キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第7話 必殺! ゴス・ゴス・バーンの巻


第3回超人オリンピック1回戦第2試合、ネプチューンマンVSサンシャイン戦。サンシャインは得意のサンドディフェンスでネプチューンマンの攻撃を無効化。しかし、ネプチューンマンは復活したマグネットパワーでサンドディフェンスを打ち破った。そして…

「サンシャインよ。早く手当を受けろ。また戦ってやる。」

「ネ…ネプチューンマン…」

ネプチューンマンは彼なりに相手を気遣っていた。それは、以前の完璧超人時代とは明らかに違っていた。しかし、サンシャインはそれに甘えるわけにもいかなかった。これ以上の甘えは完全に自分をダメにしてしまう。サンシャインは顔の左半分を押さえていた手をどけた。フィニッシュの喧嘩ボンバーだろうか…サンシャインの目の周りはただれていた。

「こんなもの、こんなもの…!」

「サンシャイン、一体何を…!?」

サンシャインは左目に指を突っ込んだ。そして…

「サ…サンシャイン!?」

盟友のアシュラマンは思わず立ち上がった。サンシャインが何をするのか分かっていたからである。

グシャアッ!

『あーっと! サンシャイン、左目をえぐり出しましたーっ!!』

サンシャインの左目からは透明な体液が滴り、無骨な体躯に似合わず綺麗に赤く透き通った宝石のような目がカタンとマットに落ちた。サンシャインは眼球を拾い上げた。

「アシュラマン…悪魔超人界はお前に任せたーっ!」

サンシャインは眼球をアシュラマン目がけて投げつけた。アシュラマンは6本の腕でしっかりとそれを受け止めた。

「サンシャイン…お前…」

「今のオレが何をしたいのか、まだわからん…だが、もう二度とリングに立つことはないだろう…」

(アシュラマン…)

サンシャインはアシュラマンの方に視線を移した。

(サンシャイン…わたしは…わたしは…もう悪魔超人界からは…)

目を逸らすようにサンシャインからサンシャインの眼に視線を移すアシュラマンはそう語りかけているようだった。実質、悪魔超人界は宇宙超人タッグトーナメントではぐれ悪魔超人コンビの敗北によって解体してしまっている。そして、アシュラマンは正義・悪魔という枠組みにとらわれない一人の超人となっていたのだ。

その一連の遣り取りに歯噛みをする男が一人いた。元完璧超人で、現在はザ・サイキョー超人となっているギャラクティカである。

(甘いぜ首領…あんたも牙の抜けた男になったもんだ。その余計な情けがサンシャインの眼を奪ったようなものなんだぜ。あんたは…あんたはこのオレの手で必ず倒してやる!)

サンシャインは無言でリングを降りると会場を去っていった。それ以降、サンシャインの姿を見た者は誰もいない。悪魔超人再興を諦めず、若き超人の育成に力を注いでいるという噂はあったというが…


『さあ、それではAブロックに実況を移してみましょう!』

リング上ではプリンス・カメハメに変身したエレガントマンがノーティー・ブラットにキーロックをかけていた。

「さあ、さしものお前でもこれは抜けられまい。」

「へへ…ようも飽きんでゴチャゴチャと。ストレッチがわりになって気持ちええくらいや。」

「ヤセ我慢を…!」

「それはどうかな…」

『あーっと! ノーティー、キーロックをかけられた体勢のまま…立ち上がったーっ! そしてバックドロップだーっ!』

「さーてっと、これで外れたで。」

「な…なんてメチャクチャな奴だ。技を外す前に自分の腕がヘシ折れるかもしれないというのに…」

「むう…」

委員長は興味深げにこのシーンを反芻していた。かつて一介の選手としてキン肉真弓と戦っていた際にも同じ技をかけられていたからだ。それはさておき、ノーティーはこれまでもエレガントマンがかける技の数々を全て力ずくで…しかもそんな様子は微塵も見せないほど余裕の表情で外しているのだ。その戦い振りはまるで常識外れとしか言いようがなかった。

「ならばこれでどうだ!」

『あーっと! エレガントマン、今度はマンモスマンに変身だーっ!』

「うおおーっ、ビッグ・タスクーっ!!」

両の牙を剥き出し、死の突進がノーティーを襲う。

「へっ、今度はマンモスマンはんかい。おもろいやないか、バッファローマンはんさえも凌ぐと言われとるマンモスマンはんのパワー、一度やり合うてみたかったんや。」

ガキィィ…!!

『こ…これは…すごい! ノーティー、マンモスマンのビッグタスクを抱えて突進を止めたーっ!』

「何や…こんな…もんかいな。もう少し手応えがあると思う…とった…けどな。」

「こ…こいつ…化け物か…!」

「もうこれで終わりなら、こっちからいくでーっ! よっと!」

ノーティーは余裕でフロントスープレックスを放った。エレガントマンは背中をしたたかに打ちつけのたうち回っている。

「エレガントマン…あの小僧の常識外れのパワーの前に完全に自分を見失っている。変身のために色々な超人の能力を観察してきたお前ならば、あのパワーにパワーで対抗できる超人が見あたらない事は分かっていただろうが。確かにエレガントマンの変身した超人は本物に比べて多少の質は落ちる。しかし、それを差し引いたとしてもマンモスマンのパワーを余裕で返すとは…何という恐るべき小僧だ。」

アタルはだんだんとノーティーという超人に興味を持ち始めていた。

ノーティーはエレガントマンの脇の下から伸びているフリンジ、メタモ・ストリングスを掴んだ。

「このワキ毛ももう用済みやな。こんなん長う生やしおってからに。男は身だしなみが肝心やで。」

ブチブチィッ!

「ギャアアーッ!」

エレガントマンは残った糸を全て引きちぎられた。身体に直結しているのだろうか…ノーティーのワキ○発言もあながちデタラメとは言えない。

「こ…この野郎。これが生え揃うまで何ヶ月かかると思ってんだーっ!」

「そんなん知るかいな。それより早よ立ってきいや。あんたのオリジナルの技も見たいしな。」

「くそう…小僧と思っていればいい気になりおって…こうなればもう手加減はしない! 宇宙に名だたるザ・サイキョー超人軍団の一人、エレガントマンの真の恐ろしさを見せてやろう!」

そう言うとエレガントマンは見たことがない技の構えに入った。

「いくぞ、エレガント・フェスティバル!!」

「あーっ、あないなとこにキン肉アタルが…」

「えっ、首領が…何処だ?」

ノーティーの口からでまかせによって、エレガントマンに一瞬スキができた。

「そんなんウソに決まっとるやろ。くらえ!」

「なにっ!?」

「ゴス…!」

ノーティーの右腕から繰り出されるボディブローがエレガントマンの左脇腹に捻り込まれた。これだけでも並の超人ならば十分KOに匹敵する威力である。

「ゴス…!!」

間髪を入れず、左腕からの一撃が同じくエレガントマンの右脇腹に突き刺さる。なおも…

「バーン!!!」

両腕を組み、脳天唐竹割の如きスマッシュが決まった。

「ゴス・ゴス・バーンだと!?」

「そうだ、キン肉マン。これがノーティーオリジナルの必殺技…ゴス・ゴス・バーン。単純な三連打だが、一発でも怖いノーティーのフルパワーが三発も一度に入る恐怖の必殺技だ。スキも大きいが、逆に一旦決まれば返し技も存在しない。」

単純な三連打…技と呼ぶにはあまりにもお粗末だが、これほどノーティーという超人のファイトを象徴する技はないだろう。

『ナイン!…テーン! 立てません! 噂のルーキー、ノーティー・ブラット、エレガントマンを下し2回戦進出決定だーっ!!』

「先生ー、キン肉マンはん、やったでーっ!! これで2回戦で戦えるなーっ!」

「王子、次は敵ですけど今はとりあえず勝利を祝いましょう。」

「キン肉マン、その格好は…!」

キン肉マンは荷物をまとめて逃げ出す準備をしていた。

(ふう、それにしてもあんな技が本当に決まるとは思わんかったで。テリー先生とのスパーリングじゃ一度も成功せえへんし、ディッキーマン先輩は一発目からのびよったからな。せいぜい決まっても開拓地の岩相手やったし。それにしてもあのハデハデ兄ちゃんの技って一体何やったんやろな。)

それは…書いてる作者にも分からない… ちなみに、ノーティーがエレガントマンのスキを作るためにデタラメに指した方向には本当にアタルがいたことをつけ加えておこう。そして当のアタルは…戦慄に打ち震えていた。

「北米新人超人選手権の模様も観たことはあったが、この小僧…まるで戦う度に強さを増していくようだ。これは新人が試合慣れするものとも違う… スグル…もしかすると、次で負けるかもしれん…」

☆圧倒的なパワーでノーティー爆勝!
キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第7話
…/おわり
次号、ブロッケンVSゾナーマン。
華麗なダンス対決を制するのは!?

巻末言
ドームコミケに行き、女神の聖
闘士大集結に遭遇。うお〜っ!
デスマスク、かっちょえ〜!!


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