キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第8話 象南波羅を打ち破れ!の巻


第3回超人オリンピック1回戦第3試合、ノーティーブラットVSエレガントマン。エレガントマンの変身能力をモノともせずにパワーでねじ伏せるノーティー。一瞬のスキを衝いた必殺技ゴス・ゴス・バーンが決まり、2回戦進出を決めた。

「うおーい、やったのう。ノーティー!」

「へへ…キン肉マンはん、おおきに。」

「それにしてもお前、やりすぎだぞ。」

リング上ではノーティーのゴス・ゴス・バーンを受けたエレガントマンが未だ倒れたままだった。やがてエレガントマンは担架によって運ばれていった。

「それにしてもすごい技でしたね。あれは1週間は起きあがれないでしょう。」

「テリー先生…どないしよう…」

「まあ、気にするな。初めて決まった技だ…加減が利かないのも当然だ。それにエレガントマンも並の超人じゃない。後で見舞いにでも行ってやればいいだろう。」

「ふう…」

さすがのノーティーも少しはこたえていたようだ。さて…Bブロックではネプチューンマンがコーナーポストを破壊したため修理に時間が割かれているが、Aブロックでは早くも3試合目が行われようとしていた。

『さあ、Aブロック第3試合はこれまた注目のカード、ブロッケンJr.VSゾナーマンです。ベルリンの赤い雨が冴え渡るブロッケンに対し、彗星のごとく現れ流れるような連続技で相撲コンビを撃破したゾナーマン…さあ一体どんな試合を繰り広げてくれるのでしょうか…』

スタンドではジムナスマンとワイルド・ジョーカーがエレガントマンとギャラクティカの応援がてら観戦していた。

「エレガントも不覚をとりましたね。これで我等、ザ・サイキョー超人軍団も残りはギャラクティカ一人になりましたか。まったく…予想外にこの大会は厳しい。おや…どうしたのですか、ジムナス…珍しく考え込みなんかして。」

「ショータロー…あれから…何が…あったんだろう…このリングに立ってるなんて…夢みたいだ…」

ジムナスマンはぼんやりとリングを見つめた。ゾナーマンとジムナスマンは、かつておはスタ星での幼なじみ…しかもゾナーマンは、当時ひ弱で格闘とは無縁の存在だったのだ。

「フフ…ジムナスなりに考えているんですね…」

話を戻そう。

(ゾナーマン…本気を出したあいつは予選でウルフマンとバケモノという猛者を手玉にとった超人…いや、怪人だ。あのネプチューンマンが先手を任せたほどだからその実力もハンパじゃねえ。特にあの象南波羅には要注意だ。あれについては、まだ攻略法が全く見つからない。こうなれば、一気呵成に畳みかけるしかない! 先手必勝だ!!)

屈伸をしながらゾナーマンを睨みつけ意気込みを見せるブロッケンとマントを纏ったまま余裕を見せるゾナーマン。両者の表情は対照的だ。

(よし…いくぜ!)

「ファッハッハッハ…」

『さあ、ゴングです…』

カァン!

『さあ、ブロッケン、猛然とダッシューっ!!』

やはりブロッケンは作戦通り先制攻撃を仕掛けるようだ。

「ブレード・ヴァイス!」

「トランシャン・ノワール(黒い刃)!」

「何っ!?」

「ファッハッハッ…」

ブロッケンが水平に放った手刀は、ゾナーマンが縦に放った手刀に阻まれた。ブロッケンの作戦は早くも破られてしまった。いや…まだだ。さらに不意を衝こうとブロッケンの第二撃が飛び出す…!

「シュバルツ・メッサー!」

「クートー・ブランシュ(白いナイフ)!」

ブロッケンの回し蹴りはゾナーマンの回し蹴りと相打ちになった。

「ようし、これなら…ベルリンの赤い雨、乱れ打ちーっ!!」

「アシエ・アルミュール(鋼の鎧)!」

ゾナーマンはマントを翻した。ブロッケンの手刀の雨霰はそこに吸い込まれていき、ゾナーマンの体には傷一つつけることはできない。

「バカな…こんな筈では…」

再三にわたる先制攻撃をことごとく防がれたブロッケン。ブロッケンは冷静さを失い、ただひたすら手刀を繰り返す。焦りと単調な攻撃でブロッケンのスタミナは消耗されていった。

「そろそろ防御するのも飽きてきたゾナね。それではいくゾナ、象南南羅=ドゥビネット・ダンス!!」

『ナゾミナスグ ナヤメバホラ ナントカナル Zona's Song! アキラメルナ アマエナイデ アシタガアル Zona's Song!…』

マントに隠れていたゾナーマンが攻撃に転じた。ブロッケンとは逆にゾナーマンのリズムに乗った攻撃がブロッケンに叩き込まれていく。同じように攻撃をしても、こうも違うものなのか… ブロッケンは象南波羅の隙を見つけて反撃をしようにも絶妙のタイミングでかわされてしまう。まるでゾナーマンがワザと隙を作らせて攻撃を誘っているかのようだ。いや、それ以上に問題がある。ブロッケンがそれらの状況を分析する冷静さを失っているのだ。

「うおーいブロッケン、慌てず防御を固めるんじゃ!」

キン肉マンの的確な指示が飛ぶ。しかし、ブロッケンはそれどころではなかった。

「ダメだ、キン肉マン。ブロッケンには聞こえていない。」

そう言うや否やテリーの横でノーティーが息を吸い込んだ。

「ブロッケンはーん、防御を固めるんやーっ!!!」

ノーティーのでかい声で音楽がかき消され、ゾナーマンの攻撃が一瞬止まった。

「ノーティー…」

「へへへ…」

「ありがてえ! これで…」

ブロッケンはガッチリと両腕を構え、ガードを固めた。…と、ブロッケンの目にはリングサイドでテレコを抱えている少女…レベッカの姿が目に入った。今までゾナーマンの隙を窺うことだけが精一杯のままのブロッケンでは気づかなかった光景だ。そう、ブロッケンが必死にしのいでいる攻撃は、テレコから流れる音楽「象南波羅」に乗って繰り出されているのだ。

「…そうか、頭に血が上って簡単な事を忘れていたぜ。象南波羅のリズムに乗った攻撃ってことは…あいつは象南波羅の通りにしか動けねえってことじゃないか…?」

「何をブツブツ言っているゾナか? このままカメのように守りを固めていても体力が削られていくだけゾナよ。」

(よく見るんだ…そして、よく聴くんだ。ヤツの攻撃を…ヤツの音楽を…)

ブロッケンは音楽とゾナーマンの動きの繋がりを見切ることに全神経を集中させた。

(何でやねん、戻して、カナポーズ…何でやねん、戻して、カナポーズ……よし、だんだんと掴めてきたぜ。)

「ファッハッハッハ…ここまでよくねばったものだが、次でフィニッシュゾナ。くらえ…!」

ひとしきり攻撃を終えたゾナーマンが左腕を上に、右腕を下に…水平に構えた。腕の形がちょうどアルファベットのZの形を描き、黒く輝き出した。ゾナーマンの手刀が唸りを上げた…

ガキィ…!!

『あーっと、ブロッケンの攻撃が初めてゾナーマンに決まりましたーっ!』

ブロッケンは紙一重で手刀をかわし、ゾナーマンの鳩尾にエルボーを突き立てていたのだ。思わずニーダウンするゾナーマン。

「ゲ…ボッ…!? ど…どうしてゾナ… 象南波羅が破られることが…」

「ゾナーマンよ。お前の象南波羅のパターンは完全に見切ったぜ。そして…今こそオレの新必殺技を見せる時だ。ザ・ニンジャ、お前との特訓の成果…無駄にはしないぜ。くらえ、ドッペル・ゲンガー!」

『あーっと、こ、これは!?』

ブロッケンの身に一体何が起こったのだろうか。

○駄目押しに放つブロッケンの新必殺技の正体とは!?
キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第8話
…/おわり
Bブロック再開。
ネプチューンマンと戦うのは!?

巻末言
トイザらスに行く。4〜5歳
児がニンジャのフィギュアを
ねだる場面に遭遇。やるな…


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