仁湯・竹葉石膏湯・麻黄附子細辛湯
繁用 柴朴湯・小青竜湯・麦門冬湯

急性・慢性胃炎

清熱解鬱湯・大柴胡湯
半夏瀉心湯・平胃散・四逆散・柴胡桂枝湯
安中散・六君子湯・小建中湯・人参湯
繁用 半夏瀉心湯・安中散・柴胡桂枝湯

胃下垂・胃アトニー症

 
平胃散
安中散・半夏瀉心湯・六君子湯・人参湯・茯苓飲
繁用 安中散・半夏瀉心湯・六君子湯

急性・慢性腸炎

大柴胡湯・桂枝加芍薬大黄湯・葛根湯
五苓散・柴苓湯・胃苓湯
半夏瀉心湯・生姜瀉心湯・小建中湯・人参湯・真武湯・啓脾湯
繁用 五苓散・半夏瀉心湯・真武湯

慢性肝炎

大柴胡湯・茵陳蒿湯
柴胡桂枝湯・加味逍遥散・茵陳五苓散・四逆散・桂枝茯苓丸
補中益気湯・十全大補湯・四物湯
繁用 加味逍遥散

腹痛

大柴胡湯・桂枝加芍薬大黄湯
柴胡桂枝湯・芍薬甘草湯
小建中湯・桂枝加芍薬湯・半夏瀉心湯・安中散
繁用 柴胡桂枝湯・桂枝加芍薬湯

便秘

大柴胡湯・防風通聖散・調胃承気湯
麻子仁丸・加味逍遥散・大黄甘草湯
潤腸湯・八味丸・小建中湯
繁用 麻子仁丸

糖尿病

白虎加人参湯・防風通聖散
柴胡桂枝乾姜湯・五苓散
八味地黄丸・竹葉石膏湯・麦門冬飲子
繁用 八味地黄丸

肥満症

防風通聖散・大柴胡湯・桃核承気湯
桂枝茯苓丸
防已黄耆湯
繁用 防風通聖散

ネフローゼ症候群・腎炎

大柴胡湯・分消湯・茵陳蒿湯
柴胡桂枝湯。柴苓湯・越婢加朮湯・小青竜湯・五苓散・猪苓湯
柴胡桂枝乾姜湯・防已黄耆湯・当帰芍薬散・八味地黄丸・真武湯
繁用 柴苓湯・八味地黄丸
頭痛・偏頭痛
葛根湯・桃核承気湯
五苓散・釣藤散・加味逍遥散・苓桂朮甘湯
桂枝人参湯・呉茱萸湯・半夏白朮天麻湯
繁用 五苓散・呉茱萸湯
腰痛
桃核承気湯
桂枝茯苓丸・芍薬甘草湯・疎経活血湯
五積散・当帰芍薬散・八味地黄丸・桂枝加朮附湯
繁用 桂枝茯苓丸・八味地黄丸

肩関節炎

葛根湯・大柴胡湯
ニ朮湯・桂枝茯苓丸・四逆散・加味逍遥散
桂枝加朮附湯・五積散
繁用 加味逍遥散・桂枝茯苓丸
打撲症
通導散・桃核承気湯・三黄瀉心湯
桂枝茯苓丸・治打撲一方・黄連解毒湯
 
繁用 桂枝茯苓丸
貧血
   
苓桂朮甘湯
十全大補湯・当帰芍薬散・加味帰脾湯・弓帰膠艾湯・連珠飲
繁用 十全大補湯
不眠症
柴胡加竜骨牡蛎湯・三黄瀉心湯
黄連解毒湯・抑肝散・加味逍遥散
酸棗仁湯・桂枝加竜骨牡蛎湯・甘草瀉心湯・加味帰脾湯・竹ジョ温胆湯
繁用 抑肝散・加味逍遥散・黄連解毒湯
自律神経失調症
柴胡加竜骨牡蛎湯
加味逍遥散・抑肝散
桂枝加竜骨牡蛎湯
繁用 加味逍遥散
大柴胡湯・麻杏甘石湯・三黄瀉心湯・大黄牡丹皮湯
乙字湯・黄連解毒湯・桂枝茯苓丸
小建中湯・弓帰膠艾湯・補中益気湯・当帰芍薬散
繁用 乙字湯
更年期障害・血の道症
柴胡加竜骨牡蛎湯・桃核承気湯・通導散
加味逍遥・桂枝茯苓丸・折衝飲・女神散・弓帰調血飲・柴胡桂枝湯・抑肝散・半夏厚朴湯
当帰芍薬散・温経湯・桂枝加竜骨牡蛎湯・八味地黄丸
繁用 加味逍遥散・桂枝茯苓丸
尿道炎・膀胱炎
竜胆瀉肝湯
猪苓湯・五淋散・清心蓮子飲・五苓散
八味地黄丸・当帰芍薬散
繁用 猪苓湯
老人性白内障
 
六味地黄丸・杞菊地黄丸
八味地黄丸・牛車腎気丸
繁用 八味地黄丸
仮性近視
大柴胡湯
柴胡桂枝湯・五苓散・苓桂朮甘湯
柴胡桂枝乾姜湯・小建中湯
繁用 苓桂朮甘湯
急性・慢性副鼻腔炎
葛根湯加川弓辛夷・防風通聖散・辛夷清肺湯
荊芥連翹湯・柴胡桂枝湯・四逆散・排膿散及湯
十全大補湯・半夏白朮天麻湯
繁用 葛根湯加川弓辛夷

アレルギー性鼻炎

葛根湯
小青竜湯
苓甘姜味辛夏仁湯・麻黄附子細辛湯
繁用 小青竜湯

扁桃腺炎・咽頭炎

葛根湯加桔梗石膏
小柴胡湯加桔梗石膏・銀翹散・駆風解毒湯・荊芥連翹湯・柴胡清肝湯・排膿散・桔梗湯
麦門冬湯加桔梗石膏・麻黄附子細辛湯
繁用 駆風解毒湯

湿疹・皮膚病

消風散・葛根湯・防風通聖散・茵陳蒿湯・越婢加朮湯・大柴胡湯・白虎加人参湯
十味敗毒湯・清上防風湯・荊芥連翹湯・温清飲・加味逍遥散・柴胡清肝散・茵陳五苓散
桂枝加黄耆湯・補中益気湯・当帰飲子・香蘇散・真武湯
繁用 十味敗毒湯

不安神経症

柴胡加竜骨牡蛎湯・三黄瀉心湯・桃核承気湯
加味逍遥散・抑肝散・黄連解毒湯・半夏厚朴湯・甘草瀉心湯・柴胡桂枝乾姜湯
甘麦大棗湯・桂枝加竜骨牡蛎湯・香蘇散・加味帰脾湯
繁用 加味逍遥散・抑肝散
小児虚弱体質
 
六味地黄丸
小建中湯
繁用 小建中湯

【参考図書】漢方処方類方鑑別便覧 藤平 健
       病気別・症状別 漢方処方 矢数道明 矢数圭道

正統な漢方の学習に失敗・挫折した無能な漢方屋の遠吠えにすぎないが、漫談風「当たるも八卦・八割漢方」の意図するところは大仰なことではない。深く考えてみたり、細かく分類してみたり、教科書や古典を紐解いたりして選んだ薬方より、素人判断の漢方薬が効くこともあるという話なのだ。漢方は素人と専門家を分かつべき境界の不明瞭な分野と言えるかも知れない。職人技にも例えられる診断方法を今のまま踏襲し続けて行くのだろうか?薬屋が店舗にベットを用意し腹診・脈診を試みる。血圧計を備え、まるで医師の診断さながらに演出してみせる。このような診断が果たして確かなものと言えるのであろうか?そしてこの診断に基づく漢方薬の運用が西洋医学を凌ぐと言えるだろうか?検査や画像のデーターを積み上げてなされる西洋医学の診断でさえ誤りや不明は多いのだ。治療家の恣意が強く左右する診断なら、素人の当たるも八卦の漢方を笑えない。薬局で漢方をやっていると、一体どれくらい効果をあげているのか疑問が芽生えてくる。「良かった」とのお客様の言葉が「悪くはなかった」という意味の反語ならば、それは「やや有効」などと言えるものではない。しかも殆どがこのように、お客様の言葉を頼りの仕事である。何を以って効いたのか、何を根拠に治癒を判定するのかという悩みは、漢方を続ける限り逃れる事は出来ない。
 

 

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