【身近で撮影した薬草(3)】


フジバカマ     トウキ     アカメガシワ
トウゴマ     コブシ     アザミ
クズ     ウツボグサ     ボタン
サイコ     オオバコ     シャクヤク
アマチャ     ガマ     キラン草
ビワ     グアバ     カラスウリ

 


アカメガシワ(赤目柏)

雑木林には必ずこの木が確認される。ドライブや旅行中、車外に目をやると群生しているところがある。樹高も低いものから、高いものになると10mに及ぶものがある。これほど豊富な資源が薬草として使えるなら便利で経済性も高いと思うが、案外知られていない。春先の葉は赤く美しいが段々赤みはとれてくる。柏の葉には似ていないが、昔この葉に載せて神前に供え物をあげたり、だんごなどを包んだ。その用途が柏に似ていることから赤芽柏(アカメガシワ)の名がついた。別名ゴサイバ、サイモリバ、アカベアメコサイバ、ショウグンボクなどがある。葉または樹皮を夏季に採取し乾燥させて保存する。

民間では赤い新葉と新芽を煎じて胃癌や胃潰瘍に用いられる。市場に流通しているのは樹皮のほうである。消炎鎮痛薬として、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃酸過多、胆石症、腫れ物などに用いられる。動物実験で胆汁分泌促進、潰瘍の予防に効果が認められた。腫れ物には葉を煎じて飲んだり、煎じた汁で患部を罨法する方法もある。


アザミ(薊)

紅花のように葉に棘があり、色こそ違うが花の形もにている。それもそのはず同じキク科の植物である。北海道を除く日本各地の野山や道端のどこにでも見られる。棘はあるが食用も可能である。テンプラやアクが強いので、茹でて米のとぎ汁に一晩浸しゴマ和え、油炒め、きんぴら、、などにする。夏〜秋の花期に採取し、天日で乾燥させる。根を水洗いして乾燥させたものは漢方で薊(けい)といい、大薊、小薊などの種類がある。

利尿、解毒、止血、強壮薬として月経不順、子宮筋腫、鼻血、尿血、下血、吐血、痔出血などに用いられる。動物実験で血圧降下作用が確認されている。漢方では熱性の出血や癰腫に使う。止血に関しては新鮮なものの方が効果ある。止血薬は炒ると効果が良くなると言われてきたが反って悪くなる。


ボタン(牡丹)

立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花...とは美人のたとえとしてよく知られている。漢方家は婦人病に使う薬草だからという話に発展させるが、別に婦人のみ特有に用いるものでもない。芍薬、牡丹はとりわけ繁用必須の漢方生薬である。大輪の花をつける牡丹はもっぱら観賞用に栽培されているが、数種育てていると近所や他所の花壇が気になり始める。花の世界も見事なものや珍しいものが讃えられるという競争がある。園芸用に販売されているのは、芍薬の根に牡丹を接木したものがほとんどで薬用には用いない。用いるのは花ではなく根の部分で牡丹皮という。本草綱目には「牡丹は色が丹(朱色)なるものが上品であり、子を結ぶが新苗は根から生える。故に これを牡(雄の意)丹と名付ける」とある。これが名の由来だと思われる。

主成分のぺオノールは抗菌作用があり、牡丹皮の水煎液は血圧降下作用、エタノールエキスには抗アレルギー作用が認められた。血熱を清め、血を活かす作用から駆オケツ薬の代表とされている。頭痛、腹痛、下腹部の炎症、婦人科疾患、月経不順、月経困難症など熱を帯びた血行障害に用いる。盲腸部の痛みや圧痛はオケツと同じ部位のことが多い。これを目標に牡丹皮を用いると盲腸も治ってしまう事がある。1960年代盲腸手術が盛んに行われた時期があった。オケツを盲腸と誤って切ってしまった例もあるに違いない。漢方医、龍野一雄先生の著書には盲腸を漢方薬で治す臨床報告がある。盲腸と思われる殆どの症例に有効であると書かれている。この治験を外科で行ったため龍野先生は大学病院を追われたという話がある。


シャクヤク(芍薬)

牡丹に似た花で中国では芍薬、牡丹、梅、蘭、菊、蓮を歴史上の6大名花として賛美、珍重される。観賞用として栽培され数は3000種以上にのぼる。そのうち薬用とされるのは白花で青茎系統の品種(アンドン)が用いられる。茎に三花をつけ、花弁が5〜20の重弁を大和芍薬と言い最も高品質とされる。近年、生産量も減少し、中国や韓国からの輸入品が繁用されている。

牡丹に似ているし牡丹とともに用いられる事も多いが薬効は同じではない。神農本草経には、腹痛や痛みを止め、血痺を除き、小便を利す、、など書かれている。痙攣やひきつけ、腹痛、疼痛、下痢などに用いる。このような薬効から婦人に用いる場合が多く、婦人要薬とされているが、性別に関わらず大切な薬草である。漢方ではさらに赤芍薬、白芍薬に区別して使い分ける。赤芍薬(赤芍):せきしゃくと言い芍薬の根を乾燥したもの。白芍薬(白芍):びゃくしゃくと言い芍薬の根の外皮を除去し乾燥したもの。赤芍は瀉・散、白芍は補・収と、相反する作用を認めてきた。したがって赤は活血、行滯(行気理気)の効から月経困難、閉経、産後のオケツ、癰疽腫毒などの血の症状に用い、白は肝を柔らげ痛みを止め(柔肝止痛)たり補血養陰の効から頭痛、眩暈、崩漏、止痛、緩和、痙攣などに用いる。他薬との配合も多く応用範囲も広い。動物実験で主成分のpaeoniflorinに鎮痛、鎮静、鎮痙、抗炎症、抗ストレス、血圧降下、血管拡張、平滑筋弛緩作用が報告されている。


キラン草

この薬草がキラン草という名であることを知ったのは随分後のことになる。子供の頃聞き覚えた「医者倒し」で呼んできた。佐賀の方言でイシャダオシ、イシャタワシ、イラクサ、ゲカタオシ、モグラクサなどがある。医者を倒すほど何にでも効くというのが「医者倒し」の言い伝えだが、地方によってはセンブリを医者倒しと言ったり、ドクダミやゲンノショウコをそう呼ぶ場合もある。本州、四国、九州、朝鮮半島、中国に分布し山野で普通に見られる薬草である。 紫色の花が咲き地を這うように広がるので一目で判別できる。

医者倒しと言うくらい薬効も応用も広いが、実際には不明な成分が多く、私としては万病の薬のように勧める事はできない。民間薬として切り傷、腫れ物、高血圧、発熱、腹痛、下痢、結石、咳止めに煎じて服用し、生の葉は揉んでその汁を擦り傷や虫刺されに外用する。苦味が強いので長時間、濃く煎じないほうが良い。しかし、このような薬草に限って、数時間〜半日と煎じつめられることが多い。長く煎じることで治癒への祈りが届くのかもしれない。約5〜8gに湯を注ぐか、煎じても5〜10分位に止めておく。


カラスウリ(土瓜根)

この果実を麻袋に入れ床下に置くと金持ちになるという言い伝えがある。キカラスウリ(瓜呂根)と間違いやすい。花は両方とも夕方開くがカラスウリは朝にはしぼんでしまい、キカラスウリは夜が明けても咲き続け花の期間も長い。実を結べば赤と黄色なので一目瞭然である。薬効にも共通点がある。葉や蔓は枯れても赤い実はいつまでも残り、秋の紅葉とともに山野を彩る。

種子は煎じて咳止めに、根(土瓜根)は利尿、浄血、催乳に用いる。生の果肉や果汁はしもやけ、ひび、あかぎれなどに擦り込んで外用する。

 

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