キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第14話 怪人あらわる!の巻
「ゾナーマン…?」
そう呟いたのはBリング…ゾナーマンとは別のリングで試合を迎えるジムナスマンだった。
「どうしました、ジムナス。」
「何か引っかかるんだよね… ゾナー…ゾナー…」
「今は試合に集中するのが先ですよ。」
ジョーカーがジムナスをたしなめた、その時だった。
「ファッハッハッハ…! ファーッハッハッハッハッハッハッハ!!」
突如Aリングから高笑いが響き渡った。その声の主は黒いベールを被った男…ゾナーマンだった。
「やっぱりだ!!」
ジムナスマンは思い出したかのようにAリングのゾナーマンの方を振り向く。当のゾナーマンはいよいよ、そのベールを脱ごうとしていた。
『あーっと、謎の超人ゾナーマンが、その全貌を現したーっ!!』
それはヘビーメタル風のメイクを施した男だった。身長は180cmくらい…細身で体重は60キロくらいだろう。とても格闘技ができるようには思えない。
「間違いないよ。あいつは…おはスタ星にいた頃の幼なじみ、ショータロー… 虚弱体質でいつも一人でなぞなぞばっかりやってたショータローが…そもそもあいつは超人じゃなく…」
「試合が始まりますよ、ジムナス。」
「分かったよ、ジョーカー。」
そう言いつつもAリングの様子が気になるジムナスだった。
「グヘヘヘ…ジムナスの知り合いだったとはな。だが、手加減はせんぞ。」
「ジムナス…今はそう名乗っているゾナか、ヒカルは? しかしヒカルもわたしの変わり様を見ると驚いてしまうゾナよ。」
「大した自信だな。」
「ネプチューンマン、わたしからいかせてもらうゾナよ。」
「いいだろう。」
ネプチューンマンには異論がなかった。と言うよりは…
『さあ、Aリングはウルフマンとゾナーマン、Bリングはワイルド・ジョーカーとマイナーラスクが出るようです。そして、ゴングが鳴ったーっ!』
カァン!!
「Oh,Baby! では一問目…」
「おりゃあっ!」
ゾナーマンガ何かを言いかける前に、問答無用とばかりにウルフマンの張り手がまともに入った。
『あーっと、ゾナーマンあっさりと吹っ飛ばされたーっ!!』
「よ…弱えぇ…」
空中で一回転して倒れたゾナーマンを見て完全に拍子抜けしてしまったウルフマンだった。
「な、なかなかやるゾナね。」
ゾナーマンは顔に手形をつけたまま起き上がってきた。
「グヘヘ…ウルフマン、まだ本気じゃないな。」
「当たり前だ。こんな野郎に本気など出せるか。片手で充分だ。そりゃああーっ!!」
『あーっと、ウルフマン、片手で高速の張り手を繰り出しますが、ゾナーマンは為す術なくくらうだけだーっ!』
嵐のような張り手をくらい、ゾナーマンは2度目のダウンを喫する。だが、自軍コーナーにいるネプチューンマンは、それまでカットに入るでもなくタッチの手を差し伸べるでもなく、じっとその様子を傍観している。
「ネプチューンマン、それでいいゾナ…」
「何を寝惚けたことを… おい、バケモノ…どうやらネプチューンマンも予選突破する気はないようだ。これで一気に決めてやるぜ!」
「グヘヘ…出番がないのが残念だが、その鬱憤は決勝トーナメントで爆発させるとするか。」
「さあ、これで終わりだ…」
ウルフマンがゾナーマンの襟首を掴んだ。そして、さば折りの体勢から一気に投げに持っていこうととした時だ。
「ゾナーマン、これを聴くのダー!!」
突然競技場内に一人の少女が飛び込んできた。手には小型のテレコを持っている。
「レベッカ…」
ゾナーマンがつぶやいたレベッカという名の少女がテレコのスイッチを押した。パラパラ風の音楽が流れ始める。その途端、ゾナーマンはいとも簡単にさば折りを振りほどいた。
「ファッハッハッハ! ファッハッハッハッハッハ…!!」
ゾナーマンは流れるようにパラパラを踊り始めた。
「ナゾミナスグ! ナヤメバホラ! ナントカナル! ZONA’S SONG!…」
「何だ…!?」
「グオオオ…この動き…」
ゾナーマンはシャキシャキとパラパラを踊りながら攻撃を加えていく。ウルフマンも、たまらずリングインしたバケモノも反撃しようとするが全く攻撃が当たらない。
「さて、早速だがキミたちに問題を出そう! Oh,Baby! これができたら天才ゾナー!」
訳の分からない振りでなぞなぞを出し始めるゾナーマン。
「ロッキーはロッキーでも、ヘロヘロのロッキーってなーんだ!」
「??」
なぞなぞを出題され、思わず考え込んでしまう相撲コンビ。その間にもゾナーマンの攻撃は相撲コンビに着実にヒットしていく。
「わ、分からねえ…」
「グ、グ…ヘ…」
「うーむ、分からんわい…」
相撲コンビだけでなく、観戦しているキン肉マンまで考え込んでいる。
『あーっと、相撲コンビ…ゾナーマンの息もつかさぬ連続攻撃でグロッキーだーっ!』
なぞなぞに乗せられ、さらにゾナーマンの猛攻に耐えかねた相撲コンビはダウンする。
「そう、答えはキミたちの今の状態…『グロッキー』ゾナー。」
ゾナーマンは得意気に解答を披露する。
「グ…グヘ…」
「オ…オレたちはこの超人をナメていたようだぜ。」
「Oh,Baby! わたしは超人ではないゾナー! 怪人ゾナーマンだゾナー!」
「その通りだ、ゾナーマン!」
ゾナーマンの背後から一陣の風のように影が飛び出した。
「喧嘩ボンバー!!」
ネプチューンマンの一撃は相撲コンビを二人まとめて蹴散らした。
「グ…ヘ…!」
「ネプチューンマン…今ごろ…なぜ…」
「決まっているだろう。わたしの出番が少ないからさ。」
『あーっと、相撲コンビ完全にKOだーっ! ネプチューンマンとゾナーマンのブラックベールズ、決勝トーナメント進出だーっ!!』
「ゾナーマン、やったのダーっ!」
ゾナーマンに大逆転劇をもたらした少女、レベッカが歓喜の声をあげる。
「ネプチューンマン…」
「何だ。」
「わたしが象南波羅(ゾナパラ)を踊ると無敵になる怪人だということを最初から知っていたゾナね?」
「何の事だ…」
「さすがは完璧超人、超人のデータ収集も完璧ゾナー…」
『さあ、Aリングではゾナーマンの鮮やかな活躍で相撲コンビを退けましたが、Bリングではまだ熱戦が繰り広げられております。』
Bリングの試合展開はジムナスマン、ワイルド・ジョーカーのサイキョー超人コンビ2がデッキマスター、マイナーラスクのサイレントキラーズを押してはいたが、今一つ決め手に欠けていたため、ズルズルと長引いていた。
「奴らしぶといよ。なかなか粘るね…」
「仕方ありませんね…ジムナス、アレを使いましょう。わたしがあの緑色のロングタイツの超人…マイナーラスクを押さえますから、すかさずジムナス・クラッチを決めるのです。」
「ダーク・コンビネーションの本領発揮だね。分かったよ、ジョーカー。」
『さあ、サイキョー超人コンビ2…何かを仕掛けるようです。あーっと、ワイルド・ジョーカーが珍しくフライングボディプレスを仕掛け…そのまま押さえ込みに入ったーっ!』
「さーて、いくよ。はりついたらはがれない…ジムナス・クラッチ!」
ジムナスマンはマイナーラスクに飛びかかった。その時、自軍コーナーでこの様子を傍観したいたデッキマスターの目がグラスの下で怪しく光ったのに気付いた者はいただろうか…
(技がかかる直前にジョーカーが絶妙のタイミングで押さえ込みを外す…そして、すかさずクラッチを決めれば…!)
『さあ、ジムナス・クラッチが決まっ… あーっと、こ、これは…』
「う…しまった!」
『あーっと、ジムナス・クラッチ誤爆ーっ! ジムナスマンは味方のワイルド・ジョーカーに絡みついてしまいましたーっ!!』
「ジムナスマン、何とか離れられないのですか?」
「こればっかりはかけたボク自身でも、しばらくは外せないよ。ははははは…」
ピンチなのにヤケに余裕の表情のジムナスマン。ここらへんは天然としか言い様がない。だが、相手チームがそんな状況を見逃すはずがない。
『あーっと、デッキマスター、絡み合っているサイキョー超人コンビ2に…軽くスライディングキックだ。』
リング外に転落するジムナスとジョーカー。それでも二人はくっついたままだった。すかさず、レフェリーのカウントが入る。一見見かけ倒しに見えるデッキマスターの蹴り。だが、あまり強く蹴りすぎてもクラッチが外れるおそれがあったのだ。そうこうするうちにカウントは進み、遂に20カウントが入ってサイキョー超人コンビ2のリングアウト負けが決まってしまった。
「く…しくじった…クラッチの入るタイミングさえ誤らなければ…」
「仕方ないよ、ジョーカー。これも時の運さ…」
「違う! あの時…押さえ込みを解こうとしても体が動かなかったのだ。逆にわたしの方が押さえつけられたかのようだった。」
「だけど、どうやって?」
「分からん…マイナーラスクかデッキマスターのうちのどちらかが仕掛けたのか…」
無言のまま試合を終えたサイレントキラーズ。そのうちの一人、デッキマスターがカードを手に呟いた。
「ダーク・コンビネーションというのも大したことがなかったようだね。この『身体緊縛(ボディバインド)』のカードの前では…」
『さあ、第3回超人オリンピック最終予選も第6試合まで消化してまいりました。残る選手はキン肉マン、テリーマン、ノーティ・ブラット、バッファローマン、ステカセキング、キン骨マン、そしてキン肉真弓&委員長…この8人になりました。そして、委員長自身から最後の組み合わせが発表されようとしています。』
「エー、ウホン! それでは発表する。第7試合…」
◎運命の一瞬…
キン肉マン2000 第3回超人オリンピック編
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| 第14話 …/おわり
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組み合わせに一同唖然…
次号、『復活の名コンビ』
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巻末言
職場の電話の横で木刀を発見。
何に使うんだろう。取り敢えず
素振りをしてたら皆の視線が…
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