キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第2話 その名はカイザーコマンドー!の巻

田園調布。我らがキン肉マンとミートは第3回超人オリンピック決勝トーナメント組み合わせ抽選会の後、帰路についていた。…と、その前にノーティーらとドンチャン騒ぎをしていたため、辺りはすっかり暗くなっていた。

「うう…もう食えんわい。」

「たくー、昼間あんなに食べてたのに、またあれだけ食べるから…」

「そう言うな。それにしてもノーティーの大食い野郎め。わたしが大食いで負けるなんて。とにかく、今日はもう動けん。おとなしく帰って寝るしかないのう。」

「フフ…そう簡単に帰れると思ったのか。」

「ん…ミート、何か言ったか?」

「いいえ、王子こそ。」

謎の声の主はキン肉マンとミートの背後からヒタヒタと迫っていた。

「王子、後ろ!」

「おお!」

キン肉マンは臨戦態勢をとった。さっそくオリンピック出場者を狙った闇討ちか!? だが…後ろを振り向くと謎の声の主はどこにもいない。夜陰に乗じてキン肉マンたちの背後に回り込んでいたのだ。

「ゲホッ!」

瞬間、キン肉マンの頭から背中にかけて凄まじい衝撃が走る。キン肉マンはいつの間にかバック・ドロップをかけられていたのだ。だが、不思議と痛みは感じない。キン肉マンの動きだけが封じられたかのようだ。その鮮やかさは熟練の技さえ感じさせる。

「トリャ!」

男はキン肉マンを放り投げると、自身も高く飛び上がった。キン肉マンの両腕をサーフボードにとらえ、両足をフックする。この体勢は…

「ま、まさかあの男の正体は…」

このままキン肉マンの体が地面に叩きつけられるといくらキン肉マンでも重傷を負いかねない。そんな絶体絶命の状況でもミートはなぜか落ち着き払っていた。ミートの考えが正しければキン肉マンは助かる…そう信じていたのだ。そして、その予想は当たった。

地面に激突する寸前、男は技を解いていた。ここでミートはようやく男の姿を直視することができた。全身黒ずくめのタイツ姿。頭まで覆面でスッポリ覆われている。組み合わせ抽選会に出てきた超人たちと同じ姿をしているが、こんな夜更けに出てこられては、一歩間違えれば変態そのものだ。

「まったく、油断するとすぐこれだ。先が思いやられるな。」

キン肉マンは失神寸前になりながら、男に抱きかかえられていた。男は覆面を取った。そこには…

「ゲーッ!!」

「やっぱり…」

ソルジャーマスクを被った超人、そう、キン肉アタルがいたのである。

「何とか決勝トーナメントまで勝ちあがってきたようだな。だがスグル、このままではお前は大会に優勝できん。いや、1回戦突破も危ういだろう… そのために…このわたしがお前のコーチとなろう。」

「ま、待ってくれ、アタル兄さん! だからっていきなりナパーム・ストレッチをかけんでもええやねん。」

「イヤとは言わさん。これはお前だけの問題ではない。キン肉族の…そして超人界全体の問題なのだからな。」

キン肉星王位という副賞はあるが、このオリンピックはただ単に超人たちの格闘技の祭典ではなかったのか!? いちいち含みと強引さを持ったアタルの一言が発せられる度に、キン肉マンはもちろんミートも混乱しかけている。

「だけどアタルさま、お言葉ですが王子は48の殺人技の他に52の関節技、それにキン肉族三大奥義の一つ、マッスル・スパークもマスターしているんですよ。王子にこれ以上身につけるものなんて…」

「だが、今のはどうだ? わざわざ殺気を発して近づいてやったのにこのザマだ。わたしがその気になれば、スグルは五体満足でいられたかな?」

「う…」

キン肉マンもミートも言葉を失っていた。だが、それならば何故アタル自身が… そう言いかけようとした時だった。

「父さんも困ったもんだ。スグルをここまで甘やかすとは。そして、ミートよ。お目付役の身分では知らされてないのもムリはないか… まだあるのだ。キン肉族王家の者のみに受け継がれる戦闘術が… そして、おそらくこのトーナメントはそれ抜きでは勝ち抜けまい。」

二人の中に戦慄が走る。今回のオリンピックにはその力を借りなければ倒せない敵がいるのか…そして、その正体とは…

「そ、それは何だ! 教えてくれ、兄さん!!」

「キン肉族王家に伝わる王室格闘術、その名をカイザーコマンドーという!!」

★鬼コーチ登場! その特訓内容とは?
キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第2話
…/おわり
1回戦開始!
ブラックホールの自信の意味は!?

巻末言
虫歯で死にかける。おまけに保
険証を紛失して大ピンチ。とり
あえず経過はこのコーナーで。


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