キン肉マン特別編
ザ・サイキョー超人の挑戦
第5話「ジムナス10万人計画達成完了!?」
これまでのあらすじ
正義超人VSザ・サイキョー超人軍団の戦いは2戦目まで終わり、1勝1分とサイキョー超人サイドがリード。第3戦はラーメンマンと軟体超人ジムナスマンの戦いだ。
ボクからは見えなかったが、ラーメンマンは厳しい形相でジムナスマンを睨みつけていた。だが、当のジムナスマンは既にチャイナ服風のジャージを脱ぎ捨てている。首に黄色いスカーフ、そして仮面ラ◯ダーを思わせるボディスーツ、そして短パン。全体的にオレンジ色を基調としたコスチュームだ。
「O〜HA〜! ジムナスマンだよ。アキレス腱、クイックイッ!」
「クィックィッ!」
いつの間にか観客席の子供達がジムナスマンに合わせてアキレス腱をのばし始めた。まるでジムナスマンに洗脳されているかのように。
『おーっと、ジムナスマン。子供たちに早くも大人気です。』
「なんの、子供への人気ならわたしも負けん!」
ジムナスマンに対抗意識を燃やして王子がしゃしゃり出て来た。
「♪牛丼ひとすじ300年、早いの美味いのやっすいの〜」
ガコーン!!
王子の持った牛丼の丼から牛がハンマーで王子を殴った。倒れる王子。
観客席が笑いに包まれる。
「笑ってもらってキンちゃんしあわせ…」
ボクはそのまま気絶する王子を引きずって正義超人側ベンチへ戻した。
「子供たち、プレゼントだよ。」
ジムナスマンは観客席の子供たちにCDを配り始めた。
「さあ、これで『おはス◯ジムナスティック』を踊ってくれ! 皆で10万人計画だ。」
『セコンドアウト、セコンドアウト』
ジムナスマンはリングに戻り、ゴングが鳴った。
カーン!
「ハーッ!」
ゴングとほぼ同時にラーメンマンがソバットを繰り出した。スピード、タイミングともに完璧。回避は不可能だ。誰もがそう思った瞬間…
グニャリ
「な、何ぃ!?」
『あーっと、ラーメンマンのソバットが軽がると避けられたーっ! これは…わたしの目の錯覚でしょうか。一瞬、ジムナスマンの体が曲がったような…』
いいや、これは目の錯覚ではない。ジムナスマンはラーメンマンのソバットが当たる部分だけを器用に曲げていたのだ。これが「おは◯タジムナスティック」の成果なのか?
「さあ、ラーメンマン。ボクにそのスピード溢れる技を次々と繰り出してくるんだ。ボクはこの場から一歩も動かないから。」
ジムナスマンは自信たっぷりに言い放った。これは明らかにワナだ。おそらくは…
「いけない、ラーメンマン。誘いに乗っては。」
ボクはラーメンマンにアドバイスをしたが、ラーメンマンは攻撃を仕掛ける。確かに攻撃をしなければ勝てない。だが…
『あーっと、これはすごい。ラーメンマンが目にも止まらぬ早さで突き、キック、パンチを放ちますが、ジムナスマン、これを一歩も動かずにすべてかわしているーっ!』
「ラーメンマン、ジムナスマンはあなたに攻めさせるだけ攻めさせ、疲れを待ってから一気に攻撃するつもりですよ。」
「フフフ…その通りさ。だが、もう遅い。」
『ラーメンマン、攻め疲れたのか。ガックリと膝を落としたー!』
「ジムナス・クレイドル!!」
ジムナスマンは自分の手足をゴムのようにラーメンマンの手足に絡みつけるとラーメンマンをグラウンドに寝かせた。そして…
『あーっと、ラーメンマンの体が回っているー。10回、11回、12回…まだまだ回り続けている! ラーメンマンもこのままなす術もなく敗れ去っていくのかーっ!!』
いや、ラーメンマンも抵抗はしている。しかし、水を押すようにジムナスマンの体はラーメンマンの攻撃を受け流し、全く効果がなかったのだ。
「これが『おは◯タジムナスティック』の成果さ。この試合を観ている子供たちも、もうすぐ虜になるね…」
その時、観客席にいた少年が正義超人側のベンチに歩み寄ってきた。
「コラコラ、ボウズ。こんな所に来てはいかんぞ。」
「テリーマン。」
「何だい、ボーヤ。」
「試合前にジムナスマンが配ってたCDがあるんだけど、ボク、ラーメンマンが大好きだからこんなのいらないよ。だから、噛ませ犬のテリーマンにあげる。」
「サ…サノバビ…そ、そうだ! 確かジムナスマンは…」
怒りの表情を浮かべようとしたテリーが何か名案を思いついたようだ。
「ヘイ、誰か! CDラジカセを持っていないか。」
テリーマンは笑顔で少年に言った。
「ボーイ、キミのおかげでラーメンマンは勝てるぞ。」
「♪自由の女神のほっぺに〜キスして〜 ローマのラビ〜オリ、トレビア〜ン…」
軽快な音楽が流れ始めた。と…その時、ジムナス・クレイドルをかけていたジムナスマンが急に技を解いた…と思ったら、踊り始めた。
「そ…そうか。テリーマン、あなたは…」
「そうさ、ミート君も知っているだろう。あいつはこの『ミラクル・モーニング』を聴くとこの動きしかできなくなるのさ。」
「さすがは宇宙一の頭脳派超人。」
王子がテリーマンを褒め讃えたが、この言葉を王子が誰かれ構わずに使っていると感じるのは僕だけだろうか。慌てたのは、サイキョー超人側のボス・ドラゴフェニックスだ。
「おい、バケモノ。向こうのリングサイドへ行き、あの音楽を止めてくるんだ。」
「オオ!!」
バケモノが、こっちのリングサイドへ近付こうとした。
「そうはさせるか。」
『あー―っと、ラーメンマンの強烈なフライング・レッグ・ラリアートがジムナスマンに炸裂ーっ!!』
ジムナスマンは場外にふっ飛び、バケモノと激突した。初めてラーメンマンの攻撃がジムナスマンにヒットした。
「動きさえ封じればこっちのものだ。ジムナスマン、お前に恨みはないが倒させてもらう。トリャーッ!」
ラーメンマンは倒れても「お◯スタジムナスティック」を踊っているジムナスマンを肩に担ぐとそのまま跳び上がった。この体勢は…
「九龍城落地(ガウロンセン・ドロップ)!!」
さらにジムナスマンを立たせたラーメンマン。
「閃脚萬雷!!」
空中からラーメンマンの稲妻のような蹴りが何十発も入った。着地したラーメンマンは最初にジムナスマンにかわされたラッシュを再び開始した。
「闘将乱舞!!!」
『あーっと、ジムナスマンの配ったCD「ミラクル・モーニング」が流れ出してからラーメンマンの大攻勢。ありとあらゆる技をジムナスマンに叩きこんでゆくーっ!! これは一体どうしたことでしょう!?』
どうしたもこうしたもない。ジムナスマンは自分の最大の武器でもあり、弱点でもある「ミラクル・モーニング」を自ら配っていたのだから…
「ストップだ!」
ドラゴフェニックスがストップをかけた。これ以上、戦わせても意味がないことを悟ったのだろう。ジムナスマンの体を心配して…ということを考えると、リーダーとしてはいい判断だ。
カンカンカンカンカンカン!!
『あー―――っと! ラーメンマンVSジムナスマンの一戦は9分26秒、闘将乱舞でラーメンマンの勝利だーっ! これで対戦成績は1勝1敗1分けと正義超人側は対戦成績を五分に戻しましたーっ!!』
「あ…危なかった。あの音楽が流れていなかったら、わたしはこうして勝ち名のりを受けることができなかったろう。テリーマン、ありがとう。」
「礼なら、そこのボーイに言ってくれ。」
「少年よ、ありがとう。」
「ううん、ラーメンマンの役に立ててよかったよ。」
「さて、ミーからもたっぷりお礼をさせてもらおうか。」
テリーが邪悪そうに迫ったので少年は逃げ出した。それでも追いかけるテリー。まったく大人気ないというか、何というか…
そして気絶し、タンカで運ばれながらもジムナスマンは「おはス◯ジムナスティック」を踊っていた。
「♪合言葉はOHA! キュールキュル、エンジン〜がうなってる〜 合い言葉はOHA! 動き出す、ミラクル・モーニーング…」
あとがき
ラーメンマン、結構マジな戦いをしていたのに、決め手がアレですかぁ。分かっていると思いますが、テリーはステカセ戦の時と同じ感じです。よく考えたら、いや、よく考えなくても正義超人の戦いぶりは卑怯そのものです。無抵抗になってしまったジムナスをあそこまでいたぶるなんて… というわけで、思いきり僕の趣味に走ってしまったジムナスマンもこれで一応出番がなくなりました。やっとマトモな展開に移れるか…な? それと「闘将乱舞」は「とうしょうらんぶ」と読みます。いくらラーメンマンだからと言っても「たたかえらんぶ」ではありません。これは某RPGに出てくる技の名前をそのまま使いました。ラーメンマンにピッタリだったんで。元ネタが分かった方には賞金100億超人ドル(ウソ気味)。
第6話へ|ノベルリストに戻る