【今月のコラム】


【ローレル】

東京が壊滅する日 広瀬 隆 著 ダイヤモンド社

「原子の火」が再びともった。東松浦郡玄海町で23日、原子炉を起動させた九州電力玄海原発3号機。「とにかく安全に」。中央制御室では、緊張した面持ちの関係者の声が響いた。静寂に包まれた作業現場とは対照的に、敷地の外では再稼働に反対する市民が「起動のボタンを押すな」と抗議の声を上げた。(2018/3/24:佐賀新聞)

7年の月日を経てここ佐賀で原発が再稼働した。10万年の危険を考えると7年はまたたく間にも及ばない。フクイチの事故を1日たりとて忘れることはなかった。事故はいまも進行中なのだ。しかし、目のまえの原発が停止している事はかすかな安心でもあった。長く休止していた原発の再稼働は高い確率で事故が発生するという。稼働後の報道を固唾をのんで見守っていると、果たして10日も待たず事故が起こった。幸い2次系設備の蒸気漏れで放射能漏れはないとの報告だ。

玄海原発3号機(東松浦郡玄海町)の2次系設備の配管から蒸気漏れが起きた問題を受け、九州電力は1日、点検を実施し、配管に直径1センチの穴が空いていたことを明らかにした。

九電によると、原子炉建屋外で、放射性物質を含まない水が循環する2次系配管の一部の「空気抜き管」を、1日午後2時20分から点検した。作業員15人が配管に付いていた保温材を取り外し、穴を見つけた。蒸気漏れは3月30日夜に発生、点検には高温の空気抜き管の温度を下げるためタービンを止める必要があり、九電は翌31日に発電と送電を停止した。原子炉は停止させず、核分裂が安定的に持続する「臨界」状態を保っている。

元東芝・原子炉格納容器設計者の後藤政志氏の話:2次系のトラブルなのでそれだけを捉えて危ないと言うのは妥当ではない。ただ、再稼働した原発では川内(鹿児島)、高浜(福井)と立ち上げ時のトラブルが続いている。7年3カ月も止まっていれば、劣化があるのは当たり前。今回2次系だったのは単なる偶然で、安全上重要な設備で起こってもおかしくない。電力会社はリスクを理解すべきだ。(2018/4/3:佐賀新聞)

水蒸気漏れした配管設備の写真が新聞に載った。錆が吹き出しあからさまな腐食が見て取れる。これを大丈夫、安全として動かすなど狂気の沙汰だ。原発は大規模な給湯設備のようなもので、一般の給湯設備の寿命は8〜10年、今回再稼働した3号機は1981年から37年間稼働しているのだ。原子炉の炉心など1次系は十分な点検と安全が図られているのだろうか。給湯設備より過酷な環境で酷使し続けで37年、甘く許容しても20〜25年が稼働の限界だろう。23歳で購入した家電や車を今年還暦を迎えた人がいまも使い続けているだろうか。これを50〜60年稼働させようというのだ。設備の劣化に乗じるように、最近地震が頻発し火山の活動も活発化している。4/1〜4/15の2週間に発生した震度3以上の地震は13回で、島根県西部で震度5強、震度4が4回、根室半島で震度5弱、愛知県西部で震度4.. これらの地震を引き起こす活断層の間や真上で原発が稼働する。

チェルノブイリ以来、広瀬氏の著作が出るたびに購読を続けた。本書はフクイチ事故後、4年目に出版されたもので日々風化する原発事故の再確認を促す内容であった。今年で7年、10万年の危険から逆算してあと99993年の月日が待ち受ける。75日で忘れるヒトの想像力など及ぶべくもない。2010年に出版された「原子炉時限爆弾--大地震におびえる日本列島」、広瀬隆著の翌年、東日本大震災とフクイチの原発事故が起こった。まさに警世の書となったのだが、本書がそうならないよう「祈る」。

はっきり言えば、数々の身体異常と、白血病を含む「癌の大量発生」、である。これらの病気が、幼い世代の子供、青少年から早く発症することは、現在では誰でも知っている。

福島第一原発3号機ではプルトニウム発電がおこなわれており、爆発で超猛毒のプルトニウムは空高く噴き上がり、アメリカのロッキー山脈まで到達していた。フクシマ原発事故から2週間後の2011年3月30日、ヨーロッパ議会によって設置された「ヨーロッパ放射線リスク委員会」がデータを解析し、東日本地域で今後予測される癌患者の増加数を発表している。

福島第一原発から100キロ圏内では、今後50年間で19万1986人が癌を発症し、そのうち半数以上の10万3329人が今後10年間で癌を発症する。それより遠い100〜200キロ圏内では、今後50年間で22万4623人が癌を発症し、そのうち半数以上の12万894人が今後10年間で癌を発症する。

200キロ圏内といえば首都圏に迫り、人口密度を考えると200キロ圏内で今後50年間で約40万人が癌になり、200キロを超える地方もグレーゾーンにある。300キロ圏内に広げると福島・宮城・山形・群馬・栃木・茨城・埼玉・千葉・東京・神奈川の全域、岩手・青森・秋田・静岡・山梨・長野・新潟の一部になる。「復興」といい避難指示を解除し帰還を促す、復興支援と称して被災地の食材を全国に流通させる。いま福島そして全国で「すさまじいまでの安全キャンペーン」がおこなわれ、事態の深刻さを薄めようとする。誠実で優しく善意あふれる人々が安全キャンペーンを手伝うのを見ると「少しつきあおうか・・」という気にさえなるが、食材については国内外を問わず広範に内部被曝の影響が及ぶため特段の注意が必要だ。

フクシマ原発事故が起こる前の日本におけるセシウム137の放射能レベルは、ほとんどの食品で1キログラムあたり0.2ベクレルだったのに、その500倍の100ベクレルでも「安全な食品」だというのである。魚介類では、事故前の日本近海魚の平均値は0.086ベクレルだったので、現在の基準100ベクレルでは、その1000倍以上でも「安全な魚」になって流通するのだ。

「ようやく出荷できるようになった」と漁師が感無量の表情を浮かべ喜ぶ。その魚は復興前の1000倍もの値を抱えどこへ運ばれ、誰の胃袋に収まるのであろう。日本の大手食品会社の食品は47都道府県のどこでも同じように流通するため、どこで食べても同じだ。大手外食チェーンも同じくどこで食べても同じだ。では100ベクレルが確実に守られているのかといえば、これも怪しい。少数のサンプリングで済ませ、高濃度の検体を排除したり薄めたり、検査体制は穴だらけだ。2015年当時、全ヨーロッパ諸国は福島県の全食品を輸入規制しており、岩手・宮城・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉のほとんどの水産物と大豆、米、キノコ類、山菜などを輸入規制している。福島以外の46都道府県の加工食品についてはこれらを50%以上含むものが規制され、輸出には放射能の厳格な検査証明書が求められる。「中国食材は農薬や環境汚染がひどいからイヤだ」と嫌う人も居るが、その中国が福島・宮城・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・新潟・長野の10都道府県の全食品を輸入停止にしている。

アメリカ政府の調査では、チェルノブイリ原発事故のセシウム放出量は10.5京ベクレル、福島原発事故は18.1京ベクレルでチェルノブイリ原発事故の1.8倍に匹敵する。日本はこの後の対応が酷い。大人の年間被曝基準量の1ミリシーベルトを緩め、20ミリシーベルトまでの被曝を認めた。それも子供、妊婦、かまわずにである。チェルノブイリ原発事故当時のソ連でさえ5ミリシーベルトで強制避難させた。いまも放射能放出は続いており原子力緊急事態宣言は解除されていない。

チェルノブイリ原発事故の死者の推計は2004年までにほぼ100万人に達した。一般には白血病、癌が知られているが、放射性セシウムが筋肉に濃縮して起こる心筋梗塞や狭心症など心臓に関わる病気が多い。事故から16年後のチェルノブイリで、事故前の10倍も心筋梗塞が増加し、23年後の2009年には死亡原因の54%が心臓病となった。福島原発事故以来、昨日まで元気だった人が心筋梗塞で突然亡くなる。癌とは無縁そうな若者に末期の癌が見つかる。こういった健康に関わる不調の頻発が全国的に起っていないだろうか。セシウムの他、地上最強の毒物プルトニウムや骨を犯すストロンチウムなど、これらは検査もされていない。病気や体調不良は広範に及ぶことを認識しておくべきだ。放射能が病気の原因だと言えば「放射脳」と揶揄する人もいるが、自分の身を守るのは自分しかいない。国はメディア統制までして事故を薄め、御用学者には放射能との因果関係なしと言わせる。一度に起これば阿鼻叫喚の地獄も、時を置いて少しずつ続けば慣れてしまう。

フクイチの事故からしばらくしてすべての原発が停止した。それから2015年7月まで2年近く原発ゼロが続き、猛暑時の電力供給にも全く支障がなかった。杜撰な避難計画や訓練を練りあげ、限定的効果しかないヨウ素剤を配布する。原発周辺自治体から稼働を不安視する声もあがる。なぜここまでして原発を稼働させなくてはならないのか。

原発を廃止すれば、彼らは原発資産の特別"損失"を計上しなければならない。つまり、電力会社が過去に原発にのめりこんだ失敗によって自ら生みだしたのが、その損失だ。この損失を隠すために、電気料金で消費者を恫喝し、無用で危険きわまりない不良資産の原発を再稼働できる資産に見せようとしているだけなのだ。

これだけのために自治体や住民に不安を強い、避難訓練に動員し労力まで削ぐ。事故がおこれば莫大な費用がかかり税金が投入される。お金で済むならいいが、命や健康を損ない10万年もの間、人の住めない大地が残る。今度事故が起れば日本列島には避難する場所がない。しかし、国は壊滅の日まで住まわせ続けるだろう。

【追記.1】3号機の事故は早々に対策を終えたとして発電と送電を再開した。そして4月下旬、停止中だった4号機への核燃料の装填が始まり、5月下旬の再稼働を目指す。九電は「安全確保を最優先に、慎重かつ丁寧な作業に努める」とのコメントを出した。

しかし、またも..

【追記.2】九州電力は3日、玄海原発4号機(佐賀県玄海町)で1次冷却水を適切に循環させるため設置するポンプ4台のうち2台で不具合が発生したと発表した。部品の交換や点検のため、再稼働に向けた工程をいったん停止する。早ければ5月24日に予定していた再稼働はずれ込む見通し。作業員の被ばくや放射性物質の外部への漏えいはなかったという。不具合があったのは、ポンプ内に放射性物質を含む1次冷却水が入りすぎないよう、水を循環させてブロックする部品。通常は1時間に約30リットルの水が流れるが、2倍以上の約70リットルが流れたという。(2018/5/3:佐賀新聞)

 

 
 

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