(2)

外していたヘッドパーツを装着し、携行武器を装備したG3・Xが外に駆け出すと、
先導していたパトカーから降りた北條が怪人と対峙していた。
G3・Xはレッドアイザー越しに怪人の形状を確認した。亀のような甲羅と蛇のように伸びた尻尾。
報告にあった研究所を逃走・襲撃した怪人に間違いない。
「動くな!一歩でも動けば撃つ!」
牽制する北條に目もくれず、怪人はGトレーラーに向かって歩を進めはじめた。
無視された格好になった北條は、怒りの形相で怪人に向けて引き金を引いた、が、キィン!と無機質な
音をたてて銃弾は弾かれた。
「くっ!」
逆上した北條が次々と発射した弾丸も全て弾き、怪人は歩を緩めることなくその横を通り過ぎようとした。
「止まれェッ!」
なおも食い下がろうとする北條だったが・・・
『ジャマ・ダ』
怪人がまるで虫でも追い払うかのように軽く放った平手を受け、あっけなく吹き飛ばされてしまった。
「ぐ、はぁ!」
自分が乗っていたパトカーに直撃し、そのまま地面に崩れ落ち気を失う北條。
「北條さん!」
一瞬、気をやるG3・Xだったが、今重要なのはこちらに歩み来る怪人の方である。ホルスターからGM・01ーを抜き、構える。
「止まれ!」
だが、怪人は気に留める風もなく、尚も近づく。
「氷川くん、撃ちなさい!」
小沢の指令を受け、G3・XがGM・01を発砲する。今度は弾かれる事はなく爆発を起こした。
『ウ・ヌ』
怪人の足を留める事には成功したが、本体にダメージを与える事はできなかったようだ。
接近戦に切換えるべく、GM・01をホルスターに戻し左肩から電磁ナイフのGK・06を抜く。
「氷川くん!先手必勝よ!」
先手必勝で掛かって行って勝利した例がどれくらいあるだろう、そう思いながらもG3・Xは怪人に斬りかかった。
狙いは甲羅の隙間、そこならば貫き徹せるはず・・・だが!
シュルルルッ!、と伸びた尾がG3・Xの右手を絡めとり、攻撃を封じる。締め上げる尾の力は凄まじく、
振り下ろすどころか動かす事もできない。
怪人は両手でG3・Xの残った左手と首を掴み、同じくギリギリと締め上げる。
「ぐああ・・・!」
Gトレーラーから戦いをモニターしている小沢と尾室にも危機感がつのる。
「氷川くん!」
「小沢さん!いくらG3・Xつけてても、このままじゃ氷川さん窒息しちゃいますよ!」
「言われなくても解ってるわよ!アンタはよそ見してないでモニターしてなさい!!」
『アナタモ・ネ?』
人間のものとは思えないその声に、ハッして2人が向き直る。
G3・Xが出動したまま開いていたハッチに立っている影・・・それは赤い鳥のような姿をした別の怪人だった。
「!!!」
怪人は手にしていた羽根をふっ、と2人の方に飛ばした・・・

「ぐ・・意識が・・・遠のいていく・・・」
失神寸前の誠、とその時Gトレーラーの中から爆発が巻き起こった。
「!何だ!?」
瞬間、誠は消えかかっていた意識を取り戻し、ありったけの力を振り絞って怪人の腹を蹴って戒めから抜け出した。
「ゴホッゴホッ・・・小沢さん!尾室さん!」
Gトレーラーに駆け寄るG3・Xの前に赤い怪人が姿を見せる。
「!もう1体いたのか!?」
G3・Xを一瞥した赤い怪人は黒い怪人に向き直り、手にしたモノを誇示して見せた。
「それは・・・!」
それは誠達が警護していた、あの青い石であった。
『オワッタ・ナ・・・』
くるりと踵をかえし、さっさと立ち去っていく黒い怪人。赤い怪人はつまらなそうに口を尖らせ、翼を広げた。
「くっ、逃がさん!」
飛び去ろうとする赤い怪人に必死に飛びつくG3・X。バランスを崩し落下する赤い怪人。
『キ・サ・マ!』
なおも組み付くG3・Xに怒った怪人はブチブチッと両手に5枚ずつ、計10枚の羽根を引きちぎり、投げつけた。
ドガガガァァァァン!!至近距離で直撃したG3・Xは、握り絞めていた怪人の着衣をちぎりながら吹き飛ぶ。
『フン!』
体勢を立て直した怪人は再び翼を広げ、夜空へ飛び去ってしまった。
「う、ぐ、そうだ・・小沢さんたちは・!?」
自らのダメージも深刻だったが、今はそれよりもGトレーラーが気がかりであった。
トレーラーの中に飛び込んだG3・Xは2人の姿を探した。車内にはガラス片が散乱している。
あの青い石を入れていたケースのものだろう。
「特殊強化ガラスがこれほどまでに粉々になるなんて・・・あっ!」
床に倒れ伏した2人を発見し、慌てて駆け寄り抱き起こすG3・X。
「小沢さん、しっかりしてください!小沢さん!!」
「う・・・」
2人共かろうじて意識はあるようだ。怪人の羽根爆弾が2人の座っているトコロから少し離れた場所にあった
ケースを狙ったもので、直撃ではなかったのが幸いであった。

装着を解いた誠は、通報を受け到着した救急隊に小沢、尾室、北條の3人を任せ、自らは警視庁へ向かう。
救急隊からは自分のダメージも心配だから一緒に来るように言われたが、頑として断った。
「今はヤツラへの対応策を練るのが先だ・・・」
痛む胸を押さえながら、誠はパトカーを走らせた。

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