キン肉マン2000
第3回超人オリンピック編
第19話 決着の時の巻
リング横のウェイティングボックスでは、試合を終えたサイキョー超人のギャラクティカとエレガントマンも予選最終試合を観戦していた。
「見たか、ギャラクティカ。」
「ああ…恐れ入ったぜ。キン肉大王のあの拳…とても老いぼれのものとは思えねえ。お頭…いや、キン肉アタルに勝るとも劣らないキレだったぜ。」
「ああ…確かにそうだろうね。」
その声は惜しくも予選敗退を喫したジムナスマンだった。後ろにはワイルド・ジョーカーも控えている。
「あなた方も気付いているのではないですか。キン肉族王家の底知れぬパワーの恐ろしさを…」
「さすがね、ジョーカー。もうそれに気付くなんて。」
「レッドバロン!!」
全員がそう叫んだ。そこには今やキン肉アタルの秘書となったサイキョー超人の紅一点、女戦士・レッドバロンがいたからだ。
「久し振りだな、レッドバロン。ところでアタル様の姿が見えんが…」
「アタル様…いえ、副大王は別の場所で観戦なさっているわ。」
「おい、そんな事よりジョーカーが何に気付いてやがったんだ。」
相変わらず短気なギャラクティカだ。
「もう、再会のムードぶちこわしね。それは…ひ・み・つ。そのうち分かるわ。」
「チッ…またそれかよ。焦らすのもいい加減にしろよ。」
「フフフ…」
話を戻そう。Aリングではテリーマン&ステカセキングのアメリカンロックスとバッファローマン&ノーティー・ブラットのビリオンパワーズの一戦が繰り広げられていた。バッファローマンがステカセキングに放った新必殺技・バッファロー重力落としをテリーマンが食い止めるが、テリーは重傷を負ってしまう。そしてBリングではキン肉マン&キン骨マンの骨肉コンビVSキン肉大王ことキン肉真弓&委員長ことハラボテ・マッスルの昔とったきねづかコンビの試合が行われている。こちらは全盛期の力が復活した真弓がキン肉マンと相対する構図が出来上がっていた。キン骨マンは真弓のマッスルボンバーを食らって未だにのびているし、委員長は何か考えがあってかサポートに徹している。
まずはAリングに視点を置くことにしよう。
試合はほとんど動けないテリーに代わり、ステカセキングがロンリーバトルを演じるしかなかった。だが、ステカセも今までのステカセではなかった。超人IT革命の技術力に加え、テリーの不屈の闘志でバッファローマンとノーティーの猛攻を耐えていた。…いや、むしろ押していると言ってもよかった。
(ステカセ…すまない、オレがこんな深手を負っていなければ…)
「よし、ノーティー! このままバラバラでかかってはラチが開かん。こうなれば二人がかりで…」
「わかったで、バッファローマンはん!!」
ビリオンパワーズも形振りはかまっていられなかった。しかし、それがステカセの真の狙いでもあったようだ。
「ケケケ…テリー、おまえの技を使わせてもらうぜ…テキサスコンドルキーック!!」
二人の突進を寸前でジャンプでかわし、足で二人の頭を挟み込んでそのまま膝蹴りを食らわす…テリーの得意技だ。
「あいつ…」
だが…一人で二人分戦うのにも限界がある。よろめきながらもバッファローマンはステカセに倒れこむようにベアーハッグを極めた。
「さあ、体を捕らえればこっちのもんだ。早くギブアップしろ。」
「ケケ…そうはいくか。」
そう、従来ならば体を押さえつけられていればカセット交換はできず突破口は開けなかったが、今度は違う。今までカセットに収録されていたデータの数百倍のデータをその体内に内蔵しているのだ。
「ぬうう〜っ、火事場のクソ力ーっ!」
ステカセの体が真っ赤に輝き、バッファローマンの腕が徐々に開いてきた。そして、それは一気に開ききった。
「ハァ、ハァ、ハァ…」
『あーっと、ステカセキング、バッファローマンのベアーハッグを振りほどきましたが…かなりスタミナを消耗してしまったようだーっ!』
「ステカセ…確かにお前の能力は凄まじい…だが、それを使いこなすためにはそれなりのパワーが必要なんだ。長かったが、これで苦しい戦いも終わりだ。おたがいな…」
「バ…バッファローマン…」
バッファローマンは一瞬の隙を突いてステカセの背後に回った。そのまま両腕を掴むと…
「ま、まずい…この体勢は…!!」
テリーマンが飛び出した。既に動ける状態ではないのに… だが、背後から押さえつける影が一つ。言わずと知れたノーティー・ブラットだ。怪力を誇るノーティーだ。深手を負ったテリーではとても逃れようが無かった。
「いくら先生でも、これだけは譲れへんで!」
「そうだ、それでいい…」
「へ…!?」
「相手への余計な情は最大の愚弄だと教えた通りだ。例え師弟の間柄でもな…」
その言葉が終わるか終わらないかの間に轟音が起こった。
『あーっと、バッファロー重力落としが今度こそ完璧に決まったーっ!』
「ふう…やっと終わったな。」
「ああ…」
互いに勝負を決めたバッファローマンとステカセキングが呟く。この試合で苦しんでいたのはテリーとノーティーだけではなかったということだ。
「テリーには悪かったが、ヤツの体の事を考えるとこうするしか方法がなかった。」
「気にするな、バッファローマン。元々、最初の重力落としで勝負が決まっていたんだ。それしても少しは手加減しろよな。足腰が立たねえぜ。」
『注目のAリングの試合はバッファローマン&ノーティー・ブラット組が勝利しましたーっ! それにしても、敗れたはずのテリーマンとノーティーの顔が勝者と同じ晴れやかな顔をしているのは何故なんでしょう。』
「その答えは…彼ら以外には分からないわ。」
「あ…!」
ノーティーはリングサイドでカメラのフラッシュを焚いていた女記者に驚きの声を上げた。
「ナツコ姐はん…」
「ノーティー、よう頑張ったな。」
「おおきに。」
「それから…」
ナツコはノーティーに肩を借りてリングから降りるテリーに駆け寄った。
「テリー、お疲れさま…」
「サンクス…」
テリーには勝利などいらなかった。師を乗り越えたノーティーの成長…これこそがテリーにとっての掛替えのない勝利だったからだ。
そして…Bリングでは相変わらずキン肉マンと真弓の技の応酬が続いていた。
「向こうは勝負がついたようだな。テリーマンの予選敗退か… スグル、お前も仲良く予選敗退じゃーっ!」
「ぬかせーっ!」
キン肉マンと真弓は既に長い間の対決でお互いに疲労しきっていた。威勢はいいが、息が切れているのは隠せない。決着がつくのももうじきだろう。
「スグル…これがワシの最後の攻撃になる… 心して受けろ。」
「パパ…わたしもこれが最後の攻撃だ。」
「マッスルボンバーッ!!!」
激しい突進と共に互いに同じ技を繰り出してきた。何の小細工もない、力と力の激突…少しでも技の威力の高い者が勝利する…!
ガシィ!!
二人の体は激しく激突し合い、大きく跳ね上がり、仰向けに倒れた。
『あーっと、これは…両者ラリアート相討ち、ダブルノックダウンだーっ!!』
すかさず、レフェリーのカウントが入る。
「ワーン! ツーッ!…」
◇大激突!! 立ち上がるのはどっちだ!?
キン肉マン2000 第3回超人オリンピック編
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| 第19話 …/おわり
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次号、重大発表あり!?
大して期待せずに待て!
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巻末言
CATVでS星矢の再放送が始
まる。アイキャッチと触込みの
超能力格闘技てのは何なんだ。
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