キン肉マン21
第3回超人オリンピック編
第13話 1回戦終了…の巻
第3回超人オリンピックAブロック1回戦第6試合、アシュラマンVSデッキマスターは、不可解な結末を迎える。そして1回戦最終戦…ロビンマスクVSマイナーラスク…
『1,2、3…』
AJSが3カウントを刻んだ。そしてジオビジョンには「WINNNER MINOR RUSK」という表示が浮かび上がった。
マイナーラスクはゆっくりと立ち上がった。観客はおろか、当のロビンマスクも何が起こったかまだ理解できていない。この状況を把握できていたのは感情の無いAJS、フォールをかけたマイナーラスク、そして他の数人だけ… ロビンマスク3秒フォール…その瞬間である。
随分長い時間が経ったように思えるが、僅かに数秒だけが経っただろうか…観客席がどよめき始めた。マイナーラスクは両手を高々と挙げ、勝利をアピールする。ロビンマスクはまだ仰向けのまま、身動きをとれないでいた。
『あ、あーっと…これは失礼いたしました。思わず言葉を失ってしまいましたが…』
「なあ、これってどうなってんだ?」
「あいつ、勝った気でいるぜ…」
「これ、不意打ちだろ?」
「ロビン、負けちまったのかよ!?」
観客席のどよめきは徐々に大きくなっていき、審判側の説明を急かしていた。
『これは…マイナーラスク、ロビンマスクにピンホール勝ちかーっ!? しかし、しかし…信じられません。一体何が起こったのでしょうか!?」
「テ…テリー…これはどうなっとるんじゃい…」
「オレにも分からん。しかし、不意を襲ったとしても3秒ジャストのフォールは物理的に不可能…」
「その通りですよ。だけど…もしかして…」
「タキオンシュート…」
「ノーティー!?」
ノーティーの呟きにキン肉マン達はハッと振り向く。
「え…オイラ何か言うた?」
気のせいだろうか…いつものノーティーだ。
『さあ、ここにスロービデオの映像が届いておりますが…』
放送席からの解説が始まった。電光掲示板・ジオビジョンに試合開始直前の映像が再生される。
『あーっと、こ、これは!?』
ゴングが鳴る瞬間…一瞬だが、マイナーラスクが2人に見えたのだ。一人はロビンと離れて対峙、そしてもう一人はロビンの目の前でエルボーを炸裂させている姿。次の瞬間…ロビンと対峙していた方のマイナーラスクは消え去り、後はロビンにエルボーを決めてフォールに持ち込む姿だけが残った。
「委員長、ロビンマスクのマネージメント側からクレームが入っております。」
運営委員Aが血相を変えて委員長に報告する。
「うむ、分かっている。委員会の審議は今、終わった。」
そう言うと、委員長は身軽な走りでお立ち台に駆け上った。
『この件についてはワシから説明しよう! ロビンマスク側から、ゴング前の不意打ちに関してのクレームの件だが…ゴングが鳴った時点でマイナーラスクが直立している姿が確認されている。そして…AJSの判定は絶対である! よって、ロビンマスク側の訴えは却下とする。以上!』
『あーっと、マイナーラスクの勝利が正式に承認されました。優勝候補の一角、ロビンマスク…1回戦でまさかの敗退だーっ!!』
この日一番の大歓声が轟いた。ロビンの勝利を信じて疑わなかった者の悲痛の叫び、予想だにしなかった展開に興奮する者の狂乱の叫び…観客の数の感情が入り乱れた叫びだった。
花道から選手控え室に向かう通路…そこに2人の男が対峙していた。一人は試合を終えたばかりのマイナーラスク、そしてもう一人は…
「マイナーラスク…フィニッシュはタキオンシュートではなかったはずだ。お前…」
「勝ってまで文句を言われるとは…心外…」
「まあ、いいだろう。ククク…全て予定通りだ。それより、ラボにネズミが2匹入り込んだようだ。直ちに捕獲に向かうぞ。」
「わかった。」
二人は何処(いずこ)かへ消えていった。
リングでは、ロビンがようやく立ち上がった。無言でリングを降り、キン肉マンたちの横を通り過ぎる。
「ロ…ロビン…」
余程ショックだったのか、ロビンはキン肉マン達と言葉を交わすこともなかった。いや、違うのだ。
パシィィィン…!!
何かが張り裂ける音がした。ロビンの鎧が突如として、粉々に砕け散ったのだ。そして、ロビンはその場で昏倒した。慌てて駆け寄るキン肉マン達。
「な…何がどうなってるんじゃ!?」
「きっと、エルボーの一撃が余りにも凄まじかったためだろう。」
「そうですね。」
訳知り顔のテリーとミートをよそに、キン肉マンとノーティーの頭の中には?マークがグルグル回っている。
「これが並の威力のエルボーならば衝撃は鎧が全て受け止め、その場で鎧は砕けていただろう。しかし、マイナーラスクのエルボーは超高速でロビンに突き刺さった。その衝撃は鎧を一旦突き抜け、ロビンの体に直接ダメージを与えた…」
「そしてロビンの体を巡ったダメージは今頃になって鎧に伝わり…」
「こうなったというわけやな。」
キン肉マンとノーティーも、ようやく納得したようだ。
「しかしこれが本当なら…」
「このマイナーラスクという超人、侮れませんね。」
「やけど、確かあいつの予選試合って偶然勝ったんやないの?」
「ノーティー、それは違うぞ。予選でのパートナーだったデッキマスターもアシュラマンを破って1回戦を突破している。底が見えない謎めいた強さを持つ2人…そして何よりも恐ろしいのは、これほどの超人が今まで無名でいたことだ。このトーナメント、やはり荒れるな。」
気絶しているロビンを見つめるキン肉マン達の目には、戦慄という名の暗雲が広がっていった。
『これにて、超人オリンピック・グレートシリーズ1回戦は終了です。皆さまお気をつけて…』
場内アナウンスが流れる中、VIPルームではアタルがこの様子を眺めていた。
「遂に動き始めたか。アシュラマン、ロビンマスクといった実力派をいとも簡単に破り去る力…まだ半分も見せてはいないだろうな。だが、スグルもまだ… G(ジーン)マッスルとの戦い…これがもし宿命なのだとしたら、神も余程の悪戯好きだ。」
相変わらず何を言ってるか分からないアタルであった。
そして翌日未明…マッキンリー山嶺のとある研究所では激しい戦いの後、二人の超人が再び悪の軍門に下ることとなった。
「あんたの言った通りだ…何だ…あの信じられない速さは…」
「わたしの方もだ。まるで何を出すか分かってるかのように技が返されていく…」
「ククク…再び我々に楯突くとは愚かなことを。誰の差し金だかおおよその見当はつくがな。おそらく、正義超人でも随一の切れ者であり、実力者の…」
「プロフェッサー…こいつらの処遇…いかがいたしましょう。」
「デッキマスター…そうだな…アルティメット・プリズンにでも放り込んでおけ。そのうち利用することもあるだろう。」
「分かりました。プロフェッサー…ゼオン…」
悪が本格的に動き出そうとしていた。
◇2回戦、波乱の嵐が吹き荒れる…!?
キン肉マン21 第3回超人オリンピック編
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| 第13話 …/おわり
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2回戦始まる!
キン肉マンの新特訓の成果は…?
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巻末言
ほとんど1年も休んでしまって本当にすまな
いです。これからも細々とやってきますんで
期待しないで待っててくらさい。それでは。
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