キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第12話 オイルマンの決意の巻
『さあ、AリングではブロッケンJr.とザ・ニンジャが、Bリングではスカル・ボーズとギャラクティカが出る模様です。』
開始早々から試合が動き始めたのはBリングの方だ。
『あーっと! ギャラクティカ、目にも見えないスピードでスカルの顔面にジャブを一閃ーっ!!』
さすがはサイキョー超人。スカル程度の実力では相手にもならないのか… ギャラクティカはスカルがこらえるスキに素早く背後に回り込んだ。そして左腕を大きく振りかぶると…
「マグナード・ファント…!!」
『あーっと! ギャラクティカの必殺パンチが炸れ…』
「なーんつってな…」
「な…!?」
ギャラクティカはスカルの顔面でパンチを寸止めした。スカルの横顔に一筋の冷や汗と沈黙が流れる。
「ケッ…やっぱりこのまんまだと味気ねえな。おい、エレガント、おめえが出ろ!」
「ギャラクティカ…お前は実力はサイキョー超人でも一、二を争うが、ムラっ気があるのが玉にキズだな。分かった…わたしが出よう。」
エレガントマンはギャラクティカとタッチするとコーナーポストに上った。
『あーっと、これはエレガントマン、平凡なフライングボディプレスだ。そして…スカル・ボーズともつれ合うようにリング外に転落したーっ!』
「出たな…エレガントマンのタッグ殺しが…」
ギャラクティカのは余裕でその様子を見守っている。程なくして二人がリング上に這い上がってきた。だが…
「ゲーッ!!」
『こ…これは、スカル・ボーズが二人になりましたーっ! い…いえ、忘れていました。エレガントマンには変身能力があり、あらゆる超人の姿から技…クセまでコピーできるのでした。』
「噂には聞いていたが、これが…だが、これではどっちが本物か…」
突然の出来事に戸惑うローデス。相棒のスカルが2人…しかも片方が敵であるエレガントマンでは安心ができない。
「お前…巧妙にこのオレに化けるとは…!」
「何だと…オレに化けたのはお前の方だろうが!」
二人のスカルは互いに罵り合うが、どっちがどっちか見分けがつかない。見れば見るほど混乱するローデスだった。
「ガッデーム!」
混乱を掻き消すようにラリアートの構えで猛然と突進するローデス。目標は片方のスカルだ。二人はまだ罵り合っているため全くの無防備だ。
『あーっと! ローデスのラリアートがスカルに直撃ーっ!』
もんどり打って倒れるスカル。ヨロヨロになりながら起き上がった。
「ロ…ローデス…血迷ったか…!!」
『あーっと、ローデスのラリアートはどうやら味方を攻撃していたようです。』
「なるほど…エレガントマンの変身能力はこういう事にも使えるのか…まったく恐ろしいもんだわい。」
「クククク…それだけではありません。」
そう言ったのは、ギャラクティカやエレガントマンと同じザ・サイキョー超人の一人、ワイルド・ジョーカーだ。
「ナヌ、どういうことだ?」
「今のままでは半々の確率でエレガントも攻撃を受けますよ。まあ、彼は案外打たれ強いから多少の攻撃は平気でいられるし、ひるんだ演技くらいはお手のものです。」
「それがどう関係あるんや?」
「ククク…見ていれば分かります。エレガントはどうやら遊んでいるようですからね。安心して見てていいですよ。」
今一つ状況が分からないキン肉マンとノーティーはその様子をじっと見ているしかなかった。…と、今度はスカルではなくてローデスが二人いる。
「オ…オレが二人…!」
スカルはもちろん、ローデス本人でさえ混乱を来たし始めた。スカルはしばらく二人の姿を見比べていたが、そのうち攻撃態勢に入り始めた。
「や…やめろ…!」
スカルの攻撃が決まる前にローデスのエルボーがスカルの鳩尾(みぞおち)に突き刺さる。どっちのローデスの攻撃かは分からない。だが、これで決定的となった。スカルとローデスのコンビ・アメリカンドリームスの瓦解が…
「元々お前と組んだのが間違いだったぜ!」
「それはこっちの台詞だ!」
スカルとローデスは試合もそっちのけで罵り合いを始めた。とっくに正体に戻ったエレガントマンはギャラクティカと共にアメリカンドリームスの背後に回り込んだ。
「こんな時に何だ?」
ケンカの最中に肩をつつかれたローデスは後ろを振り返った。そこにはニヤリと笑うギャラクティカが拳を振りかざした体勢で構えていた。
「ひっ…」
「マグナード・ファントム!!」
ローデスが身をかわす間もなくギャラクティカのフィニッシュ・ブロー、マグナード・ファントムが炸裂した。それと同時にスカルにもエレガントマンの変身したギャラクティカがマグナード・ファントムを放っていた。ただし、威力は数段落ちるが… それでもスカル・ボーズを倒すには充分すぎるものだった。
『あーっと! 「アメリカンドリームス」が二人ともリング外に吹き飛ばされたーっ!! こ…これは、完全にKOされています! 「サイキョー超人コンビ」、余裕の決勝トーナメント進出だーっ!!』
「ケッ…ダセェぜ… 相手がアイツなら、こんな退屈な試合はなかったのによォ…」
「見ましたか…これがエレガントマンのタッグにおける真の恐ろしさですよ。タッグチームにとって最も大切なチームワークを内側から破壊してしまうのです。」
「た…たしかに恐ろしいわい。このまやかしを打ち破るには相当の信頼関係がないといけねえ。」
「ま、先生とキン肉マンはんのコンビやったらその心配も無用やけどな。」
「ククク…そういう事にしておきますか。」
『さあ、Aリングの方ではまだ試合が続けられております。 ロビンマスク、オイルマンを持ち上げて…ボディスラムだ。』
「…!!」
体をしたたかに打ちつけられてのたうち回るオイルマン。Aリングはロビンマスク&ブロッケンJr.のヨーロピアン・ダンディーズがザ・ニンジャ&オイルマンのファイヤードラムスを一方的に押しまくっている。
「ブロッケン、タッチだ。」
「よし!」
反対側のコーナーでも、オイルマンが腹這いになりながらタッチをしていた。
「……!」
「よし、タッチだな。心得た。」
リング上はザ・ニンジャとブロッケンJr.の二人が向き合った。この二人は「黄金のマスク」シリーズで対戦しており、ブロッケンが辛くも勝利を掴んでいた。
「ニンジャ…また、こうしてリングで戦えるとは思ってもみなかったな。」
「お互い手加減はしまいぞ…」
だが、そこから二人は微動だにしなかった。お互いにスキを探ろうとしていたのだ。そして…ウェイティング・ボックスでキン肉マンがむさぼっているポップコーンが一つ落ちた。その僅かな音を合図に弾かれたようにニンジャとブロッケンは飛びかかっていった。
「順逆自在の術!」
「ヴェクセ・シュピーゲル!」
リング上から二人の姿が消えたように見えた。そして一瞬浮かび上がっては、また消えた。それが何度となく繰り返される。
「す…すげえ…」
「なんて速さや…」
『あーっと、あまりにも速すぎて、常人の目では何をやっているのか分かりませんーっ!」
高速で返し技の応酬が繰り広げられる。そして二人の姿が再びハッキリと確認できた時には、その姿はすっかりボロボロになっていて息もすっかり荒くなっていた。
「ハァ、ハァ…やはり、そうこなくっちゃな。お前と戦うと面白いぜ。」
「ゼェ、ゼェ…予想はしていたが、や…やはり、勝負はつかぬか。拙者とブロッケンは互角だが、オイルマンはロビンマスクの相手ではない…このままでは敗北は必至。やむを得ん…」
ニンジャは自軍コーナーに戻ると、神妙な面もちでオイルマンに耳打ちをした。最初、オイルマンはイヤイヤと首を振っていたが、ニンジャの熱意に押されたのか、ゆっくりと頷いた。
「覚悟が決まったようだな。よし!」
ズボッ!
『あーっと、これはBリングに続いてAリングの方も仲間割れかーっ!? 』
ザ・ニンジャの手刀がオイルマンのドラム缶の体を貫いた。その手を抜くと、おびただしい量のオイルが溢れ出していく。
「仲間割れではござらん。いくぞ!」
◎ザ・ニンジャの秘策とは…?
キン肉マン2000 第3回超人オリンピック編
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| 第12話 …/おわり
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巻末言
仕事場の同僚が結婚する。おか
げで僕と同じ名字になって色々
な意味で紛らわしくなったけど。
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