【生薬メモ(1)】


繁用生薬30種のメモを作成後、さらに国内の漢方エキス製剤(医療用、一般用)に配合されている生薬(100余種)を網羅できれば便利だろうと思い、まとめて見ました。薬効分類や薬性、効能は簡潔な中医の表現で統一しています。病院で処方された漢方薬や一般薬などに配合された生薬から薬効を知る手がかりになれば幸いです。

【ア〜オ】 阿膠(アキョウ) 威霊仙(イレイセン) 茵陳蒿(インチンコウ) 茴香(ウイキョウ)
  延胡索(エンゴサク) 黄耆(オウギ)詳解 黄今(オウゴン) 黄柏(オウバク)詳解
  黄連(オウレン)詳解 遠志(オンジ)    
【カ〜コ】 艾葉(ガイヨウ) 何首烏(カシュウ) 葛根(カッコン)詳解 滑石(カッセキ)
  瓜楼根(カロコン) 瓜楼仁(カロニン) 乾姜(カンキョウ) 甘草(カンゾウ)詳解
  桔梗(キキョウ) 枳実(キジツ) 菊花(キクカ) 羌活(キョウカツ)
  杏仁(キョウニン)詳解 苦参(クジン) 荊芥(ケイガイ) 桂皮(ケイヒ)詳解
  膠飴(コウイ) 紅花(コウカ)詳解 香附子(コウブシ)詳解 粳米(コウベイ)
  厚朴(コウボク) 牛膝(ゴシツ) 呉茱萸(ゴシュユウ) 牛蒡子(ゴボウシ)
  胡麻(ゴマ) 五味子(ゴミシ)    
【サ〜ソ】 柴胡(サイコ)詳解 細辛(サイシン) 山査子(サンザシ) 山梔子(サンシシ)詳解
  山茱萸(サンシュユ) 山椒(サンショウ 酸棗仁(サンソウニン) 山薬(サンヤク)
  地黄(ジオウ)詳解 地骨皮(ジコッピ) 紫根(シコン) 疾藜子(シツリシ)
  芍薬(シャクヤク)詳解 車前子(シャゼンシ) 縮砂(シュクシャ) 生姜(ショウキョウ)詳解
  小麦(ショウバク) 升麻(ショウマ) 辛夷(シンイ) 石膏(セッコウ)詳解
  川弓(センキュウ)詳解 前胡(ゼンコ) 川骨(センコツ) 蝉退(ゼンタイ)
  蒼朮(ソウジュツ) 桑白皮(ソウハクヒ) 蘇木(ソボク) 蘇葉(ソヨウ)
【タ〜ト】 大黄(ダイオウ)詳解 大棗(タイソウ)詳解 沢瀉(タクシャ) 竹如(チクジョ)
  知母(チモ) 茶葉(チャヨウ) 丁子(チョウジ) 釣藤鈎(チョウトウコウ)
  猪苓(チョレイ) 陳皮(チンピ)詳解 天南星(テンナンショウ) 天麻(テンマ)
  天門冬(テンモンドウ) 冬瓜子(トウガシ) 当帰(トウキ)詳解 桃仁(トウニン)詳解
  杜仲(トチュウ) 独活(ドッカツ)    
【ナ〜ノ】 人参(ニンジン)詳解 忍冬(ニンドウ)    
【ハ〜ホ】 貝母(バイモ) 麦芽(バクガ) 麦門冬(バクモントウ) 薄荷(ハッカ)
  浜防風(ハマボウフウ) 半夏(ハンゲ)詳解 百合(ビャクゴウ) 白止(ビャクシ)
  白朮(ビャクジュツ)詳解 枇杷葉(ビワヨウ) 檳榔子(ビンロウジ) 茯苓(ブクリョウ)詳解
  附子(ブシ)詳解 防已(ボウイ) 芒硝(ボウショウ) 防風(ボウフウ)
  牡丹皮(ボタンピ)詳解 牡蠣(ボレイ)詳解    
【マ〜モ】 麻黄(マオウ)詳解 麻子仁(マシニン) 木通(モクツウ) 木香(モッコウ)
【ヤ〜ヨ】 意苡仁(ヨクイニン)詳解      
【ラ〜ロ】 竜眼肉(リュウガンニク) 竜骨(リュウコツ) 竜胆(リュウタン) 良姜(リョウキョウ)
  連翹(レンギョウ) 蓮肉(レンニク)    
         
  ※生薬写真は生薬・INDEXから閲覧してください。

【ア〜オ】

阿膠(アキョウ)

基 原 ロバ
部 位 毛を去った皮、骨、腱、靭帯を水で加熱抽出し、脂肪を去り濃縮乾燥したもの
成 分 コラーゲン、ゼラチン
薬 効 補陽薬
薬 理 甘、平、補血滋陰、潤燥、止血

補血:肝血虚で顏色や皮膚につやがない・目がかすむ・頭のふらつき・四肢のしびれ感・
筋肉のひきつり/滋陰潤燥:滋膩の性質を持ち補血と同時に体液を滋潤するので陰虚に
広く用いる/滋補肝腎:熱病後の傷陰による肝腎陰虚で頬の紅潮・身体の熱感・手のひら
や足のうらのほてり・口乾・腰や膝がだるく無力・盗汗・午後の潮熱。陰虚・血虚のため
脳や筋肉の滋養ができず、肝風により起こる筋肉痙攣・ひきつり・めまい・ふらつき/滋陰
潤肺:肺陰虚の慢性の乾咳・無痰〜少痰・切れにくい粘痰・血痰・身体の熱感・手足のほ
てり・盗汗・咽の乾燥。心気陰両虚の脈の結代・動悸・息切れ・疲労倦怠・身体の熱感・
口乾。陰虚で炎症性の水分排出障害による脱水・発熱・口渇・多飲・尿濃・排尿痛・血尿・
下痢/止血:強い止血作用を持つので出血全般に広く用いる/潤腸通便:腸燥便秘を潤す/
柔肝:肝気虚・肝陽虚の肝血・肝陰を滋補/補腎益精:腎精不足を補う

煎じるとこびり付くので、出来上がった煎液に溶解して服用。膩性が高く消化されにくいので
脾胃気虚に用いない。実熱の出血・血於の出血には邪を留めるので早期から用いない

解 説 一般にはニカワとして接着剤に使われるが漢方では止血を目的に用いる。精製したものは
ゼラチンとして菓子などに用いる。
処 方 温経湯、弓帰膠艾湯、炙甘草湯、猪苓湯

 

威霊仙(イレイセン)

基 原 サキシマボタンズル
部 位 根及び根茎
成 分 アネモニン
薬 効 去風湿薬
薬 理 辛、鹹、温、去風除湿、通絡止痛

去風湿・通絡・止痛:辛散・温通により12経脈を通利し、裏湿を除き止痛する。血行改善・
組織間の水分除去・関節痛・しびれなど痺証の鎮痛・運動障害・浮腫/消痰逐飲:裏湿の
痰飲停滞による呼吸困難・多痰・嘔吐/行気化滞:気滞血於の月経痛・腹痛

魚骨を軟化させるので、魚骨が咽や食道に刺さったとき、15〜30gを煎じた液をゆっくり
数回に分けて飲み下す

解 説 類似植物にはカザグルマ、テッセンなどがあり、神経痛、リウマチなどの鎮痛に用いる。
処 方 疎経活血湯、二朮湯

 

茵陳蒿(インチンコウ)

基 原 カワラヨモギ
部 位 花穂
成 分 カピラリシン、エスクレチン、ジメチルエーテル、カピリン
薬 効 利水滲湿薬
薬 理 苦、辛、微寒、清湿熱、退黄疸

清熱化湿・退黄:脾胃肝胆の気分に入って清熱する。黄疸の専薬とも言われる。消炎・炎症性
滲出物の抑制・解熱と利胆作用により、湿熱の黄疸・発熱・熱感・悪心・口の粘り・腹満・尿濃
・頭汗。肝胆湿熱のいらいら・怒りっぽい・胸脇苦満・口苦。脾胃湿熱の腹満・泥状〜水様便・
浮腫/清熱化湿:湿熱全般に用いる。湿温初期の発熱・頭重・身体が重い・胸苦・悪心・尿濃。
湿熱痺の関節痛・発赤・熱感・浮腫。胃湿熱の歯茎の腫脹・疼痛・口内炎/疎肝:軽度の疎肝
作用があり柴胡が使用できない陰虚の肝鬱に代用される

解 説 各地の川原などに生育し、利胆作用があるので漢方では黄疸の聖薬として用いる。
処 方 茵陳蒿湯、茵陳五苓散

 

茴香(ウイキョウ)

基 原 ウイキョウ
部 位 果実
成 分 アネトール
薬 効 温裏去寒薬
薬 理 辛、温、散寒止痛、理気和胃

散寒止痛:辛温芳香性で、腹中を温補し血行促進・鎮痛する。軽度の疎肝理気の作用があり
肝経の寒証に用いる/温腎散寒:腎陽虚の冷えに補腎薬を助ける/理気和胃:芳香性健胃薬
として食欲増進・蠕動促進。胃寒の悪心・嘔吐・胃部の冷え・胃痛

解 説 フェンネルという香辛料で全草を利用する。アネトールは寄生虫アニサキスを駆除する。
処 方 安中散

 

  延胡索(エンゴサク)

基 原  
部 位 塊茎
成 分 コリダリン、テトラヒドロパルマチン
薬 効 理血薬
薬 理 辛、苦、温、活血、利気、止痛

活血・理気・止痛:辛散・苦降・温通に働き血中の気滞や気中の血滞を巡らせる。気滞血於
の疼痛を緩和するので様々な疼痛に用いる。月経痛・肝気鬱結の胸脇痛・胸痛・胃痛・寒疝・
血於の固定痛・打撲の疼痛などに確実な鎮痛効果を示す。血於による腹中の腫塊。肝気鬱
結の補助薬

粉末・アルコール抽出エキスのほうが効果的。妊婦・月経周期短縮には禁忌。
血熱・気虚には用いないほうがよい

解 説 塊茎を胃痛や月経痛に用いる。中国ではあらゆる痛みに用いる。ケシ科の植物
処 方 安中散、折衝飲

 

  黄今(オウゴン)

基 原 コガネバナ
部 位 周皮を除いた根
成 分 バイカリン、バイカレン、オウゴニン
薬 効 清熱薬
薬 理 苦、寒、清熱燥湿、瀉火解毒、止血、安胎

清熱燥湿:消炎・解熱・抗菌・鎮静・利尿作用があり、滲出性炎症を抑制するため湿熱全般に
広く用い、とくに大小腸・脾・胆に適する。湿熱の発熱・胸苦・頭痛・身重・腹満・尿濃・下痢。
大腸湿熱の腹痛・悪臭ある下痢・テネスムス。膀胱湿熱の排尿痛・頻尿・残尿感・尿混濁。
肝胆湿熱の胸脇苦満・往来寒熱・口苦・いらいら・怒りっぽい・黄疸。脾胃湿熱の悪心・嘔吐・
胸腹が張って苦しい・口の粘り・口乾・食欲不振・下痢/清熱瀉火・解毒・涼血:消炎・鎮静の
効果があり、とくに肺熱に適する。肺熱の咳嗽・呼吸促白・黄痰〜粘痰・咽痛・胸痛・鼻炎。
肝胆実火の頭痛・いらいら・怒りっぽい・めまい感・耳鳴・突発性難聴・胸脇苦満・口苦。
心肝火旺のいらいら・怒りっぽい・不眠・動悸・口内炎/清熱解毒:熱毒による高熱・意識障
害・うわごと・口渇・皮膚化膿症の発赤・疼痛/清熱涼血・止血:血熱妄行による鮮紅の出血
・発疹・皮下出血/清熱安胎:流産防止の効果/和解半表半裏:少陽胆経の清熱に働き往来
寒熱・発熱・口苦・胸脇苦満・悪心/調和脾胃:清熱・消痞の効能があり、脾胃不和の悪心・
嘔吐・上腹部の痞え・腹痛・腹鳴・下痢

苦寒性のため実熱以外には用いない。黄連と効能が似ているが黄連は心・胃に、黄今は
胆・肺に働き、黄連が清熱燥湿の効果が強い

解 説 清熱燥湿薬の代表で、熱性疾患に広く応用される。
処 方 黄連解毒湯、小柴胡湯、半夏瀉心湯

 

  遠志(オンジ)

基 原 イトヒメハギ
部 位
成 分 オンジサポニン
薬 効 安神薬
薬 理 苦、辛、温、安神益智、去痰、消腫

安神:心陽と通じ心腎を交通させ安神に働く。心血虚・心陰虚で眠りが浅い・多夢・よく目が
覚める・動悸・不安感/去痰:痰濁を除く。悪心性去痰薬で気道の分泌を高め喀痰を排出し
やすくする/消癰:皮膚化膿症に外用する

ときに悪心・嘔吐を催すので多量に用いない

解 説 イトヒメハギといい萩に似た花である。去痰や精神安定作用があり、健忘症などにも
用いられる。
処 方 加味帰脾湯、人参養栄湯

 


【カ〜コ】

  艾葉(ガイヨウ)

基 原 ヨモギ
部 位 全草
成 分 シネオール、カフェータンイン
薬 効 理血薬
薬 理 苦、辛、温、温経止血、散寒止痛・安胎

温経止血:温性の止血薬で三陰経に入って経脈を温通する。虚寒の出血に適し切迫流産に
も有効。鼻出血・吐血・下血・顔面蒼白・元気がない・不正性器出血・月経過多。虚寒の出血
だけでなく種々の出血に用いる/散寒止痛:下焦を温めるので、虚寒の月経痛・下腹部の冷え
・月経の遅れ・姙娠中の冷え・腹痛

血熱・陰虚の出血には単独で用いない。大量で悪心・嘔吐をひきおこすことがある

解 説 草餅やもぐさの原料になり、民間薬で有名な生薬である。止血作用に優れ安胎薬とし
ても用いられる。
処 方 弓帰膠艾湯

 

  何首烏(カシュウ)

基 原 ツルドクダミ
部 位 塊根
成 分 アントラキノン
薬 効 補陽薬
薬 理 苦、寒、温、解毒、消癰、潤腸通便、補肝腎、益精血、烏須髪、強筋骨

補肝腎・益精補血:微温で燥性はなく、滋陰・補血するが膩性はなく消化されやすいので
肝腎を平補するのに最も適する。長期服用で弊害もなく緩徐に補益するので中国では老人
の強壮薬として珍重される。肝腎不足の頭のふらつき・目のかすみ・腰膝のだるさや無力・
記銘力減退・白髪・脱毛・遺精・滑精・早漏・インポテンツ・帯下・不妊。血虚生風のかゆみ・
皮膚の萎縮や皹裂・落屑/腸燥便秘:腸管を滋潤し排便を促す/解毒:皮膚化膿症

鉄器で煎じてはならない

解 説 中国で不良長寿の薬として用いられる。強壮、強精、補血薬として、潤腸、瀉下、
消炎作用もある。毛生え薬としても有名。
処 方 当帰飲子

 

  滑石(カッセキ)

基 原 天然の含水ケイ酸アルミニウム及び二酸化ケイ素
部 位 鉱物
成 分 加水ハロサイト
薬 効 利水滲湿薬
薬 理 甘、痰、寒、利尿通淋、清熱解暑、去湿斂瘡

利水清熱:消化管内の水分を血中に吸収・利尿し水様便を改善する。利水とともに消炎・
解熱作用があり尿路系の炎症・排尿痛・排尿困難を改善する。珪酸マグネシウムを含有
するので吸着・収斂し腸管を保護・止瀉する/清熱通淋:膀胱湿熱の排尿痛・排尿困難・
残尿感・尿混濁・血尿/石淋:尿路系結石による排尿困難/利水止瀉:大腸湿熱の水様便・
腹痛・テネスムス/清熱解暑:暑熱の高熱・熱感・口渇・発汗・下痢・尿量減や湿温の発熱・
頭痛・頭重・身体が重い・悪心・嘔吐・腹満・下痢・濃尿・口渇/去湿斂瘡:湿疹や滲出物の
多い炎症に外用

寒証・脾胃気虚には用いない

解 説 古代の勾玉や管玉に利用されていた。化粧品に使われるタルクである。膀胱炎など
に用いる。
処 方 五淋散、猪苓湯、防風通聖散

 

  瓜楼根(カロコン)

基 原 キカラスウリ、オオカラスウリ
部 位 皮層を除いた根
成 分 デンプン、トリコサン酸
薬 効 化痰止咳薬
薬 理 甘、微苦。微寒、清熱生津、消腫排膿

清熱生津・止渇:寒性で消炎するとともに津液を補い口渇をとめる。熱病の高熱・口渇・水分
を欲する・皮膚乾燥・発汗や瀉下による傷津/清熱潤肺:肺を滋潤し痰を溶解し喀出しやすく
する。肺熱の燥嗽・乾咳・少痰〜粘痰・発熱・咽の乾燥・口渇/清熱養胃:胃陰を滋潤し胃気
を通降する。胃陰虚や胃熱傷津の口渇・水分を欲する・飢餓感・上腹部灼熱感・胸焼け・
乾嘔/排膿消腫:皮膚化膿症・乳腺炎など、化膿して排膿がないものや膿が濃い場合

湿証・脾胃気虚には用いない

解 説 別名を天花粉という。あせもの予防や化粧品に用いられたが、最近では前述した
タルク(滑石)が使われる。
処 方 柴胡桂枝乾姜湯、柴胡清肝散

 

瓜楼仁(カロニン)

基 原 キカラスウリ、オオカラスウリ
部 位 種子
成 分 オレイン酸、リノール酸、リノレン酸
薬 効 化痰止咳薬
薬 理 甘、寒、清熱化痰、潤肺、散結消癰、潤腸通便

清熱化痰・潤肺・寛胸:甘寒滑潤で肺熱を消炎し、痰を希釈し喀出しやすくする。熱痰の咳嗽
・黄色粘稠痰・胸痛・胸内苦満・咽痛・発熱や燥痰の乾咳・少痰〜粘痰・口渇/寛胸理気・
化痰:上焦の痰濁を化して胸陽を通じ胸痺を治す。狭心痛・胸苦・動悸・脈結代/散結消癰:
化膿を改善ししこりを除く。肺化膿症・乳腺炎・虫垂炎/潤腸通便:油脂成分により腸の滑りを
良くする。妊婦の便秘に適する

解 説 キカラスウリの花は夜咲いて朝しぼむ性質がある。実が赤いのはカラスウリ。消炎解熱、
鎮咳、去痰、鎮痛の作用がある。
処 方 柴陥湯

 

乾姜(カンキョウ)

基 原 生姜を蒸して乾燥
部 位 根茎
成 分 ジンゲロール、ショウガオール
薬 効 温裏去寒薬
薬 理 辛、温、補陽散寒、回陽救逆、温肺化痰

補陽散寒:補陽と散寒の効果を持つので陽虚にも実寒にも用いる。熱性が強いため寒証の
明らかな陽虚寒盛に適する。胃陽虚の反胃(食後時間が経過してから吐く)・上腹部痛・食べ
られない・悪心・嘔吐。脾胃陽虚の食欲不振・寒がり・腹部の冷えや鈍痛・四肢の冷え・泥〜
水様便・浮腫/散寒:大熱・大辛で腹中を強力に温め寒邪を駆逐する。臓腑の中寒で激しい
腹痛・腹の冷え・薄いつばやよだれ・頻回少量の下痢・便秘・腹鳴・蠕動亢進あるいは固縮
/回陽救逆:陽気を強く振奮させ身体を温め循環を良くしショック状態を改善する。
亡陽(ショック)による四肢の冷え・チアノーゼなどの循環不全/温肺化痰:肺中を温め痰の
生成を抑制するので肺の寒飲に適する。咳嗽・薄い水様痰・背部冷え/脾胃不和:胃気逆の
悪心・嘔吐・上腹部の痞え、脾気下降の腹痛・腹鳴・下痢に清熱薬と配合し脾胃を調和

熱証・陰虚には禁忌・妊婦には用いないほうがよい。胃に刺激性があるので甘草・大棗を
配合する。生姜は解表・止嘔に、乾姜は温中にすぐれる。附子は温腎に、乾姜は温脾に
重点的に用いる

解 説 インドが原産、ジンジャーエール、甘酒、寿司のつまなど世界中で使われている。
生を生姜というが、漢方では干し(乾燥)生姜を用い、乾姜とは区別される。
処 方 大建中湯、人参湯、半夏瀉心湯

 

桔梗(キキョウ)

基 原 キキョウ
部 位
成 分 ポリガラシン、プラチコジン
薬 効 化痰止咳薬
薬 理 苦、辛、平、宣肺、利咽、去痰、排膿

宣肺去痰・止咳:気道の分泌を促進し去痰し、気道の通過を良くして肺気を開く。刺激性の
去痰薬で悪心を催すので慢性疾患、喘息発作には用いない。少痰・乾咳・粘痰には適さず
表証にともなう咳嗽・多痰。急性の外寒病で痰が多いとき用いる。肺熱の咳嗽・咽痛・黄痰
・胸痛/利咽:炎症性の咽喉部の疼痛・嗄声/排膿:皮膚化膿症・肺膿瘍/提気:上昇の作用
があるため薬効を上部に運ぶ。脾気下降の泥〜水様便。陽気下陥の呼吸困難。熱証で清熱
薬の薬効を上部に引き上げる/開肺気:肺の宣散を強め、利水薬との配合で利尿を促す/
肺虚の止咳去痰:一般に慢性の咳嗽や喘息には用いないが、肺虚・肺陰虚の慢性咳嗽に
大量の補益薬と伴に用いる

胃粘膜に刺激性があるので、胃炎・胃潰瘍・吐血があるものに用いない

解 説 秋の七草のひとつ、多量のサポニンを含有し去痰作用に優れている。
処 方 桔梗湯、十味敗毒湯、清上防風湯

 

枳実(キジツ)

基 原 ダイダイ、ナツミカン
部 位 未熟果実

未熟果実が枳実で成熟果実が枳殻。同様の効果を持つが、枳実が効果が強く破気に
働き、枳殻は作用が緩やかなため虚証にも用いられ用途が広い

成 分 ヘスペリジン、ナリンギン
薬 効 理気薬
薬 理 苦、辛、酸、温、破気、消積、化痰散痞

破気消積:降気を司り、気滞を破り積滞を除き、痞塞を解消し湿痰を行らす。胃腸の蠕動運動
を活発にし気滞による痞え・腹満・腹痛・便秘を改善する。気道・胆道などの痙攣・ジスキネジー
を緩和する。食滞・湿熱による腹満・腹痛・噫気・胸苦しい・上腹部の痞え・便秘・下痢後すっき
りしない症状。熱結の腹満・腹痛・上腹部の痞え・便秘・悪臭を伴う下痢・高熱・発汗。大腸
湿熱の下痢・腹痛・テネスムス。寒凝気滞の腹満・痞え・腹痛。気滞血於の疼痛/破気瀉痰:
平滑筋の緊張・痙攣を緩解し管腔の通過を良くする。去痰・溜飲の除去を助ける。胃の溜飲
で上腹部膨満・水様物の嘔吐・胃部の痞え・振水音。胸痺の胸痛・胸苦・動悸。痰濁上擾の
めまい・悪心・嘔吐・不眠・多痰。熱痰の咳嗽・喀出しにくい痰/理気:肝気鬱結の憂鬱・抑うつ
感・いらいら・胸脇苦満・便秘/排膿:皮膚化膿症

妊婦に禁忌。作用が強いので気虚・陽虚には用いない。破気効果を目的とする以外は炒った
ものを用いたほうがよい

解 説 ダイダイは正月の飾りに用いられる。その香りによって気の流れを改善する作用がある。
処 方 大承気湯、茯苓飲、麻子仁丸

 

菊花(キクカ)

基 原 キク、シマカンギク
部 位 頭花
主成分 クリサンテミン
薬 効 解表薬
薬 理 甘、苦、微寒、散風清熱、平肝明目、清熱解毒

疎散風熱:消炎・解熱作用にすぐれ発散作用はやや弱い。表熱の発熱・軽度の悪寒又は熱感
・頭痛・目の充血・咽痛・咳嗽/明目:黄菊花は疏散風熱・明目で風熱による充血・眼痛。
白菊花は養肝明目で肝陰虚の視力減退・目のかすみ・目の乾燥・頭のふらつき/平肝潜陽・
熄風:甘涼で益陰し、ふらつき・めまい・頭痛・のぼせを治す。肝陽上亢・化風による頭のふら
つき・目がくらむ・頭痛・手足のふるえ・筋肉痙攣/軽度な清熱解毒作用がある

解 説 鑑賞用に日本で最も多く栽培される。解熱鎮痛作用があるので風邪や頭痛に、
明目作用があるので目の充血、疲労に用いる。
処 方 釣藤散

 

羌活(キョウカツ)

基  原  
部 位 根茎、根
成 分 プレグネノロン、精油、クマリン誘導体
薬 効 解表薬
薬 理 辛、苦、温、散寒、去風、除湿、止痛

散寒解表:辛温で気味が強く、上昇して強い発散性がある。化湿・止痛作用もあるので寒湿
で強い疼痛を伴う表証に適する。表寒・表湿の頭痛・発熱・悪寒・身体痛/去風湿・止痛:
関節を通利して止痛するので痺証の常用薬とされる。羌活は上半身の痺証に、下半身は
独活が有効で、相乗効果があるため併用する。風湿痺・風寒湿痺の関節痛・痺れ・浮腫・
運動障害・顔面麻痺/止痛:頭痛・歯痛/去風化湿:風湿の皮疹で痒み・湿疹

臭い・味が濃厚なので用量が多いと嘔吐を引き起こすことがあるので、虚弱者には用いない

解 説 日本産のキョウカツはウド(独活)で別物。風邪や関節炎に用いる。
処 方 川弓茶調散、疎経活血湯、大防風湯

 

  苦参(クジン)

基 原 クララ
部 位 周皮を除いた根
成 分 マトリン、オキシマトリン
薬 効 清熱薬
薬 理 苦、寒、清熱燥湿、殺虫、利尿

清熱燥湿:苦寒で沈降下行し小便を通利し下焦の湿熱を清する。湿熱の黄疸・帯下・産後の
子宮感染/去風殺虫:消炎・炎症性滲出の抑制・止痒・白鮮菌やトリコモナスの抑制の働きが
あるので痒みを伴う皮膚・粘膜の炎症に用いる。外用も可

解 説 マメ科の有毒植物でクラクラするほど苦いことが名前の由来。
処 方 三物黄今湯、消風散

 

  荊芥(ケイガイ)

基 原 ケイガイ
部 位 花穂
成 分 メントン、リモネン
薬 効 解表薬
薬 理 辛、微温、解表散風、透疹

去風解表:温性で燥性がないので風寒・風熱の両方に使用でき、麻黄ほど強力な発汗作用
がないので安全。表寒の悪寒・発熱・頭痛・身体痛や表熱による軽い悪寒あるいは熱感・
発熱・咽痛・頭痛・口乾に用いる/去風止痒・透疹:発散・止痒作用で風湿による痒みの強い
湿疹・じんましんや麻疹・風疹で発疹の透発が不十分なとき透疹を強める/去風熱・消瘡:
皮膚化膿症の初期の炎症を除く/止血:血便・鼻血・不正性器出血・月経過多など各種出血
に荊芥を黒くなるまで炒ったものを用いる

防風と併用することが多い。荊芥は防風より発汗力が強く、防風は去風止痛に優れている

解 説 シソ科の植物でハッカ、バジルなどのように香り成分に発汗作用がある。
処 方 荊芥連翹湯、防風通聖散

 

  膠飴(コウイ)

基 原 イネ科の粳米、小麦に麦芽を加え糖化させた飴
部 位
成 分 マルトース、デキストリン
薬 効 補陽薬
薬 理 甘、微温、補中緩痛、潤肺止咳

補中緩痛:脾胃を補い軽度の鎮痛作用をもつ。中気不足の寒痛で鈍痛があり温めると楽に
なる腹痛に用いる/潤肺止咳:肺を潤し咳を止める

甘味でもたれる性質があるため脹満を生じやすく、湿熱・悪心・嘔吐・腹満には用いない

解 説 建中湯類に滋養薬として配合され、痛みなど緩和する作用もある。
処 方 小建中湯、大建中湯、黄耆建中湯

 

  粳米(コウベイ)

基 原 イネ
部 位 玄米
成 分 デンプン、オリゼニン
薬 効 補陽薬
薬 理 甘、平、補中益気、健脾和胃、除煩渇、止瀉痢

補気健脾:著しい薬効はないが胃の保護として用いる。生薬としては古米を使う

解 説 白米に比べるとやや冷やす性質がある。
処薬 理方 麦門冬湯、白虎湯

 

  厚朴(コウボク)

基 原 ホウノキ
部 位 樹皮
成 分 マグノクラリン、マグノフロリン、マグノロール、オイデスモール
薬 効 芳香化湿薬
薬 理 苦、辛、温、燥湿消痰、下気除満

理気燥湿:苦で下気し、辛で散結し、温で燥湿する。消化管の水分の吸収促進・胃腸の蠕動
運動調整・止瀉・止嘔の働きを持つ。湿困脾胃の悪心・嘔吐・口粘・腹満・下痢・身重・浮腫や
寒湿・湿熱・湿温に他薬と伴に用いる/寛中除満:腸の蠕動を調整して腹満を除くが、実脹に
用い虚脹にはあまり用いない。腸燥便秘、脾胃気滞の腹満・腹痛に用いる/平咳:気管支筋
の痙攣を緩解し呼吸困難を治す/痰気鬱結:軽度の解鬱効果を持つので、梅核気があり憂鬱
・抑うつ・咽の閉塞感・胸苦に用いる

気虚・陽虚・妊婦には慎重に用いる。熱証には用いない。湿熱には大量の清熱薬を配合する

解 説 気剤の代表として、気の巡りを改善する。日本産の厚朴はモクレン科だが、中国産は
クスノキ科、中国産が良品とされる。
処 方 半夏厚朴湯、大承気湯、平胃散

 

牛膝(ゴシツ)

基 原 ヒナタイノコヅチ
部 位
成 分 イノコステロン、βーシトステロン
薬 効 理血薬
薬 理 苦、酸、平、補肝腎、強筋骨、逐於通経、引血下行

活血通経:血於の疼痛・うっ血・出血・冷えのぼせ・月経痛・月経遅延・経血が暗あるいは
凝血塊・打撲・捻挫など/去風湿:リウマチの痺れや痛みを止め血行を改善する/引血下行:
薬効を下方に導き、下半身の血行を良くすることで上部の充血を改善する。肝腎陰虚の
めまい・ふらつき・手足のふるえや歯齦の腫脹・疼痛/利水通淋:組織中の余剰水分を血中
に吸収し利尿する。淋証の排尿困難・排尿痛・血尿/滋腎利水:補腎と利水効果を併せ持つ。
腎陽虚の浮腫・腰や膝がだるく無力・冷え・記銘力減退/清熱化湿:湿熱蘊結による下腿や
膝関節の発赤・腫脹・疼痛・熱感/滋補肝腎・強筋骨・止痛:肝腎を滋養して筋骨を強化し
腰腿痛を改善する/柔肝:肝陰を滋潤し肝陽を抑制し、肝の疏泄機能を調整する

潤腸作用があるので脾虚の泥〜水様便には用いない。不正性器出血・月経過多・妊婦には
用いない

解 説 衣服について離れないイノコヅチは有名。漢方では根を利尿、血行障害に用いる。
処 方 牛車腎気丸、疎経活血湯、大防風湯

 

呉茱萸(ゴシュユ)

基 原 ゴシュユ
部 位 果実
成 分 エボジアミン、ルテカルピン、シネフリン
薬 効 温裏去寒薬
薬 理 辛、苦、熱、散寒止痛、降逆止嘔、助陽止瀉

散寒止痛:厥陰の寒邪を温散する。鎮痛作用もあり肝経や下焦の寒証に用いる。寒冷に
よる四肢の冷え・下腹両側〜陰部〜大腿内側の冷え痛み。下焦の虚寒による月経痛・
月経の遅れ・不妊。頭頂〜側頭にかけての反復する頭痛発作・悪心・嘔吐・冷え/下気
止嘔:強い下気効果があり幽門の痙攣・胃の蠕動を改善し悪心・嘔吐を止め鎮痛する。
寒冷の環境や飲食物による上腹部の冷えで起こる悪心・嘔吐・胃痛・胃部膨満や胃陽虚
による悪心・嘔吐・反胃(食べたものを時間が経過してから吐く)・よだれ・手足の冷え/
疎肝下気:肝気を疎通して胃気上逆を抑え悪心・嘔吐を止める。肝火犯胃の悪心・嘔吐・
呑酸・口苦・いらいら・胸脇苦満・胸焼け・口内炎/利水:利水効果があるので浮腫・胃の溜飲
に用いる/止瀉:軽度の止瀉効果があるので脾腎陽虚の水様性下痢に用いる/殺虫:蟯虫
駆除/引火下行:口内炎に、粉末を酢で練って足底に貼る

大量に用いると、激しい咽の乾燥感が生じる

解 説 温補作用が強く、寒が原因の頭痛、吐き気に用いる。
処 方 呉茱萸湯、温経湯

 

牛蒡子(ゴボウシ)

基 原 ゴボウ
部 位 種子
主成分 アルクチイン
薬 効 解表薬
薬 理 辛、苦、寒、疏散風熱、宣肺透疹、解毒利咽

疎散風熱:軽い発汗作用のため薄荷と併用して風熱を発汗・解表する。咽喉痛・去痰止咳・
炎症を抑える作用があり、風熱の咽痛・咳嗽・切れにくい痰・高熱に用いる/清利咽喉:風熱・
熱毒の咽喉痛・発赤・腫脹/宣肺透疹:麻疹の透発不全に用いる/清熱解毒・消腫:発散・
消炎・化膿を抑制するので皮膚化膿症や炎症の強い湿疹

油性成分が多く、潤腸通便の効果があるので、脾虚の泥〜水様便には用いない。排膿後や
薄い排膿には用いない

解 説 扁桃腺炎、民間では種子を炒って粉末にして肝臓病に用いる。
処 方 柴胡清肝湯、消風散

 

胡麻(ゴマ)

基 原 ゴマ
部 位 種子
成 分 セサミン、セサミノール、リノール酸
薬 効 補陽薬
薬 理 甘、平、補肝腎、益精血、潤腸燥

滋補肝腎:肝血を補い腎陰を滋潤する。肝腎陰虚のめまい感・ふらつき・目のかすみ・耳鳴・
しびれ感/潤腸通便:豊富な油成分を含むため血虚・陰虚の腸燥便秘に用いる/補血潤燥:
血虚生風による皮膚の乾燥・皹裂・かゆみや湿熱の皮疹でかゆみ・滲出・発赤があり、皮膚
乾燥・痂皮形成など乾燥の局面で清熱化湿薬に配合する/滋補脾陰:脾陰を滋補する

脾気虚の泥〜水様便には用いない

解 説 白は油成分が多く、薬用には黒を用いる。
処 方 消風散、紫雲膏(ごま油)

 

五味子(ゴミシ)

基 原 チョウセンゴミシ
部 位 果実
成 分 シトラール、カミグリン、シザンドリン、ゴミシン
薬 効 固渋薬
薬 理 酸、甘、温、収斂固渋、益気生津、補腎寧心

斂肺止咳・平喘:酸味で収斂性があり、強い平咳止咳作用を持つ。肺腎両虚の慢性咳嗽・
少痰・吸気性呼吸困難・腰膝がだるく無力/温肺化痰・止咳平喘:寒飲の咳嗽・呼吸困難・
薄い痰・背部の冷感/固表止汗:表を固めて止汗する。陰虚の盗汗や陽虚・気虚の自汗/
生津止渇:亡陰(脱水)のショックに人参・麦門冬などの生津薬と伴に用いる。気津両虚の
口渇・水分を欲する・元気がない・疲れやすい/固精止瀉:腎虚による遺精・滑精・頻尿・
多尿。脾腎陽虚の慢性下痢・五更泄瀉(夜明け前の下痢)/陰陽双補:滋陰・補陽の両面
の効果があり温性なので腎陰虚・腎陽虚に用いる/養心安神:精神安定作用があり心血虚
・心陰虚の健忘・不眠・不安感

解 説 5種の味をもつが主に酸味が強い。鼻水、咳止めに用いる。有効成分のゴミシンAは
肝炎の治療薬として注目された。
処 方 小青竜湯、清肺湯、人参養栄湯

 


【サ〜ソ】

細辛(サイシン)

基 原 ウスバサイシン、ケイリンサイシン
部 位 根、根茎
成 分 アサリニン、メチルオイゲノール、サフロール
薬 効 解表薬
薬 理 辛、温、去風散寒、通竅止痛、温肺化飲

散寒解表(辛温解表):辛温で発汗・解表する。強烈な辛味なので少量を用い、麻黄・桂皮
などを補助する。裏を温め附子の働きを補助する。化飲・止咳・通鼻・止痛作用があり、薄い
多量の痰・咳嗽・鼻閉・疼痛に用いる。表寒の悪寒・発熱・頭痛・身体痛・鼻閉・鼻水・咳嗽
・多痰・くしゃみ。風寒湿の表証で強い頭痛・頭重・身体重・強い関節痛・浮腫。陽虚の表寒
で寒がる・冷える・眠い・横臥を好む・発熱/温肺化飲・止咳:肺を温めて伏飲を除く。寒飲・
多飲・咳嗽を軽減する。一般に収斂・平咳の五味子と併用し発散と収斂・燥と潤という相反
する効能で相互の行き過ぎを調整する。寒飲による喘咳で薄い痰・多量の痰・喘鳴・背部の
冷感があり口渇がないものに用いる。喘咳発作が反復・慢性化すると化熱するので清熱の
石膏・射干・桑白皮を配合する/去風止痛:辛香走鼠(鼠のように走り回る)性で血行を促進
し強い鎮痛作用を持つ。寒湿痺の関節痛・冷え・運動障害・浮腫・痺れ。頭痛・眼痛・歯痛。
歯痛には煎液を口内に含むだけで外用の鎮痛効果を示す/温経散寒・止痛:血管拡張・血行
促進によって冷え・ひきつりを軽減し鎮痛する。一般に肝経に沿った症候に有効とされ、寒冷
による四肢の冷え・チアノーゼ・下腹両側〜大腿内側の冷えやひきつり・陰嚢の収縮・疼痛。
寒冷による腰痛・腹痛・下痢。冷えによる蠕動固縮の便秘/散寒・通鼻:寒冷による鼻閉・
くしゃみ・鼻水などの発作(アレルギー性鼻炎)/利水:軽度の利水作用がある/開竅:粉末
を鼻に吹き込み、くしゃみを促し意識を覚醒させる

多量には用いない(3gが限度)。陰虚火旺・気虚の多汗には禁忌

解 説 口や舌がしびれるほど辛い、その辛味で発散させたり、口に含み歯痛などに用いる。
処 方 小青竜湯、立効散

 

山査子(サンザシ)

基 原 サンザシ、オオミサンザシ
部 位 偽果
成 分 クエルセチン、クラテゴール酸
薬 効 消導薬
薬 理 酸、甘、微温、消食健胃、行気散於

消食導滞:消化酵素を含み主に肉類・油脂類の消化を促進し、胃腸の蠕動を促す。食滞の
腹満・腹痛・消化不良・下痢・腐臭ある噫気/止瀉:黒くなるように炒ったものは止瀉作用が
あり腸の蠕動を調節するので、大腸湿熱の下痢・腹痛・テネスムスに用いる/破気・活血化於
:血分に入り血於を除き気滞を巡らせる。産後の悪露排出不足・腹痛・月経痛/止疝痛:
寒冷による下腹部〜陰部〜大腿内側の疼痛

解 説 蛋白、脂肪の消化を助け、二日酔いにも用いられる。強心作用があるので血行を改善する。
処 方 啓脾湯

 

山茱萸(サンシュユ)

基 原 サンシュユ
部 位 偽果の果肉
成分 モロニサイド、ロガニン、スウェロシド
薬 効 固渋薬
薬 理 酸、渋、微温、補益肝腎、渋精固脱

補益肝腎・固精(陰陽双補):陰陽を平補すので、陰虚・陽虚ともに使用される。収斂・固渋
作用は弱い。腎精不足で腰膝がだるく無力・記銘力減退・頭のふらつき・耳鳴・遺精・帯下
・頻尿・夜尿。腎陰虚・陰虚火旺のほてり・のぼせ・身体熱感・口乾。腎陽虚の四肢の冷え・
寒がり/肝腎両虚の目のかすみ・目のくらみ・頭のふらつき/止汗:気虚・陽虚の自汗、陰虚
の盗汗、発汗による亡陰/固経止血:酸渋で収摂し、出血を止める。気虚・血虚など体質
虚弱者の不正性器出血・月経過多

解 説 滋養、強壮、収斂薬として用いる。
処 方 八味地黄丸、六味丸

 

山椒(サンショウ)

基 原 サンショウ
部 位 成熟果皮
成 分 サンショール、サンショウアミド
薬効 温裏去寒薬
薬 理 辛、温、温中止痛、殺虫止痒

散寒止痛:強烈な辛味により寒邪を温散する。寒冷による胃腸の蠕動運動亢進や痙攣・
拘縮を改善し、鎮痛する。中寒による腹の冷え・激しい腹痛・腹満・蠕動亢進・頻回下痢・
便秘。山椒の刺激性を緩和するため一般に膠飴を配合する/殺虫:回虫などの腸内寄生虫
を麻痺・殺虫する

陰虚・熱証には禁忌

解 説 日本山椒と中国山椒(花山椒・蜀椒)は風味に違いがある。香りはよいが、
麻痺するような辛味である。
処 方 大建中湯、当帰湯

 

酸棗仁(サンソウニン)

基 原 サネブトナツメ
部 位 種子
成 分 ジュジュポシドA,B,C
薬 効 安神薬
薬 理 甘、酸、平、補肝、寧心、斂汗、生津

補血・滋陰・安神:心・肝の血虚・陰虚で眠りが浅い・多夢・よく目が覚める・動悸・不安感/
滋陰・止汗:虚証の多汗に用いる

砕いて使用するほうが効果的。炒ったものも抽出が良くなる。大量で昏睡・知覚喪失を来たし
た報告があるので、30gを最大量とする

解 説 鎮静・安眠薬として用いる。大棗(ナツメ)には棘が無く、酸棗仁は棘がある。
処 方 酸棗仁湯、加味帰脾湯

 

山薬(サンヤク)

基 原 ヤマノイモ、ナガイモ
部 位 周皮を除いた根茎
成 分 デンプン、アミノ酸、コリン
薬 効 補陽薬
薬 理 甘、平、補脾養胃、生津益肺、補腎渋精

健脾・止瀉・止帯:中気を補う和平の品といわれ、健脾によって消化吸収を高め補気する。
脾気虚の食欲不振・泥〜水様便・白色帯下・味がしない・元気がない・疲れやすいものに
用いる/扶脾(滋補脾陰):滋補してもたれず健脾に働くので陰虚に適する。脾陰虚で食べる
と腹が脹る・食欲不振・手足のほてり/補腎益精・固精:腎精不足で腰膝がだるく無力・
遺精・滑精・頻尿・多尿/補肺・止咳:肺気・肺陰をともに補い止咳する

長時間煎じると薬効が低下する。長期服用で気滞を生じることがあるので陳皮・縮砂を
配合する。湿熱の下痢・熱証には使用しない

解 説 男性ホルモン増強作用があり滋養強壮に用いられる。
処 方 八味地黄丸、六味地黄丸、啓脾湯

 

地骨皮(ジコッピ)

基 原 クコ
部 位 根皮
成 分 ベタイン、シトステロール
薬 効 清熱薬
薬 理 甘、寒、涼血除蒸、清肺降火

清虚熱:骨蒸労熱を清するので陰虚火旺ののぼせ・手のひらや足の裏のほてり・身体熱感
(午後の潮熱)・両頬部の紅潮・盗汗・口乾/清熱涼血:炎症性の出血を止める。肺熱の咳嗽
・血の混じった痰、やや慢性化した咳嗽・粘稠な痰・ときに血が混じる痰・身体熱感(夜間)/
止血:血熱妄行(炎症性)の出血

解 説 実は薬膳に葉は民間薬として利用される。根は解熱薬。
処 方 滋陰至宝湯、清心蓮子飲

 

紫根(シコン)

基 原 ムラサキ
部 位
成 分 シコニン、アセチルシコニン
薬 効 清熱薬
薬 理 甘、鹹、寒、涼血、活血、解毒透疹

清熱涼血・解毒・透疹:心肝の二経に入り涼血活血するので血熱鬱滞の斑疹に適する。
発疹や発疹が透出せず暗色を呈し発熱があるとき。麻疹の予防/滑腸通便:腸管内を滋潤し
通便し利尿するので毒素の排出に利用される。清熱解毒の効能があり皮膚化膿症に用いる

解 説 高貴な紫の染料に使われた。華岡青洲の作った紫雲膏は紫根を原料とした外用薬で火傷、
凍傷の特効薬と言われる。
処 方 紫雲膏、紫根牡蛎湯

 

疾藜子(シツリシ)

基 原 ハマビシ
部 位 果実
成 分 ハルミン、ケンフェロール
薬 効 熄風鎮痙薬
薬 理 辛、苦、微温、平肝解鬱、活血去風、明目、止痒

平肝熄風:内風をしずめふらつき・めまいなどを止める。肝陽上亢・化風の頭のふらつき・
頭痛・目がくらむ・口苦・いらいら・目の充血/疎肝解鬱:肝気鬱結のいらいら・憂鬱・抑うつ・
胸脇苦満・月経不順・乳房の脹痛・乳汁分泌不足/去風:辛散苦泄し風を除き明目・止痒
する。風熱あるいは肝火による目の充血・眼痛・流涙・羞明・視力障害・角膜混濁。風熱や
血虚生風の皮膚掻痒/理気活血:温通活血し血行を促進する

解 説 菱の形をして棘があり調剤するとき、指に突き刺さることがある。止痛、止痒作用があるので
慢性湿疹、皮膚病に用いる。
処 方 当帰飲子

 

車前子(シャゼンシ)

基 原 オオバコ
部 位
成 分 アウクビン、プランタギン
薬 効 利水滲湿薬
薬 理 甘、微寒、清熱利尿、滲湿通淋

清熱利水・通淋:消化管内・組織間の余剰水分を血中に吸収し利尿排出する。湿熱下注の
排尿困難・排尿痛・尿混濁。心陰虚で焦燥感・浅い眠り・多夢の伴う濃縮尿・排尿困難・
排尿痛/補腎・利水消腫:腎を補い利水し浮腫を除く。腎陽虚の浮腫・尿量減少・膝腰がだるく
無力・四肢の冷え/利水止瀉・止帯:湿盛の水様便や帯下/清肝明目・補肝明目:肝に入り
降泄によって明目する。肝火の目の充血・眼痛・いらいら・のぼせ・頭痛。肝腎陰虚で目が
くらむ・目がかすむ・涙が出る・腰膝がだるく力がない/止咳化痰:痰を希釈し去痰止咳

解 説 全草はオオバコとして民間で用いられるが、漢方では種子を利尿や明目に利用する。
処 方 牛車腎気丸、五淋散、清心蓮子飲

 

  縮砂(シュクシャ)

基 原  
部 位 種子
成 分 カンファー、ボルネオール
薬 効 芳香化湿薬
薬 理 辛、温、化湿開胃、温脾止瀉

理気止痛:胃腸の蠕動運動を調節して気滞による腹満・腹痛を改善する。脾胃気滞の腹満・
痞え・腹痛。脾胃気虚の蠕動無力による気滞/温胃止嘔:芳香を有し、胃中を温めて悪心・
嘔吐を止める。胃寒の悪心・嘔吐・空腹時痛。妊娠悪阻に縮砂をそのまま噛んで服用する。
胃気虚・胃陽虚で食べられない・悪心・嘔吐/化湿止瀉:腹中を温め蠕動を調節する。消化を
促進し消化管内の余剰水分を除き下痢を止める。湿困脾胃の悪心・嘔吐・腹満・口が粘る・
下痢・身体が重い・浮腫。脾胃気虚の悪心・嘔吐・泥〜水様便・腹満/安胎:流産防止

精油を含むので長時間煎じない(後下が好ましい)

解 説 芳香性健胃薬として健胃、整腸に用いられる。
処 方 安中散

 

  小麦(ショウバク)

基 原 コムギ
部 位 種子
成 分 糖、デンプン
薬 効 補陽薬
薬 理 甘、涼、養心、養腎、除熱、止渇

補血安神:益気:益気し心血を補い精神安定に働く。心血虚の不安・焦燥感・悲哀感・
浅い眠り・驚きやすい/止汗:気虚・陽虚の自汗や陰虚の盗汗

解 説 米と並ぶ穀物で自汗、盗汗、ヒステリーなどに用いる。
処 方 甘麦大棗湯

 

  升麻(ショウマ)

基 原 サラシナショウマ
部 位 根茎
成 分 シミゲノール、シミフギン
薬 効 解表薬
薬 理 辛、微甘、微寒、発表透疹、清熱解毒、升挙陽気

解表透疹:清熱し軽浮で昇散するので、麻疹の透発に用いる。皮疹の出現が悪く内攻の
恐れがあるとき/清熱解毒:肺胃の熱邪を透発して除去。消炎・化膿の抑制と発散により
解熱する。化膿性炎症の高熱・発疹・皮下出血・咽痛・咽の腫脹や発赤・皮膚化膿。
胃熱の歯齦炎・口内炎・咽痛。副鼻腔炎の膿性鼻汁・前額部痛/昇挙陽気:脾胃の清陽の
気を昇挙するので気虚下陥のアトニー状態に用いる/止痛:他の止痛薬と伴に鎮痛剤として
用いる

大量使用で頭のふらつき・めまい・嘔吐など見られることがある。昇発するので肝火・陰虚
火旺には禁忌。麻疹が透発すれば使用をやめる

解 説 上方へ発散する作用があるので解熱、解毒に用いる。肛門の潰瘍抑制作用があるので
痔に処方される。
処 方 乙字湯、辛夷清肺湯、補中益気湯、升麻葛根湯

 

  辛夷(シンイ)

基 原 タムシバ、コブシ、ハクモクレン
部 位
成 分 シトラール、オイゲノール
薬 効 解表薬
薬 理 辛、温、散風寒、通鼻竅

通鼻:辛温・香散で上昇の性質を持つので、通鼻竅薬として鼻閉改善にも用いられる。鼻炎・
副鼻腔炎の鼻閉・鼻汁・臭いがしない・前額部痛/去風解表:風寒表証に使用できるが、一般
的には鼻閉・鼻水を目標とする

多量に使用すると頭のふらつき・目の充血が起こる。陰虚火旺には禁忌

解 説 抗アレルギー作用があるので、鼻炎、蓄膿症に用いられる。
処 方 葛根湯加川弓辛夷 辛夷清肺湯

 

  前胡(ゼンコ)

基 原 ノダケ
部 位
成 分 プラエルプトリン、デクルシン、ノダケニン
薬 効 化痰止咳薬
薬 理 苦、辛、微寒、散風清熱、降気化痰

降気平喘・止咳化痰:下気消痰し呼吸困難・喘息を治し去痰・鎮咳する。熱痰や喘息発作が
反復し化熱したものに適する。肺熱の咳嗽・黄色粘痰・胸苦しい。喘証の呼吸困難・胸苦しい
・痰がつまるなどの症状に用いる/疎散風熱:発散・清熱の働きがあり、風熱表証の咳嗽・
多痰・頭痛・軽度の悪寒・咽痛・発熱。風湿表証の悪寒・発熱・頭重・身体だるい・関節痛

解 説 頭痛、発熱、咳嗽など感冒の症状に用いる。往来寒熱があれば柴胡の適用になる。
処 方 参蘇飲

 

  川骨(センコツ)

基 原 コウホネ
部 位 根茎
成 分 ヌファリジン、デオキシヌファリジン
薬 効 破血薬
薬 理 甘、寒、補虚、健胃、調経
解 説 中国では用いられない。打撲の痛みや血行障害に用いる。
処 方 治打撲一方

 

  蝉退(ゼンタイ)

基 原 スジアカクマゼミ、その他のセミ
部 位 抜け殻
成 分 キチン質
薬 効 解表薬
薬 理 甘、寒、散風除熱、利咽、透疹、退翳、解痙

疎散風熱・清利咽喉:風熱を涼散し肺竅を開宣する。咽喉の腫脹・疼痛・嗄声・目の充血・
頭痛・咳嗽/透疹止痒:麻疹の透発を促進し治癒を早める/去風止痒:皮疹の痒み・滲出・
膨疹・発赤/退翳明目:肝経に入り炎症性の目の充血・角膜混濁を改善する。風熱による
眼痛・目の充血・角膜混濁/熄風止痙・定驚:鎮痙・鎮静作用があるが、作用は弱いので
補助的に配合される。破傷風の痙攣・後弓反張・熱性痙攣・小児夜泣き

解 説 日本のクマゼミに似たスジアカクマゼミの抜け殻。解熱、発疹、皮膚病に用いる
処 方 消風散

 

  蒼朮(ソウジュツ)

基 原 ホソバオケラ
部 位 根茎
成 分 βーオイデスモール、ヒネソール、アトラクチロジン
薬 効 芳香化湿薬
薬 理 辛、苦、温、燥湿健脾、去風、散寒、明目

燥湿:芳香を持ち燥性が強く、外湿・内湿・表裏上下を問わず化湿する。湿度の高い環境や
水分摂取過多により消化機能が犯され生じる悪心・嘔吐・腹満・食欲不振・泥〜水様便・
口が粘る。暑熱による熱感・口渇・発汗・腹満・身体が重だるい。湿熱による痒み・発赤・
滲出物・びらんなどの皮疹。湿熱蘊結の下腿の発赤・腫脹・疼痛・重だるい。風湿表証・
風寒湿表証の頭重・悪風・発熱・身体重だるい・関節の鈍痛・浮腫。燥湿と止痛作用がある
のでリウマチ性の関節痛に用いる。風寒湿痺のしびれ・痛み・関節の運動障害・浮腫・冷え/
健脾・運脾:白朮ほどの補益性はないが、消化吸収を促す健脾作用があり、白朮のように
腹にもたれる弊害がない/補虚明目:雀目・夜盲症・角膜軟化症

陰虚・津虚には禁忌

解 説 朮には蒼朮、白朮の2種があり、蒼朮は湿を除く作用が強く、白朮はさらに健胃、
滋養作用を兼ねる。
処 方 五積散、ニ朮湯、平胃散

 

  桑白皮(ソウハクヒ)

基 原 マグワ
部 位 根皮
成 分 モルシン、α-β-アミリン
薬 効 化湿止咳薬
薬 理 甘、寒、瀉肺平喘、利水消腫

清熱止咳:肺熱の咳嗽・呼吸促迫・呼吸困難・黄〜粘稠痰・口渇/降気平喘:主に利水作用に
よって肺水腫や気管支粘膜の浮腫を除き気道の通過を良くする/利水消腫:利水作用によって
組織間の水分を排除する。浮腫・肺水腫・関節水腫などで尿量減少を伴うものに用いる

陰虚には禁忌

解 説 養蚕のため日本各地で栽培された。漢方では根皮を使うが民間薬では葉を風邪や
中風予防に用いる。
処 方 五虎湯、清肺湯

 

  蘇木(ソボク)

基 原 スホウ
部 位 芯材
成 分 ブラジリン
薬 効 理血薬
薬 理 甘、鹹、平、行血去於、消腫止痛

活血化於の働きがあり、微小循環を改善し鎮痛や血腫の吸収を行う。婦人科・外傷によく用
いられる。血於の月経痛・経血に凝血塊がある・月経遅延・無月経・産後悪露排出不全の
腹痛・打撲・捻挫などの腫脹・疼痛

解 説 草木染めの赤の染料として有名。於血や打撲などの鎮痛に用いる。
処 方 通導散

 

  蘇葉(ソヨウ)

基 原 シソ、チリメンジソ
部 位 葉、枝先
成 分 ペリラアルデヒド
薬 効 解表薬
薬 理 辛、温、解表散寒、行気和胃

発汗解表:辛温で芳香があり強い発汗・解熱作用で解表する。胃腸の蠕動を調節し腹満・
痞えを除き悪心・嘔吐を止める。消化管内や組織中の余剰水分を吸収除去し表湿・気滞
を除く。表寒の悪寒・発熱・頭痛・頭重・身体痛・浮腫・身体重だるい/理気寛中・化湿止嘔:
湿困脾胃の悪心・嘔吐・胸苦しい・腹満・下痢・浮腫/安胎:流産防止/解魚蟹毒:魚介類の
中毒症状に生姜と伴に用いる/解鬱:肝気鬱結に補助的に配合する

精油成分が揮散するので長時間煎じない

解 説 生薬としては赤シソを用いる。香味成分が発汗や胃腸の活動を促す。魚貝類の中毒に
効果がある。
処 方 香蘇散、神秘湯、半夏厚朴湯
 
>>生薬メモ(2)

 

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