キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第13話 燃え尽きる魂の巻
『あーっと、これはBリングに続いてAリングの方も仲間割れかーっ!? 』
ザ・ニンジャの手刀がオイルマンのドラム缶の体を貫いた。その手を抜くと、おびただしい量のオイルが溢れ出していく。
「仲間割れではござらん。いくぞ! 臨・兵・闘・者・皆…」
ザ・ニンジャは何やら印のようなものを結び始めた。
「焦熱地獄・奥義! 華焔殲滅陣!!」
そう叫んだ瞬間、ニンジャとオイルマンの周りを取り囲むように炎が吹き出した。ロビンとブロッケンは思わず片腕をかざす。
『あーっと、ザ・ニンジャ、焦熱地獄の本領発揮かーっ!? 炎は壁のように二人をガードしています。』
「先生…これってどうなっとるんや?」
「オイルマンだ! オイルマンの体から流出するオイルを霧状にして発火させているんだ。」
「何だって!? それでは…オイルマンは自分の血とも言えるオイルをすり減らしてるということか!」
「その通りだ…キン肉マン。命を捨てるほどの覚悟がないとできない、まさに捨て身の必殺技だな。」
轟音をあげ、炎はヨーロピアン・ダンディーズに迫っている。
「ブロッケン、このままでは二人に近づけんぞ!」
「確かに…この技はオレにも返す事ができねぇ。ん…待てよ、技には技、炎には炎…」
「そ、そうか!」
ロビンはブロッケンの考えを読みとったらしく、懐から棒のようなものを取り出した。
「アノアロ・ファイヤー!!」
ロビンが取り出したのはロビン家家宝のアノアロの杖だ。この杖には火炎を放射する力があるのだ。額にアノアロの杖を装着し、ロビンは炎を放射し始めた。その炎はニンジャの炎を押し返し始めた。
「アノアロの杖か…だが、その考えは…読んでいる!」
ニンジャは苦しそうにその場にしゃがみ込んでいるオイルマンに目をやった。
「オイルマン…かたじけない…そなたの覚悟…ムダにはせん…」
印を結ぶ指にぐっと力を込める。
「羅刹烈炎!!」
そう叫ぶと、ファイヤー・ドラムスを守るようにしていた炎が一点に集中し始めた。そこから一直線に炎がヨーロピアン・ダンディーズに向けて発射される。
「ぐわっ!」
集約された炎にアノアロの杖からの炎は簡単にかき消され、ロビンは炎をまともに浴びてしまった。
「ロビン!!」
逆上したブロッケンはファイヤー・ドラムスに突っ込んでいく。
「やめろ、ブロッケン!」
ロビンの制止が終わるか終わらないかのうちに炎は元の陣形に戻る。
「うわっ!」
炎の壁に弾き返されるブロッケン。軍服がその身を守りロビンよりはダメージを受けていないが、それでも炎の前に無力な事には変わりない。
「見たか、これが拙者とオイルマンの必殺技だ! さらに…広がれ、炎よ!!」
炎の壁は勢いを増し、リングを覆い尽くさんとしている。今度はロビンのアノアロの杖を使っても持ち堪えるのが関の山だ。
「ニンジャの必殺技にここまでの威力があるとは…このままでは…焼け死ぬか、リングアウト負けになってしまう…」
「くそっ…! こんな時にオレは何もできないのか… せめて一瞬でもあの壁に入り込めれば…いや…一か八か…」
「どうしたんだ、ブロッケン。」
「ロビン…今からオレが突破口を開く。それができればオレ達は勝てるかもしれん。それができなければ…」
「ブロッケン…頼む…」
ブロッケンは右腕を大きく振りかぶった手刀の体勢でその場にしゃがみ込み、不動の構えになった。
(ブロッケン…お前が何をするかは知らぬが、わたしはお前が安心して精神集中ができるように持ち堪えてみせるぜっ)
ブロッケンの全身から光の流れが溢れ出そうとせんばかりに巡っている。完全に精神統一ができている証だ。ザ・ニンジャ…オイルマン…ロビンマスク…ブロッケンJr.…双方とも死力を尽くしての大激戦となった。
「竜騎士斬(ジークフリート・アタック)!!」
ブワァッ!
ブロッケンの体中に巡るオーラが一斉に手刀に集約され、何物をも切り裂く真空の刃に変えた。その刃は炎の壁にブチ当たると大きく風穴を開けた。
「何っ!?」
炎の壁が破られ、さらに真空の刃はファイヤー・ドラムスを跳ね飛ばした。
「よくやった、ブロッケン! 後はわたしに任せ…」
ロビンがファイヤー・ドラムスに反撃を開始しようとした時だ…
「待った!!」
ストップをかけたのはザ・ニンジャだった。
「拙者たちはここで棄権する…奥義はお前たちに破られ、さらにこれ以上続けようにも…」
オイルマンは体中のオイルをほとんど出し切ったのか、転がったまま動かない。この棄権はオイルマンの身も案じてのものだったのだろう。
「分かった…」
『あーっと、ファイヤー・ドラムス棄権により、ヨーロピアン・ダンディーズのロビンマスク、ブロッケンJr.、決勝トーナメント進出決定だーっ! ギブアップ負けではありましたが、ファイヤー・ドラムス文字通り完全に燃え尽きましたーっ! 負けて悔いなしといったところでしょう。』
「ニ…ニンジャ…」
「オイルマン、生きていたのか…」
「し…試合は…」
ニンジャは無言で首を横に振った。
「だが、見事なコンビネーションだったぞ。」
「ああ…お前にここまでの力があったとはな。正直、オレの攻撃も成功しないかと思ったものだぜ。」
オイルマンの健闘をロビンとブロッケンが称える。両チームは拍手と共にリングを降りた。
炎によって焼け焦げた臭いの残ったリングが修復され、10分のインターバルの後に次の組み合わせが発表された。
「第5試合…バケモノ&ウルフマンVSネプチューンマン&ゾナーマン! 第6試合…ジムナスマン&ワイルド・ジョーカーVSマイナーラスク&デッキマスター!」
「グヘヘ…やっとオレ達の出番がきたようだぜ。」
「だが、相手はあのネプチューンマンだ。こりゃあフンドシを締めてかからねぇとな。」
「……………………」
こちらは押し黙ったまま漆黒のベールをかぶったゾナーマン。しかし、それが余計に目立っている。
「オレにタッグの相性など不要。どのような相手でも勝ってみせるのが完璧超人のレスリングだ。」
相変わらず自信家のネプチューンマン。だが、確かに彼にはそれを可能にする実力も持っている。
一方Bリング…
「パワーアップした『お○スタジムナスティック』の成果を見せる時がきたようだね。」
「ククク…そうですか、ジムナス。楽しみにしてますよ。」
相手側のマイナーラスクは虎のような仮面をしている。そして、タッグを組まされたサイバーパンク風のデッキマスター。お互い大舞台で緊張しているのだろうか、口を開かない。
だが、ここにいる彼らは知らない…大きな運命が動き出そうとしている事を…
●新超人登場! その実力は?
キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第13話
…/おわり
漆黒のベールの正体は?
次号、『Oh,Baby』!
巻末言
CATVを契約。王位争奪編も
観られ大満足。何でも放送前の
リクエスト数No.1だったとか。
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