キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第1話 決勝トーナメント抽選会の巻

夢の東京湾横断道路・るりかけすに隣接するジオ・スタジアム−ここの特設ホールでは第3回超人オリンピックの決勝進出者の激励会を兼ねた組み合わせ抽選会が行われようとしていた。

「まったく、おいしいのう。ハグハグ…」

「せやな、キン肉マンはん。ホグホグ…」

互いに決勝トーナメント進出を決めたキン肉マンとテリーマンの弟子、ノーティー・ブラットは山のような料理をひたすら食いまくっていた。

「もう…いくらなんでも食べ過ぎですよ。本戦も近いというのに…」

「そうやで、キンちゃん。ホラ、ノーティーもこれくらいにしとき。もうすぐ決勝トーナメントの組み合わせ抽選会も始まるんやから。」

ミートとナツコは止まることなき二人の食欲に呆れかえっていた。

「ところでミートよ。パパはどうしとる?」

「ああ、大王さまですか? まだあの試合の疲れで動けないそうですよ。」

「はは…随分ハデに打ち合うとったからな。」

「だがパパも人が悪いのう。今まで人を押しのけてまで目立とうとしていたパパが今回は姿を見せないと思ったら…」

「王子と戦うために特訓をしていたとはねぇ。」

(だけど…だけど王子との戦いの中で見せたあの技は何だったんだ…あれはアタルさまと同じ…)

ミートは最終予選終了後も大王の繰り出した技が頭から離れなかった。その技の中に大王が予選に参加した理由、そして第一次予選終了後にアタルが発した言葉、それらの答えが隠されている気がしたからだ。

しかし…確かにあの激戦を演じた後だ。現役で試合慣れしているキン肉マンはともかく、引退して久しい後の実戦…しかも全盛期を上回る力を出した真弓には大層堪えただろう。しかし、そんな試合の後でも全く変わらない者もいた。試合ではほとんど動かなかったアイツだ。

「あー、それでは選手の諸君、ただ今から組み合わせ抽選会を始める!」

そう、ステージ上に現れた委員長だ。彼は今日も元気にMCを務めているが、相変わらず誰も聞いちゃいない。

「あー、注目、注目…」

そう言いかけた時だった。

パッ…パッ…

場内がたちまち暗転した。どよめきの声だけが残った。

「このくだらないトーナメント、オレたちがとって代わってやるぜ!!」

「何だと!」

「何やて!」

闇に乗じて何者かが潜入したようだ。

「ノーティー、気を抜くな!」

「は…はいな!」

さっきまではだらしなく料理を食い漁っていたキン肉マンだったが、イザとなったら凛々しく変身する。ノーティーはそれに従えられるように身構えた。

薄明かりの中で超人たちと乱入者との戦いが繰り広げられる。しかし…世界中から選りすぐられた超人たちが集まっているのだ。勝負ははじめから分かっていた。

「喧嘩ボンバー!!」

ネプチューンマンが…

「クインテット・エクレール!!」

ギャラクティカが…

「ベルリンの赤い雨ーっ!!」

ブロッケンが…

次々と必殺技の前に倒れる乱入者たち。どうやら大騒ぎする程のものでもなかったらしい。間もなく照明も復活した。

「ふう、どうやら片づいたようじゃな。」

なぜか、ほくそ笑みながらこの有様を見下ろす委員長。一面には選手たちの反撃で完全にKOされた乱入者たちが転がっている。いや、ただ一人キン骨マンを倒し尻に敷いている者を除いては。人数は16人、黒ずくめでマスクを被っていた。選手1人につき1人倒した計算になる。

「さあ、勝者の権利じゃ。マスクを取ってやれい!」

早速マスクを剥がし始める選手たち。

「ゲーッ!!」

マスクの下に驚いたわけではない。その素顔はごく普通の超人だったからだ。彼らが驚いたのは、その額にアルファベットが刻まれていたからなのだ。その異変にマスクを剥がすのを躊躇っていたキン肉マンら覆面超人たちも乱入者のマスクを剥がした。キン骨マンに乗っかっていた乱入者も自らマスクを剥がす。

「こ…これは、まさか。」

「フッ…ロビンよ。お前も同じ考えのようだな。」

「ネプチューンマン、お前もか。だとしたら委員長も人が悪い…」

「な、何じゃ。全く訳が分からんぞい。」

「さあ、若き超人たちよ。これを見よ!」

委員長の立つステージの後ろからボードが現れた。

「諸君らが倒した(倒された)超人たちの額にはそれぞれアルファベットが刻まれているはずだ! それが諸君の引いたクジになる! 後ろのボードをよく見るがいい!!」

後ろのボードにトーナメント表とアルファベットが浮かび上がる。そして…選手たちの名前も浮かび上がった!

A:キン肉マン―――――┐
            ├┐
B:ブラックホール―――┘│
             ├┐
C:ノーティー・ブラット┐││
            ├┘│
D:エレガントマン―――┘ │
              ├┐
E:ブロッケンJr.――┐ ││
            ├┐││
F:ゾナーマン―――――┘│││
             ├┘│
G:デッキマスター―――┐│ │
            ├┘ │
H:アシュラマン――――┘  │
               ├─
I:ネプチューンマン――┐  │
            ├┐ │
J:サンシャイン――――┘│ │
             ├┐│
K:ペンタゴン―――――┐│││
            ├┘││
L:ギャラクティカ―――┘ ││
              ├┘
M:キン骨マン―――――┐ │
            ├┐│
N:バッファローマン――┘││
             ├┘
O:マイナーラスク―――┐│
            ├┘
P:ロビンマスク――――┘


「こ…これがトーナメント表やなんて…」

「この組み合わせだと王子とノーティーは2回戦で戦うことになりますね。」

「ああ、そのためにはあのハデハデ兄ちゃんを倒さんといかんけどな。」

サイキョー超人の一人・エレガントマンの方に目をやるノーティー。

「エレガントマンか…あやつの変身能力には心してかかるんじゃ。ブロッケンですら苦戦したからのう。」

「へへ…分かっとるで、キン肉マンはん。2回戦は一緒に戦いたいさかいな。」

「キンちゃんはブラックホールか。こっちは2度も勝った相手やから大丈夫やね。」

「だといいけど…」


「初戦からキン肉マンとか…願ってもない。」

穴の空いた顔からはよく分からないが、当のブラックホールはこう呟くと薄笑いを浮かべた。

☆決勝トーナメント組み合わせ決定! 優勝の行方は…?
キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第1話
…/おわり
トーナメントに臨むキン肉マンに刺客が!?
次号、『王室格闘術』の巻!

巻末言
メインタイトルは変わったけど
超人オリンピックに変わりなし。
どこがタイトル一新だったんだ?


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