キン肉マン特別編
ザ・サイキョー超人の挑戦
第8話「激突! 史上最大のパワー!!」


これまでのあらすじ
正義超人VSザ・サイキョー超人シリーズの第5戦はタッグマッチとなった。ロビン・ウォーズマンの超人師弟コンビに対するはギャラクティカとワイルド・ジョーカーのコンビ。ダーク・コンビネーションに苦しめられるロビンだったが、ウォーズマンとの合体攻撃でワイルド・ジョーカーを仕止めダーク・コンビネーションを封鎖。だが、ロビンも…


「お前らはジョーカーを倒したことで、ダーク・コンビネーションの全てを封鎖したつもりだろうが…」

ギャラクティカは頭上を指さした。そこにはまだ、ワイルド・ジョーカーが放ったままのプリズムボールが輝いていた。

「まだシューティング・スター・フィストは撃てるんだぜーっ!!」

『おーっと、ギャラクティカ、4発目のシューティング・スター・フィストだーっ!』

だが、ウォーズマンはその場から一歩も動かない。

「ど、どうしたんじゃ…ウォーズマンは…早くリングの外に避難せんとロビンみたいに…」

「そ…それなら心配無用だ…」

リングを降りたロビンが意識を取り戻した。

「どういうことなの?」

「さっき、ウォーズマンに…シューティング・スター・フィストの破り方を…教えておいたのだ。ウォーズマンのスピードなら、多分…大丈夫だろう…」

「しかし、あんな雨のように降り注ぐシューティング・スター・フィストを破るなんて…」

「あるだろう…一つだけ安全な場所が…」

「ハッ… そうか……」

ラーメンマンが何かに気付いたようだ。

『おーっと、これはウォーズマン、ギャラクティカの動きに合わせてシューティング・スター・フィストを避けていくーっ!!』

「な…なるほど、シューティング・スター・フィストを撃った本人ならばどこに落ちるか分かるから、その動きをトレースすれば…」

「そういうことだ、テリーマン。」

ウォーズマンは一発も受けることなくシューティング・スター・フィストを全て避けきろうとしていた。

「チッ…まさか、こんな破り方があるとはな…だが…避けるのに意識が集中して…」

一瞬早くシューティング・スター・フィストを避け終わったギャラクティカが、ウォーズマンに対してパンチを打ち込もうとしていた。

「背中がガラ空きだぜーっ!!」

「ぐわっ!」

ウォーズマンはまともにギャラクティカの必殺パンチをくってしまった。

「な…なんてパワーだ。シューティング・スター・フィストは破ったものの、これではあまりにもパワーが違いすぎる。このままでは…」

ウォーズマンは蹲(うずくま)った体勢のまま、ロビンの方に目をやった…

「ま…まさか…」

ロビンが何かを察知したようだが、ボクには二人に通じ合う気持ちは分からなかった。ウォーズマンの目の光が消えたかと思うと、彼は何かをつぶやき始めた。

「信じることのできるもの…ザボータ(オモイヤリ)…ラスカ(ヤサシサ)…ルボーフ(アイジョウ)…それらに起因するドルージバ(ユウジョウ)…そして…ウチーティル(師匠)!!」

その瞬間、ウォーズマンの目が一瞬青白い光を発した。

「い、いけない。ウォーズマンを止めなくては!」

「ど、どうしたんだ。ロビン! そんなに取り乱して。お前らしくないぞ…」

「ウォーズマンはリミッターを解除する気だ。」

「リミッター!?」

「そうだ。ウォーズマンは今までの戦いで力をセーブして戦っていたんだ。そう…このわたしのヨロイと同じくな。だが、その効果はわたしのそれとは比べ物にならない。ウォーズマンの普段の基本超人強度は100万パワーだが、リミッターを解除すると2500万パワーにまではね上がる。」

「!!」

「そんな強力なものなら、なぜ今まで解除して使わなかったんだ。」

「スグルさま、だからこそのリミッターなのよ。」

「その通りだ、ビビンバさん。当然、リミッターを解除したウォーズマンは絶大なパワーを得たが、それと引き換えにあいつの身体には想像を絶するほどの負担がかかっているはずだ。」

(ウォーズマン…)

一同の間に戦慄が走った。まさか、ウォーズマンにそこまでの力が秘められていたとは… そして、ウォーズマンの声で、ボクたちは再び現実に引き戻された。

「リミッター解除完了!!」

ウォーズマンはゆっくりと立ち上がった。別段、ウォーズマンに変わったところはどこにも見受けられない。しかし、彼の体の中には想像を絶するほどのパワーが溢れ出そうとしているのだろう。

「ロビン…」

テリーが心配そうに声をかけた。

「リミッターを解除した今となっては、ウォーズマンの勝利は確実だろう。だが… わたしは勝ち負けよりもウォーズマンが生きてくれるだけでよかったのに…」

ロビンは頭を抱えこんでうなだれた。そこまで二人の絆が強かったなんて…

「ケッ…何をやろうが同じ事だ。オレとお前とではパワーが違うんだよ!」

「ほざけ! スタルノーイ・カルナヴァル(鋼鉄のカーニバル)!!」

ワイルド・ジョーカーに大ダメージを与えたベアークロー攻撃だ。しかも、パワーが増大した今、あまりにも速すぎて何を繰り出しているのか分からない程だ。観客席からも驚きの声が沸き上がる。だが、それは…

『あーっと、ウォーズマン、目にも止まらぬ速さでベアークローをくり出しますが、ギャラクティカはこれを全て紙一重で避けているーっ!!』

「な…何故だ…」

「だから言っただろう。お前とオレとではパワーが違うと。オレの超人強度は5800万パワーだ。」

そう言うと、ギャラクティカはカルナヴァルでガラ空きになっているウォーズマンのボディにボディブローを叩き込んだ。

「さらにオレの最大の必殺技、マグナード・ファントムの威力は2億4000万パワーだ。」

「な…何ィ…」

「ハハハハ…そう言ってるうちに、ウォーズマン。お前の肩からはケムリが出てるぜ。今のお前なら、マグナード・ファントムを使うまでもねえぜ。」

確かに試合が始まって20分しか経っていないのに、ウォーズマンの肩からは煙が出ている。リミッター解除のリバウンドが確実にウォーズマンの体を襲っている証拠だ。

「く…リミッターを解除しても、まだあいつには勝てないのか…」

「さあ、楽にしてやるぜ。」

ギャラクティカは止めの一撃を振り下ろした。が…

「オレの…いや、オレたちの真の力を見せてやるぜ!」

ウォーズマンは紙一重でその一撃をかわすと、コーナーポストの上に立っていた。その目はロビンをじっと見つめていた。

「ウォーズマンよ。お前がそこまで覚悟しているのなら、もう、わたしは敢えて止めはしない。好きなようにやるんだ…」

ロビンの目は全てを受け入れているようだった。

「スパスィーバ、ウチーティル(ありがとう、師匠)。」

ウォーズマンの声は小さくて聞き取りにくかったが、ボクには何を言ってるのか分かる気がした。

「2500万パワー+2500万パワーで5000万パワー!!」

ウォーズマンが両腕を上げると、そこには2丁のベアークローが輝いていた。

「いつもの2倍のジャンプで5000万×2の1億パワー!!」

ウォーズマンが天空高く飛び上がった。

「そしていつもの3倍の回転を加えれば…」

この体勢は…まさか…

「ギャラクティカ!! お前のマグナード・ファントムを越える3億パワーだ!!」

そう、バッファローマン戦で見せた1200万パワー・スクリュードライバーだ。いや、今は3億パワー・スクリュードライバーとなってギャラクティカを確実に仕止めようというのか…

「ウージャス・カロール(恐怖の大王)!!」

「ぐっ…そんなものはまやかしだ。マグナード・ファントム!!」

光の矢のようなウォーズマンのスクリュードライバーと火の玉を発するギャラクティカのマグナードファントム…超パワー同士の激突だ。

「く…苦しい…」

マグナード・ファントムによって発せられた火の玉と真正面からぶつかるウォーズマン。ウォーズマンを包む光の色が青から赤に変わり、肩当てが弾け飛んだ。しかし、ウォーズマンはそれでも回転をやめない。

「うおおぉぉぉぉぉ……!!!」

ウォーズマンのスクリュードライバーは回転を増し、マグナード・ファントムを完全に粉砕した。

「な、何ィ!? マグナード・ファントムを真向から砕くヤツがいるとは…」

「これが…これが…オレたちの力だーっ!!!」

ズガガガガガガガガ…

ウォーズマンのスクリュードライバーがギャラクティカに完全に決まった。

『あーっと、今10カウントが入りましたーっ! ウォーズマンの勝利だーっ!!』

だが、ウォーズマンは立ったまま、ピクリとも動かない。ただ、装甲がはがれた肩がスパークしているだけだ。

「ウォーズマーン!!」

ロビンが叫んだ。だが、ウォーズマンはもう…そう思った時だ。

「ロ…ビ…ン…」

かすかにウォーズマンの声がした。まさか…

「ウォーズマン、生きていたのか。」

「ロ…ビン…今のオレには…帰るところがある… だから…どうしても…死ねない…の…さ…」

ロビンはリングに上がると、ウォーズマンを抱え上げた。そのままリングを降りようとするロビンとウォーズマンに呼びかける声がした。

「待て!」

「ギャラクティカ…か…」

「お前、なぜ本気を出さなかった…その気になれば、今のでオレの息の根を止めることができたはずだ!」

「ギャラクティカ…お前にも…帰るところが…ある…だろう…」

ウォーズマンの言葉にギャラクティカは肩を落とした。

「自分とオレの両方とも生かすためにわざと… オレの…負けだ…」

後日、ボクはキン肉族超人予言書を見て驚くことになる。そこにはこう記されていたからだ。『1999年2の月の項、虹色の騎士堕ちる時、恐怖の大王が現れ正しき者を勝利に導かん』…と。

あとがき

実は、今回のシリーズはこの話を書きたかったというのが一番の理由だったんです。でも、この話も賛否両論かも… 決着のつけ方が何となくパクリっぽいし、力技で片付けちゃったみたいになってるし… さらに「ウォーズマンは華々しく散ってこそ…」って方もいらっしゃるだろうし(それはテリーか?)… 必殺技もロシア語に徹底する必要もなかった気がしますね。ゆでイズムに沿う気なら「チェルノブイリ・クラッシュ」とかでも十分ですし。自分の自己顕示欲でロシア語オンリーという暴走ぶりになってしまいました。ごめんなさい。

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