キン肉マン特別編
ザ・サイキョー超人の挑戦
第4話「真打ち登場!!」


これまでのあらすじ
ブロッケンJr.VSエレガントマンの一戦。正義超人たちに姿を変えるエレガントマンに苦戦するブロッケン。だが、仲間のアドバイスで次々とエレガントマンを攻略。最後の変身をするエレガントマンにブロッケンは…

「いくぜ、エレガントマン、いや、ラーメンマン。オレは今日こそあんたを越える!」

ブロッケンは猛然とラーメンマンの姿をしたエレガントマンに突っ込んでいった。

「くらえ! ベルリンの赤い雨!!」

ブロッケンの十八番、「ベルリンの赤い雨」だ。だが、エレガントマンは苦もなくひらりとそれをかわした。そして…

「アチョ!アチョ!アチョ!アチョ!!」

ベルリンの赤い雨を放ってスキだらけになったブロッケンに今度はエレガントマンがラーメンマンお得意の中国拳法の蹴りを叩き込んだ。4発目の蹴りをくらって倒れるブロッケン。

「へへ… さすがはラーメンマンだ。そうこなくてはな。」

その後もブロッケンは再三にわたりエレガントマンを攻めにいったが、その度にラーメンマンの中国拳法で軽くあしらわれた。

「ま…まだまだ。」

「こ…こやつ、まだ戦おうというのか。」

倒されても倒されても向かって来るブロッケンに、エレガントマンも攻め疲れがしてきたようだ。だが、形勢は明らかにブロッケンが不利だった。

「ラーメンマン、どうしてアドバイスしないんじゃ!! このままではブロッケンが殺されてしまうぞ…」

王子がラーメンマンに檄をとばす。だが、ラーメンマンはじっとリングを見つめていた。この時、ラーメンマンの握りしめた拳からはうっすらと血がにじんでいたのに気付いたのはボクだけだろうか。

「もういい、もういい! こうなったらわたしがブロッケンを救出する!」

王子はリング内に乱入しようとした。ボクが王子を止めに入ろうとした時…

「キン肉マン、ダメだ。来るんじゃねぇ!」

「し…しかし。」

「この…戦いはオレが…仕掛けたものだ…一対一で、戦う…と…」

ブロッケンは王子を制した。だけど、ブロッケンの息は既に絶え絶えになっている。エレガントマンが動き出した。

「こ、こうなったら早めにカタをつけてやる。これで終わりだ。」

エレガントマンはブロッケンの父・ブロッケンマンを惨殺した必殺技・キャメルクラッチをかけた。今のブロッケンにこれを返すスタミナはない。だが、ブロッケンは何故か薄笑いを浮かべていた。

「ま…待っていたぜ、この時を… ヴェクセ・シュピーゲル!!」

ブロッケンが叫ぶと2人の姿が一瞬消え、また浮かび上がった。だが、さっきと違うのはブロッケンが技の掛け手、そしてエレガントマンが技のくらい手になっているのだ。突然の出来事に苦悶の表情を浮かべるエレガントマン。

「ギャアアーッ!!」

「へっ… 離れからの打撃戦ではマトモに勝ち目がないからな… ワザと組み合う作戦に出たのさ。ザ・ニンジャの順逆自在の術を自分なりに応用したこの技…実戦で使うのは初めてだったが、こうもうまくいくとはな。さあ、ギブアップしな…」

「グ…グウウ…」

エレガントマンが落ちるのも時間の問題だ。ところが、エレガントマンが気を失いかけた瞬間、エレガントマンの体が激しく光った。次の瞬間、まぶしさのあまりに技を解いてしまったブロッケンの前に元の姿に戻ったエレガントマンがいた。いや、登場時にあった腕の下のヒラヒラした糸が無くなっている。もしや…

「チィィ…メタモ・ストリングスが全部無くなってしまったか…」

「どうやら、変身はできなくなってしまったようだな。まぁ、お互い最後の技といこうぜ。」

「シュバルツ・メッサー!!」

ブロッケンが黒い炎のようなオーラを伴った鋭い後ろ回し蹴りを放った。だが、エレガントマンは身を低くしてかわした。失敗か… そう思った時、ブロッケンのバックハンドからの手刀がエレガントマンを完全に捉えた。さっきの後ろ回し蹴りは手刀の出所を隠すためのフェイントだったのだ。

「ジークフリート・アタック!!!」

「ギャァァァァァアアア…」

胸板を切り裂かれ、絶叫するエレガントマン。エレガントマンは背向けになって倒れた。

「や…やったぞ…」

次の瞬間、ブロッケンもうつ伏せになって倒れた。今まで7人の超人と戦ったんだ。無理もない。

『あーっと、これは両者ノックダウン!! 第1戦、ブロッケンJr.VSエレガントマンは引き分けに終わりましたー!』

アナウンサーが試合の結果を告げた。両者ともタンカでリングの外に運び出されていった。ブロッケンのタンカがラーメンマンの前を通りがかった。

「ブロッケン、よくやったぞ。お前は誰に頼ることなくこのわたしを越えることができたのだ。」

「へ…へへ……あいつの変身は本物と比べたら、力も技も数段劣る。こんなもんじゃあんたを越えたことにはならないさ。ラーメンマン、傷が癒えたらまた相手をしてくれるか?」

「ああ… だが、今はゆっくり休め。後は私が戦う。」

ブロッケンとラーメンマンの会話は僕の目に熱いものをこみ上げさせた。その時…

「ハーッハッハッハ…!!」

その笑いの主はサイキョー超人側の力士風の超人からだった。

「エレガントマンごときに引き分けたくらいでいい気になるな。あいつは元々負け要員だったんだ。あいつがお前らに変身した訳が分かるか? それは、お前らの弱点を本人自ら喋らせるため…全てはドラゴフェニックス様の作戦通りよ。エレガントマンはそのための捨て石に過ぎん。むしろ引き分けたのは上出来だと言える。」

格好からして、おそらくあいつは暗黒相撲横綱・バケモノだろう。

「なにをーっ!!」

今度はボクの後ろから声がした。さっきまでチャンコを食べていたウルフマンだ。

「ということはオレの弱点などいらん、ということかーっ!!」

「よく分かったな。その通りだ。」

「もう我慢できん。ラーメンマン、アミダくじだと次はお前の番だがオレが出させてもらうぜ。」

「ウルフマン、今のお前は冷静さを欠いている。順番通りわたしが出る。それに…」

「それに…何だ?」

「イヤな予感がするんだ。あの力士風の超人には…」

「何を訳の分からんことを。とにかくオレは出るぜ。それにちょうど相撲対決… 読者が喜ぶ絶好のシチュエーションじゃねえか。」

ここまで言われ、ラーメンマンは黙ってしまった。相撲対決というお約束にはさすがに逆らえない。急拠リングがひっくり返り、土俵が現れた。

『ひがぁーしぃー、ウルーフーマーン、ウルーフーマーンー。』

『にぃーしぃーい、バケェーモーノ、バケーモーノー。』

レフェリーもとい、行司が二人の名前を告げる。僕はラーメンマンの方を振り向いた。ラーメンマン…イヤな予感とは何のことだったんだろう。だが、当の本人は冷静に土俵を見つめていた。制限時間一杯になった。

『ハッキヨイ!!』

ウルフマンが猛然と突っ込んでいった。得意の張り手攻撃だ。

「うおおおおおー!!」

しかし、バケモノはウルフマンの張り手を顔や胸に受けながら微動だにしない。いくらウルフマンより体格が大きくても、この張り手をくらってはひとたまりもないはずなのに。

「ふん、お前の攻撃はそこまでか。今度はオレの番だぜ。」

突然ラーメンマンが立ち上がった。

「い…いかん。ウルフマン、逃げろー!!」

ラーメンマンのこの取り乱し様は普通じゃない。だが、もう遅かった。バケモノの張り手がウルフマン向かって飛んできたからだ。

「鉄砲祭りーっ!!」

バケモノの張り手はバシバシとウルフマンに決まっていく。ウルフマンは空中で踊っているようになすすべもなく張り手を受け続けるしかなかった。そして、バケモノはウルフマンをかんぬきにとらえた。

「居反り投げーっ!!」

バケモノの投げはウルフマンを頭から土俵に串刺しにした。この瞬間、ウルフマンの負けが決まった。行司がバケモノの勝ちを告げようとする。

『バケモ…』

「グヘヘヘ…ウルフマン、これしきでおねんねされちゃ困るぜ。」

バケモノが両手を交差させた。

「火炎祭りーっ!!」

バケモノの交差させた手の摩擦で火が起き、その炎はウルフマンを火達磨にした。

「ギャアアーッ!!」

「ウルフマン!! 飛燕旋風脚!」

とっさにラーメンマンが飛び込み、蹴りを放った。その凄まじい風圧でウルフマンの体を包んでいた炎が吹き飛ぶ。

「大丈夫か?」

ウルフマンに掛け寄るラーメンマン。

「ラーメンマン、す…すまねえ。あんたの言うことを素直に聞いていればこんなことには…」

「いや、止められなかったわたしが悪かったんだ。」

「グヘヘヘ… またお前らお得意の友情ゴッコか…」

バケモノが二人の前まで近付いていた。

「お…お前は角力殺法の使い手だな。」

「ラーメンマン、そいつを知っているのか?」

「ああ、ロビン。間違いない。わたしは以前、不知火為右ェ門という同じく角力殺法の使い手と戦ったことがあるんだ。何かイヤな予感がしていたと思ったら、あれは角力殺法独特の気を感じていたんだな… 」

「その通りだ、ラーメンマン。為右ェ門はオレの弟弟子だったんだ。本来なら兄弟子としてお前を倒したかったんだがな。うまく対戦から逃げたものだ。」

「な…なに…!!」

「フン、やるか…」

「バケモノよ、下がれ!!」

その声はドラゴフェニックスだった。

「ですが、ドラゴフェニックス様…」

「二度は言わん。」

「ハ…ハイ。」

バケモノはおとなしくリング…いや、土俵を降りていった。あれ程の強さのバケモノを言葉だけでおとなしくさせるドラゴフェニックス…一体どれほどの強さなのだろうか。ウルフマンはタンカで運ばれ、土俵上には怒りのやり場を失ったラーメンマンが一人残されていた。ドラゴフェニックスはリングサイドの席に座したままラーメンマンに言った。

「フフ…ラーメンマンよ。ウルフマンの仇を討てなくて残念だろう。だが、お前の相手はちゃんと用意してある。そろそろ到着するはずだ。」

その矢先、スタジアムの入場口から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「先生、連れてきただわさ。」

「だわさ。」

キン骨マンとイワオ、そしてジムナスマンだ。踊りっぱなしで置き去りにされていたジムナスが、やっとスタジアムに到着したのだ。

「O〜HA〜」

「フッ…ジムナスよ。準備はできたか?」

「おかげさまで、この通り。お○スタジムナスティックで体もすっかりほぐれましたよ。」

「ケガの功名といったところか。」

「それより軍師、相手の弱点は…」

「それがな…ラーメンマンが口出ししなかったため、今回のデータ収集は失敗に終わったのだ。」

「まあいいさ。ボクにかかれば誰だろうと関係ないよ。」

「期待しているぞ。」

土俵がひっくり返り、再びリングが現れた。

『さあ、正義超人VSザ・サイキョー超人の戦い。現在のところサイキョー超人が1勝1分けでリード。正義超人側としては、もう負けられません。』

アナウンサーが現在の状況をくどいほどに告げる。これもお仕事だから仕方ないが、その言葉はボクたちのおかれている厳しい状況をハッキリと浮き立たせた。ボクは赤コーナーで準備をしているラーメンマンにアドバイスをした。

「ラーメンマン、あのジムナスマンという超人…気をつけて下さい。どうやら軟体超人らしいですから。」

「ミートくん、ありがとう。心配無い…きっと勝ってみせるさ。ブロッケンとウルフマンのためにも…」

ラーメンマンはボクに笑ってみせた。

「フフ…これだけいればジムナス十万人計画の達成も近いね…」

青コーナーではジムナスマンが観客席の方を見て何かつぶやいていたようだったが、ボクにはよく聞こえなかった。一方、ラーメンマンはボクに背を向けた格好でジムナスマンを鋭い視線で睨みつけていた。

あとがき

暗黒横綱バケモノの正体はこんなところです。一応、こいつはウルフマンと戦わせるというとこまで考えていました。でも、その時は試合状況を詳しく伝えずにミートのモノローグで流すつもりでした。この試合だけ(笑)。ウルフマンに対する扱いを徹底的にひどいものにしようかなぁ…と。ところがこの前、実家でJC「闘将拉麺男」4巻を見て不知火為右ェ門ってのもいたな…と急拠この設定にチェンジしました。そういうわけでこんな試合運びになってしまい、全体的に少し長くなってしまいました。どっちにしろ、ウルフマンは負かすつもりだったけどね。それと、エレガントマンはアニメオリジナルで出て来たザ・サイコー超人の中の変身超人カレイヤスを意識して作りました。裏設定ではカレイヤスの弟でゴージャスマンの父…というのが願望(なぜ願望?)です。でも、カレイヤスってよく憶えてないんだよね。

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