キン肉マン特別編
ザ・サイキョー超人の挑戦
第3話「蘇るゲルマン魂」


これまでのあらすじ
正義超人VSザ・サイキョー超人軍団の戦いが始まった。第1戦はブロッケンJr.が出場するが…

赤コーナーからブロッケンJr.、青コーナーからエレガントマンが姿を現した。ベールを脱いだエレガントマンはその名の通り派手なコスチュームをまとっている。顔はマスクを被っているために分からないが、これまた派手ときている。そんなエレガントマンに観客席からは早くも黄色い歓声が上がっている。だが、ブロッケンも負けてはいない。彼は正義超人の中でも女性人気は一、二を争う男だったのだ。両者とも歓声に両手を上げて応える。ボクはブロッケンに言った。

「相手はこちらのデータを調べ上げているはずです。最初は組み合わずに、こっちも様子を見るのがいいでしょう。」

「オーケー、分かったぜ。」

ブロッケンは右手でサインを出すとエレガントマンの方に向き直った。

「おい、エレガントマンとか言ったな。そんなごてごてした格好で戦うならやめた方がいいぜ。それともこのオレをなめてるのか。」

「フフフ… 正義超人の切り込み隊長のブロッケンJr.か… 相変わらず威勢だけはいいな。だが、安心しろ。この格好で戦うのはお前のことを見くびっているわけではない。むしろ、全力を出し切るためのものだ。」

「そいつは光栄なこった。こっちも思いきりやらせてもらうぜ。」

『セコンドアウト!! セコンドアウト!!』

ボクはリングから離れた。

カーン!!

ゴングと同時に2人とも相手の方に走っていく。

(おっと…最初は組み合うな、というミートくんの指示だったな。それならば、かねてから研究中だったこれで…)

ブロッケンはボクの指示通り、組み合わずにすれ違い様にある技を放った。ベルリンの赤い雨か… いや、これはブロッケンが今まで見せたことのない技だった。

「ジークフリート・アタック!!」

だが、その瞬間に鮮血を吹き出したのは技を仕掛けたはずのブロッケンだった。それよりも…

『あーっと、これは驚きました。ブロッケンJr.が放った新技「ジークフリート・アタック」が早くも破られました。そして、なんとブロッケンが2人に…』

そうなのだ。そこにエレガントマンの姿はなく、ブロッケンが2人になっていたのだ。当然観客席はどよめいた。これは…どう考えてもエレガントマンがブロッケンに化けてカウンターを食らわせたとしか思えなかった。

「ロビン、これは目の錯覚なのか? わたしにもブロッケンが2人に見えるぞい。」

王子がロビンに尋ねた。いいや、これは目の錯覚ではない。事実なのだ。

「き…貴様、どうやってオレの姿に…」

「フフフ…お前はわたしに勝てん。何故ならわたしは七人の超人に変身できる能力を持っているのだからな。まずはキン肉マン、テリーマン、ロビンマスク、ラーメンマン、そして今の姿であるブロッケン、ウォーズマン、さらに…」

「ウルフマンか。」

「違う。誰が好きこのんでリキシマンのような弱小超人などになるか。最後はこのわたし自身だ。」

その時、後ろのベンチから怒号があがった。

「なにぃ、誰が弱小超人だ。それにオレはリキシマンじゃない、ウルフマンだ! もう許さん、オイドンが戦うでゴワス。」

ウルフマンが激怒したのだ。確かに目立った活躍をしていないウルフマンだったが、ボクもその扱いはあまりにも酷いと思う。だが、ウルフマンを見るウォーズマン、王子、テリー、ロビンたちの目を見ると…

(エレガントマンうまい!)
(確かにあいついらないよな。)
(そうそう、それだけならまだしも、時々何かハミ出てるし…)
(エレガントマンの選択は実に理にかなっている。)

と声には出さないが明らかにそう言っているような眼差しだった。特にウォーズマンは根が正直なせいか、何とウォーズマンスマイルを浮かべている。うあちゃー。ボクは掌を顔に当てた。この場はボクが…

「まぁまぁ、ウルフマン落ち着いて。ほら、チャンコでも食べて。」

ボクはとっさにウルフマンをなだめた。ウルフマンは一心不乱にチャンコを食べまくっている。事は丸く収まったようだ。それにしても、しばらく会わないうちにウルフマン…言葉遣いが変わったような… これ以上考えても仕方なかったので、ボクは視線をリングに戻した。

「誰に変身しようが、オレは負けねぇ。さあ、来やがれ!」

「それでは…これはどうかな。」

エレガントマンの姿が一瞬にして別の姿に変わった。今度はテリーマンだ。そして、まだ体勢を立て直していないブロッケンにパンチの雨あられを叩き込む。だが、最初にパンチを浴びていたブロッケンも落ち着いてガードに入る。そしてエレガントマンの攻撃が一瞬止まった。左腕を回したのだ。

「そこだ!」

ベンチにいる本物のテリーマンが叫んだ。

「そうか!」

ブロッケンはエレガントマンの一瞬のスキを突いてソバットを浴びせた。エレガントマンはテリーに化けることで、必殺パンチの前に腕を回すテリーのクセまでコピーしてしまっていたのだ。今度はブロッケンがお返しにパンチを浴びせる。だが…

「く…今度はキン肉マンか。」

エレガントマンは両の腕でガッチリボディーをブロックしている。そう…キン肉族に代々伝わる、鉄の硬度を持つ肉のカーテンだ。

「だが、オレにも鉄を斬り裂くこの技がある。」

ブロッケンの手刀が一瞬光ったかに見えた。

「ブレード・ヴァイス!!」

肉のカーテンのポージングを崩していないエレガントマンの腕が真一文字に斬り裂かれた。クリーンヒットとは言い難く傷は浅かったようだが。

「ようし、今だ!」

ブロッケンはひるんだエレガントマンに向かって突進していった。

「チィ…」

だが、エレガントマンはブリッジをすると、突進してきたブロッケンを真上に跳ね上げたのだ。まずい、こ…これは…

「し…しまった! この体勢はマッスル・スパーク…」

ブロッケンの首と左足を極めるエレガントマン。やばい…何とかしなければ…

「うおーい! これでも食わんかー。」

王子の声だ。横を向くと、王子は牛丼の丼を持っている。しかも特盛・味噌汁付き。エレガントマンは思わず他所見をしてしまい、マッスル・スパークは空中分解してしまう。もつれるようにマットに叩きつけられる二人。

その後もエレガントマンはロビン、ウォーズマンと姿を変えていったが、本物のロビンとウォーズマンのアドバイスによって、ブロッケンは傷つきながらも彼らを打ち破っていった。

『おーっと、ブロッケン! ブレーンクローでエレガントマンが化けたウォーズマンのマスクを粉砕だ!』

「ハァハァハァ… ベアークローには苦しめられたが、何とかマスクを捉えることができたぜ… 観念しな。」

エレガントマンは苦し紛れにブロッケンの腹にキックをみまった。また変身の用意か…?

「これが、最後の変身か… 『レインボーウォリアー』と異名をとるあいつの最後の色が久々に見られるのか。」

終始この試合をじっと見つめていたドラゴフェニックスが口を開いた。試合中は空気のようにじっと観戦に集中していたのだろうか…この発言は突然ドラゴフェニックスが目の前に現れたように思え、ボクはドキッとした。

「エレガント・ファイナルチェンジ!」

エレガントマンが叫んだ。そして、彼はボクたちがよく知っている超人に変身した。

「ラ…ラーメンマン!」

「フフフ…お前が一番倒したがっている相手だ。それと同時にお前がなかなか乗り越えられない壁でもある。どうだ、光栄だろう。」

ブロッケンは正義超人側のベンチの方を振り向いて言った。

「おい、ラーメンマン。この戦いだけは皆のように口出ししないでくれ。頼む。」

ブロッケン… ラーメンマンは何も言わずにコクリと頷いた。結果がどうであれ、ラーメンマンはブロッケンを見守るつもりらしい。

「やるっつぇ、ブロッケン!!!」

ブロッケンはラーメンマンの姿を借りたエレガントマンに向かっていった。

あとがき

今回は、タイトルからブロッケンの魅力バクハツにしたつもりですが、どうでしたかねぇ… タイトルは「リンかけ」15巻のタイトル「よみがえるハーケン・クロイツ」を意識してつけました。あとは、最後のブロッケンのセリフがポイントですかねぇ。さて、次回はもちろんこれの続きです。ブロッケンのラーメンマン越えはなるか…次の試合はどんな組合せになるか…と言いたいですが、例によって試合結果はまだ考えてません。それと、ウルフマン戦力外通告事件で正義超人たちが心の中で思ってる声は名前を伏せておくつもりでしたが、やっぱり変にひねるとよくないのでやめました。以上です。

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