キン肉マン特別編
ザ・サイキョー超人の挑戦
第2話「集結・7人の正義超人」
これまでのあらすじ
「王位争奪サバイバルマッチ」が終わり、休暇を過ごすキン肉マンたち。そこにザ・サイキョー超人軍団が現れ、キン肉マンに挑戦状をたたきつける。逃げ出そうとするキン肉マンだったが、ミートの説得で…
「ミートよ… 分かった。」
腕を広げて王子の行く手を塞いでいたボクの前に立ち尽くしていた王子は、自分に言いきかせるようにその言葉をつぶやいた。どうやらボクの言うことを分かってくれたようだ。
「王子…」
王子はボクに歩み寄った。そして…
「どけい!」
王子は事も無げにボクを片手でなぎ払った。
「分かった」と言ったのはこういうことだったのか…
「キンちゃん、ミートくんもああ言っとるんやし、戦ったらどうやの?」
ナツコさんはボクを介抱しながら、背を向けたままの王子に向かって怒鳴った。
「いいんです、ナツコさん。こんな超人たち、王子の手を煩わせるまでもありません。ボクが全員倒してみせます。」
「いくらなんでも、そりゃ無茶や。待っとき、今テリーを呼ぶさかい…」
ナツコさんは携帯電話を取り出すと、テリーマンを呼び出した。
「あっテリー、実は…」
「オーケー、分かった。今すぐに駆けつける。」
どうやら、テリーマンと連絡がとれたようだ。
「おい、キン肉マン。戦うのか戦わないのかハッキリしないか。」
そうだ、忘れていた。ボクたちはザ・サイキョー超人軍団を待たせたままにしていたのだ。向こう側では軍師・ドラゴフェニックス以下、ベールを被ったままの6人の超人が控えているのだ。
「王子の相手にあなたたちでは役不足です。ボクが相手をしますから、ボクに勝ったら王子との対戦を認めましょう。」
ハッキリ言って自信はなかったが、今はこう言って時間を稼ぐしかなかった。それにボクだって1人くらいは刺し違えてでも倒さなくては…
「面白い。軍師、ボクがキン肉マンを引きずり出してやるよ。」
一人の超人がベールを脱いでその正体を見せた。
赤いチャイナ服に似たジャージを着て、身長は160cmくらいだろうか…意外に低い。
体重も軽そうだ。人間にしてみれば体操選手みたいな体つきをしている。
話し方からすると、意外と人は良さそうだ。
そして、何故か小型のテープレコーダーを左手に持っていた。
「ほほう、ジムナスか。だが、侮るなよ。わたしの調べたところによると、アレキサンドリア・ミートはパワーこそ全く無いが、素早さと関節技のキレには光るものがある。」
「ハハーッ!!」
軍師・ドラゴフェニックス…この男は的確にボクの特徴を掴んでいる。ジムナスと呼ばれた超人はゆっくりとボクににじりよってくる。
「キンちゃん、本当に戦わへんの? このままやと本当にミートくんが戦うことになってしまうで。」
ナツコさんは、ボーッとつっ立った王子にカツを入れた。
「わーった、わーった。勝負を受けてやるから… その代わり…ナッちゃんの携帯を貸してくれい。」
「本当に受けるんやろうな…ハイ。」
その間にもジムナスマンは僕の目の前に来ると、テープレコーダーを置いた。
「一体、何をする気だ!」
「ハハハハハ…O〜HA〜! アキレス腱、クイックイッ!」
そう言うと、ジムナスマンはテープレコーダーの再生ボタンを押した。テープレコーダーからは軽快な音楽が流れてきた。
「♪自由の女神のほっぺに〜キスして〜 ローマのラビ〜オリ、トレビア〜ン…」
歌に合わせてジムナスマンは踊りを始めた。一体これには何の意味があるのだろうか。そう思っているうちに、空から見覚えのある人影が近付いていた。テリーマンだ。
「やあ、ナツコお待たせ。キン肉マンやミートくんも一緒だったのかい?」
「それが…全くヤル気がなくて…一応、挑戦を受ける気にはなったらしいんやけど。」
王子は、ナツコさんの携帯で何やら世間話をしている。
「よし、終わったぞ。おーい、みんな、こっちに移動せい!」
王子はその場に居合わせた全員に向かって叫んだ。
「王子、一体どうしたんですか。」
「うむ、説明しよう。実はな、今わたしが連絡したのはマスコミ関係者たちだったのだ。いくら戦うと言ってもこんな道端で戦うわけにはいかん。超人が技量を競うのは神聖なリングの上でなくてはな…」
結構勝手なようだが、王子の言うことにも一理ある。
「…ということらしいが、どうだい?」
テリーマンもサイキョー超人たちに呼びかけた。
「私たちに異存はない。」
ドラゴフェニックスは王子の要求を受け入れた。他のサイキョー超人たちもベール越しに頷くのが見えた。ただ一人、ボクの目の前で踊り続けているジムナスマンを除いて…
それにボクがツッコまないわけがなかった。
「ジムナスマンは、どうなんだ?」
「フフフ…心配無い。私の意志はサイキョー超人全員の意志だ。ジムナスはあの音楽が鳴っている間はこのように準備体操を踊る以外に何もできない体質なのだ。」
な…なんという超人だ。僕は笑いを通り越して呆れていた。取り敢えず、ボクたちは王子が先導する方に向かった。このコースは美波理(ビバリー)公園内のキン肉ハウスへの帰り道と同じだ。
「王子、ここは…?」
「フフフ…ミートよ、見ろ!」
美波理公園に足を踏み入れると、そこには無数の観客で埋め尽くされたリングがあった。いつの間に美波理公園がこんな巨大なスタジアムに変貌してしまったのか!?
「ちょっと、マスコミに電話を入れるとこのザマだ。やつらのイベント展開の早さには相変わらず驚かされるのう…」
王子は平然と言ってのけるが、もはやそんなレベルじゃない。たった10分の間にそこまでできるなんて…
「なんて事してくれたんやー!!!」
「おわー!!」
突然、ナツコさんが王子に飛び蹴りをくらわせた。
そして、ユッサユッサとコブラツイストで王子を締め上げる。
「せっかく、特ダネを一人占めできた思うたのに…」
「ゆ、許してくれい。まさかここまで人が集まるとは思うとらんかったからのう。」
「まあ、落ち着くんだナツコ…」
テリーマンがナツコさんを止めに入るが、ナツコさんのあまりの形相にテリーマンもどことなく腰が引けている。
「キン肉マン、遅かったな…」
「テリーマンばかりにいいカッコウはさせないぜ!!」
皆が一斉に振り向く。
そこにはロビンマスク、ラーメンマン、ブロッケンJr.、ウォーズマン、ウルフマンといった正義超人の面々が集まっていた。彼らも王子がナツコさんの携帯で呼び出したのだろう。
「いやー、ラーメンマンから連絡網が回ってきてな。せっかく、ジャーマンポテトを食ってたのによ。」
「まったくだ。ところで、オレは連絡網から抜けてるんじゃなかったかな…?」
ブロッケンとウルフマンがグチを漏らす。最近ウルフマンの影が薄かったのはこういう理由だったのか? それでもウルフマンは来れたのだから、どうやら超人連絡網からは外れていなかったのだろう。
「キン肉マン、再会の感動に浸るのはこれぐらいにして、そろそろ最初の戦士を出してもらおうか。」
ドラゴフェニックスが催促をした。
「よっしゃ、好きなとこに名前書いてや。」
王子が地面にアミダくじを書いた。さっそく参加するラーメンマンたち。そんなにボクにツッコまれたいのだろうか。
「うーむ、最初はオレか…」
結局、あのアミダくじで戦う順番が決まってしまった。最初の戦士はブロッケンJr.だ。ザ・サイキョー超人軍団からはエレガントマンが出ることになった。
「あれ、サイキョー超人の数が1人足りないんじゃないか… キン肉マンからは7人と聞いたが…」
とウォーズマンが言った。確かに…軍師・ドラゴフェニックスを含めても6人。1人足りない。
「うおーい、サイキョー超人さんよ。お前んとこは1人恐れをなして逃げたんじゃないのかー!」
王子がサイキョー超人側の席に向かって叫んだ。サイキョー超人たちも、ようやく1人足りないことに気付いたようだ。
「ま、まさか…ジムナスが。」
ベールを被った超人の一人が気付いたようだ。
「あ、音楽止めるのを忘れてた…!!」
ドラゴフェニックスはこれまでにない素頓狂な声をあげた。おそらく兜の下は冷汗タラタラだろう。
「キ、キン骨マン。ジムナスの所に行って、音楽を止めてこい!」
「了解だわいな!」
キン骨マンは鉄砲玉のようにスタジアムを飛び出して行った。今頃、彼は一人で「合言葉はOHA! キュールキュル、エンジン〜がうなってる〜」というフレーズにのって踊り続けているに違いない。
かくして、ジムナスマンの到着を待たずして決戦のゴングは鳴った。
あとがき
さあ、ついに正義超人VSザ・サイキョー超人との決戦が始まりました。ジムナスマンは、もう完全に「おはスタ」のジムナスひ◯るだということが判明しましたね。でも、これは分かりやすかったんじゃないかと思います。てなわけで、次回お楽しみに。
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