【山閑堂農園・夏】


夏至の夕日、これから田植えが始まる。続いて、雨、風、台風、暑く長い夏が来る、と嘆息。雨は例年に比べ少なく、台風は1個接近するが被害は皆無、しかし、昨年に続き、昨年より厳しい炎暑となる。9月の新聞に「列島2年連続、最も暑い夏」の見出しで次の記事が載った。「6〜8月の日本の平均気温が平年を1.76度上回り、1898年の統計開始以降で最高だった」。高温傾向は9月も続き、彼岸までは8月と変わらぬ暑さが続いた。

 

南向きの店は窓が暖房機だ。おかげで冬はストーブ1台分温まる。夏は日除け幕が欠かせない。2年続きで猛暑の予感があったわけではないが、長く使ったエアコンを5月に入れ替えた。27度設定で外気温と10度の差がある。室内に入るといっぺんに汗が止まる。周囲の樹木のおかげでやや涼しく、とくに昼下がり、西日を遮る効果は抜群だ。

 

今年は草を刈る気力さえ失せ、休日もエアコンを入れた室内で過ごす。降雨もなく日照りが続くと雑草まで枯れる。昨年は枯れることのなかった玉竜や里芋の葉が枯れた。芋だけは匍匐前進し領地を広げ道にまで伸びた。

 

梅雨終盤、車のボンネットの中で猫が鳴く。子猫とはいえ敏捷で捕えられず、追い払っても舞い戻る。ひとまず餌付けして捕獲した後、猫カフェや譲渡会へ持っていけばよいと考えた。5日で捕獲成功。すぐに猫カフェや自治体の施設へ問い合わせると、持ち込みのハードルの高さに愕然とする。それほどに野良猫があふれているのだ。ひとまず餌だけは与えている。畑や庭を駆け回り、樹にものぼる。ノラと呼べば餌を食べにくる。日光の「眠り猫」にも似ているので「甚五郎」と名付けた。愛猫家の客に、「連れて行って」とお願いするが、いまだ行先は決まらず厄介な闖入者だ。

【後日譚】飼わざるを得ない、と肚を決め去勢手術を受けさせる。それから4日後、忽然と消えた。翌日も翌々日も戻って来ない。4カ月ほどの居候ではあったが、寂しさと喪失感が残る。猫に飼われていたのかも知れない。

 

 

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