キン肉マン特別編
ザ・サイキョー超人の挑戦
第7話「戦慄! ダーク・コンビネーション!!」


これまでのあらすじ
正義超人VSザ・サイキョー超人シリーズ第4戦。サイキョー超人側は女性戦士・レッドバロンを出して正義超人たちの戦意を喪失させる作戦に出る。しかし、突如現れたビビンバとの対決となり、その計画は脆くも崩れ去った。ビビンバはレッドバロンと引き分ける。

「スグルさま、どうだった? わたしもなかなかでしょ?」

リングから降りたビビンバさんはそのまま正義超人側のベンチに居ついてしまった。

「フ…フン…まあまあじゃ…」

王子はあんなことを言っているけど、ビビンバさんの試合中は、赤面しながら心配そうに見てたくせにぃ… あまり王子をいじめるのもかわいそうだ。ボクはわざと王子に話題を持ちかけた。

「王子、次の試合は誰が出るんです?」

「うーむ、わたしの分はビビンバが出てしまったからのう。次はロビン…ウォーズマン…で、テリーの順となっておる。」

「王子! あなたが戦わないでどうするんですか!!」

「まぁまぁ、いいじゃないか。ミートくん。」

そう言ってボクを止めたのはロビンマスクだった。

「ですが…」

「キン肉マンは我々の最後の切札だ。わざわざ引っ張りだすこともない。わたしたちだけで奴等を倒せればそれで万々歳だ。」

ロビンはそのまま颯爽とリングに上がった。そしてリング上から…

「ドラゴフェニックスよ。提案がある。このままわたしたちがシングルで戦い続けるだけでは時間がかかり過ぎるし、作者もいささかダレ気味になっている。そこで…だ。この試合はわたしとウォーズマン、そしてそこのベールを被っている二人の超人でタッグを組んで雌雄を決するのはどうかな!!」

このロビンの提案…何か勝算があるのだろうか? ロビンにその気があるということをドラゴフェニックスも十分に分かってるはずだ。だとしたら、迂闊に提案を飲むことは…

「フッ…よかろう。その方が観客も喜ぶしな…」

『あーっと、正義超人VSサイキョー超人シリーズ第5戦はタッグマッチとなりましたーっ!』

「ウォーズマン、大丈夫か。さっきの試合観戦でお前の精神系に異常が生じているんじゃないのか…」

ラーメンマンが心配そうに話しかけた。

「いや、何とか大丈夫だ。」

「そうか…それではかねてよりロビンと研究中だったコンビネーションも大丈夫のようだな。」

「ラ、ラーメンマン…どうしてそれを!」

「ロビンがタッグを提案…となると、それなりの理由があることぐらいはすぐに分かるさ。頑張ってこい!」

「ああ!!」

ウォーズマンと同時にサイキョー超人側の二人がリングインした。ギャラクティカとワイルド・ジョーカーの二人だ。

『さあ、サイキョー超人最後の二人がベールを脱ぎましたーっ!』

ギャラクティカはボクサー風の恰好をしている。普通のレスラーが穿くようなショートタイツではなく、トランクス姿だ。そして両腕にはグローブを着け、どことなく車田◯美風だ。そしてワイルド・ジョーカーの方は…一言で言うならピエロのような恰好をしている。小さなマントをつけ、顔にはペインティングが施されて素顔がハッキリとは分からない。

リングの向こうでは、ドラゴフェニックスが何か小声でつぶやいていたが、ボクにはよく聞こえなかった。

「ロビンよ。そろそろお前がタッグを提案することは読んでいた。だから…」

一方、リング中央では…

「超人師弟コンビが相手かい。ヘッ…腕が鳴るぜ…」

「ま、お手やわらかにたのみますよ。」

二人はそれぞれ独特の物腰で超人師弟コンビに話しかけた。

『セコンドアウト!セコンドアウト!』

「ロビン、気をつけて下さい。相手もこちらの要求を飲んだのは何か勝算あってのことです。」

「ああ、分かってるよ。ミートくん。」

カーン!

ゴングが鳴った。リング上で対峙するのはウォーズマンとワイルド・ジョーカーだ。両者はリング中央で力比べを始めたが、ウォーズマンがじりじりと押している。だが、ジョーカーはうまく切り返すとウォーズマンを巴投げにもっていった。

「その程度の投げ、全く効きはしないぜ。ジョーカーさんよ。」

「クックック…そうですか…わたしはあなたのような力だけの超人とは違うんですよ。」

「な、何ィ!?」

「ウォーズマン、熱くなるな!」

「ロビン、心配するな。こんな奴、一発で仕止めてやるぜ! このベアークローでな!! 食らえ、スモル・ズロイ・ズヴィスダ(漆黒の魔星)!」

『あーっと、ウォーズマン必殺のスクリュードライバーだ!!』

だが、ジョーカーの方にはかわす気配が全く感じられない。そして、自分のマントに手をかけると…

「待ってましたよ…ネガ・ディメンション!」

ジョーカーがマントをウォーズマンの前に振りかざすとウォーズマンがその中に吸い込まれるように消えていった。そして…

『あーっと! ウォーズマンが吸い込まれた瞬間、マントからウォーズマンが飛び出してきましたーっ!! そしてそのままロビンのいる赤コーナーに突っ込んでいくーっ!』

「ウォーズマン、それっ!」

ロビンは間一髪でスクリュードライバーをかわすと、ウォーズマンの体を受け止めた。

「ロ、ロビン! これは一体何なのだ… オレはまっすぐにスクリュードライバーを放ったはずなのに…」

「分からん…ただ技の名前からすると、あのマントはどうやら次元を操る力を持つようだな。とにかくあの超人は何が飛び出すか分からん。わたしが様子を見よう。」

色々な意味で熱くなりやすいウォーズマンを制御できるのは、やはりロビンしかいない。ロビンがウォーズマンと交替した。

「おやおや…ナイト様のお出ましですか。それならば…」

ジョーカーもギャラクティカと交替した。

「ロビンマスク…一度手合わせ願いたかったぜ。オレのパンチがあんたの防御テクニックに通用するかどうかな…そりゃそりゃそりゃそりゃ!!」

交替早々、ギャラクティカの激しいラッシュだ。だが、ロビンは一発一発をしっかり見極めて全て紙一重でかわしている。

「さすがだな…だが、これならどうだ。マグナード・ファントム!!!」

ギャラクティカが左腕から放ったパンチは灼熱の玉のようなものを発した。

「ロビン、左だ。」

ウォーズマンのアドバイスでロビンがとっさに左に避ける。ギャラクティカが放った灼熱の玉は公園のジャングルジムに直撃。ジムはアメのように曲がってしまった。

「チッ…外したか。」

「クックック…ギャラクティカよ。そんなに焦るものではない。ドラゴフェニックスさまからも言われているだろう。そのようなスキのある大技は相手の体力を奪ってからだと。」

「すまねえ、そうだったな。」

「今は超人師弟コンビの上をいく我々のダーク・コンビネーションを見せる時ですよ。」

「お、おう。」

「出でよ、プリズムボール!!」

ジョーカーが左手を上げると、そこから光の玉が出現し、頭上10メートルくらいの高さまで上がった。

「フフフ…これぞ、ダーク・コンビネーション…」

「そしてオレの出番だ…シューティング・スター・フィスト!!」

『おーっと、ギャラクティカがパンチを放ちましたが、その方向は…リング上のロビンではなくリング上空だーっ!』

確かにとんでもない方向にパンチを打ち出している。だが、ギャラクティカのパンチによって放出された光弾の向かう先は上空のプリズムボールだった。光弾はプリズムボールに当たると、光の雨となってリング内に降り注いだ。

『あーっと、プリズム・ボールに反射されたギャラクティカのパンチ。これはまさにその名の通り流星のようだーっ!!』

リング上に降り注ぐ光の雨はロビンを容赦なく襲ったが、そのあまりの眩しさに二人の様子が見えない。

「ロビーン!!」

ウォーズマンがロビンの名を叫ぶが、助けには行けない。迂闊に飛び込もうものなら光の雨をまともに浴びてしまうからだ。

「そら、もう一発!」

光でよく見えないようだが、ギャラクティカが第二波を放ったようだ。再び光の雨がリングを覆い尽くす。

『あっと、ようやくリングの様子が見えるようになってきました。こ…これは!』

リング上にはロビンがダウンしていた。そしてマットはクレーターのようにボコボコになっている。

「ウウ…タッグを挑んだのは逆に向こうの思うツボだったかもしれん。あの二人が本領を発揮するのは間違いなくタッグだ…」

「何を言ってるんだ。そんな弱気なことを言う男なんてオレの師匠なんかじゃないぜ。オレたちには誰にも負けないコンビネーションがあるじゃないか!!」

「フフフ…まさかお前にそんな事を言われるとはな。」

ロビンはふと、ウォーズマンのベアークローに目をやった。何かを思いついたようだ。

「ウォーズマン、お前のおかげであいつらのダーク・コンビネーションを破る術が見つかったぞ。」

ロビンはウォーズマンに耳打ちをした。だが、リングの外にいるボクにはよく聞き取れなかった。

「いいか、ウォーズマン…シューティング・スター・フィストの回避は…だが、それだけではダメだ。おそらくダーク・コンビネーションの中枢は…そこで…」

「エエッ…ロビン、そんな体であれを使ったら…」

「心配無い。持ちこたえてみせるさ。」

「おい、何をダラダラと話している。どんな小細工を練ってるか知らんが、オレたちのダーク・コンビネーションを破ることなど出来はしない。」

「クックック…その通り。」

「見せてやろう。わたしたち、正義超人のコンビネーションをな!!」

ロビンは何を思ったのかウォーズマンの足を掴むとそのままウォーズマンの体を振り回し始めた。これはまるでジャイアント・スイングだ。

「リディノイ・スミェルチ(氷の竜巻)!」

よく見ると、ウォーズマンはベアークローを構えている。

「ギャラクティカよ。そんなコンビネーション、シューティング・スター・フィストで粉砕してやりなさい。」

「おお!」

「シューティング・スター・フィスト!!」

三発目のシューティング・スター・フィストだ。光弾がプリズム・ボールに当たり、四散する。

「ベアークロー・アンブレラ!」

『おーっと、ウォーズマンの鉄の爪・ベアークローが伸びたーっ!』

爪先がロビンの頭上…つまり内側上方に向けられたベアークローはその名の通り傘のように見える。光の雨はその傘に全部弾かれていった。

「な、何ィ!?」

驚くギャラクティカの目の前にはロビンとウォーズマンが迫っていた。ウォーズマンはベアークローの向きを外側に変えた。

「うわああーっ!」

ギャラクティカが竜巻に蹴散らされた。だが、ロープ越しにジョーカーがマントを振りかざして待ち構えていた。

「今度は次元の狭間に閉じ込めてやる。クローズド・ディメンショ… くっ…マントが風で…」

ジョーカーのマントは竜巻にあおられ、まくれ上がった。

『ロビンとウォーズマンの合体攻撃は、ワイルドジョーカーさえも蹴散らしていったーっ!!』

「ようし、ウォーズマン。ダーク・コンビネーションの中枢となっているのはこいつだ。」

ウォーズマンはジョーカーをリング内に引きずりこんだ。

「スタルノーイ・カルナヴァル(鋼鉄のカーニバル)!!」

ウォーズマンのベアークローによるメッタ突きがワイルド・ジョーカーにヒットする。

「それっ!」

ウォーズマンは既に虫の息になっているワイルド・ジョーカーを投げ上げた。ロビンマスクは一瞬フラついたが、それを追うように高く飛び上がると、その足でワイルド・ジョーカーの頭を捉えた。

『あ〜っと! この体勢は〜っ!!』

「ロビン・スペシャル!!」

ロビン・スペシャルが完璧に決まった。血を吐いてKOされるワイルド・ジョーカー。これで二対一になり圧倒的に有利だ…そう思った瞬間…

「こ…これで…ダーク・コンビネーションは…封じた…あとは…頼…む…」

ロビンもその場に倒れてしまった。やはり、シューティング・スター・フィストのダメージは大きかったのか…

「ウ、ウチーティル(し、師匠)…」

「ウォーズマン…わたしが倒れても…心と…心の…コンビネーションを…見せて…や…れ…」

「ぐっ…さっきはよくもやってくれたな。どうやら、頼みの綱のロビン先生もいなくなったようだな…」

リディノイ・スミェルチを食らったギャラクティカが立ち上がった。

「ウチーティル…オレは…オレは…」

ウォーズマンはその場に立ちつくしていた。

あとがき

何だかんだ言って結構呆気なかったですね、ワイルド・ジョーカー。結局魔法のマントやミラーボールもどきを出しただけじゃん…とミラー貝入さんあたりからお叱りの書き込みがきそうです。彼は道化の格好をしてますが、実は裏設定ではデビル・マジシャンの師匠なんです。まぁ頭脳労働担当だったから、打たれ弱いんでしょうね。ところで今回、初めてロシア語の必殺技が出ました。技自体は何のこたぁない、スクリュードライバーでしたけどね。次回もロシア語の必殺技出ますんでお楽しみに。

第8話へノベルリストに戻る