キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第6話 スペース円盤投げの巻

明けて第二次予選の朝…
昨夜のUFO騒動も収まり、福岡ドームには開場待ちの観客の列ができていた。

「えーっと、確かミートくんやったっけな?」

会場前で何かを見つけていたミートは、背後から誰かに呼び止められた。

「あっ、ノーティー…さん…」

「ノーティーでええわ。」

今やテリーマンの一番弟子となっているノーティーは、相変わらずの人なつっこい笑顔を浮かべている。だが、それとは対照的にミートの表情は暗い。それというのも昨夜の出来事に原因があるのだ。

「ノーティー、テリーマンはどうしたんですか。」

「あー、先生ならもうすぐ来るわ。それよりミー坊こそ、こんな所でどうしたんや。キン肉マンはんと一緒やないんか?」

「それなんですよ。実は…」

ミートは昨夜の出来事を話し始めた。あの後ドームの中に消えたUFOを追って、キン肉マンはウルフマンが止めるのも聞かず会場内に潜入したのだが… 実は、そのまま戻って来ないまま夜が明けてしまったのだ。

「ふーん、そりゃ難儀やな。」

「このまま夜まで戻ってこなかったら、王子は失格になってしまいますよ…」

「まだ会場内におるんちゃうか。選手入場になったらオイラと先生で探しといたるから、安心しとき。」

「ありがとう、ノーティー…」

「ミー坊、やからいつまでもクヨクヨしとったらあかんで。ホラ、笑った笑った。」

ミートは、この青年の笑顔につられるように笑顔になった。

夕方―――
ようやく一般客入場の時間となり、ミートはドーム内に入る事ができた。その間、ノーティーやウルフマンに事情を聞いたテリー達によってキン肉マン捜索が開始されたが、キン肉マンが見つかる気配がなかった。ミートは逸る気持ちで会場内の通路を走り回り、ある人影を見つけた。

「ノーティー!」

「おう、ミー坊かいな。ビックリしたわ。」

「お、王子は…」

「あかん… 全然見つからん。手がかりナシや。」

「そうですか…」

「これは先生が言っとったんやけどな、キン肉マンはんが消えはったのは、どうもオリンピックを妨害する組織に誘拐されたとも考えられるそうやで。」

「やっぱり、テリーもそう考えていたのか…」

「やっぱり…って、まさかミー坊も?」

「オイラにはちっとも分からへんけど、キレ者(もん)の先生やミー坊が言うんやったら、そうやろうな。オイラはてっきり、キン肉マンはんがみんなを驚かそうと何処かに隠れてると思ったけどな。」

「なぜ、そんな風に思えるんですか。」

「ん、それはな… オイラがキン肉マンはんと同じイタズラ小僧だからや。オイラの名前はそのものズバリ、ノーティー・ブラット(イタズラ小僧)やし。テリー先生がつけてくれはったんやで。ええ名前やろ。」

「は、はぁ…」

力のない返事を返すミートだった。だが、こんな状況でも笑顔を浮かべるノーティーに、ミートはある親近感を抱いていたのだ。それは、この笑みがどことなくキン肉マンに似ていたからかもしれない。

「せめて競技開始までに間に合ってくれたら…」

そう。ノーティーは笑顔を浮かべているが、現実は待ってくれない。こうしている間にも刻限は着実に迫ってくる。そして―――


『さぁやってまいりました、第3回超人オリンピック第二次予選。一次予選の○×クイズをくぐり抜けて参加人数は15万人から1000人になっております。そして第二次予選はここ、福岡ドームと国立競技場の二ヶ所に分けて行われます。その気になる内容は未だ明かされてはおりませんが…どうやらその謎を解く鍵はその大風呂敷の中にあるものと思われます…』

アナウンサーの流暢な喋りが流れる中、超人たちはパラパラとグラウンドに集まり始めた。ホークスビジョンの下には委員長専用のものであろうと思われるお立ち台…そして、その両脇には巨大な風呂敷包みが居座っていた。ガラの唐草模様がその怪しさをさらに際立たせている。

超人たちが全て集まり、委員長がお立ち台に立った。

「只今より、第二次予選を始める。今回の種目はこれじゃ!」

委員長の背後にあるホークスビジョンに予選種目が映し出された。

円盤投げ

「そして、諸君らの投げる円盤とはこれじゃ!」

委員長の横にある巨大な物体から、巨大ハンドによって風呂敷が取り除かれた。その下からは…

『あーっと、風呂敷の中から山積みになった小型のUFOが現れましたーっ!!』

このUFOは、昨夜博多の街を騒がせたUFOである事は間違いなかった。超人たちは度肝を抜かれ、声もなかった。委員長は得意顔で説明を続けようとした。だが…

ギィィ…パタン。

UFOのハッチが開いたのだ。予想外の出来事だったのだろうか、委員長は言いかけた言葉を止め、UFOの方へ振り向いた。

「やあ。」

ズドドド…!

会場内の全員が一斉にコケた。

「はっはっは。みんなを驚かそうと思って、昨日から隠れておったのだ。」

いないと思っていたキン肉マンがこんな所から顔を出したのだ。委員長は、手を震わせながらも説明を再開した。キン肉マンのこの手のちょっかいには、もはや慣れっ子になっているのだ。ここは何も見なかった事にして流すに限る。

「それで、諸君にはこの実物大の円盤を…」

ゴゴゴゴ…

すごい振動が起こり、ドームの屋根が開いた。実際のところ、こんな振動は起こらないしそんな早くは開かないのだが、そこはご愛嬌だ。ドームの屋根は鷹が羽を広げた形に開ききり、夜空が顔を覗かせた。

「月の方向に投げてもらう! さあ、我こそはと思わん者はおらんか!」

委員長はビシッとポーズを決めて言い放つ。

「オイラがやったるわ!!」

即答で声が上がる。「し〜ん」という反応にならず、取り敢えず安心する委員長だった。

「よーし、最初はノーティー・ブラットからだな。それでは投擲用意!」

委員長がそう叫ぶとキン肉マンが顔を出したハッチが閉まった。

「おわー、開かん。」

ここで普通ならノーティーも投げるのを止めるのだろうが…ノーティーはこういうモノには非常に燃えるタチなのだ。完全に投げるのに集中して、周りが見えていない。ノーティーはそのままUFOの縁(エッジ)を掴んだ。

「うおりゃあーっ!!」

ノーティーの体を軸にしてUFOが猛回転する。ノーティーの手を離れたUFOは、キン肉マンを乗せたまま月に吸い込まれるように消えていった。

「や、やった…」

テリーは我が弟子ノーティーの所作を見て、顔に手を当てた。

「グヘヘヘ…やるな、あいつ。」

「やれやれ、だからオレは止めたんだけどな。」

それぞれの感想を漏らす相撲コンビ。

『さ…て、只今のノーティー・ブラットの記録が出ました。ゲーッ、何と…38万キロ…UFOは月に激突しています!』

ホークスビジョンは月の映像に切り替わった。UFOは完全に月にめり込んでおり、一目でこれ以上はUFOとして機能しない事が分かる。

「本来なら、UFOは自動で戻ってくるはずだが… こうも見事に激突してるとそれもできんな。仕方がないが、スグルくんには自力で戻ってもらうしかないな。」

委員長の一言で、観客席にいたミートは喜びから一気に絶望に突き落とされた。

「そ、そんな〜」

◇月に飛ばされたキン肉マン… 戻って来れるのか〜!?
キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第6話
…/おわり
予選は続く… 次号
『師匠の声』だ!

巻末言
今週号からしばらくお休みに入り
ます。にしても、7秒フォールなん
て初めて見たよ。すごいな大森。

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