キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第11話 サンシャイン 迷宮変化の巻

『あーっと! 四次元殺法コンビ、グレート・ハワイアンズを下して決勝トーナメント進出一番乗りだーっ!』

「ま、まさか…あの二人が負けてまうやなんて…」

信じられない顔をしているのはノーティだ。特にジェロニモはノーティーにとってテリーに教えを受けた先輩にもあたり、この対決でも応援に熱を入れていたのだ。

「確かにシングルの実力だけならグレート・ハワイアンズの方が上かもしれない。即席コンビにしてはコンビネーションも悪くはなかった。だが…四次元殺法コンビの方がそれを上回っていたようだな。タッグのコンビネーションは場合によって、個々の実力をいくらでも増幅させる…」

テリーは冷静に分析する。だが、テリーはそうする事で無理矢理に感情を押し殺しているように見えた。

「四次元殺法コンビ…わたしと戦った時よりもはるかに強くなっている…」

リング上で勝ち名乗りを受ける四次元殺法コンビ。ブラックホールがキン肉マンの視線に気付いたのか、彼に向き直った。

「ハワイチャンピオンだか何だか知らんが、わたしたちにかかればこのザマだ。そう言えばキン肉マン、お前もハワイチャンピオンタイトルを持っていたんだったな。お前にはいくつか借りもある。決勝トーナメントでは利子をつけて返してやるぜ! お前と戦うために開発した必殺技で。もっとも…わたしと戦う前に消えてなければいいがな。ハハハハハハ…!!」

ブラックホールはペンタゴンとともに腕組みをして高笑いをした。既に決勝トーナメント進出を決めているだけあって、実に余裕しゃくしゃくだ。

「うぬぬ〜、言いたいだけ言いおって…!」

その時だった。

「オオオオオオ…!!」

Aリングの試合が終わり、Bリングに観衆の関心は移っていた。どよめきはそんなBリングの試合に対してのものだった

『あーっと! カナディアンマン、サンシャインの巨体を軽々と持ち上げたーっ! そしてそのまま強烈なボディスラムだーっ!』

(力自慢だったオレは、あの若造に力で負けてしまった… その日からオレはさらに強力なパワーをつけるために地獄の特訓を己に課した… 今やパワーだけならバッファローマンにもひけはとらない!)

カナディアンマンはノーティとのエキシビジョン・マッチで負けてしまった事がさほどにショックだったらしい。

「サンシャイン!」

アシュラマンが見かねて飛び出す。

「そうはいくか!」

同じくその様子を見守っていたスペシャルマンが猛然とタックルを食らわしてカットに入る。アシュラマンはリング外に放り出された。

(オレも小さい体を活かして火の玉殺法に重点をおいて特訓してきた。その甲斐あって、突破力なら誰にも負けない自信がついた!)

『さあ、ビッグ・ボンバーズ…起きあがってくるサンシャインに対し…ダブルでドロップキックだ!』

アシュラマンと同様に場外に放り出されるサンシャイン。サンシャインはアシュラマンに肩を貸してもらい、ようやく立ち上がった。

「いいぞーっ! 二人ともーっ!!」
「悪魔どもを魔界に送り返してしまえーっ!!」

ビッグ・ボンバーズの予想外の大健闘に沸き立つ観衆。

「グォッフォッフォッフォ…確かにあいつら、言うだけの事はあるようだな。」

「カカカ…だが、まだまだだな…」

一時は正義に傾きかけたアシュラマンだが、この因縁の対決の間は完全に悪魔に戻ってしまっている。ある意味、これはビッグ・ボンバーズに対しての最高の礼儀と言ってもいいだろう。

「さあ、早くリングに上がってこい。お前らの実力はこんなもんじゃないだろ!?」

「こんなもんじゃない…か…後悔しないといいがな…カカカカ…」

アシュラマンとサンシャインは共にリングインした。何かをやらかすに違いない。ビッグ・ボンバーズも、ウェイティングボックスの超人達も、観衆達もそう思っていた。そしてその予想は当たった。

「地獄のコンビネーション! サンシャイン・ラビリンス!!」

アシュラマンがそう叫ぶと、サンシャインが足下から砂に変わっていった。さらに…

『あーっと! アシュラマン、自らの腕で竜巻を起こして砂を巻き上げていくーっ!』

リングの中は砂煙で完全に視界が利かなくなっている。

「これしきの竜巻…冬のカナディアンロッキーの吹雪に比べれば…」

カナディアンマンは両足をどっかとキャンバスに据え、踏みとどまっている。その陰ではスペシャルマンも砂嵐に耐えている。

(おかしい…)

そう思ったのはロビンマスクだ。

(いくら何でもこの程度の竜巻でビッグ・ボンバーズを倒せるなど、帰ってきたはぐれ悪魔超人コンビも思ってないはずだ。ということは、彼らの狙いはおそらく…)

『さあ、砂嵐も収まってきましたが…ゲーッ!!』

何と、リング上には迷宮が出来上がっており、カナディアンマンとスペシャルマンが、その壁ですっかり分断されていたのだ。

「くそーっ!」

スペシャルマンが壁に何度もタックルを食らわすが、ビクともしない。こうなれば迷宮を回って相棒を探すしかない。カナディアンマンも自然と同じ考えに辿り着いたようだ。

しかし…探せど探せど、二人が出会うことはなかった。決して広くないリング上の迷宮…すぐに合流できるはずだったが… それはサンシャインが二人に気付かれないように迷宮の構造を変化させていたからだ。みすみす突破できる迷宮を作ってやるほど、悪魔がお人好しな筈がない。迷宮を回っているうちに二人の脳裏を焦りが支配していく。悪魔たちの狙いは実はそこにあったのだ。

「カーッカカカカ!!」

「グォッフォッフォ!!」

突如として壁の中から腕が飛び出し、二人の体に絡みついた。迷宮の壁中に潜んでいたアシュラマンと、迷宮自身であるサンシャインのものである事はお分かりであろう。カナディアンマンもスペシャルマンも何が起こったのか理解できぬ程に思考力に混乱を来していた。もはや、完全に試合の流れは「帰ってきたはぐれ悪魔超人コンビ」のものだと言えるだろう。

『あーっと、アシュラマンはスペシャルマンを阿修羅バスターに… そしてサンシャインはカナディアンマンをツームストン・ドライバーに捉えたーっ!!』

「キン肉マン、そしてテリーマン、よーく見ていろーっ!!」

アシュラマンはそう叫ぶと、サンシャインと同時にジャンプした。サンシャインは体型からして、まさに墓石そのもののようだ。そして…

「ルシフェル・クラッシュ!!」

サンシャインがアシュラマンを肩車する体勢になり、それぞれの技が同時に炸裂する!

「こ…これは…!」

「わ…わたしたちのマッスル・ドッキングじゃい…」

会場全体に衝撃が走った。そして…次の瞬間、ビッグ・ボンバーズは激しく吐血した。「帰ってきたはぐれ悪魔超人コンビ」の勝利が決定した瞬間だった。

「ビッグ・ボンバーズ…わたしたちに勝つにはまだ非情さが足りないようだぜ…」

アシュラマンはそう言い残してサンシャインと共にリングを降りた。リング上には血ヘドにまみれたビッグ・ボンバーズが残された。

『あーっと! 「帰ってきたはぐれ悪魔超人コンビ」大逆転ーっ!! ビッグ・ボンバーズを再び退けましたーっ!!』

会場内が悪魔たちの恐ろしさに震え上がったその時…再起不能と思われたビッグ・ボンバーズが頭を振りながら起き上がった。

「悪魔たちめ…あんな事を言っておきながら…余計な情けをかけやがって…」

「だが…完敗だったな… あいつら、まだまだ余力を残していたようだぜ…」

それ以上は何も言わずにビッグ・ボンバーズはリングを去っていった。これ以降、大会中で彼らの姿を見た者はいない。


「まさか、悪魔超人どもがここまでやってくれるとはのう…」

「フフ…キン肉マン、今回も簡単には優勝させてくれそうにないようだな…」

「バカモノ! 誰がきてもわたしの優勝に決まっておるわい。」

「だが…出場枠を広げた効果がここまで表れているとはな…」

「ま…オイラは強えぇヤツと戦えればそれでええんやがな。」


そうこうしてるうちに次の試合の組み合わせが発表された。

「第3試合…ザ・ニンジャ&オイルマンVSロビンマスク&ブロッケンJr.! 第4試合…ギャラクティカ&エレガントマンVSスカルボーズ&ビューティー・ローデス!」

「よし! やっとオレらの出番か!!」

「張り切るのもいいが、そう慌てると勝てるものも勝てんようになるぞ。」

「そうはいくかよ。首領にオレの力を見せつけてやるぜ!」

「仕方が無いな… まあ、相手が相手だから心配はないだろうが…」

かつて、キン肉アタルが正義超人軍団に対抗するために宇宙中から集めた精鋭集団・ザ・サイキョー超人…その中の2人、エレガントマンと元・完璧超人ギャラクティカが雑談をしながらリングに向かう。なお、アタルが何故サイキョー超人軍団を集めたのか…その理由は未だアタルの胸の内に秘められている。

「おい、大きな口を叩いてくれるじゃないか。」

サイキョー超人コンビにそう言ったのはビューティー・ローデスだ。相方のスカルボーズは痩身の体に鋭い目つきでじっと睨み付けている。こちらも説明を加えると、彼らはキン肉マンが超人オリンピックタイトル防衛サーキットの際にアメリカに立ち寄った時、互いに相対する勢力として戦った戦友同士だ。

「ケッ…誰が相手かと思えば、ハリネズミに白ブタか。こりゃエレガントマンが言う通り、心配する必要もないってもんだ。首領に力を見せる間もなく終わっちまうのは残念だがな。」

「若造、言いたいのはそれだけか…」

スカルが凄みを利かせた声を出す。試合前ということもあるが、必要以上に殺気立っている。

「ロビンと組むのか…まあ、よろしくたのむぜ。」

「こちらこそ。」

「ブロッケンたちが相手とは…予選突破一つとっても楽にはいかぬか。まあ、このオイルマンがパートナーである事が拙者にとってせめてもの幸いか…」

「?」

一人で気分に浸るニンジャとキョトンとした顔でニンジャの方を見るオイルマン。こちらは実に淡々とした様子だ。幾多の思惑が交錯する中でタッグ戦は進んでいく。そして、それらの運命を左右するゴングが…鳴った!

▽正義超人コンビ予選突破なるか!?
キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第11話
…/おわり
ザ・ニンジャ大暴れ!?
次号、『大火炎合戦』!

巻末言
WJであった「ライパク」の人気
投票。誰にするか迷ったけど、と
りあえずプラタに1票(やめれ)

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