【生薬解説10選】


【好評・推奨生薬10選】

1.サンザシ
2.丹 参
3.センナ
4.ヨクイニン(鳩麦)
5.またたび
6.金銀花(忍冬)
7.牡 蛎
8.十 薬(ドクダミ)
9.グアバ(バンザクロ)
10.紅 花
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11.田七人参
12.ハブ茶
13.ウコン
14.防 已(オオツヅラフジ)

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薬草の煎じ方
薬草の煎じ方と抽出成分の変化
服用法Q&A

 


サンザシ

【解説】
サンザシは、落葉性の低木で高さは1.5m位になる。枝は分枝が非常に多く、小枝が変化した刺も多い。4〜5月に小枝の先端に数個の大きな白い花をつけ、10月頃実が熟す。完熟の少し前に偽果(ぎか)を採取し天日で乾燥したものを用いる。中国で古くから健胃消化整腸薬として利用され、特に魚鳥獣肉の消化を助け酒の二日酔いにも効果があると言われている。成分はバイオフラボノイド(ルチン、ケルシトリン)、ポリフェノール、トリテルペン、クマリン、青酸配糖体、タンニンで、さらに消化酵素のプロテナーゼ、アミラーゼなどを含有する。肉や魚など煮込むときサンザシを入れておくと骨や筋まで早く柔らかくなる。

現代の食生活は乳製品、卵、肉、魚の摂取が必要量を超えて増えつづけ高脂血症、高コレステロール血症、高血圧、糖尿病、痛風等に影響を及ぼしている。サンザシは肉や脂肪の消化を助け胃腸の蠕動運動を活発にし飲食の積滞を防ぐため、生薬の抗脂血症薬として応用できる。その他、持続的血圧降下、強心作用があり血流を良くし、於血を改善する働きもある。

【用法・用量】
薬草を煎じて服用する場合1日5〜8gを適量(300〜400ml)の水で30分程煎じ1日数回に分けて食後服用する。粉末は1回1.5〜2gを1日3回食後服用する。やや酸味があるが著しく服みにくくはない。お茶やジュースで服んでも構わない。脂肪代謝に関与するため肥満が改善されたり、ニキビが治った症例など経験している。

【注意】
サンザシはクラテガル酸を含み、薬理実験で胃液の分泌を促進し消化を助ける作用が確認されている。このため胃酸過多や胃潰瘍の人は空腹時の服用を避けるほうが良い。下痢止めに用いるが、便秘の人が服用すると腸管の運動を促進し便秘が解消されることがしばしばある。

 

丹 参

【解説】
シソ科の多年生草本、丹参の根を用いる。根が赤いことから丹参又は赤参とも言われるが、薬用人参(ウコギ科)とはまったく異種の生薬になる。中国の最古の薬物書である「神農本草経」にも記載され古くから使われてきた。一方日本ではあまり用いられず中医学に取り組む漢方家を通じて広まった。40年ほど前、中国医学科学院で「冠心U号方」という製剤が開発された。冠不全・狭心症に対処する名方とされ、この主成分に丹参が使われている。冠心U号方は商品名や若干の成分を変え、日本でも数社から市販されている。その一つ「冠元顆粒」の効能は「中年以降または高血圧傾向のあるものの次の諸症:頭痛、頭重、肩こり、めまい、動悸」と記されている。解説では「血液の循環が悪くなって起こる諸症状を血於といい、血液をサラサラにする活血化於作用により改善.. 」と謳われ、多くの疾患やその予防に使用されている。病気の原因や予防を「血液循環」に帰する論法は説得力があり、一定の理解が得られるが、万病に効くような薬ではない。冠心U号方の効能・効果と丹参の薬理が一致するなら別段、高価な処方を用いる必要はなく丹参だけで十分だ。「生薬の配合で作用は増強し、副作用は緩和される」などと、売るのに都合の良い話を聞くが「作用は減弱し、副作用は増す」という考えも成り立つ。私は後者の立場をとっている。丹参に認められている薬理作用は血管拡張、血流増加、血圧降下、抗血栓、血液粘度低下など血流改善に関するもので、これを応用し動脈硬化の予防や心疾患、血臓たる肝障害の治療などが適応になる。他に鎮痛、鎮静、抗炎症、抗菌作用などがあり、田七人参に似た働きを有しているが、止血作用や滋養強壮作用はない。

【用法・用量】
煎じて服用するには1日量5〜8gを適量の水で20〜30分煎じ、1日数回に分け食間に服用する。分量を15〜20gと増量しても副作用の心配はなく、少ない量で効果があればそれに越したことはない。毒性もなく安全な生薬なので粉末での服用を勧めている。1回1.5〜2gを1日2〜3回食間に服用し、症状により量や回数を増減する。

【注意】
丹参は血於を除去し新血を生じ、行血、養血するので四物湯と同じ効果があるという書物もあるが、補血作用はない。薬性は穏かであるが、血液の流動性が高まるので出血性疾患や出血時には使用を控える。マウスの実験で臨床応用量の80倍の丹参注射液を静脈注射しても毒性反応は見られなかった。またウサギに30倍量を連続14日静脈注射しても毒性反応は見られなかった。内服しても安全性に不安はない。

新薬の血液サラサラ薬との併用で出血を助長することがある。打撲斑や歯茎に出血が見られたときは減量するか中止する。

 

センナ

【解説】
南インドのチンネベリーで栽培されるカシア・アングスディフォリアの小葉。常緑の低木で複葉の小葉(8〜20枚)が互生する。果実は暗褐色扁平の長楕円形で種子も扁平の倒卵形である。この種子も緩下薬として用いられる事がある。もともと西洋の生薬で、ヨーロッパでは古くから緩下薬として利用されていた。中国や日本では比較的新しいものである。現在は日本薬局方に収載され医薬品として広く用いられている。中国では番瀉葉(ばんしゃよう)という。効能・効果は「便秘・便秘に伴う次の症状の緩和(頭痛、のぼせ、肌荒れ、吹き出物、痔)」。下剤を服用すれば体重がいくらか減少するので、ダイエット目的の健康食品に密かに配合されることがあり、問題の多い薬草でもある。

瀉下作用の主成分はアントラキノン類のレインやセンノサイドA,B,C,Dで、もっとも効果が強いのはセンノサイドA,Bである。服用すると腸内細菌に分解されてレイン−9−アンスロンとなり、瀉下効果を発揮する。緩下剤とは言え分量が多ければ峻下剤ともなる。特に妊婦の場合、胎盤内充血や子宮収縮も起こるので注意が必要である。採取直後のものは腹痛を起こす成分が多いので、原因となる成分が酸化されて無くなるまで最低1年ほど経過したものを用いるほうが良い。

【用法・用量】
1日量2〜5gに約100ml位の熱湯を注いで5〜7分ほど蒸らし、すぐに滓を去り温かいうちに服用する。頓服又は1日1回、便通の状態を確認しながら分量を加減する。粉末の場合は1回量0.2g〜1gくらいを目安として増減するが、粉末や顆粒、錠剤などの服用はお勧めしない。断然、茶剤で服むほうが効果が良く習慣性や腹痛も起こりにくい。

※瀉下成分を適切に抽出するため蒸らし時間は厳守する。例えばセンナに含まれる成分を、a、b、c、d、e、fとし、5〜7分でa、b、という瀉下成分が抽出されたとする。さらに蒸らし時間を延長したり、粉末を服用するとc、d、e、fの成分まで抽出・摂取することになる。c、d、e、fの成分には瀉下とは逆の止瀉成分が含まれる可能性があり、腹痛が起こったり、長期服用で分量が増えることが考えられる。分析機器を使える環境にないのであくまでも推測だが、すでに報告がなされているかも知れない。温心堂では最初2〜3分とアドバイスしていたが、症例を重ねるうちに5〜7分という最適な域を知ることになった。

【注意】
妊婦は大量に用いると流産の恐れがあるので服用しないほうが良い。茶剤として浸出した液は5〜7分程度蒸らし早めに滓を除く。2番、3番出しは避け1回きりで葉を捨てる方が良い。出すぎたり、出しすぎたりして上手く行かないことがしばしば起こる。便通の状態を観察しながら分量を増減することが肝要で、既にテーィバッグなど一定量を分包してあるものは不便である。一般に記載されたセンナの服用法は、熱湯150mlを加え約15分間煎じるよう指示されている。この方法では腹痛が起こったり、容易に習慣化し分量を増やさないと効かなくなる恐れがある。同じく粉末や錠剤、顆粒も長期に服み続けると分量が増え、重症化したものはセンナの茶剤とセンナ末やアロエ末との併用も容認しなくてはならない。

下剤として繁用される生薬に大黄がある。私はこれを下剤として用いる事はないし、お勧めしない。抗炎症、駆於血に少量を使う程度だ。多くの漢方家は便秘と大黄を反射的に結びつけ、麻子仁丸、潤腸湯、承気湯などの処方をあげるが、大黄は止瀉成分のラタンニンを含み腹痛や便秘を引き起こす。センナは止瀉成分が少なく、便秘目的に量を調節し茶剤で飲む限り最適だと考えている。慢性の便秘症は体質的な要因も重なるので治り難く、長期間の服用も仕方がない。センナなど飲まないに越したことはないが、便秘の不快感や不調より危険ではない。センナの害を煽り、別の薬を勧める薬屋を見受けるが、大黄やセンナ、もしくはセンナ誘導体を含む製剤だったりする。迷わず惑わされずセンナを茶剤で服む方が費用対効果上も最適だ。

ついでに、漢方メーカーのツムラが推売する大建中湯に一言。術後の腸閉塞予防に山ほど使われ、腸を温め動きを良くするとして便秘にも応用される。乾姜5g、山椒2g、人参3g、膠飴10gの生薬が1日分のエキス顆粒に含まれる。乾姜5gは蒸した生姜を乾燥させたもので生姜の数倍の辛味があり、山椒2gといえば乾燥品で120粒にもなり、人参と膠飴が激烈な辛味をいくぶん緩和する。試みに山椒1粒を噛んでもらいたい。この激しく痺れるような辛味が120粒も咽を通過し胃から腸へと移動する。辛味は血管を充血させ、ときには出血を促す。潰瘍などあればたちまち被害は甚大だ。術後の縫合創に達して何事も起こらないのだろうか。杞憂かも知れないが、山椒は大熱、有毒で明らかな寒証以外に用いるべきではない。山椒の痺れるような辛味を利用し回虫駆除にも用いられた。古方派の権威者が「大建中湯の証は腸がモクモク不穏に動く」と述べている。これを術後や便秘の腸蠕動促進に応用したものと思われる。他に適当な処方がないのか一考を要するところだ。乾姜、山椒は激烈な辛味で充血を促す。以前、寒症と思われた便秘に用い、一回で眼が血走る副作用が起こり冷汗三斗の思いをした。その後、山椒には警戒を緩めない。大建中湯は薬局レベルではなく、十分な医学的管理下で用いる処方である。

 

ヨクイニン(鳩麦)

【解説】
ヨクイニンは鳩麦の医薬品名になる。そこに記載されている効能・効果は「イボ、皮膚の荒れ」となっている。鳩麦の果皮を脱穀し精白したもので、重く肥大で内部が白く、歯間に粘着するものが良品という。古来イボ取りの妙薬といわれ、現在病院でも使われている。普通イボ取りには1日15〜30gを煎じて2回に分けて服用する。(粉末は1回3〜10gをそのまま服用する。又粉をイボにつけても効果がある。)水イボならば10日〜1ヶ月位で効果が現れる。民間療法ではさらに応用範囲が広く、ポリープ、癌の治療や予防にも用いられる。含有成分であるゲルマニュウムやコイクノライドは癌細胞の発育阻止物質として注目され、米や麦に比べ蛋白質は2倍、炭水化物も50%以上含む栄養食品である。常用すると、食欲が出て便通を整え、癌の苦痛を癒し症状も好転する。特に白血病など血液性の癌に良いと言われる。また消炎、排膿、鎮痛、緩下、利尿、解毒、解熱作用があり、胃潰瘍、歯槽膿漏、催乳、浮腫、帯下、筋肉痛、神経痛、リウマチ、肝臓・腎臓病、風邪の予防などに用いる。

美容効果に優れ体内の老廃物を排出し新しい組織を作る働きがあるので、肌荒れ、シミ、ソバカス、鮫肌、湿疹、蕁麻疹、ものもらい、口臭予防に応用される。大量に用いても副作用もなく食品と同じように利用できる。粉を石鹸と一緒に泡立て、それで洗顔するとピーリング効果に優れ肌がつややかに保たれる。民間ではドクダミと併用される事が多く、小麦粉と同じように料理にも応用できる。

【用法・用量】
添付文書には1回2g、1日3回食間または食前服用とされているが、あくまでも医薬品の規定によるもので、ヨクイニンの特性上、1回5g程度の服用をお勧めしている。病状によっては10g〜それ以上でも構わない。小麦粉のように食事に取り入れるならば困難な量ではない。

【注意】
医薬品としては主にイボや皮膚病の治療又利尿の目的で用いる。栄養が豊富なため食品としても優れている。生薬の煎じ液を服んだり、圧力釜で他の穀物と一緒に炊いて食べる方法がある。粉末はそのまま服むことが多いが、胃腸の弱い人は胃にもたれたり便が緩むことがあり、その時は中止するか、粉を水に溶き加熱して服用する。

 
またたび
【解説】
猫科の性誘引物質(フェロモン)として有名だが、人に対しては別の効能が知られている。マタタビは日本各地の山地に自生するつる性の植物で、「マタタビアブラムシ」という昆虫が花に産卵し、結実時に形成する虫瘤だ。漢方名は木天蓼と言い、秋に採集し短時間湯通し後、十分乾燥させる。有効成分はマタタビ酸・マタタビラクトン・アクチニジン・ポリガモールなどを含有し、鎮痛、強心、利尿作用があり、冷え症、神経痛、腰痛、疲労回復などに用いる。俗説では、旅の途中、倒れた人がこの実を食べ元気になり、又旅(またたび)が続けられた事から名付けられたという。虫瘤だけでなく茎葉根にも同様の効果があるとされる。猫に与えると、快楽あらわにのたうち回る。マタタビを利用する時は、猫に奪われないように注意が必要だ。猫の病気や不調に対してマタタビを与えると元気が増し回復も早い。根拠は不明だが、いわゆる免疫力が高まる為ではないかと思う。(ただし大量に与えると反って良くないという報告がある。)

【用法・用量】
採集した生の実100〜200gをホワイトリカー1.8Lに適量の氷砂糖又は蜂蜜を加え約3ヵ月ほど漬ける。滓を去ったマタタビ酒10〜20mlを1日1〜2回服用する。適宜、水や白湯で薄めても良い。乾燥させたマタタビは水分を含まないので100g程度を用い、酒は清酒以上のアルコール度数であればなにを用いても構わない。煎じる場合は1日5〜8gを適量の水で30〜40分煎じ、煎じ液を2〜3回に分けて服用する。温心堂では粉末の服用を推奨し、1回1gを1日1〜2回食間に白湯又は酒で服用する。

【注意】
猫への過量の使用は要注意。人での副作用はあまり聞かないが、のぼせや胃のもたれを感じたら、分量を減らすか中止する。

【追記】
老化や慢性疲労にともなう筋肉痛や関節痛はなかなか治らない。軽快したかと思えば翌日、また痛みだす。これを新薬の鎮痛剤で麻痺させても治ったとは言えず、胃腸障害など別の障害を誘発する恐れがある。苦痛を軽く、障害を少なくとの考えで勧めてきたが、評判を呼んで黙っていても「マタタビ」の注文が来るようになった。少量で猫がのたうち回るほど強力な成分が含まれている。歳をとると疲労が溜まりやすく回復は遅い、そのため夜間筋肉痙攣をおこすことがある。マタタビの服用でこの痙攣から解放された症例は多い。疲労回復し「又旅を続けられる」というのは嘘ではない。最近、ロコモティブ症候群ということばを耳にするが、加齢や過労によって運動器の衰えや障害が起こり、要介護のリスクの高まる状態をいう。変形性関節症、骨粗鬆症、脊椎菅狭窄症、関節リウマチ、易転倒などの症状が見られる。体操、食事などで予防を図るが新薬も用意されている。そこへ行き着く前に生薬のロコモ薬として「マタタビ」を試すのも良いと思う。

 

金銀花(忍冬)

【解説】
奇跡の人、ヘレンケーラーの物語にスイカズラの香りに誘われて井戸端へ行くシーンが出てくる。そこでサリバン先生は、ヘレンの手に「W-A-T-E-R」と書いて「水」という言葉を教えた。それを機に次々と言葉を覚えていくという感動の話だ。スイカズラはつる性の植物で日本全国に分布する。初夏に開花し、ジャスミンや金木犀のような甘い芳香を放つ。筒状の花弁を吸うと甘い蜜の味がすることからスイカズラと呼ばれ、冬でも葉が落ちないので忍冬とも言う。開花した白花はやがて黄色に変わり、銀花、金花が混在した様から、漢方では金銀花と言う。リナロール・ジャスモンなどの精油やロニセリン・ルテオリンなどのフラボノイド、カフェ酸・ベネトルピンなどの成分を含む。新薬でいえば抗炎症剤、抗菌剤、消炎酵素剤、解熱鎮痛剤が一つにまとまったような生薬である。応用範囲は広く、感冒、鼻炎、インフルエンザ、各種炎症や腫れものの排膿、皮膚病、アレルギー疾患、解熱、解毒、筋肉痛などに用いる。先年、インフルエンザのパンデミックで大量の金銀花が治療に使われ、半年で価格は3倍にも高騰した。金銀花を惜しげもなく使い勧めてきたが、費用対効果を考えると全草である忍冬でも差し支えない。花弁の金銀花は採集時期が限られているが全草は通年大丈夫である。価格も金銀花の1/3で済む。金銀花を利用する人に事情を説明し、服み比べてみても遜色はない。

【用法・用量】
1日10〜15gを適量の水で1〜3分煎じ、滓を去った液を1日2〜3回に分け食間に服用する。花弁又は葉茎なので比較的短時間で抽出が可能だ。沸騰した熱湯を注いで5〜10分ほど蒸らした後、お茶のように服用しても良い。炎症が強いときは10〜15分ほど煎じ苦味成分を十分抽出して服用する。咽の炎症や腫れがあれば、体温ていどに冷まして、うがいしながら飲み下す。悪寒があれば可能な限り熱くして服用することで発汗を促す。

2番煎じは10〜15分ほど煎じ、その液を皮膚病の外用にする。浴剤への応用は配管や浴槽がアクで汚れ、落ち難いので慎重に。初夏に咲く花弁を集め、薬用酒を作る方法もある。生の花弁は水分を含むのでホワイトリカー以上のアルコール度数を用い、好みで氷砂糖又は蜂蜜を加える。2〜3週間ほどで滓を去り、出来上がった薬酒10〜20mlを服用する。好みで水や湯、炭酸などで割って飲んでも良い。1年ほど冷暗所で熟成させると味が円熟する。粉末は1回1gを1日2〜3回食間に服用し、年齢・体重・症状により適宜増減する。

【注意】
安全な薬草なのでとくに注意する点はない。抗炎症薬、抗菌剤、消炎酵素剤、解熱鎮痛剤などと讃えたが、新薬に比べると力は弱い。分量を増やすことで対処しても限界がある。薬の「手ごたえ」は治癒とは別で、早々に感じられるものだ。漢方利用者や漢方家は「穏かに効く」、「根気よく続けて体質改善..」などと、しばしば口にする。このような楽観こそ注意すべき点だ。やがて治るものは自然治癒力であることが多く、薬の服用は気休めと費用の無駄である。数日もしくは1週間で手ごたえが得られないときは、放置も含め別の方法を検討する。

 

牡 蛎

【解説】
食べ終えた牡蛎の殻を800℃近い温風で焼いた後、砕き粉末にする。漢方処方に用いる時の効能・効果は重鎮安神・平肝潜陽・収斂固渋・軟堅散結・制酸止痛・鎮静・鎮痛・収斂・解熱・腫塊消散・軟堅と物々しい働きがある。しかしあくまでも他の薬草との配合で応用されるものである。炭酸カルシウム(80〜95%)・リン酸カルシウム・硫酸カルシウムのほかケラチンなどの有機成分を含むが、殆どカルシウムと考えてよい。ここで紹介するのもカルシウム源としての牡蛎である。制酸・鎮痛そして骨や歯の脆弱化予防の補助食品として利用できる。牡蛎殻を加工した健康食品はおびただしい数に昇り、廃棄する筈の殻が驚くほど高価で販売される。効能・効果を暗喩するパンフレットを見るとカルシウム欠乏の恐怖を煽り、今ある症状でさえカルシウム不足が原因であるかのように錯覚させる。心配性の人なら買わずには居られなくなる。そんな高価なものを飲まなくても牡蛎殻そのものを飲めばよいではないか...というのが牡蛎末の販売を始めた動機である。本来カルシウムは食品で摂取するべきものであるが、砂糖や脂肪、蛋白の過剰な摂りすぎはカルシウムの消耗を招く。また成長期の子供や妊婦にとってカルシウムはより多く必要とされる。

【用法・用量】
1日のカルシウム摂取量は多くて500mgで良いと考えている。常識的な食生活をしていれば300〜400mgのカルシウムは摂取できるので、不足の100〜200mgを補う意味で牡蛎末を服用する。計算すると1日1gで充分である。成長期、妊婦、高齢者であればいくらか増量しても良いが、あくまでも食品からの摂取を基本に考えるべきである。栄養素に関しては体に許容があるので毎日ではなく、ある期間に摂取すれば良く神経質になるべきではない。

【注意】
炭酸カルシウムが主成分なので空腹時に服用すると胃酸を中和し、胃を荒らす恐れがあるので、食事直後または食後の服用が望ましい。味噌汁などに溶いて服むこともできる。制酸剤として用いるときは空腹時に服用することが多くなるが、長期連用は好ましくない。原因を究明し根本的な対策をとるべきである。

 

十 薬(ドクダミ)

【解説】
東アジアに広く分布し日本では北海道南部から九州まで全国の陰地、湿地に自生する。多年性草本で繁殖力も強く蔓延るので雑草と同列に扱われることもあるが、薬草資源として豊富に入手できるし、優れた働きがある。5〜6月の花期に全草を採取し陰干して保存するが、梅雨時と重なるためカビが発生し、しばしば失敗する。むしろ直射日光で短期間に乾燥し、大き目のビニール袋に移して、押入れ乾燥剤などを入れ仕上げるほうが良い。夏場は虫の発生もあるので冷蔵庫に保管すると安心である。開花期に採集するのは花に有効成分のイソクエルシトリンが多く含まれているからである。花期を逃しても薬効が著しく劣ることはなく、分量を増やすことで解決できる。生葉にはデカノイルアセトアルデヒドやラウリールアルデヒドが含まれ、これが特有な臭気をもたらす。しかし、乾燥すると成分が変化し臭わなくなる。臭いの成分には強い抗菌・抗黴性があるので、生葉を水虫に擦り込んだり、鼻に詰めて鼻炎などに用いる。乾燥葉はクエルチトリン、イソクエルチトリンによって、緩下、利尿、血圧効果作用がある。

表示されている薬効は便秘、尿量減少、便秘に伴う吹き出物であるが、他に蕁麻疹、皮膚病、鼻炎、高血圧、動脈硬化などに用いる。ドクダミを勧めると、ありふれた薬草なので「ドクダミで?」と渋い反応が返ってくるが実際に使ってみるとその効果は驚くべきものがある。症状を抑えるだけの新薬に決してひけをとらない。便秘に関しては重症のものには効果が及ばない。

【用法・用量】
乾燥した葉、1日10〜10gを500〜700mlの水で3〜5分程弱火で煎じる。水の状態から入れておき、沸騰したところで火を止め5〜10分蒸らしても良い。又適量を急須に入れ、熱湯を注ぎ少し蒸らし飲用することもできる。薬効を期待するには、大人一人で1日15g〜20g又それ以上の量が好ましいが、健康茶として家族で飲むときは飲みやすく煎じやすい量で構わない。乾燥葉をフライパンで軽く炒ってから煎じると、香ばしく子供でも抵抗無く飲める。生葉は揉んで患部に貼るが時にかぶれる人があるので、その際はアルミホイルに包んで軽く炙った後、練ったものを貼りつけると良い。化粧水の材料にも用いられる。

【注意】
普通、十薬の用法・用量には水600mlを加え400mlになるまで煮つめて服用するように書かれている。火加減によって煮つまる時間が違うので、長時間煮つめた場合、有害成分も抽出され味も悪くなる。水の量ではなく時間を目安に3〜5分としたほうが好ましい。自家採集し飲用する人も多いが、陰干の途中でカビの発生をみることがある。カビ臭のするものは飲用しないほうが良い。

 

グアバ(バンザクロ)

【解説】
高さが3〜4メートル程度、熱帯アメリカ原産の常緑潅木で熱帯、亜熱帯の暖地で広く栽培されている。日本でも沖縄県などの暖地で栽培される。別名、グアバ、バンジロウとも言い、球形から洋梨形の果実は黄色く甘い酸味があり食用にされる。成分は100g中水分86.4g、糖質10.0g、ビタミンA150IU、ビタミンC 270mgを含有し、他にインシュリン様作用物質が含まれている。糖尿病、コレステロール、高血圧はじめ下痢、歯痛、口内炎、胃潰瘍、止瀉、湿疹、痒み止め、あせもなどの改善にも用いられるが、糖尿病の治療や予防としての利用が最も多い。乾燥果実は中国物産展などで糖尿病薬として販売されていた。85年頃、葉がバンジロウ茶としてブームになった。葉は飲みやすく煎じる時間も少なくて済むため現在では葉が主流となっている。最近人気の蕃爽麗茶は実と葉が使われている。この製品を毎日飲むと費用の点でも高くつくので、原材料を購入し自分で煎じる人が増えてきた。温心堂では乾燥果実に人気があるが、葉のほうが良いといわれるかたもある。葉は5分程煎じれば良く、味もまあまあ飲みやすい。しかし値段は¥1800、果実は¥1300だが味に特徴があり煎じる時間も20〜30分程度を要する。これらを考慮に入れて選択しなくてならない。葉は別名シジュウム茶として花粉症、鼻炎などのアレルギー対策にも利用される。

漢方用語では糖尿病を消渇(しょうかつ・しょうかち)と言い、いくつかのパターンに分類し方剤を適用する。しかし、治るような糖尿病は一に食養、二に運動、薬は三番目...で、漢方薬の役割はそれほど大きくない。ある程度の心がけや養生のもとで服むならば、費用対効果の点でも蕃果で充分であろうと思う。

【用法・用量】
果実は約10gを500〜600mlの水で15〜20分弱火で煎じ、滓を漉した薬液を1日分として、1日2〜3回に分け、食前又は食後30分くらいに服用。前夜から水に浸しておくと、煎じる時間を10分程度に短縮できる。葉は約10gを600〜700mlの水で5〜10分煎じ、同様に服用する。葉は湯を注ぐだけでも服用できる。体重、症状によって煎じる分量を増減する。

【注意】
薬だけに頼って養生を怠るのは良くない。特に糖尿病に関しては大切なことである。治らんがため頑張って飲む人がいるが、いくらか的の外れた飲み方も見受けられる。沢山、頻繁に飲むため水の分量だけを増やすと薬液は薄くなり、多量の水分で胃液は薄まり消化障害を起す。逆に濃くしすぎると胃にもたれたり、成分の抽出が充分行われないことがある。1回の服用量は100〜150ml位を目安にする。食後3回服用するなら煎じ終わった薬液の量が300〜450mlになるように適宜水の量を調節する。夏場は水分の摂取が増えるので水の量や飲む回数を増やしても良い。

 

紅 花

【解説】
ベニバナの産地として有名な山形県をはじめ日本全国で栽培され、一部地域では自生も見られる。6〜7月頃、赤くなった管状花だけを採取し、風通しのよい場所で陰干、乾燥する。漢方では紅花(こうか)と言う。紅い色から連想されるように血液に作用する薬草で、活血化於・通経・止痛の作用を持っている。体を温めて血行を改善するため冷え症を始め、月経不順、月経痛、産後の腹痛、血の道症、更年期障害などに用いられる。強力な血行改善作用があるため婦人に限らず、於血を原因とする打撲、冠動脈疾患、高血圧にも応用される。漢方処方に紅花一味だけの紅藍花酒湯がある。紅花1〜2gを酒30〜50mlで数分煮て服用するもので月経痛に即効性がある。またマクリという出産直後の新生児に飲ませる処方にも紅花が配合されている。普通は煎じたりお茶にして服用するが、酒で煎じたりあらかじめ薬用酒を準備して服用する方法もある。種子の脂肪油にはリノール酸が70%も含まれ血液中のコレステロールの低下や動脈硬化予防になる。しかし、揚げ物など高温で加熱する料理にはお勧めできない。(不飽和脂肪酸が多く、加熱すると活性酸素が発生しやすい)

サフランと似たような働きを持つが価格はサフランの100分の1なので、紅花を多く用いる方が効率も経済性も優れている。風味を重視する料理に用いるならばサフランに軍配があがる。

【用法・用量】
1日3〜5gに水100〜200mlを加え5〜10分ほど弱火で煎じ、1日2〜3回食間に服用。また、適量の熱湯を注ぎ5分ほど蒸らして飲んでも良い。酒の飲める人なら2〜3gを鍋に入れ、清酒50〜100mlで1分ほど煮出し、その酒を服用する。薬用酒を作るときは50gを1.8Lの清酒、焼酎などに2週間〜1ヶ月間漬け、1回10〜20ml位を服用する。焼酎には好みで砂糖や蜂蜜などの甘味料を加えても良い。

【注意】
於血を改善する作用が強いので妊婦の多量服用には注意がいる。せいぜい1g程度に止めておく。暑がりの人が飲むとのぼせることがある。

 

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田七人参

【解説】
雲南省から広西省の限られた地域に生育する貴重な生薬で、現代病・成人病と言われる疾患の治療や予防に効果のあることが報告されている。止血作用があり、かつ駆於血作用という微小血管の循環や滞りを改善する。これによって於血を残さず止血できる。さらに鎮痛作用も強く、他に脂肪代謝を活発にし血流をよくし肝や心臓の働きを助け、免疫機能を高めるため広範な応用が知られている。
田七人参(写真・解説)
  • 循環器系疾患/狭心症、心筋梗塞、脳卒中、脳血栓、高脂血症
  • 消化器系疾患/ウイルス性肝炎、慢性肝炎、潰瘍性大腸炎、上部消化管出血、          胆道出血
  • 産婦人科疾患/月経異常(月経過多で血塊の下るもの)子宮出血、産後の子宮           収縮不全
  • 泌尿器系疾患/前立腺肥大、慢性腎盂腎炎、ネフローゼ症候群、腎炎にともなう          出血、蛋白尿、血尿血液疾患:血友病、再生不良性貧血、特発          性、血小板減少性紫斑病
  • 眼科疾患/老人性黄斑部変性症、ベージェット病 
  • その他/浮腫、関節痛、疣、嘔吐、頭痛、眩暈、外傷、打撲や捻挫の内出血・鎮      痛、下腿部、赤褐色斑、癌予防など。

【用法・用量】
1回1〜2g 1日2〜3回を温湯にて服用。症状により分量を加減する。外傷の出血に外用で用いる事もある。

【注意】
応用範囲が広いからといって万病の薬ではない。しかし長期服用して副作用も少なく、健康管理のために服みたいと言うことであれば、他の何かよりお勧め出来る生薬である。止血作用、血流改善作用、鎮痛作用、肝保護作用などの働き考慮のうえ用いる。万病の薬として法外な価格で販売したり、まとめ買いを促す業者には警戒を要する。

 

ハブ茶(決明子)

【解説】
テレビ番組を観ていると、「ケツメイシ」という歌のグループが登場した。仕事上慣れ親しんだ名前なのでしばし耳を傾けていると由来に触れる発言があった。彼らの中には薬剤師や鍼灸師がいて生薬の決明子をグループ名にしたという。決明子はエビス草の種子だが、ハブ茶という名前は類似生薬のハブ草と混同して定着した。ハブは毒蛇一般を意味し、噛まれたとき生葉の汁をすりこみ治すことから名付けられた。しかし毒蛇は誇張が過ぎ、せいぜい蚊やブヨに刺されたときしか使えない。10月頃、実が熟し茶褐色に変色したとき採集し乾燥後、細長い鞘を叩くと中から種子が落ちてくる。自然に落ちた種子からも芽生え栽培に手間がかからない。種子をよく乾燥させたものが決明子である。これを焙じたものを一般的にハブ茶と言い抽出効率も味も良く香ばしい。エモジン・オブツシフォリンなどアントラキノン系の緩下成分を含み、効能は便秘、腹部膨満、整腸が認められている。漢方ではも少し応用が広く清肝明目、去風熱が追加され、胃腸など消化器系の疾患、肝保護、眼病などに用いる。腎臓病などの効能を謳う事もあるが、決明子に限らず多くの生薬は利尿作用があり、そこから腎臓病まで効能を広げると誤解を生む。整腸のためのお茶と考えて楽しむくらいが良い。インドではコーヒーの代用として飲用される。

【用法・用量】
乾燥しただけの決明子は成分の抽出効率が低いので、最低でも10分は煎じるほうが良い。一般的に種子生薬は油脂成分を含有するため、焙じて抽出効率を上げる。焙じたハブ茶は沸騰した熱湯を注ぎ、5〜10分ほど蒸らして飲用できる。煎じると苦みが強くなるので3〜5分ほどに止めておく。分量は10〜20gを用い便通の状況では適宜、増減するか飲む水分の量で調節する。

【注意】
慢性的な下痢症には好ましくない。味も良く、緑茶、紅茶、コーヒーなどカフェイン含有の嗜好飲料に比べ害がなく、優れている。午後からのカフェインは睡眠を妨げる恐れがあるのでハブ茶に替えることを勧めている。余談になるが、カフェインは成長期の子供の脳に悪影響を及ぼすので、お茶業界の宣伝を丸ごと受け入れてはならない。3大習慣性物質であるニコチン・アルコール・カフェインは20歳まで禁じるべきだ。

 

ウコン

【解説】
秋ウコン(姜黄)と春ウコン(鬱金)があり、普通は肝臓に良いというクルクミン含有量の多い秋ウコンを「ウコン」と称している。いずれもショウガ科、熱帯アジア原産の多年生草本で生姜に似て、塊根を薬用やスパイスとする。秋ウコンはターメリックとも言いカレー粉の原料に用いられる。成分は黄色素クルクミン、香辛成分として1〜5%の精油、タメロール、フェラドレン、蛋白質10.8%、脂肪2.5%、でんぷん50%、繊維4.8%、灰分4.4%を含有する。クルクミンが胆汁の分泌を促進するので肝臓の働きを助ける。漢方では理気止痛、活血化於、清熱涼血、利胆退黄の作用から胸脇、腹部、乳房の疼痛、生理痛、黄疸、肝炎などに応用する。一方、春ウコンはクルクミンの含有量は少なく主成分はセスキテルペン、セスキテルペノールなどの精油が多く、苦味も強い。このため健胃、利胆作用のほか肝気を巡らせ、痛みや炎症、於血を改善する働きが強い。元は沖縄土産と称して春ウコンがブームになり、栽培も簡単なため各地で生産されるようになった。(今でも春ウコンは秋ウコンの倍の値段である)しかし、ある健康番組で「秋ウコンは春ウコンより10倍も多くクルクミンを含有する」と放送されて以来、秋ウコンがスポットを浴びている。春ウコン人気の頃は秋ウコンも春ウコンとして並べられたが、今は春ウコンが秋ウコンとして販売される場合もある。黄色の度合いですぐに見分けが付くが、見慣れない人にとっては言われるままである。

ウコン人気のおかげで温心堂での販売量も多いが、華々しい宣伝ほど優れた薬草ではないと思う。苦味と同時に辛みもあり、五行理論からすると辛味は肝を克し痛めるのではないか?脂の多い食物を摂取するときはクルクミンの利胆作用によって消化を助けるが、それ以上の過大な期待は持っていない。肝臓強化が目的なら丹参をお勧めしたい。

【用法・用量】
粉末は1回0.5〜1gを1日2〜3回食前または食後温湯で服用する。生薬は1日5〜8gを300〜400mlの水で10〜15分煎じて2〜3回に分けて服用。生のウコンをホワイトリカーに漬けて飲む愛好家も多い。(外用)粉末を水で練って、痔、創傷、腫脹に貼布しても良い。

【注意】
秋ウコン、春ウコン、紫ウコン、発酵ウコン、無農薬ウコン、無添加ウコン、、、ウコン業界はまさに百花繚乱である。それぞれが最高を競い合い価格を吊り上げている。分量も1回2g、3g、、を推奨する業者もあるが、粉末であまり多くを飲まないほうが良い。それは既に述べたように、辛味の性質をもつスパイスだからである。肝を痛めないように多くても1g〜1.5g程度に止めておくべきである。

 

防已(オオツヅラフジ)

【解説】
日本各地の山野で見られる藤の木の一種、オオツヅラフジである。茎、根茎を生薬名、防已(ボウイ)と言う。関節浮腫、腹水などの利尿や関節痛、リウマチなどの鎮痛薬として漢方処方に配合される。成分はシノメニンを始めとするベンジルイソキノリンアルカロイドである。モルヒネと同じモルヒナン骨格をもち、鎮痛作用も生薬の中では強力である。炎症を取り除く作用もあるので関節炎、筋肉炎の急性期から、慢性期の鎮痛にまで広く用いられる。慢性化したもの、虚状をおびたものは補益性や温熱性のある生薬を配合する。日本で使われる防已は漢防已だが、中国では木防已(アオツヅラフジ)も用いられていた。しかし、数年前、主成分のアストロキア酸で腎不全を起こすことが報告され、少なくとも日本では使われなくなった。中国旅行で神経痛、リウマチの中成薬を購入するときは注意が要る。また、自家採集してアオツヅラフジを飲まないようにしたい。新薬の鎮痛剤は胃腸障害はじめ数多くの副作用が知られている。それに比べると防已の副作用は無いに等しい。我慢できる痛みなら我慢するに越したことはないが、耐え難い痛みに防已を用いる価値は充分にある。一服で効果を確認できる。効果がないのにダラダラと服用し続けるのはあまり意味がない。

【用法・用量】
1日約10gに水500〜600mlを加え、弱火で10〜20分煎じ滓を漉した薬液を1日分として、1日2回に分け朝・昼食間に服用。利尿作用があるため就寝前に服用すると頻繁に尿意を催すことがある。症状や体重に応じて15〜20gまで増量するが、それ以上の量は用いない方が良い。

【注意】
薬効成分はアルカロイド類で薬にも毒にもなる。このため多量又長期に服用するのは注意がいる。かゆみ、血圧降下、痙攣、中枢神経麻痺などの副作用が知られている。新薬でも漢方薬でも痛みを抑えることでは根本的な解決にならない場合がある。治ったと錯覚して無理を重ね重症化することがあるので、現在進行中の体の状態は充分把握しておくべきである。

 

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