キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第5話 復活! 奇跡の闘気(オーラ)の巻
第3回超人オリンピック1回戦第1試合、キン肉マンVSブラックホール。キン肉マンは本調子が出ないながらも次々に襲いかかるブラックホールの攻撃をしのいでいった。しかし、ブラックホールの最後にして最大最強の戦法・コールサック殺法が炸裂。周囲は闇に覆われ、あらゆる光がかき消されてしまった…!!
ドカッ、バキッ、ガシッ、ズガァッ…!
「うわっ、おわっ、ぐわっ、どわっ、」
ブラックホールの攻撃は加速度的に激しさを増していく。観客には全く姿が見えないが、ブラックホールの攻撃の集中砲火がキン肉マンに吸い込まれていくのが容易に分かる。
「王子ーっ、まずはリング外に逃げて攻撃をかわして下さい!」
「逃げる…だと? ムダなことを。」
「おわーっ!」
そう…いくらキン肉マンが逃げても目の前が見えず、せいぜいコーナーポストにぶつかるのが関の山。しかもその姿はブラックホールに丸見えなのだ。
(スグル…この闇の正体が分かるか… これはブラックホールの執念だ。ブラックホールのお前への執念がこの闇を生み出したのだ。この執念を生み出すには並の精神力では到底できまい。だとすればこの技を破るのは…)
アタルはブラックホールのコールサック殺法の破り方を知っているようだ。だが、敢えてキン肉マンに伝えることはしない。これしきの危機は自分で振り払わないと、これから先はとても戦えない…と心を鬼にしているのだ。そして選手席では…
「だから…だから言っただろう。コールサック殺法は攻略不可能だと…」
ペンタゴンは盟友・ブラックホールの勝利を確信していた。と、それ以上に敗者になるであろうキン肉マンへの同情の念を強くしていた。それ程コールサック殺法が強力だということだ。
「キン肉マン…コールサック殺法は確かに恐ろしい。だが、オレたちは信じてるぜ。お前はここで終わるような男じゃねえってことを!」
「そうだ、ブロッケン。キン肉マンは何かやってくれる…」
だが、状況は進展しないままだ。セコンド席に座るミートにも、もはや打つ手がない。ミートはセコンドとしての無力さをこれまでにないほど痛感していた。ただ、何処にいるかも知れない神に俯いて祈るしかなかったのだ。
「王子…」
「ミートくん…キン肉マンは大丈夫だ。ここでオレたちが諦めてどうするんだ!」
隣に座るテリーがミートを励ます。
「だけど、テリー…こんな暗闇の中では、もう…」
テリーの励ましに、ミートは棘だらけの現実を突きつけた。
「確かにそうかもしれない。この闇は…きっと…ブラックホールのキン肉マンへの憎悪によって作り出されたものだろう。それだけブラックホールの執念は強かったのだ。そして精神力による闇には物理的な光が通じない。待てよ…精神力による闇…そうか! 精神力で闇が作り出せるのならば…あの光が…あの光がまた出せればキン肉マンが勝てる見込みも…」
「ハッ…テリー、あの光って…もしかして…」
テリーとミートは逆転勝利のための糸口を掴みかけたようだが…当のキン肉マンはそういう場合ではなかった。どこから飛んでくるかも知れないブラックホールの攻撃で、これまで何度ダウンしたことだろう。キン肉マンの意識が薄れ始めてきた。
「どうやら、お前もこれで終わりだな。聞いたところによるとお前のコーチにはキン肉アタルがついたそうだが…それも逆効果か。ま、恨むのならお前の兄貴を恨むことだ。内容は知らんが、試合前から疲労しきった体で戦わせてしまう特訓など聞いたことがない。」
キン肉マンはダウンしたままブラックホールの言葉を聞いていた。ダウンを感知するセンサーを搭載したAJS(自動判定システム)が働き、ダウンカウントが刻まれる。
(確かにブラックホールの言うとおりだ。まったくアタル兄さんもムチャな特訓をしたもんだわい。重さに慣れさせるというよりは、まるでわたしを疲れさせるためにやっているとしか思えなかったからのう。そう言えばカメハメ師匠との特訓でもこんなことがあったっけ…)
キン肉マンの脳裏にカメハメとの特訓風景が映し出される。
「カメハメ師匠、今日の特訓は何ですか?」
「今日は…」
おもむろにアイマスクを取り出すカメハメ。
「戦いの本能を呼び覚ます特訓だ。」
「戦いの本能…?」
「そうだ。超人格闘者にとって大事な事は何より戦いに対する本能…いわゆる野性のカンだ。それはどの超人にも存在するが、実際にその能力を使いこなせる者はほとんどおるまい。だが、その戦いの本能を呼び覚ます事で超人の力は飛躍的に増大する。目を閉じてる時はおろか、眠っている時でさえ敵を倒せるほどなのだ。」
「ふええ…」
「そこで、さっそくお前にはこのマスクをつけて特訓をしてもらおう。」
「ちょ…ちょっと…」
戸惑うキン肉マンにカメハメはいそいそとアイマスクを着けさせた。
「さあ、まずは軽く打ち込んでいくぞ…」
そう言いつつ、カメハメは容赦なく攻撃を加えていく。カメハメの修行は厳しいことで有名だったが、彼にしてみればこれも序の口だったのだろう。
(…フフフ…つい昔の事を思い出してしまった。これも死が近いからかのう… それにしても、わたしの置かれている状況は目隠しをされたあの時の特訓と全く同じだわい。だが、わたしは今でもその戦う本能とやらを目覚めさせてはいないが… まさか…アタル兄さんやカメハメ師匠の特訓とは…!)
キン肉マンは疲労と絶望で堕ちかけていた。その静寂はある男の声で破られた。
「キン肉マンはん、立つんや! 立ってオイラと2回戦を戦うんや!!」
「ノーティー…」
そう、テリーマンの弟子であるノーティー・ブラットである。二人が勝ち進めば、次の2回戦のカードはキン肉マンVSノーティー・ブラットということになるのだ。
「誰かと思えばテリーマンの弟子の小僧か… フッ…万が一にもお前が勝ち抜いたところでキン肉マンとの対戦は不可能だ。こいつには、これからわたしがとどめを刺すのだからな。」
ブラックホールがそう言った途端、足首に衝撃が走った。何者かが足首をもの凄い力で掴んだのだ。と言っても、リング上にはキン肉マンとブラックホールしかいないわけなので、その主はキン肉マンということになる。手を伸ばしたのが、偶然にブラックホールの足を掴む結果になったのだろうが…
「貴様…今の言葉を取り消せ…!」
「何だと!?」
「ノーティーは必ず2回戦に勝ち上がってくる…そして…わたしもな!!」
まだダウンしたままのキン肉マンだったが、それはブラックホールを戦慄させる迫力があった。ブラックホールは俄に不安に襲われた。
「えーい、放せと言ったら放せーっ!!」
ブラックホールは掴まれていない方の足で、キン肉マンの頭と腕にストンピングをかけた。たまらず足首を放すキン肉マンだったが、ブラックホールは何故か焦り始めていた。状況は何も変わっていないのに、キン肉マンを今のうちに倒しておかなければいけないと感じていたのだ。
「こうなれば、一気に片づけてやる!」
立ち上がったキン肉マンを確実に仕留めるべく、十分に距離をおくブラックホール。彼はそのまま走り込むとフライングクロスチョップを放った。
(…ん、これは…何か禍々しいものが近づいてくる…)
キン肉マンは何かを感じ取っていた。そして半歩体をずらした。
「な、何ィ!?」
これまでいいようにブラックホールの攻撃を食らっていたキン肉マンが初めてかわしたのだ。
「くそっ、どうせまぐれだ。今度こそ!」
(まただ…また感じる。今度は左後ろから…)
キン肉マンは体を右によじった。ブラックホールのミサイルキックはキン肉マンの左脇腹をかすっていった。
「なぜだ! このわたしの姿はもちろん、音さえもこの大歓声でかき消されているというのに!」
(今度はさっきよりもハッキリ分かる。頭上からフライング・ボディ・プレスだ。)
「ぐあっ!」
ブラックホールのボディ・プレスはものの見事に自爆した。再三にわたる技の不発にブラックホールは焦り始めていた。
(キン肉マンにはわたしの姿が見えているのか? どうして? どうやって? いや、ありえん! そんなことは…そんなことは…うっ…何だ!? あの光は…)
キン肉マンは自分の体がうっすらと輝き始めているとは気づいていなかった。その光はブラックホールのコールサック殺法の闇の中にあっても掻き消されるものではなかったのだ。
「ええーい、ままよ!」
ブラックホールはキン肉マンを一気に葬り去ろうと渾身の技に出た。
(分かる! 正面からラリアートだ!!)
「な、何!?」
「くらえ、カイザーコマンドーNo.1、マッスル・ボンバー!!」
ガギィィィン!!
『あーっと、何が起こっているかは分かりませんが、一瞬リング中央でものすごい音と光が大炸裂したーっ! 果たして勝ったのはどっちだ〜っ!?』
と…次の瞬間、蒸発するかのように闇が晴れ始めた。そして10秒ほどでコールサック殺法以前の状態に戻った。そこで人々は奇跡を見るのである。
「な…何だ…今の光は。わたしのコールサック殺法の前ではあらゆる光がかき消されるというのに…」
リング上には中央にマッスルボンバーを放ったキン肉マンとコーナーポストにもたれかかったブラックホールがいた。そしてブラックホールは崩れるようにマットに昏倒した。苦悶の中、未だに自分の技が破られたのが信じられないようだった。
「筋肉闘気(マッスルオーラ)…」
VIPルームのアタルが呟いた。だが、別の部屋でも同じ事を言う者がいることは誰も知らなかっただろう。
間もなく、AJSが10カウントを刻み終わり、最初の2回戦進出者が決定した。
☆キン肉マン、奇跡の逆転勝利! 光は死なず…
キン肉マン21 第3回超人オリンピック編
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| 第5話 …/おわり
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いよいよ第2試合へ…
あの男が登場だ!
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巻末言
現在7月21日…あの…まだ…
観てません…劇場版… 最近は
イベント等で忙殺されまくり。
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