キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第5話 大円盤事件の巻

福岡──第二次予選の会場となるこの街で事件は起こった。


「しかし、アタル兄さんも水くさいのう。あの後すぐ帰ってしまったとはな。」

第一次予選を観戦に来たアタルは予選終了後、そのまま本星に戻ってしまいキン肉マンら正義超人とは会わず終いだったのだ。

「アタルさまも忙しいんですよ。膨大な政務をこなさなくてはならないんですから… あ、そう言えばアタルさまが言ってましたよ。『次に会うのは決勝トーナメントになってからだ』…と。」

「決勝トーナメント?」

「それまで勝ち上がっていろ…ということでしょうね。何せ、キン肉族は王子一本に参加を絞り込んでるようですから、責任重大ですよ。」

「ところで、パパは見かけなかったのか?」

「アタルさまに気を取られていて…そう言われるといませんでしたね。いつもなら、用が無くても飛んで来るのに。」

真弓もえらい言われようだ。だが、その言葉は確かに的を射ている。今回の大会はキン肉マンたちを取り巻く環境が、どことなく違っていた。それを敏感に感じていたのがミートだったのだろう。

「お二人さん、お待ち!」

「ビビンバの姿も見えなかったが…ズビズビ…」

「きっといつものように、陰で見ているんでしょうね。サイキョー超人戦の時もレッドバロンさんがいなかったら、星○子状態で最後まで見届けるつもりのようでしたから…ズルズル…」

「まあ、わたしにとってはその方が集中しやすくていいがのう…ジュルルル…」

ドン!

「またまたぁ…ズルルル…」

言い忘れていたが、キン肉マンとミートのいるのは博多ラーメンの屋台である。

キン肉マンたちだけではない。第二次予選を明日に控え既に多くの超人たちが福岡入りし、博多や中州の屋台街はそうした超人たちであふれ返っていた。

「肉の兄ちゃん、替え玉お待ち!」

「牛丼もいいが、やっぱり福岡に来たらこの博多ラーメンだのう。このとんこつスープがたまらん…ズビズビズビズビッ…!」

凄まじいスピードで替え玉を平らげるキン肉マン。

「王子、明日もあるんですから程々にして下さい!」

こっちはまだ一杯目のミート。

「よっ、キン肉マン。」

屋台にいる二人を見つけ、声をかけたのはウルフマンとサイキョー超人の一人・暗黒横綱のバケモノだった。

「二人とも…ここにいるということは…よく予選を突破できたな。」

「その台詞、そっくりお前に返してやるぜ…」

苦笑するウルフマン。一次予選を一番最後に通過したキン肉マンに言われては世話もない。

「グヘヘヘ…お前らの仲間もだが、ワシらサイキョー超人も全員予選を通過したぞ。」

「さすがはサイキョー超人と名乗るだけあって頭脳も明晰なんですね。」

「待て、ミートよ。ダマされてはいかん。確かこいつらはジョーカーの言う方に向かって動いていたようじゃ。悪魔超人どももカーメンの星占いに頼っとったようだぞ。わたしはどこにつくか目移りしてるうちにみんな見失ってしまったがな。ハハハハ…」

昼間の…しかも星の見えない東京ドームでどうやって星占いをするのかはよく分からないが、考える事はみんな一緒のようだ。

「まあ、それはいいとして…キン肉マン、今日入ったニュースを知っているか?」

「あ…ラーメンマンとウォーズマンが病院からコツ然と姿を消した…というニュースですね。」

「それならわたしも見たぞ。今頃のこのこ予選に参加するとは図々しいにも程があるのう。」

「王子!」

「ハッハハハ、冗談じゃ。」

「これは…オレの推測に過ぎないのだが… ラーメンマンたちは自分たちを襲ったヤツらの足取りを掴んだのではないかと思う。」

「グヘヘ… 確かにそうかもしれん。ワシもギャラクティカと同様にラーメンマンには、ちょっとした借りを返したかったが… 仕方なくこのラーメンで我慢するとするか。」

四人はいつの間にか並んでラーメンをすすっていた。

「ところでウルフマン、確か福岡は初めてじゃないんだろう。」

「ああ、超人相撲の巡業で何度も来てるからな。チャンコの美味い店なら任せておけ!」

「そんな事はどうでもいいが、牛丼の美味い店というのは知らんか?」

「さあな…」

ミート以外のスペースにはラーメンのドンブリが山積みになっていく。このままだと店ごと食い尽くすペースだ。だが、残念ながらそうはならなかった。それは…

ゴゥン、ゴゥン…

「あ、あれを見ろ!」

「おお…何だあれは…!?」

鈍く唸るような音と共に、夜の博多の街が急にざわめいた。キン肉マンたちが屋台を出ると…

ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン…

空には何機とも知れない物体が編隊で飛行している。俗に言うUFOというものだ。この世界ではUFOは別に珍しくはないが、この夜中に無灯火…しかも編隊で飛行するなんて、あからさまに怪しい。

「これは…」

「もしかして、今度の予選を妨害する組織のものかもしれませんね。」

「よし、追ってみよう。」

UFOは博多方面から天神の方面…大まかに言うと東から西に向かって飛行している。キン肉マンたちは跡を追うことにした。

「く、食い逃げだぁ〜!」

屋台のオヤジの声がしたが、キン肉マンたちは聞こえないフリをして脇目もふらずに走り続けた。やがて、昭和通りに入った辺りでキン肉マンの姿がない事に気付く。

「あれ…王子?」

「おい、ミートくん。早く行かないと見失っちまうぜ。」

「待って下さい、王子がいつの間にか…って!」

そう言いかけた瞬間、ミートはコケた。キン肉マンは通りすがりの吉野家で牛丼を呑気に注文していた。

「王子、早く行かないと!」

「まったく、しょうがねえな。」

「グヘヘ…オレにも少し分けてくれよ。」

ウルフマンとバケモノに引っ張られながらもキン肉マンは牛丼をパクつきつつ、UFOの追跡を再開した。

「コラー、食い逃げ〜!」

また気付かないフリをしながら4人。UFOは次第にスピードを落としていく。このコースは…

「ま、まさか…」

「間違いねえな。」

「どうやら…」

「グヘヘ…牛丼…食いたかった…」

UFOは福岡ドームの上空で全機停まった。よく見ると、ドームの屋根が開いている。UFOは唸るような音を止めたかと思うと、静かにドーム内に吸い込まれていった。

10機ほどだっただろうか… 全てのUFOが吸い込まれた後、ドームの屋根が徐々に閉まり始めた。

「とにかく、ドームに行ってみるしかないぜ。」

「おお。」

「グヘヘ…」

夜の福岡で、一体何が起ころうとしているのか…

◇博多の夜のミステリー! 予選会場に降り立ったUFOの正体は!?
キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第5話
…/おわり

巻末言
先週で、ノベルの累計が20編
になっていた。継続は力なり。
盗賊は40人なり(意味不明)。

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