キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第1話 開催、第3回超人オリンピック!の巻

強さとは何か…

力を制する鮮やかなテクニック…
何者をも打ち砕く圧倒的なパワー…
肉体を凌駕する精神力…
そして…


東京−田園調布
我らがキン肉マンとミートが住むここではいつもの日常が始まっていた。

「ミート、朝食はまだかのう。」

「王子、ちょっと待っていて下さいよ。あー、また冷蔵庫の中がスカスカだ…」

…と、これもミートにとってはいつもの事だ。そして今日も彼らは吉野家に牛丼を食べに行くことになるのだ。しかもツケで。これもいつもの事…

「さあて、今日も巨人は勝っとるかのう…」

ミートを余所に、キン肉マンはいつもの通り布団をかぶったままテレビのスイッチを入れた。いつもの事だ。だが、ここからがいつもと違っていた…

『…ということで、またもや超人オリンピック開催の運びとなったわけですね。』

『まあ、そういうことだ。』

朝の人気番組「ズームアップ朝」のセットを背に映っていたのは委員長ことハラボテ・マッスルと読テレの吉貝アナだ。後ろのガラス張りの窓からはプラカードを持った人たちがいるが、白黒テレビの上にガタがきているテレビでは何と書いてあるかよく分からなかった。それ以前にそんな事は話に何も絡まないのだが…

『しかしスグルくんにも困ったものだ。まさか2度も王座を棒に振るなど長い超人界の歴史でも類を見ん。』

「…れっ?」

さすがのキン肉マンも自分の事が話題に挙がり、興味津々でテレビを見つめた。だが、途中から見始めたためにどうも話の要領を得ない。

「どうしたんです、王子…? 珍しく画面を食い入るように見つめて。」

『…ということで只今、田園調布のキン肉マンのブタ小屋の真ん前に来ております。』

画面が切り替わり、レポーターが映し出された。画面の右上には「LIVE(生放送)」と表示されている。白黒テレビのぼやけた画像のバックにはキン肉ハウスが映っている。

「おお…どこかで見た豪邸かと思ったら、わたしの家ではないか。」

「………」

とりあえず無言で流すミートだったが、自分たちの家が映し出されて気にならないわけではない。しかし、何となくイヤな予感がミートの頭の中をよぎる。何かは分からなかったが、それも数分間の後に知らされる事になる。

「それにしてもどうしたんだろう…? 国民栄誉賞なら王位争奪戦の直後に貰ったばかりなのに…」

キン肉星の次期大王が日本の国民栄誉賞を貰うのも何だか変な話だ。だが、そんな事もここで論じるには値しない話題だ。取り敢えず、ミートはドアを開けた。

カシャカシャカシャ…!

「あっと、ミートくんです。」

カメラのフラッシュに出迎えられてミートは目をしばつかせた。報道陣が大挙して押し寄せてきたのだ。肉スポ、スポ肉、スポーツ無知をはじめとするスポーツ紙だけでなく一般紙、そしてプロレス誌… これだけいると、仮にただのカメラ小僧が混ざっていたとしても気付かれないだろう。

「わ…何ですか、これは?」

アポ無しでフラッシュの洗礼を浴びて少し不機嫌になるミート。

「おや、ご存知ないのですか。実は…」

読テレのスタッフが口を開きかけた、その時だった。

『ワシから説明しよう。』

屋外用のモニターテレビから声がした。そこには委員長が映っている。

「おお…テレビが落ちとるではないか。」

今頃になってキン肉マンもひょっこり姿を見せてきた。その一言はギャグなのか本気なのかは分からない。それはいいとして、委員長は役者が揃ったとばかりに話し始めた。

『スグルくんも来たか。実はな…スグルくんの超人オリンピックチャンピオンとキン肉星の次期王座剥奪が決定したために来週から超人オリンピックを開催することにしたんじゃ。』

「エエ…!!」

驚く二人。そして逆上するキン肉マン。

「こら、おっさん! 何でやねん!!」

『何でも何もキミらが悪いんじゃ。3年以内にタイトルマッチを組んどらんからのう。』

「な、何じゃそれは!? 大体何でそんな大事な事は前もって教えておかんのだ?」

『この前も警告状を送ったはずだが…』

委員長の処置は正しかったが、相手がズボラなキン肉マンでは警告状程度ではいささか不親切だろう。

「ちょっと待って下さい。それはともかくとして、なぜ王子の次期王位継承権まで剥奪されるんですか?」

ミートが反論する。タイトル剥奪は仕方無いにしても、確かに王座まで…とは、誰の目にも納得がいかない。だが、委員長の言は…

『おや、聞いとらんかったのか。超人オリンピックチャンピオンとキン肉星王位継承権が一緒のタイトルになったことを。王位争奪サバイバルマッチとの後で真弓くん…ゴホン、キン肉大王と話し合ってな… スペシャルマンの言を容れてみることにしたのじゃ。もちろん100人の超人の神の承諾も得ておる。』

二人の脳裏には王位争奪戦の決勝でフェニックスと戦った時にキン肉マンの応援に駆けつけた正義超人軍団の一人、スペシャルマンの言葉が思い浮かんだ。「このサバイバル・マッチでおまえが優勝したらその王位の座をかけて再び超人オリンピックで戦おうじゃないか」という…

「スペシャルマン、あいつ〜!!」

キン肉マンは後悔とともにやり場のない怒りを抑えるしかなかった。こうなった今は勝つしかないからである。

『キミの所にも一応参加証は送っとく。まぁ、くれぐれも予選落ちはせんでくれよ。ハッハハハ…』

そう言い残すとモニターの電源がプツッと切れた。キン肉マンとミートはその場に呆然と立ちつくしていた。そんな二人をひとしきり撮り終えたカメラマン達は早々に撤収していったが、その後も1時間近く固まっていた。そして二人を現実に引き戻したのは空腹の腹の音だった。

仕方なく、二人は朝食に出かける事にした。だが、二人は移動中、一言も喋ろうとしなかった。町中でキン肉マンのタイトル剥奪と超人オリンピック開催の号外が配られても、おそらくそれを見たであろう人々が二人にかける声も二人には全く届かないように見えた。それは吉野家に着いても同じだった。いつもは特盛を大声で注文するキン肉マンだったが、その日は並を指さすミートくんと一緒に特盛を指さすだけだった。キン肉マンが口を開いたのは、いつものように5杯目を食べ終えて人心地ついた時だった。

「ミートよ。」

「ハイ! 王子、さっそく特訓ですね。」

ミートは待ってましたとばかりに、キン肉マンの言葉に反応する。

「いや、予選会場に泊まり込む準備じゃ。今度は一番乗りせんとな。」

コケるミート。ここはお約束だ。

かくして第3回超人オリンピックが開催されることになった。第一次予選は一週間後…

各国の超人たちは来るべき日に備えてトレーニングを開始した。
中国では…

「ここがラーメンマンのトレーニング場か…」

トレーニング中のラーメンマンの邸(いえ)の扉に謎の影が映った。新しい悪の影が動き出そうとしていた…

◇ラーメンマンに危機が…!!
キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第1話
…/おわり
次号、予選会場に向かうキン肉マ
ンの前に新超人が!?『悪戯小僧』

巻末言
1年程前から温めていた今シリーズ。まだま
だ細かい所は決めていませんが、読者の皆さ
んに活躍してもらう新機軸も考えています。

ノベルリストへ第2話へ