【カルシウムの話】


五大栄養素とは?炭水化物・蛋白質・脂肪・ビタミン・ミネラルを言います。このミネラルの中で最もよく知られているのがカルシウム(calcium)です。カルシウムは体内に成人で1kgくらい存在し、99%はリン酸カルシウム・炭酸カルシウムの形で骨や歯の成分として存在します。残りは血液をはじめとする体液・筋肉・神経などの組織に存在しています。 さてカルシウムが不足すると。
  1. 歯がもろくなる
  2. 骨がもろくなり、骨折や変形がおこりやすくなる
  3. 骨粗しょう症や骨軟化症を引き起こす
  4. 高血圧症や動脈硬化、糖尿病を促進させる
  5. 出血したとき血が止まりにくくなる
  6. 心臓の筋肉の収縮異常により心筋梗塞の原因となる
  7. 神経過敏になり、イライラする

血液中には一定量のカルシウムが必要で血液中のカルシウムが減ると、骨のカルシウムがそれを補うために溶けだし、骨内のカルシウム量が減少します。「カルシウムが不足している!」 「こんな食生活では危険です!」...と、テレビや雑誌、新聞などでカルシウムの摂取が叫ばれます。そして、牛乳や乳製品がいつもトップに挙げられ、次に小魚など付け足し程度。乳業会社のwebページなど見ると、もちろん乳製品がカルシウム源の筆頭です。例えば100g中のカルシウムの含有量は、、、普通牛乳100mg。乾燥わかめ960mgワカメは乾燥重量ではあるが、牛乳の欠点である中性脂肪はなく、牛乳の欠点であるアレルギーをもたらすカゼイン蛋白質もなく、カロリーゼロのミネラルの宝庫です。この海藻が、私が見た、ある乳業会社のwebページには書かれていませんでした。企業が自社の製品を売り込むのは当然の事です。しかし事は体に関すること。脂肪やアレルギーの被害に目を被いつつも乳製品からカルシウムを摂り続けなければならないのでしょうか?も少し良識のある発言や情報が流れても良さそうに思います。

成長期の子供はたくさんカルシウが要ると言い、学校でも1本、家に帰ると1リトルの紙パック牛乳を、水より栄養があるとして推奨する。それほどカルシウムも含有されていないのに、脂肪や蛋白質だけはふんだんに摂取し、肥満やアレルギーが増えてゆくのです。妊婦はカルシウムがさらに多く必要として、牛乳を配る自治体もあります。これがこれから生まれてくる子供達のアトピーの増加に貢献?しているといえなくもありません。一刻も早く牛乳に対する洗脳から脱しなければ健康にはなれません。牛乳を好きでたまらない人が楽しみで飲むことを否定するものではありません。飲めない人に、あるいは飲みたくない人に、健康のためにと言う根拠のない理由で勧めることだけはして欲しくないものです。

1961年の日本人のカルシウム摂取量は400mg足らずで、1962年に400mgを越えています。1967年に500mgになり、これは牛乳の販売促進の結果でしょう。しかし意図に反し骨折や動脈硬化、骨鬆症などは増加しつつあります。カルシウムの摂取目標そのものが乳業会社を利するだけに終わったのかも知れません。日本のみならずアジアの国々では400mgほどのカルシウム摂取量でやってきた訳です。この数字は乳製品を豊富に摂るアメリカのカルシウム摂取量1000mgと加算し2で割った数字であると言われています。

このことを考えるとそれほどカルシウムの必要はなさそうです。300〜400mgなら普通の日本食を摂っている限り満たされます。目標を600mgに置いたため、牛乳が必要になったのです。牛乳を必要とするため、目標を600mgにおいたと言えなくもありません。水より安い牛乳を生産されている農家のかたの労苦は察するに余りあります。うちも農家で、かつて乳牛を飼育していました。ここのとこ乳業会社は信頼を裏切る行為が続いてきました。このことを考えると、乳業会社が流し続ける健康情報が果たして本当なのか?一度疑ってみる必要もあります。

カルシウムの摂取は重要な事に違いありません。しかし摂取だけが大切な要件ではあり
ません。もっと大切なことは、カルシウムを消耗するような食物を必要以上摂取しないことです。その事に関する興味ある研究があります。1993年の薬剤師会報第45巻第9号から... 

標準食時と低糖高蛋白食時の尿中ミネラル排出量の比較

 

標準食時

低糖高蛋白食時

カルシウム 89 ± 64mg/day 387 ± 281mg/day

585 ± 176mg/day 1744 ± 727mg/day

0.44 ± 0.03mg/day 1.78 ± 0.62mg/day

亜鉛

0.54 ± 0.59mg/day 2.70 ± 0.96mg/day

(Yacowitz,H.)

標準食とは穀物など炭水化物を中心とした食事の事で、低糖高蛋白食と言うのは、逆に
穀物や炭水化物を減らすか殆ど摂らないで副食を中心とした食事の事です。近年誤まった栄養学の蔓延で、肥満のもとだからと、穀物を減らす傾向にあります。栄養の専門家や医療職に従事する人でさえ、穀物の摂取を減らすことを善としているようです。ところが穀物を減らすとどうなるか?考えさせられる事態が体の中で起っているのです。

標準食での尿中ミネラル排泄量に比べ、低糖高蛋白食のミネラル排出量は5倍前後という驚くべき数字になっています。「ご飯を食べないで副食ばかり食べていると、カルシウムは尿中へどんどん垂れ流されますよ」、、ということなのです。そうすると骨も当然脆くなり、既に箇条書きした7項目の被害が生じてきます。尿中カルシウム濃度が高くなることによって、そこに結石が発生することもあります。蛋白質の過剰摂取は近年結石が増加している一因かもしれません。なぜこんなことが起るのか? それは...蛋白質や脂肪の消化吸収に臓器が相当のエネルギーを使いミネラルやビタミンを消耗するからではないかと考えられています。

牛乳・乳製品のカルシウムがいまの2〜3倍含まれたとしても、この研究からすると役にたたないばかりか、逆にカルシウムは減少して行く事になります。カルシウム源としてよく勧められる小魚。これも例外ではありません。カルシウムは丸干しいわしで100g中1400mg牛乳よりはるかに優れたカルシウム源で蛋白源でもありますが、その蛋白質のためカルシウムの有効な摂取は出来ません。

食物を栄養学に基づくバランスで摂るのではなく、体の中での栄養の動態で考え直しどの食材が体に有効かよく検討する必要があります。炭水化物である穀物の摂取を軽視すると思わぬ損失を招く事になります。

カルシウムの摂取でよく言われるのがリン(P)との比率の事です。Ca:Pの比が1:2〜2:1(0.5〜2.0)の間で吸収が良くその範囲を超えてPの摂取が多いと吸収が悪くなります添加物を多く使う加工食品はリンの化合物が多く、それがカルシウムの損耗を引き起こします。以下食品成分表を元にいくつかの食材のCa:Pの比率を検討してみます。

【食品の可食部100gあたりの含有量】

 
  カルシウム(mg) リン(mg) Ca/P

穀類・いも及でん粉類

21 240 0.09
小麦 24 350 0.07
玄米 10 300 0.03

白米

140

0.04

食パン

36

70

0.51

うどん

15

55

0.27

さといも

22

42

0.52

じゃがいも

55

0.09

砂糖及び甘味料

黒砂糖

240

31

7.74

精白糖

蜂蜜

0.5

菓子類

大福もち

19

49

0.39

せんべい

11

36

0.31

ケーキ

35

100

0.35

種実類・豆類

アーモンド

230

500

0.46

胡麻

1200

540

2.22

落花生

50

380

0.13

あずき

75

350

0.21

大豆

240

580

0.41

豆腐

120

85

1.41

魚介類

あじ(生)

65

190

0.34

いわし(生)

85

290

0.29

いわし(丸干し)

1400

1200

1.16

かつお(生)

10

270

0.04

さけ(生)

14

210

0.07

さば(生)

22

160

0.14

さんま(生)

75

160

0.47

あさり(生)

40

140

0.29

しじみ(生)

320

95

3.37

えび(生)

55

130

0.42

獣鳥肉類

牛(ロース)

130

0.04

牛(サーロイン)

140

0.04

にわとり

16

100

0.16

160

0.03

豚(ベーコン)

180

0.03

豚(ハム)

240

0.03

卵類

鶏卵

55

200

0.28

卵黄

140

520

0.27

卵白

11

0.8

乳類

普通牛乳

100

90

1.11

ヨーグルト

110

100

1.10

ナチュラルチーズ

660

470

1.40

野菜類

からしな

110

55

キャベツ

43

27

1.59

キュウリ

24

37

0.64

ごぼう

49

60

0.82

なす

16

27

0.59

にんじん

39

36

1.08

ねぎ

47

20

2.35

白菜

35

36

0.97

果実類

いちご

17

28

0.61

なし

11

0.27

りんご

0.38

きのこ類

えのきたけ

80

0.01

しいたけ

26

0.15

きくらげ(乾燥)

180

210

0.86

藻類

あおさ

950

80

11.88

こんぶ

680

250

2.72

わかめ

100

36

2.78

ひじき

1400

100

14.00

嗜好飲料

緑茶

390

410

0.95

ウーロン茶

310

230

1.34

コーヒー

120

170

0.71

油脂類・調味料・香辛料・調理加工食品は省きました。

リンが多いとカルシウムの吸収が阻害されます。このようにカルシウムとリンの比率を見てくると、特に藻類、次に野菜の葉類はリンが少なく推奨できるカルシウム源だといえますカルシウムが多くても、同時に蛋白質が多いと前記の表のように尿中へ流出してしまうことになります。小魚は多くのカルシウムを含むものの、蛋白質も多く、食品分析ではカルシウム源かも知れませんが、体の中での動態は蛋白源と考えたほうが良いでしょう。

海藻はカロリーゼロの優れたミネラル源といえます。しかしこれらの食材はあまりに過小評価されていないでしょうか?価格も安価で、何ら加工も施さず、保存も効くミネラル源として、これほど素晴らしい食材は他にありません。

牛乳の栄養学や業界をとおして健康の事を考えると、カルシウムの問題をはじめ色んなこ
とが見えてきます。優れた蛋白質・脂肪と言って推売していたものが、生活習慣病の増加やアレルギーなどの増加が問題になると、いつの間にかカルシウム源として推売している状況です。果たしてカルシウム源となるかどうか?

今まで条件反射のように「牛乳=カルシウム」と言い続けて来ました。しかし、いま一度、牛乳を巡る健康の問題を考え直して見るべきでしょう。これからの食や健康のためにも。

 

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