【食物・生薬の五行分類表】


食物や薬草が○○に効く・・・と言ったテレビ番組や雑誌は多い、それを頼りに実行している人も多分、かなりの数あるかも知れない。また、これは○○によいからと言うだけでその欠点や問題点を見逃した議論も多い。食物や薬草の性質を知る方法としての栄養学や薬物学は欠かせないが、それはあくまで性質や組成であって、生体内での動態を示す確実な根拠があるわけではない。試験管内の実験だったり、ラットでの研究であったり、人での実験でも、モデル数が少なく、単に、使ったら効いた程度の証拠で論じられることが多い。それが良いと言われたら過大な効果を期待して、薬店や食料品店の棚から無くなるほど殺到したり、連日、それを中心に大量に摂取する人がしばしば見受けられる。

その様に思い込ませる情報の流し方にも大いに問題があるが、ここは一つ冷静に考えてみよう。常識という物指しで測ってみると、それほどのものが、なぜ医薬品として認可されていないか?何でも治るなら病人はいないのではないか?最高の・・・というものが、毎日、毎週、無数に紹介されていることの不思議。このようなものに、心や生活を脅かされる事こそ、「健康病」という病ではないか?

東洋的食養では、五行に基づいて食材や薬草を分類する。例えば肝を傷めた場合その薬性の酸・土に配当する薬草や食物を中心に補い、しかも過不足がないよう摂取する。過不足がないようという事が曖昧でわかりにくいが、結局常識的な、、、という事に尽きるのである。ところが酸味の梅干やレモンを連日大量に摂取しつづけると、やがて胃を傷め肝そのものも逆に疲弊してくる。

五行の分類はテレビや雑誌以上に根拠のないものが多く、肝に作用するということで薬理と関係なく、酸・木として分類したり、苦くもないのに心の病態に使うという事で苦・火に分類したりする。逆に、苦いから心に効く筈だという思い込み分類もある。

五行はあくまでも病態や薬草、食材の大まかな性質を理解するためのものと考るべきである。重要なのは、薬草や食材の薬理であり効用なのだ。以下、この事を前提に図表にしてみたい。表の中から性質の異なる食材を広い範囲で利用できれば、それもまた別の意味で豊かで多様な食生活と言えるかも知れない。

 

 

微温

微寒

米酢・梅肉・酢
リンゴ・すもも

五味子・木瓜
  梅・カリン
ヨーグルト
サンシュウ
烏梅・酸棗仁
  柚子・橙・カボス
酢だち・レモン
よもぎ・蕗
タラの芽
麻黄・蒼朮
白朮・檳榔子
厚朴・防已
艾葉
  うど・菊花・春菊
ぎんなん
柴胡・独活・連翹
桃仁・インチンコウ
桃仁・芍薬・牛黄
貝母 茶・コーヒ・苦瓜
筍・牛蒡・ビール
たかな・ほうれん草
黄連・黄柏・梔子
枳実・大黄・苦参
地骨皮・オウゴン
芒硝・熊胆・紫根
うどん・鰻・鯛
牡蠣・鯵・エビ
羊肉・牛肉
カボチャ・山芋
当帰・山薬・杏仁
忍冬・反鼻
鶏肉・かまぼこ
ニンジン
黄耆
ニクジュヨウ
胡麻・大豆・米
蓮根・鶏卵・水飴
トウモロコシ
小豆・蜂蜜・ぶどう
大棗・サンザシ・飴
甘草・百合・葛根
茯苓・麦門冬
牛乳・小麦・粟
豚肉
人参・ヨクイニン
香附子
砂糖・茄子・胡瓜
キャベツ・トマト
白菜・レタス・柿
桃・ミカン・梨・豆腐
こんにゃく
沢瀉・地黄・滑石
瓜子・桑白皮・茅根
紫蘇・わさび
にら・大根
胡椒・山椒
ラッキョウ
生姜・唐辛子
にら・酒
桂皮・橘皮・乾姜
辛夷・防風・薄荷
丁香・麝香・木香
十薬・附子・細辛
薤白・桔梗・陳皮
  さといも・ネギ
杜仲・木通・半夏
天麻・茴香
  ずいき
蟾酥・金銀花
牡丹皮・石膏
めざし・干物
佃煮・大麦
栗・鰯・鯖
味噌・納豆
大麦・旋覆花
セイソウ シジミ・ヒジキ
わかめ・醤油
牡蛎・水蛭・鼈甲
麦芽
真珠
青のり・食塩・かに
昆布・アサリ
モズク・蛤
シャチュウ

 

温→寒までの寒熱分類は、漢方独特のものである。食物や薬草を体に取り込んだ時それを熱の概念で捉える考え方である。生姜を食べるとその辛味成分により血管が拡張し体温が上がる、冷えを伴う病証や温熱発生の低下した人の場合大いに貢献してくれるだろう。しかし炎症など、熱があれば逆効果となる、熱の時は寒性の薬草を服用することで、その熱を低下させる。また同じ薬性のものでも熱くして摂取するのと冷たくして摂取するのとでは、寒熱比も違ってくる。食材・薬草の寒熱比を縮めたり制するため加熱などの調理をしたり、あるいは寒熱比の違う他の物を配合する事もある。

食物や薬草のみならず、新薬でもこの寒熱比の考え方を以ってすれば、治療の幅は格段に向上すると思われる。抗生物質、解熱鎮痛剤はじめ、新薬は苦寒の性質を持つ薬物が多い、これを長期続ければ、体は冷え、新陳代謝は低下する事になる。ただでさえ新陳代謝の低下した高齢者に延々と投与している事を、立ち止まり考えれば名案が浮かぶかも知れない。以下に寒熱比の表を記す。

 

  温+1 微温+0.5 平±0 微寒−0.5 寒−1
辛+1 +2 +1.5 +1 +0.5 ±0
鹹+0.5 +1.5 +1 +0.5 ±0 −0.5
甘±0 +1 +0.5 ±0 −0.5 −1
酸−0.5 +0.5 ±0 −0.5 −1 −1.5
苦−1 ±0 −0.5 −1 −1.5 −2

 

中医八綱では陰陽・虚実・表裏・寒熱に分類し病証と薬物を対比させ治療方針を決定する。八卦、64に細分類される。占いの八卦と同じである。さらに複雑にすることは現実的ではないが、必要があれば検討も要する。例えばこの他にも升・降散・収 湿・燥などあり、さらに薬物の帰経、、、など多岐に及ぶ分類がある。

これら先人が築き上げた伝統の知恵を参考に、科学的検証が為された薬理に基づき運用してゆく事が望ましいのだが、未知の部分が多すぎるのも天然物の特性である。

 

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