【田七人参】


田七人参はウコギ科多年生草本で栽培は難しく、播種してから3年〜7年後にやっと収穫
できる。そのため三七と呼ばれている。葉は薬用の人参に似ているから参三七とも言うが
普通には田七または田七人参という。

田七人参は外傷による止血、内出血の止血、傷の癒合、鎮痛などの効果を持っているこ
とから「本草綱目」には「山漆」と記されている。田七が漆のように傷口を癒合させるという
意味である。田七人参は名薬であるため別名「不換金」ともいう。

田七はその葉や味が人参に似て、甘く渋みがあり、薬性が穏やかで、毒性がない。
成分はパナックスジオール、パナックストリオール、鉄分、カルシウム、蛋白質、糖分を含
み、吐血、鼻血、血便、子宮出血、産後の出血、打撲症、鬱血、腫脹などに優れた効果
を発揮する。また鶏、豚、牛、羊などの肉と一緒に煮込むとその味が濃厚になり、薬効が
持続し滋養強壮剤としての働きもある。年令に関係なく食べることができる。また病後や
産後の婦人が食べると短期に健康を取り戻す。老人や虚弱者の補血、保温の効果があ
り子供の成長促進にも良い。

 

田七人参30頭(5年根)

田七人参120頭(3年根)

2008年くらいまで30頭・5年根を取り扱っていたが、田七人参の品薄、高騰が続き
80〜120頭の田七人参に代った。30頭がないわけではないが、希少で価格も3倍ほど
高い。費用対効果を考え80〜120頭又は120頭を扱うに至った次第。田七人参に拘る
必要はなく、現在は
丹参山査子を勧めている。

 

田七は特産地中国雲南省、標高2100mの耕地で栽培され、気候の変化に著しく影響さ
れ夏季の気温が33℃以上になってはいけないし、冬季の気温が、−2〜3℃以下に下
がっても枯死寸前になるという。このため水はけの良い南向きの丘陵地が適地となる。
収穫が終わると10年は休耕地にする。10cm×15cm四方に一株の種を播き、一年目
に全て植え替える。薬用人参と同じく直射日光を嫌うので、カヤで畑の全面を覆うように
日よけを作る。日よけは3割の日照、7割の日陰になるよう組む。この加減がノウハウら
しい。葉、種、茎も薬用になるが、もっぱら根が繁用される。

【薬用植物事典より抜粋】

原植物:
学名はPanax pseudo-ginsengであったが、雲南植物研究所の人参属植物に関する研究
ではP.noto-ginseng F.H.Chenとすべきという。

主治:
すべての血症・挫創・打撲症・瘡傷を治しオケツを散じ、止血し、腫脹を去り、痛みを鎮め
る。吐血・衄血・婦女崩漏(子宮出血)・産後オケツ・腹痛に用いる。(内服・外用)滋養強
壮作用もある。

外傷出血に粉末を患部につけても良い。挫創・打撲には白湯また酒で服用する。腫瘍
の初期には等量の大黄末と酢を練って塗布する。挫創・打撲傷・内臓の痛みには外用
内服とも効果が早い。料理には田七をラードや植物油で黄色に揚げたあと、砕くか蒸し
て軟らかくし、薄片に切って鶏・豚肉と煮て食べる。補血の効果がある。鍋物や煮物に
粉末を直接入れても良い。

用量:
狭心症、コレステロール血症:1日3回 1回1g  
吐血・衄血、便血、産後血暈:無名腫痛、1日2回 1回3〜5g
不出血の跌打損傷:1日2回 1回3〜5g
外傷出血:患部に外用
スープ:5〜10g 

禁忌:
妊婦、風邪の高熱時。酸味で冷たいものとの同時服用。
一説には刺身などの生ものとの同時服用も注意。

【田七の薬理実験報告】

主に心血管系を中心とした実験(抄)

冠状動脈の血流量増加作用:田七をイヌに投与して実験したところ、冠血管が拡張し、
冠血管の抵抗が低下するため、血流量が増加した。それにより心筋の虚血状態が改善
される。また心搏数が減少、血圧低下、心筋の酸素消費量低下。

肥満減少作用:ウサギを使った実験で普通食に田七を加えると、肥満を減少させる効果
が顕著に現れた。肥満減少とは脂肪を低下させること。太っている人が田七を服用すれ
ば体重を軽減できかも知れない。

高脂血症低下作用:高脂血症になると、1)血液の凝固 2)繊維蛋白の溶解抑制 3)赤
血球の凝集 4)心筋の血液の凝集 5)血管の硬化など起こりやすくなり心血管疾患を
引き起こすことになる。2群のウサギに脂肪食を与え、うち1群には田七を与え6週間観
察の結果。田七を与えた群のウサギは体重の増加もなく、コレステロール、グリセロー
ル値ともに低くなっていた。

【寸評】
これだけの効能・効果を列挙すれば、まさに万能薬と錯覚するくらいである。確かに
効能から類推、応用できる範囲は広い。副作用も殆ど気にせず使えるし、服用すれ
ば一定の満足感は得られる。しかし、万病の薬ではない、また魔法の薬でもない。
田七は肝臓病の中成薬として知られる片仔廣の主成分として有名になった。

漫然と、得体の知れないものを健康維持として服むくらいなら、田七をお勧めしたい。

田七は心臓に対する働きや、痛み、出血に対する効果に優れている。このあたりの
役割を見据えて使うべきであろう。ここのところ田七の知名度は向上し、色んなところ
で色んな人の手で販売されている。このことは温心堂webページでも何回か取り上げ
ているが、高価なものが多すぎる。単位グラムあたりの有効成分の含有量が多いと
いってそれを高級・高価とする位なら、安いものを多量にのんだほうが安価で有効成
分も多く摂収できる。それよりそんな高級品が、本当に豊富に存在するのかどうか疑
問である。
私は田七が話題になるず〜っと前から、医薬品製造・販売業の許可のある問屋か
ら購入しているが、いまだかつて「幻の雲南田七を入荷しました。」などという話は
聞いたことがない。いま扱っているもので量を加減したり、他の生薬との配合を工夫
し使っている。

田七だけしかなければ、何にでも田七を販売してしまうのだろう。「田七を服んで腹痛
が起った。ならばそれも田七で治しましょう。」などというお笑い話もある。
服みやすい、持ち運びに便利というだけで高価なもの、広告や箱が豪華なものが果
たしてそれだけの価値があるのか疑問である。しかし薬は高価でないと効かないと
信じる人が居る。「安くて.. 」と言い始めたとたん。「金のことは言うな!」とお叱り
を受けたこともある。

少なくともまとめて数ヶ月分、数年分、そして値引率○○%等という田七は、健康を
標榜するマネーゲームに過ぎない。体調や効果を確認しながら、時に薬を変え分量
や服用法を考えながら健康を維持してゆかねばならない。良識を以て常識的な
価格の田七であれば、いい薬草だと思うのだが。

 

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