キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第9話 最終予選の正体の巻

『50!』

『45!』

『40!…』

第3回超人オリンピック第三次予選・バトルロイヤルは終盤を迎えていた。通過枠の30人まであと僅かだ。

『35!…34!…33!…32!…』

アナウンサーの声だけでなく、歓声がカウントダウンに加わった。

『31!』

『30!!』

カンカンカンカンカン!!

電光掲示板が「30」となり、その瞬間ゴングが高らかに鳴った。

オイルマンの頭上で回り続けていたキン肉マンは、その土台共々目を回してその場にへたり込んでしまった。他の超人たちも戦いから解放されて安堵の表情に変わった。リング上の揺れも次第に収まりつつある。

「う、うーむ…」

キン肉マンはようやく目眩から立ち直ると改めて周りを見渡した。ネプチューンマンにバッファローマン、ロビンマスクにテリーマン、ブロッケンにウルフマン、そしてサイキョー超人の面々等…この大乱戦を制しただけあって錚々(そうそう)たるメンバーだ。その中でキン肉マンはその場にそぐわない超人を発見した。さっきまでキン肉マンがその上で回転していたオイルマンではない。木の葉のように舞っていたキン骨マンでもない。箱形の体に紐のような手足の超人…一応は悪魔超人の一人のステカセキングだ。キン肉マンは近寄って声をかける。

「お前のような三流超人がどうやって残ったんだ?」

「ケッ… 三流とは言ってくれるぜ。オレも今までのような時代遅れのカセット野郎じゃないんだぜ。」

そう言うとステカセは体をカパッと開けた。超人大全集が入っているはずの体の中はがらんどうだ。

「驚いたようだな。ヤツは一念発起して大改造に乗り出したのだ。MP3ユニットを組み込み、カセットの交換も無しに様々な超人の能力を高速で切り替える事に成功したのだ。さらに物理的な駆動部分もないため戦闘中でも安定したファイトができる…」

キン肉マンの背後から解説したのはバッファローマンだ。よく見ると手にはカンペらしき紙を持っている。当然のようだがバッファローマンが何も見ずにこんな長い解説をできるわけがない。バッファローマンはさらに得意気に「MPキング取扱い説明書」と書かれた冊子を読み上げる。

「そして録音機能追加によって戦闘中の超人からの最新データ収集も可能だ。もしかすると…この中で一番怖い超人かも知れん…」

「ところでのう…さっきは一体誰になっとったんじゃ?」

バッファローマンの説明もそっちのけにキン肉マンはステカセに尋ねる。

「ケケケ…一番バトルロイヤル向きの超人だ…」

「何ィ! それは一体…!?」

「しれたこと…六年前のキン肉マンだ。逃げ足だけはピカ一だからな。ケケケ…」

コケる二人だった。

「さて第三次予選はこれで終了となる。今ここにいるキミたちは最終予選へのキップを手にしたわけだ。おめでとう。最終予選の召集まで選手控室で待機してくれたまえ。」

委員長のアナウンスが終わるや否や、リングの大きさが元に戻って板が四方から渡された。超人たちは雑談混じりでそこからパラパラと散っていった。


……………………………………………………


「あれ、テリー…何を書いているんですか?」

ミートはテリーとノーティのいる控室に来ていた。キン肉マンのいる控室に来るついでに寄ったのである。

「ああ、これかい。最終予選進出者全員にプレスセンターから配布されたアンケートさ。」

そう言うと、テリーはアンケート用紙を見せた。好きな食べ物、好きな音楽、尊敬する人物等、こういった質問が20問ほど並んでいる。テリーは生真面目にも事細かに書き込んでいる。

「おっと、記入内容は秘密厳守だった事を忘れていた。」

「ご…ごめんなさい。」

「いや、気にする事はないさ。それよりも最終予選をクリアしたらいよいよ決勝トーナメントだ。」

「いよいよやな、先生。」

「そうだな…」

(いよいよお前の夢が…)

テリーは一人で感慨に耽っていた。


……………………………………………………


約1時間後…最終予選の説明会が記者団の待ち受けるホールで始まった。

「…さて、最終予選に進んだのは30人だが… ここから決勝トーナメント進出者16人に絞られることとなる。」

「約半数に絞られる…ということデスか。」

ジェシー・メイビアが呟く。彼もまたサーフィンで培ったバランス感覚と超人界随一の返し技(カウンターホールド)で、揺れるリング上のバトルロイヤルを乗り切り、最終予選までコマを進めていたのだった。

「そろそろ諸君らも気になってる最終予選の種目の発表じゃ。それは…」

「わかった! ジャンケンでしょ!!」

そう言ったのは言うまでもなくキン肉マンだ。

「栄えある最終予選でやる種目か!!」

「それじゃアミダくじかいな。」

今度はノーティーだ。

「ぐ…こ、こいつら…」

委員長は抑えることにした。この2人にツッコミを入れても時間のムダにしかならないからだ。

「ゴホン…その種目とは…タッグマッチじゃ。」

「!!」

「ここにいる超人たちに2人1組のタッグを組み、別のタッグと戦ってもらう。そして勝った方のタッグが2人とも予選通過になる。」

第三次予選に続いて最終予選でも実戦とあって一同の中にどよめきが起こる。そんな中…

「委員長…!」

そう言って挙手したのはロビンマスクだ。

「何じゃ、ロビン。」

「第三次予選通過者は30人…この人数でタッグを組むと15組になります。ですが…これでは1組分不足するのでは…」

「その質問がくる事は分かっていた。いや…この質問をさせるために人数を調整した、と言うべきかのう。フォフォフォ…」

予想通りの問いが返ってきて満足気に嗤(わら)う委員長。

「それでは?」

「もちろんワシはあぶれた1組をタダで予選通過させる気はない。この組にはある特別シード選手と戦ってもらう。」

「それは…」

委員長は手元のスイッチを押した。委員長の頭上からゴンドラが降りてきた。

「ゲーッ!!」

そこに乗っていたのは…

▼特別シード選手の正体とは!?
キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第9話
…/おわり
キン肉マンの対戦相手は…?
次号、『禁断の対決』!!

巻末言
井上喜久子さんのコンサートに
行く。グッズを買いまくって前回
の鬱憤を晴らすが荷物の量が…

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