【今月のコラム】


【山茱萸】

お笑い自民党改憲草案 ピーコ・谷口真由美・佐高信 (株)金曜日

以前、コラムで取り上げた「亡国の集団的自衛権」の著者、柳澤協二氏の談話を久々に読んだ。「安保法成立3年〜同盟深化リスク増」という見出しの新聞記事である。安全保障関連法案は9/19で成立から3年が経ち首相は日米同盟が深化したと自画自賛するが、自衛隊ひいては国民が思わぬ事態に巻き込まれるリスクが高まっている。日本がやるべきことは米国との一体化ではなく、米国と敵対する国々との仲立ちをし、戦争の理由をなくしていくことだ。

日本にとって「脅威」となるのは、相手が脅かす能力(軍事力)と意志の二つを持つことだ。能力を止められないなら、意志をどう止めるか考えるべきで、必要なのは「力の論理」ではない。(2018・9・19佐賀新聞)

根気強い話し合いをせず、やられたらやり返せ、武力が必要な時もある等と嘯いて力づくで法案を成立させる。軍事力をいくら増強してもひとたび戦争が勃発すれば必ず国民に被害が及ぶ。彼らは「国を愛する」といいつつ、いままで平和を守ってきた憲法を「恥ずかしい」ともいう。自由党の小沢一郎氏はTwitterで次のように発信している。

安倍総理が、また憲法改正を言い始めている。憲法は日本人の精神に悪い影響を与えているのだそうな。お友達と一緒に戦前思想を復活させるつもりだろうか。そもそも憲法を全く理解していない自分の政権が、今この国の「精神」にどれほど悪い影響を与えているか、冷静に考えてみたことはあるのだろうか。(201/10/9)

憲法をまったく理解していない連中の「憲法改正草案」を俎上に乗せ、3人で座談会を開いた。タイトルは「お笑い..」とされているが、こんな憲法がまかりとおるなら誰もが「ゾッ」とするだろう。自民党は憲法に対する考え方からして全く違う、逆だ。憲法第九十九条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」、尊重し擁護しなければならない国会議員が「みっともない」、「恥ずかしい」、「変えろ」という。

憲法はそもそも誰を縛るものかという大前提を知らずに改憲案を作ってるんです。(谷口)

九十九条で貫かれている縛りは国民へと向かう。権力を持つものがさらに憲法を以て国民を縛る。「大前提を知らず」ではなく分かっているから、主語を変えて自分たちの都合に合わせようとするのだ。本の帯には次のように書かれている「笑った後で恐くなる」。秘密保護法や安保法の成立で憲法が無力化されるとの懸念を識者は表明していた。いまの政権は隠蔽、改竄、恫喝なんでもやる、権力維持のためなりふり構わない。昔の自民党とはまるきり違う革命政権だと批判する人もいる。9月の総裁選挙の討論で落ち着き払い回りくどく語る石破氏に好感を持った人が居たかも知れない。安倍氏に比べ説得力に雲泥の差があった。だからこそ危険性も感じられる。石破氏は緊急事態条項の創設を主張した。

緊急事態条項の本当の狙いは、権力が何か理由をつけて国民に圧力や制限をかけるということだけのものでしょう。(ピーコ)

石破氏は大規模災害などに対応するため、「緊急事態条項」の新設に優先的に取り組むべきという。それを切々たる理屈で説明されると、必要なことのように思えてくる。

【憲法改憲草案:第九十八条】内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

政府が緊急事態だと決めたら、必要なものが全部止められる。災害が起きたときだけでなく、恣意的に出せる戒厳令に等しいものだ。阪神淡路、新潟中越沖、東日本などの震災は緊急事態条項がなくても対応ができた。98条の3項では速やかに解除とか国会の承認など謳われているが与党であればいくらでも国会の承認が取れるし、緊急事態が発せられるとずっ〜と選挙をしなくていい。自民党の改憲草案は国民の権利を全部奪い、自分たちが全権を掌握するためのものだ。

要するに、安倍は「戦争ごっこ」「軍人ごっこ」がしたいんだよ。(佐高)

裏側には、佐高が言った通り、戦争をしたいと思っている人がいる。今みたいに不景気になって、格差が広がったときに、資本家やお金がいっぱいある人たちが、自民党改憲草案みたいなものに守られたいと思っちゃうわけね。そういう人たちが生き残るためには、戦争するのが一番だし。だって、現実には、もう武器を作ってもいいわけでしょう。(ピーコ)

これと安保法、秘密保護法の3点セットで縛ると、憲法改悪の中でも最悪の内容となる。秘密保護法で捕まった人は、自分が何で逮捕されたのかわからない。「法律に書いてない罪には問われない」という刑法の大原則も崩壊するため、刑法学者も強く反対している。捕まった後の話になるが、現行の憲法36条では「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と書かれている。自民党草案では「絶対」を取ってしまった。この意味を自民党に尋ねると、「意味は特にありません」と回答した。「絶対」を明記する規範はものすごく強いものだが、これを取り去り、緊急事態条項や共謀罪とセットで運用すると恐るべき状況になる。政敵や社会運動家や評論家など政府が気に入らないと思う人間は簡単に捕らえられ拷問を受ける。すでに同じようなことがあちこちで起こっている。誰もが知る森友学園の籠池氏は10か月もの間、大阪拘置所の独房に勾留された。氏は保釈後、「逃げも隠れもしない、証拠物件はすべて押収された、これは国策勾留だ」とコメントした。

少なくとも平和憲法に関する知識は足りない人たちです。憲法起草委員会というチームの事務局長を務めたのが磯崎陽輔という自民党議員です。この方は、「立憲主義っていうのは、私が(大学で)勉強したとき習っていない。新しい学説ですか」と国会で堂々と言うような人です。(谷口)

磯崎氏は「憲法があるから、動きにくくて仕方ないんだ」ともいう。氏は3年前、次のようなことで話題になった。【悲報】Twitterで10代の女子と大喧嘩!論破された上に、そのままブロックして逃走!磯崎氏は集団的自衛権と個別的自衛権の違いを理解しておらず、10代の女子に「勉強してください」と揶揄された。磯崎氏は東大法学部の憲法ゼミの出身らしく、まさに悲報だ。彼らの頂点に安倍総理が君臨する。10/2、第4次安倍内閣が発足し、続いていろいろな役員人事が決まった。磯崎氏のようなおめでたい人物をモザイクのように寄せ集めどんな「ごっこ」が始まるのか。

自民党、改憲シフトあらわ 憲法審査会の幹事総入れ替え

改憲議論をめぐる与野党の構図自民党は16日、安倍晋三首相が意欲を示す憲法改正に向けた布陣を整えた。主戦場となる衆院憲法審査会の幹事を総入れ替えし、野党との交渉を担う与党筆頭幹事に、首相に近い新藤義孝元総務相を充てたのが特徴だ。公明党や野党は強硬路線への警戒感をあらわにしている。自民党憲法改正推進本部は16日、党本部で会合を開き、衆院憲法審の幹事を内定した。本部長で首相側近の下村博文・元文部科学相が自ら幹事に就任。これまで与党筆頭幹事として与野党協調路線を進めてきた中谷元・元防衛相と、野党人脈が強い幹事だった船田元・元経済企画庁長官は外れた。(10/17、朝日新聞)

日本国憲法はポツダム宣言の返答が込められ、前文には「再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」という文章が出てくる。自民党草案は「我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し」と書かれ、先の大戦は災害と同列に論じ、歴史観がまるで違う。

今の憲法を変えたがっている奴らは、そういう憲法の「いろは」の「い」も知らない。伊藤博文でさえ、「憲法は国民の権利を守るもの」だと言っているのに。(佐高)

単に知識のない人たちや、極右思想の人たちだけでなく、日本の最大与党の自民党がこのような稚拙な改憲草案を基に憲法改正を目論む。彼らは草案を補完するかのように、教育勅語を礼賛し、中学校の学習指導要領に銃剣道を取り入れ、郷土愛が足りないとして教科書の「パン屋」を「和菓子屋」に変えろと言う。森友学園や加計学園の事件があっても政権の支持率は50%あたりを維持する。

少なくとも、権力側はこの50%程度のみなさんはアホやと思ってるんやろうな。やりたい放題やっても、支持してくれるんですものね。(谷口)

本の帯裏には自民党支持者の必読書!?とも書かれているが、アホに言っても時間のムダであろう。しかし、「他の内閣より良さそうだから」、「どちらとも言えない」と答える皆様、も少し国や自分の将来を考えるべきではないか。自分だけの利益を考えて自民党を支持するうちに、自分も含めた多くの国民が取り返しのつかない不利益を被る。「あの時、自民党候補に入れさえしなければ..」というあの時はすでに過ぎ去った日なのかも知れない。

 

 
 

MAP HOME