【陰 陽】
陰陽は古代哲学の二元論が発祥で中国で発展したものだ。事物の現象や根源を陰陽の2つの相反する概念で分類する。大雑把な分類のため状況によって陰陽の意味するところに変化が生じる。大局的かつ柔軟に解釈する必要がある。陰陽には下表のような属性があり、一般に理解されている意味と大きく変わらない。 |
分類 | 空間 | 時間 | 季節 | 性別 | 温度 | 重さ | 明るさ | 運 動 |
陽 | 天 | 昼 | 春・夏 | 男 | 熱・暖 | 軽 |
明 | 上昇・外向・運動 |
陰 | 地 | 夜 | 秋・冬 | 女 | 寒・涼 | 重 | 暗 | 下降・内向・静止 |
易学で用いる陰陽は陰陽2卦を2分類し四象を導き、さらに2分類し8卦を得る。8卦の組み合わせで64卦の象意を以て占う。この手法で漢方処方を決定する流派もあるが、陰陽を医学に応用する場合は特有な用語を知っておかねばならない。人体の部位や機能を陰陽で分類すると以下のようになる。 |
分類 | 部位 | 組 織 | 機 能 | 病証 |
陽 | 表・背・上部 | 皮毛・六腑・気衛 | 興奮・亢進・活動 | 表・実・熱 |
陰 | 裏・腹・下部 | 筋骨・五蔵・血営 | 抑制・衰退・静止 | 裏・虚・寒 |
陰陽の分類は相対概念であり、陽に属する昼でも午前は陽で午後は陰になる。体では陰に属する腹部でも上部は陽で下部は陰となる。分類する時は各々陽中の陽、陽中の陰、陰中の陽、陰中の陰とする。これをさらに分割することができ、64分割したものが易象である。これくらいの数のパターンが人の認識能力の限界かも知れない。 病証は表証・裏証、実証・虚証、熱証・寒証などの用語を用いるが、これらの統括概念として陰証・陽証に分類する。 |
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【陰液と陽気】
人体を構成する成分のうち、血・津液・精を陰液といい、気を陽気という。陰液と陽気は互いに協調、制御することで体のバランスを維持する。陰液又は陽気の不足を虚証といい、下図に示した3つのパターンが考えられる。陽気の不足で気虚・陽虚、陰液の不足で血虚・陰虚が生じ、陰陽の不足が互いの不足を招き気血両虚・気陰両虚・陰陽両虚の状態に至ることがある。 |
陽 陰 □■ □■ □■ |
■ □■ □■ |
□ □■ □■ |
□■ □■ |
正常 |
気虚・陽虚 | 血虚・陰虚 | 気血両虚 気陰両虚 陰陽両虚 |
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【陰邪と陽邪】
人体に侵入した病邪で陽証を発現するものを陽邪といい、陰証を発現するものを陰邪という。病邪の存在で引き起こされる病理反応を実証といい、日本漢方でいう体質、体格、体力、顔色などの実証とは意味が異なる。 |
陽証 | △ □■ □■ □■ |
△ □ □■ □■ |
□ □■ □■ |
陽盛 | 陽盛陰虚 | 陰虚 | |
陰証 | ▲ □■ □■ □■ |
▲ ■ □■ □■ |
■ □■ □■ |
陰盛 | 陰盛陽虚 | 陽虚 |
陽邪(△)による実証を陽盛といい、陰邪(▲)による実証を陰盛という。陽邪は陰液を損耗しやすく陽盛陰虚をひきおこし、陰邪は陽気を損傷しやすく陰盛陽虚をひきおこす。陽病では邪正闘争が主で正気は衰えていないので興奮性の症候を呈し、陰病では陰陽失調が主で正気が衰弱し沈静性の症候を呈する。 |