キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第18話 バッファロー重力落としの巻

「これだけではないぞスグル…ワシの本当の実力はな。」

「ぐおおおおお…!!」

真弓は右腕に力をこめた。そして…

「デス・グレネード!」

小振りながらも爆発力を持ったパンチがキン肉マンの鳩尾にヒットする。

「パ…パパ…この技は…」

キン肉マンは技の威力に驚いたわけではなかった。それは観客席で観戦していたミートにも同じ戦慄が走っていたからだ。

「だ…大王さま…これはあの…」

そう、賢明な読者諸君ならお気づきであろう。かつてザ・サイキョー超人軍団を率いたキン肉アタルがキン肉マンと戦った時にこれでもかとばかりに見せつけられた絶技の一つ、デス・グレネードだったからだ。

「驚くのはまだ早い!」

そう言ったそばから真弓の右拳が赤く輝いた。

「いけない、王子避けて!」

「もう遅い! ガトリング・レイダー!!」

真弓が無数に繰り出すパンチがキン肉マンに吸い込まれた。

「フン…スグル、よくぞ…」

真弓のガトリング・レイダーは不発に終わっていた。キン肉マンはパンチが届く寸前に肉のカーテンで素早くガードしていたのだ。

「真弓くん…すっかり現役の力…いや、それ以上の力を出しておるようじゃのう。」

委員長ことハラボテ・マッスルはキン肉親子の戦いをじっと見守っていた。パートナーが求める限りは自ら交代することはなかっただろう。そしてキン骨マンは真弓のマッスル・ボンバーをくらってダウンしたままだった。

さて…Bリングでキン肉真弓が烈火のクソ力を発動させていた頃、Aリングはステカセキングの予想外の健闘で戦況は膠着状態になっていた。

『さあ、バッファローマン突進していきますが…ステカセキング、ジャンプ一番かわして延髄斬りだーっ!』

カウンターに片膝をつくバッファローマン。

「どうだ、バッファローマン。オレも今までのオレじゃないぜ。超人IT革命の波に乗って改造をしたが…カセットの入れ替え無しに高速で変身できることがここにきて効いてくるとはな。」

「確かに…オリンピック開催前の悪魔超人合同スパーリングでもお前の存在は抜きん出ていた。だが、オレは見つけたぜ。お前の弱点をな。」

「いかん! オレに替われ!!」

テリーも気付いたようだ。

「ステカセ…今までのよしみで教えてやるぜ。お前は改造した機能に頼るあまりに体を鍛えることを忘れてしまっていたのさ。そのため一旦技を食らうとお前のガラスの体は簡単に砕け散る! オレの新技によってな。」

「ケッ…面白え。見せてもらおうじゃねえか。その新技ってやつを。」

「ステカセ、誘いに乗るな!」

ステカセは完全に調子に乗っていた。今までは仲間内でパシリ同然に扱われていたが、ここ最近はバッファローマンにも肩を並べるだけの成長を遂げていたのだ。その力を試したいという気持ちは当然かも知れない。だが…まだ青かった。

「仕方ねえ…この技は決勝トーナメントまでとっておきたかったが…」

「……!?」

バッファローマンは目にも止まらぬスピードでステカセの背後に回り込んだ。

「バッファロー重力落とし!!!」

バッファローマンはそのまま背中合わせになると両腕を掴んで背負い投げた。その際に腕には強烈な捻りが加えられているため、体の自由が利かず受け身がとれないままマットに叩きつけられるのだ。

『あーっと、バッファローマンの新技が炸裂ーっ! これで勝負が決まったかーっ!?』

リングにはその技のすごさを物語るように土煙が上がった。

『あーっと、こ…これは…』

誰もがマットにバラバラになったステカセを想像しただろう。だが…ステカセとマットの間には仰向けになったテリーが割って入っていた。重力落としのショックをできる限りやわらげていたのだ。

「テ…テリー…」

技は不発に終わったとはいえバッファローマンのフルパワーを受け止めたテリー。そのダメージは計り知れない。

『ゲーッ! これは…テリーの上半身が紫色に腫れあがっています!!」

「せ…先生!」

今は敵側に回っているテリーの弟子・ノーティー。いや、それだけではない。技をきめたバッファローマン、そして現在のテリーのパートナーであるステカセキングももちろん、テリーの異変に驚きの色を隠せなかった。

「テリー、この試合は棄権した方がいい。この状態では満足に戦えん。」

バッファローマンの棄権勧告だ。テリーやステカセの決勝トーナメント進出はなくなってしまうが、この状態ではムリもない。むしろ当然と言えた。

「先生…」

「テリー、オ、オレはお前が棄権しても恨みはしないぜ。お前がこうして止めてくれなかったらオレが同じ目に遭っていたんだからな。」

「先生…」

バッファローマンの一言もステカセキングの一言もそれなりの誠意がこもっていた。しかし、テリーがかけてもらいたかった言葉とは違っていた。

「あかんで!!」

そう言ったのはノーティーだった。

「最後まで望みを捨てるな、先生はいつもそう言うてたやないか!」

「そうだ… そうだったな…ノーティー…」

テリーはよろめき混じりに立ち上がり、ファイティングポーズをとった。テリーがかけてもらいたい言葉は、まさにノーティーのそれだったのだ。

「勝負は最後まで諦めない… 最後のカウントを聞くまでは…」

「ステカセ…オレたちはどうやら間違っていたようだな。今、オレがするべき事はテリーをいたわることではない。ケガを押してなおも立ち向かっていくあいつを完膚無きまでに叩き潰すことだ!」

「テリー…オレもメモリーに記録したぜ。お前の無限のファイティング・スピリットを。」

テリーの不屈の闘志はAリングにいる全員に伝わった。試合のボルテージは一層高まっていった。

☆白熱する試合の行方は…
キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第18話
…/おわり
次号、試合に決着!?
『必然の相討ち』の巻

巻末言
新世紀最初の作品。年も改まっ
たことだし、何とかしないとい
かんよなぁ… このタイトル。


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