【身近で撮影した薬草(2)】


フジバカマ     トウキ     アカメガシワ
トウゴマ     コブシ     アザミ
クズ     ウツボグサ     ボタン
サイコ     オオバコ     シャクヤク
アマチャ     ガマ     キラン草
ビワ     グアバ     カラスウリ

 


トウキ(当帰)

当帰を薬用人参と間違えて栽培している人を見かける。「人参を買い上げてくれないか」と何度か薬局へ持ち込まれた事がある。確かに人参は高価であるが薬効から考えると当帰を栽培するほうが断然有利かも知れない。当帰は婦人の聖薬として次のような言い伝えがある。昔、中国で夫に捨てられた病気の妻が、裏山から採ってきた薬草を飲んで健康を取り戻した。その噂を聞いた夫は、妻のもとへ戻り、また元のように一緒に暮らした。「夫、当(まさ)に帰る」これが当帰の語源とされている。当帰は日本で栽培され、国内の需要をある程度満たし、輸出もされている生薬である。栽培の歴史は古く、江戸時代には近畿以北の各地で野生品や栽培品の産出があった。中国の漢方医学が渡来する前から民間薬として利用されていたと思われる。

漢方処方には欠かせない薬草で使用量も多い。鎮痛、抗痙攣の作用があり、抗炎症、中枢鎮静作用、抗凝血作用、血小板凝集能抑制作用など血に関わる多くの働きが証明されている。体を温め血を増やしオケツ(血行障害)を取り除くため虚弱体質の病気に応用される。妊婦の浮腫、腹痛、月経痛、鎮静、通経、冷え性、血行障害、頭痛、貧血など、特に産前産後の体調管理に優れている。本来造血因子のビタミンB12は動物にのみ存在すると言われてきたが、当帰から植物で最初にビタミンB12の類似物質が発見された。当帰は油脂成分も多いため薬用酒にして服用するとさらに効果が期待できる。


コブシ(辛夷)

モクレン科のコブシ、ハクモクレン、シモクレン、タムシバの蕾を辛夷と呼び、これを薬草として使う。薄っすら産毛を蓄え膨らんだ蕾は、いち早く春の訪れを感じさせてくれる。日本で辛夷として用いるものは殆どがタムシバでコブシ、モクレンは少ない。採集は開花直前の1〜2月頃が最適だが、雪の多い地域では開花が遅れ雪解けの頃になる。風通しのよいところで陰干しする。日本では、ほとんど野生品を採集するために、収穫量が変動しそれに伴い価格も変動する。

蕾を採集し乾燥したものは、独特の香気をもち、その精油成分を風邪の解表や鼻炎、鼻閉、鼻汁、鼻カタル、蓄膿症、頭痛に用いる。辛夷エキスには抗アレルギー作用も確認されている。漢方ではほかの薬草と配合して使用する。砕いた辛夷を調剤する時は、この産毛に悩まされる。細かい産毛が飛散し吸い込むと、くしゃみが頻発し擬似鼻炎を引き起こす。同種療法と言うのだろうか?だからこそ鼻炎に応用するのかも知れない


ウツボクサ(夏枯草)

お盆の頃、山歩きをすると青々とした葉から茎が伸び、先に蓑虫みたいな枯れた穂を見かける。夏枯れる花の様子から夏枯草という名がついた。花は6〜7月頃に茎頂に紫色の唇形花が穂状につく。花は咲いたあとすぐに枯れドライフラワーのように乾くが、なお存在を主張し続ける。この穂が薬用部分である。

消炎性の利尿剤として腎臓炎、膀胱炎、るいれきなどに効果があるとされる。他にも黄疸性肝炎、暑気払いに用いる。抗炎症作用があるので外用として口内炎、結膜炎などにも応用される。打撲やケガのとき生葉を揉んで患部に貼る応急処置も知られている。タンニンが多いので長時間煎じたり長期連用すると胃が荒れたり便秘傾向になることがある。内服の場合、煎じる時間は5〜10分程度にとどめておいたほうが良い。


オオバコ(車前草)

雑草と一緒に全国的に見られる代表的な民間薬である。そのため方言も多く、オンバコ、オバコ、ギャーロッパ、カエロッパ、ゲェーロッパ、、、などがある。葉が広くて大きいのでオオバコ(大葉子)の名前が付いている。人や車に踏み固められた道端の雑草の中にオオバコをよく見かける。多くの雑草は踏まれ絶えてもオオバコだけ生き残るため車前草(しゃぜんそう)とも言う。種子は車前子。種子の産毛を集めたものはプランタゴ・オバタと言いオオバコダイエットで有名になった。

消炎・利尿作用と鎮咳作用があり、特に子供の咳に効果がある。ほかに下痢止め、止血などに用いられ。種子は明目(目を良くする)作用があり眼病の薬に配合される。民間薬として馴染み深いため、さらに胃腸病、高血圧、強壮など広範な用途が知られている。含有成分のplantaginには鎮咳・去痰作用が実験的にも確認されフスタギン末、フスタギン液として保険が適用される。効能効果は「下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難 。急性気管支炎、気管支喘息、感冒・上気道炎、肺炎、肺結核」となっている。古い話になるが風邪などで病院へ行くと、濃い茶色の水薬をもらって服んだ記憶がある。それがフスタギンやブロチン(桜皮エキス)などの配合処方である。フステン液として使われてきたが現在はこのような処方をする医師が少なくなった。副作用も少なく懐かしい薬である。外用としては、腫れ物の排膿のため生の葉を蒸して患部に貼る。


ガマ(蒲黄)

古事記に出てくる因幡の白ウサギはサメに毛をむしられ、オオクニヌシノミコトに救われる。その時使われた薬草がガマの穂綿である。漢方では主に蒲の花粉を蒲黄(ほうおう)として用いる。昔はウナギをぶつ切りにして串焼きにした。それが蒲の穂に似ているので蒲焼と言うようになった。蒲は花材としても広く利用される。休耕田や川岸、沼の浅い所に自生する多年性草本で水気の多い場所にいつのまにか群生する。 6〜7月頃の開花期に花粉を採取する。

民間薬で止血、利尿、通経の目的でそのまま又は煎じて服用する。傷口や火傷に直接散布し収斂性止血薬としても用いる。この止血作用を利用し月経の時期をコントロールする「延経期方」という漢方処方がある。止血薬は効果を上げるためには黒くなるまで炒ったほうが良いとされてきたが、そのままでも止血効果は変わらない。蒲黄は通経作用があるので妊婦は禁忌である。


グアバ(蕃果)

血糖値の気になるかた、、、の謳い文句で販売されている蕃爽麗茶の原料である。グアバの葉と未熟果実(蕃果)の抽出エキスからなる健康飲料。「血糖降下剤との併用で低血糖を起す恐れ」という報告があるくらいだから血糖降下作用は確かなのかも知れない。自宅の畑に栽培している。秋には黄色に熟れて甘い香りを放ち、食べると酸味と甘みがあり美味い。他にバンザクロ、バンジロウとも言い果実や種の様子をみるとザクロに似ている。熱帯、亜熱帯で広く栽培され日本では沖縄県などが盛んである。若葉を採取し乾燥後、保存する。果実は薬用酒にするか、一度蒸して刻み乾燥後、保存する。

糖尿病、高コレステロール、高血圧などに、お茶として葉に熱湯を注ぎ飲むか、数分煎じて飲む。果実は硬いので20〜30分煎じなければならない。下痢、歯痛、口内炎、胃潰瘍、止瀉、湿疹、痒み止め、あせもなどにも用いられ、血糖降下作用やコレステロール低下作用からダイエットを目的に服用する事もある。また葉はシジュウム茶として花粉症やアトピーなどのアレルギー対策にも用いられる。葉は、植物繊維40%の他に鉄、リン、カルシウム、マグネシウム、ビタミンC、タンニンなどを含み特にポリフェノールの働きで食後の糖分の吸収を抑えて、血糖値の上昇を抑制するといわれている。

 

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