【繁用生薬メモ(1)】


かって薬種問屋と言われた薬草専門の問屋(今は製薬会社)の扱う生薬は400〜500種類、中国で流通する生薬は5000〜10000種類といわれる。本場は桁違いの数である。日本語の出来る中医師と話す機会を得たので尋ねてみると。種類は多くても一人の中医が使う薬草の種類は300〜400種類くらいだという。日本で漢方エキス顆粒として出回っている成分生薬が約100種類である。漢方専門薬局を営むには200種類位の生薬は揃えておかなくてはならない。しかし実際繁用するのは100種類あれば充分である。さらに繁用する生薬は30種くらいに絞られる。それならこれで足りるのかと言われると、即答に窮する。たとえは悪いが10万円の資金で賭け事に興じるのと、100万円のうちの10万円で行なうのでは自ずと心構えが違ってくる。ここでは繁用生薬30種を、自分の資料整理も兼ねて書きとめています。

【メモ1】

 

【メモ2】

     
黄耆(オウギ)   石膏(セッコウ)
黄柏(オウバク)   川弓(センキュウ)
黄連(オウレン)   大黄(ダイオウ)
葛根(カッコン)   大棗(タイソウ)
甘草(カンゾウ)   陳皮(チンピ)
杏仁(キョウニン)   当帰(トウキ)
桂皮(ケイヒ)   桃仁(トウニン)
紅花(コウカ)   人参(ニンジン)
香附子(コウブシ)   半夏(ハンゲ)
柴胡(サイコ)   白朮(ビャクジュツ)
山梔子(サンシシ)   茯苓(ブクリョウ)
地黄(ジオウ)   (劇)附子(ブシ)
芍薬(シャクヤク)   牡丹皮(ボタンピ)
十薬(ジュウヤク)   牡蛎(ボレイ)
生姜(ショウキョウ)   麻黄(マオウ)
    意苡仁(ヨクイニン)
     
※生薬写真は生薬・INDEXから閲覧してください。

 

黄耆(オウギ)Astragali Radix

基 原 マメ科(Leguminosae)のキバナオウギ(AstragalusmembranaceusBUNGEまたその他
同属植物の根
成 分 でんぷん・糖・粘液・β-シトステロール・リノール酸・リノレン酸
薬 理 血圧降下作用・末梢血管拡張作用・抗アレルギー作用・利尿作用・強壮作用・
インターフェロン誘起作用
応 用 強壮・止汗・利尿・水腫・盗汗・口渇・四肢の痛みと麻痺
古 典 体表の水滞(異常発汗・浮腫)を治す。黄汗(関節炎や全身の浮腫のとき見られる)・
盗汗・身体の腫れ・知覚麻痺
中 医 甘・微温/補気昇提・固表止汗・利水・消腫・托毒排膿

補気昇提:脳の興奮や筋緊張を促すため、気虚による疲労・内臓下垂脱肛・子宮脱/
補気健脾:脾気虚の食欲不振・消化不良・下痢・軟便/固表止汗:衛気虚・肺気虚の
自汗・疲労・風邪の予防と治療に体表循環を高め、汗腺を調節し、感染を防御する/
補肝気:肝の昇発と疏泄が低下した肝気虚による無気力・疲労・憂鬱・胸脇苦満・
しびれ・筋肉痙攣/補気生血:補気することで消化吸収機能を高め血を補う/補気摂血
気虚による持続・反復する出血/補気通絡・去痺:気虚により起こる血行障害や麻痺/
托毒生肌:体の抵抗力を高め血行や肉芽形成を促進する。慢性の化膿症の排膿・分泌
物の排出。炎症が強い実熱毒に用いると悪化する/利水消腫:気虚の浮腫・腹水・関節
水腫などで尿量減・蛋白尿を改善する

微温性のため熱証を助長するので、熱証に用いる場合は知母・玄参などを配合する
黄耆は表虚に適し、人参・党参は裏虚に適し気津を補う。黄耆は利水作用があるため
陰虚の補気には人参・党参を用い、陽虚の補気には黄耆を用い、併用することもある

処 方 黄耆建中湯・加味帰脾湯・帰耆建中湯・桂枝加黄耆湯・七物降下湯・十全大補湯・
清心蓮子飲・人参養栄湯・半夏白朮天麻湯・防已黄耆湯・補中益気湯

 

黄柏(オウバク)Phellodendri Cortex

基 原 ミカン科(Rutaceae)のキハダPhellodendron amurense RUPREC-HTまたはその他
同属植物の周皮を除いた樹皮
成 分 ベルベリン・パルマチン・マグノフロリン・グアニジン・オバクノン・リモニン・フィトステロー
ル・エステル
薬 理 中枢抑制作用・鎮痙作用・健胃・抗消化性潰瘍作用・抗菌作用・止瀉作用・血圧降下
作用・抗炎症作用
応 用 苦味健胃整腸剤・打撲や炎症の鎮痛・消炎に外用(民間)
古 典 殺虫作用・胃腸の炎症性病変・熱感を伴う下痢・熱性疾患による目の充血や痛みを治す
中 医 苦・寒/清熱燥湿・瀉火解毒・清虚熱・涼血止血

清熱燥湿:苦寒沈降の作用により、主として下焦の湿熱に用いる。消炎・解熱・抗菌作用
を持ち、炎症による滲出を抑制する。利胆・大腸湿熱による下痢・膿血便・腹痛/清熱瀉火:
下焦の陰虚の虚火(腎火)に適するが、黄柏の燥湿性を緩和するため生津清熱の知母を
配合する。腎陰虚による手足のほてり・のぼせ・盗汗・咽乾・早漏/清熱解毒:消炎・解熱・
鎮静・化膿抑制作用があるため熱毒の皮膚化膿症などに用いるが、作用が弱いので黄連
・黄今・山梔子を配合/清熱涼血・止血:消炎・血管透過性抑制・血小板保護作用があるため
血熱の出血に黄連・黄今・山梔子・大黄を配合して用いる

寒証には用いない。黄柏は下焦、黄今は上焦、黄連は中焦の清熱

処 方 温清飲・黄連解毒湯・荊芥連翹湯・柴胡清肝湯・滋陰降火湯・七物降下湯・清暑益気湯・
半夏白朮天麻湯・中黄膏(外用)

 

黄連(オウレン)Coptidis Rhizoma
基 原 キンポウゲ科(Ranunculaceae)のオウレンCoptis japoncica MA-KINOまたはその他
同属植物の根をほとんど除いた根茎
成 分 ベルベリン・コプチジン・パルマチン・マグノフロリン
薬 理 鎮痛作用・鎮痙作用・健胃作用・止瀉作用・抗菌作用・抗消化性潰瘍作用・血圧降下
作用・動脈硬化予防作用・抗炎症作用・免疫賦活作用
応 用 苦味健胃整腸薬
古 典 胸苦しく、煩悶し動悸がするものを治す。みぞおちあたりの痞え嘔吐、下痢、腹部の疼痛
を治す
中 医 苦・肝/清熱燥湿・瀉火解毒・涼血止血

清熱燥湿:苦味が強く強力な清熱燥湿作用があり、消炎・抗菌・解熱・鎮静し炎症性の
滲出を抑制する。胃腸の湿熱に適し発熱・頭痛・胸苦・身重・悪心・腹痛・下痢・濃尿に
用いる。全身性の湿熱(三焦の湿熱)には黄今・黄柏・山梔子・大黄を配合/清熱瀉火:
消炎・解熱・鎮静効果により、心火・胃火・肝火を抑える。黄連一味でも強力であるが、
引経と寒性緩和のため、心火に肉桂、胃火に細辛、肝火の呉茱萸を加える/清熱解毒:
熱毒の高熱・意識障害・うわごと・発汗・皮膚化膿・発赤・発熱・疼痛/清熱涼血・止血:
消炎・血管収縮作用があり炎症性の血管透過性亢進による出血を止める:清熱化痰:
化痰薬との配合で熱痰に用いる/調和脾胃・消痞:脾胃不和は寒熱の不調和によって起り
黄連は苦味で胃気を下げ、乾姜などの辛味で胃気を開く。寒熱の不調和による胃部の痞
を除くため枳実を配合する

寒証には用いない。反佐として少量使うことがある。苦寒性が強いので、大量・長期の服用
で陽気を消耗し、燥性のため陰液も消耗する

処 方 温清飲・黄連湯・黄連解毒湯・荊芥連翹湯・柴胡清肝湯
三黄瀉心湯・清上防風湯・女神散・半夏瀉心湯

 

葛根(カッコン)Puerariae Radix

基 原 マメ科(Leguminosae)のクズPueraria lobata OHWIの周皮を除いた根
成 分 ダイジン・ダイゼイン・プエラリン・β-シトステロール
薬 理 鎮痙作用・解熱作用・消化管運動亢進作用・降圧作用・血小板凝集阻害作用
応 用 発汗解熱剤・肩凝り・筋肉痛・葛粉の原料(食品)
古 典 項や背中がこわばるものを治す
中 医 甘・辛・平/解表・透疹・生津止渇・昇陽止瀉

解表:甘辛で発汗力は弱いが肌表に鬱した邪を除き解熱。胃気を高め津液を上行させる
ことで口渇を止め、筋脈を濡潤し痙攣やこわばりを緩和する。平性であるため表寒・表熱
を問わず、有汗・無汗に関わらず用いてよい。一般的に表証の項背のこわばり・口渇を
目標にする。表寒の悪寒・発熱・頭痛・身体痛には桂皮・麻黄・生姜・芍薬などを配合/
透疹:発散作用により麻疹の透発を促進し、生津・止瀉・解熱にも働くので発熱・口渇
下痢を伴うものにも適する/生津止渇:甘潤性があり胃気を上昇させ津液を輸布するので
口渇・咽の乾燥・多飲に用いる/昇陽止瀉:清陽を上昇させ下痢を止めるので、湿熱の
下痢・腹痛に黄連・黄今を配合して用いる。脾虚の泄瀉には党参・白朮・茯苓・木香を
配合する/活血通絡・鎮痙:血管痙攣を緩和し、血管を拡張させ血行を促進することで
疼痛・しびれ・こわばりを改善する。冠不全・脳血管障害・突発性難聴への適応報告あり

処 方 葛根湯・葛根湯加川弓辛夷・升麻葛根湯・参蘇飲

 

甘草(カンゾウ)Glycyrrhizae Radix

基 原 マメ科(Leguminosae)のGlycyrrhiza glabra L.var.glandulifera REGet HERDまたはその他
同属植物の根およびストロン
成 分 グリチルレチン酸・リクイリチン
薬 理 鎮痛鎮痙作用・鎮咳作用・抗消化性潰瘍作用・胆汁排泄促進作用・肝保護作用・抗炎症
作用・抗アレルギー作用・ステロイドホルモン様作用・抗変異原性作用
応 用 矯味薬・鎮咳去痰薬・甘味料(食品)
古 典 急迫症状を治す。腹部の拘攣、疼痛。手足の冷え、煩悶して落ち着かないものを治す
中 医 甘・微温/補中益気・生津・緩急止痛・調和薬性・緩和薬効

補中益気:脾胃を補い食欲を益し元気をつける。大量では満中(腹満感)や浮腫の副作用
があるので主薬ではなく補助的に用いる。食欲不振・疲労・虚弱などの脾胃気虚に人参・
黄耆・白朮などを補佐する/益気復脈:補気生津の働きで、心気虚の脈結代・動悸・息切
れに用いる。心陽を補う桂枝、補気の人参を、心陰虚を伴えば麦門冬・阿膠を配合する/
補気生津:気津両傷の口渇・疲労・気力減に人参・麦門冬を、亡陽の冷えに附子・乾姜
を配合/緩急止痛:甘味の緩和性を利用し骨格筋・平滑筋の攣急・疼痛に用いる。単味
又は芍薬を配合/調和薬性・緩和薬効:様々な方剤に配合し、構成薬物の寒熱・升降な
どの薬性を調和させる。瀉下・逐水・清熱・散寒・解表など強力な作用の薬物に配合し作用
を緩和させる。強力な作用を期待するときは甘草を除く/潤肺化痰:肺虚の慢性咳嗽・少痰
に用い痰の排出を助ける/保護健胃:刺激性や強力な薬効を持つ薬物による胃腸障害を防ぐ

生津作用があるため、湿盛・水腫・湿熱には用いない。単独で長期使用すると浮腫を起こす
ことがあるので利水剤を配合する。満中を来たすので理気薬を配合する

処 方 諸薬との調和をとる為、殆どの漢方処方に配合される

 

杏仁(キョウニン)Armeniacae Semen

基 原 バラ科(Rosaceae)のホンアンズPrunus armeniaca L.およびアンズ
P.armeniaca L.var.ansu MAXIM.またその近縁植物の種子
成 分 アミグダリン・オレイン酸・エストロン・エムルシン
薬 理 鎮咳作用・卵胞ホルモン様作用
応 用 鎮咳去痰薬(キョウニン水)
古 典 胸に溜まった水分、痰などを治す。呼吸困難、喘息、咳を治す。息切れ、みぞおちが膨満し
痞え痛むものを治す。胸痛、浮腫を治す
中 医 苦・甘・温・小毒/止咳平喘・化痰・潤腸通便

止咳平喘:肺経気分に入り辛散・苦泄・下気の働きで咳嗽・呼吸困難を改善する。有効成分
のアミグダリンが中枢に作用して喘咳を抑制すると考えられている。補助的に使用し大量には
用いない。寒証の喘咳には麻黄・桂枝・生姜・細辛・乾姜などを配合/潤腸通便:油性成分を
含むため腸管内を潤滑にして通便する。老人の腸燥便秘、産後・虚弱者の血虚・陰虚の乾燥
性便秘に麻子仁・桃仁・郁李仁・熟地黄・当帰・大黄・厚朴など配合/止咳・化痰・化湿:
肺気を宣散し止咳・化痰・発散に働くので湿温の発熱・身重・胸苦・咳嗽・熱感・濃尿などに
滑石・黄連・黄今・ヨクイニン・厚朴の補助として配合/利水:湿による痺れ・浮腫み・関節の
運動障害に防已・ヨクイニン・防風・桂枝の補助として配合。

アミグダリンを含むため多量の服用でシアン中毒を起こすことがある。渋皮付きのほうが効果
がつよい。肺虚の喘咳には用いない

処 方 桂麻各半湯・潤腸湯・神秘湯・麻黄湯・麻杏甘石湯・麻子仁丸・苓甘姜味辛夏仁湯

 

桂皮(ケイヒ)Cinnamomi Cortex

基 原 クスノキ科(Lauraceae)のCinnamomum cassia BLUMEまたはその他同属植物の樹皮

桂皮には幾つかの呼び名がある。中国では樹皮を肉桂としていたが現在では用いられて
いない。日本では樹皮を桂皮としていたが、中国の肉桂とは別物ともいわれる。桂心は
中国で肉桂のコルク層を除いたものをいう。桂枝は若い細枝をいうが、日本で広く流通して
いるものは樹皮で、表示は「桂皮」となっている。桂枝として流通するものは細枝を木部ごと
刻んだもので香りは桂皮ほど良くない。桂枝を冠する処方名も現在では桂皮が用いられる

成 分 シンナミックアルデヒド・シンナミルアセテート
薬 理 解熱作用・鎮静鎮痙作用・末梢血管拡張作用・抗血栓作用・抗炎症作用・抗アレルギー
作用・抗菌作用・脂肪分解阻害作用・利尿作用
応 用 芳香性健胃薬・駆風薬・矯味薬・発汗解熱剤・鎮痛薬
古 典 のぼせなど下からつき上げてくるような症状を治す。心悸亢進、頭痛、発熱、悪寒、
発汗して体の痛むものを治す
中 医 辛・甘・温/辛温解表・通陽・散寒止痛

辛温解表:体表血管を拡張し発汗することで風寒表証の悪寒・頭痛・発熱・身体痛などを
治す。悪寒・無汗・脈緊のときは麻黄を、口渇・煩躁・咽痛など裏熱があれば石膏を配合
する。悪風・自汗・脈浮緩のときは芍薬・大棗・甘草を配合し、生津しながら軽度に発汗
させる/通陽:辛温の薬性は陽気を疎通する作用があるので自律神経の興奮・血管拡張・
血行を促進し機能を振興する。利水の白朮・茯苓・猪苓・沢瀉と配合し胃腸内の利水効果を
高め、溜飲・浮腫・下痢を治す。利水消腫の麻黄・細辛・杏仁・生姜と配合し、粘膜下水腫
・滲出・漏出を止め、鼻水や痰の生成を抑える。補気生津の甘草・人参など配合し、脈の
結代、動悸を改善する。疎肝の柴胡・芍薬と配合し疎肝効果を高める。活血化於の桃仁・
紅花・牡丹皮・赤芍などと配合し活血化於の効果を高める。このほか補腎薬や通心陽薬や
軟堅散結薬との配合で効果を高めたり、滋陰・清熱の薬物の反佐として少量を加える。
引火帰原:陽虚による虚寒がありながら、頬部の紅潮・のぼせ・口渇・体表の熱感など仮熱
の症状が見られるとき、附子・乾姜・人参などとともにさらに補陽を行って熱を鎮める/
散寒止痛:血管拡張により血行を促進し身体を温め鎮痛する。胃寒の上腹部痛・膨満感、
胃陽虚の上腹部痛に芍薬・大棗・生姜を配合する。虚寒の月経痛・無月経などに当帰・芍薬
川弓・桃仁と併用する。寒湿痺(リウマチ)の痺れ・痛み・冷え・浮腫・運動障害に去風湿薬
の白朮・蒼朮・防風・独活や止痙薬の芍薬・当帰・葛根を配合する。桂皮は上半身の痛みに
有効とされる。通血痺:気虚による血行障害で起こるしびれに黄耆・芍薬を配合/調和営衛:
辛温の桂枝・生姜と酸甘の芍薬・大棗・甘草を組み合わせ、辛温で陽気(衛気)を巡らせ、
酸甘で養営・生津・滋陰し、陰液と陽気・営と衛のバランスをとる/このほか動悸に茯苓・大棗
甘草・龍骨・牡蠣とともに用い、胃痛、頭痛の鎮痛のため処方に加える

陰虚・熱証には反佐として用いる以外は禁忌。発汗するので亡陽には禁忌。妊婦・出血時に
は禁忌。精油成分を生かすため粉末で服用するほうが望ましい。解表のためには身体を保温
したり、服用回数を増やすことで発汗を助け、逆に発汗過多には注意を要する

処 方 葛根湯・桂枝湯・桂枝加芍薬湯・桂枝加朮附湯・桂枝加竜骨・牡蛎湯・桂枝茯苓丸・
桂麻各半湯・五苓散・柴胡桂枝湯・十全大補湯・小建中湯・小青竜湯・桃核承気湯・
麻黄湯・女神散・八味地黄丸・苓桂朮甘湯

 

紅花(コウカ)Carthami Flos

基 原 キク科(Compositae)のベニバナCarthamusu tinctorius L.の花期の管状花
成 分 カーサミン・サフロールイエロー・脂肪油
薬 理 血圧降下作用・免疫賦活作用・抗炎症作用・子宮収縮作用
応 用 婦人病・冷え症・通経・色素(口紅)
古 典 オケツを除く。オケツによる痛みを治す
中 医 辛・温/活血化於・通経・止痛

活血通経:微小循環を改善し、子宮筋に緊張性・律動性の収縮を起こし月経を促す。月経異常
・月経痛・凝血塊・月経過少・月経不順・無月経に当帰・川弓・芍薬・熟地黄・延胡索・香附子
を配合する。産後の悪露排出不全・下腹痛に桃仁・当帰・牛膝・赤芍とともに用いる/活血化於・
止痛:少量では活血養血し多量では破血去於し血流を改善する。桃仁とともに用い効果を高
める。血於による持続性の疼痛・反復する静脈性出血・うっ血・充血・癒着・増殖性病変・腫瘤
・血管拡張・於斑などに桃仁・赤芍・丹参・当帰・川弓を配合し、一般に気滞を伴うので柴胡・
香附子・枳実・延胡索・桂枝などの理気・通陽の薬物を加える。血虚・陰虚に当帰・芍薬・熟
地黄・何首烏を、気虚には黄耆・党参・人参・白朮を配合する。打撲・捻挫・手術などにより
内出血・疼痛・腫脹が強いときは強力な活血化於が必要で、乳香・没薬・枳実・青皮・桂皮
などの理気・通陽薬と大黄・芒硝などの瀉下薬を配合する

妊婦に多量は禁忌。月経過多・出血傾向には用いない。桃仁はすべての血於に用いるが
紅花は温性であるため熱証にはあまり使用しない。桃仁は局部・有形の血於に、紅花は
散在・全身無定処の血於に適し、併用で効果が増強する

処 方 折衝飲・治頭瘡一方・通導散

 

香附子(コウブシ)Cyperi Rhizoma

基 原 カヤツリグサ科(Cyperaceae)のハマスゲCyperus rotundus L.の球根
成 分 シペレン・シペロル・シネオール
薬 理 プロスタグランディン生合成抑制作用
応 用 婦人神経症・胃腸薬
古 典 気が滞りみぞおちのあたりが痛み、膨満するものを治す
中 医 辛・微苦・微甘・平/疏肝解鬱・理気止痛・調経

疏肝解鬱:肝気鬱結・気滞による憂鬱・情緒不安定・緊張・イライラ・ヒステリー・胸脇苦満・
腹満・腹痛・胸脇痛・排便不調・乳房の脹り・月経不順など抑うつや緊張に伴う自律神経の
失調を改善する。柴胡・青皮・厚朴・蘇葉と伴に用いる。血於の固定性疼痛には桃仁・紅花・
当帰・川弓を、痰湿には半夏・陳皮・茯苓を配合する。精神的要因による食欲不振・腹鳴・
腹痛・下痢などの肝脾不和には六君子湯に加える/理気止痛:気滞による様々な疼痛・膨
満感に用い、胃寒の胃痛・悪心・多痰・膨満・冷えに良姜・呉茱萸を、胃熱の胃痛・口苦・
呑酸には山梔子・黄連を配合する/理気解表:軽度の発散作用を有するため表寒の悪寒・
発熱・頭痛に、悪心・腹満を伴えば紫蘇・陳皮を配合する/調経止痛:女科の聖薬と言われ
婦人科で常用する。肝気鬱結による月経異常・月経困難・乳房脹などに四物湯や桃仁・
紅花などを配合して対処する

気陰を消耗する恐れがあるため、気虚・陰虚には単独で使用しない

処 方 弓帰調血飲・香蘇散・参蘇飲・川弓茶調散・女神散

 

柴胡(サイコ)Bupleuri Radix

基 原 セリ科(Umbelliferae)のミシマサイコBupleurum falcatum LINNEまたはその変種の根
成 分 サイコサポニン・サポニゲン・オレイン酸・ステアリン酸
薬 理 中枢抑制作用・平滑筋弛緩作用・抗消化性潰瘍作用・肝障害改善作用・抗炎症作用・
抗アレルギー作用・ステロイド様作用・脂質代謝改善作用・抗ストレス作用
応 用 往来寒熱するものの解熱剤
古 典 心窩部より胸脇部にかけて膨満感があり、抵抗・圧痛のあるものを治す。悪寒・熱が交互
に起る熱病
中 医 苦・平・微寒/疏肝解鬱・理気・清熱透表・昇発清陽

疏肝解鬱・理気:抑うつ・緊張状態を緩解し自律神経の機能を円滑にする。一般に芍薬を
併用することで柴胡による気・津液の消耗を防ぎ、芍薬の柔肝作用で柴胡の疏肝解鬱作用
を高める。肝気鬱結で抑うつ・憂鬱・緊張・ヒステリー・ため息・胸脇痛が起こり、柴胡・芍薬
を基本とした数多くの加減方を用いる。腹痛・月経痛・腰痛などの気滞があれば香附子・青皮・
鬱金を、イライラ・易怒・目の充血・頭痛などの熱証には竜胆・黄連・黄今・山梔子・牡丹皮を
配合する/清熱透表:消炎・解熱・透表作用があり、熱を皮膚から発散させるため熱証に利用
される。特に半表半裏の熱を清熱・透表によって除き往来寒熱を治す/和解半表半裏:半表
半裏の往来寒熱・発熱・胸脇苦満・食欲不振・胸苦しさ・口苦などの症状を和解する。表証に
は桂枝を、裏熱・裏実には大黄・芒硝・枳実を、煩驚を伴えば龍骨・牡蠣を、喘咳には厚朴・

桔梗を加える/清泄肝胆:肝胆を疏泄するので、肝炎・胆嚢炎・膵炎に用いる/透表泄熱:
透表清熱の作用を皮膚化膿症(癰疽疔節)に利用し、黄連・黄今・山梔子・連翹・防風・荊芥
など配合する/截瘧:瘧(悪寒・発熱と熱感・解熱の発作を繰り返す疾患)を改善する/昇挙陽気:
肝の疏泄を高め陽気を昇発するので、下陥した気を引き上げる。気虚下陥の内臓下垂・脱肛・
子宮脱・起立性失調症に黄耆・人参と伴に用いる

寒証には用いない。陰虚には用いないが、必要なときは大量の滋陰補血薬を配合する。陰虚
火旺には禁忌。柴胡の大量長期使用で、疏泄過多がおこり気津を消耗する恐れがあるので
柔肝の芍薬・地黄・当帰など必ず配合する。肝気鬱結は柴胡が主薬となるが肝気虚には禁忌
又は少量しか用いない

処 方 乙字湯・加味逍遥散・荊芥連翹湯・柴胡桂枝湯・柴胡加竜骨・牡蛎湯・柴朴湯・四逆散・
十味敗毒湯・小柴胡湯・神秘湯・大柴胡湯・補中益気湯・抑肝散

 

山梔子(サンシシ)Gardeniae Fructus

起 源 アカネ科(Rubiaceae)のクチナシGardenia jasminoides ELLIS.またはその他の同属植物
の果実
成 分 ゲニポサイド・クロシン
薬 理 鎮痛作用・瀉下作用・利胆作用・肝障害予防作用・血圧降下作用・抗動脈硬化作用・
血液凝固抑制作用
応 用 黄疸・充血・出血・打撲に外用(民間)・着色料(食品)
古 典 胸苦しいものを治す。黄疸を治す
中 医 苦・寒/清熱瀉火・涼血止血・燥湿解毒・除煩

清熱瀉火:苦寒清降で心・肺・肝・三焦の火を冷ますので上・中・下全般の熱証に使用する/
清気分熱:消炎・抗菌・解熱・鎮静の作用があり、気分証の発熱・胸苦・胸部不快や熱感・
不眠に用いる。胸中の鬱熱に淡豆鼓を、悪心・嘔吐に生姜を、腹満に厚朴・枳実を配合する。
気分証の熱盛である高熱・うわごと・輾転反側には黄連・黄今・石膏・知母・牛黄を用いる/
清肺熱・清心火・清肝火:消炎・鎮静作用で肺・心・肝の実熱を冷ます。肺熱の咳嗽に桑白皮・
瓜呂仁・貝母・桔梗・黄今を配合する。肝胆の実熱によるイライラ・易怒・頭痛・耳鳴・目の充血・
胸脇苦満・口苦に竜胆・柴胡・黄今・黄連などを配合する。心火の焦燥感・不眠・動悸・口内炎
には黄連・大黄を、心肝火旺が慢性化し、陰虚・血虚や月経異常があれば熟地黄・芍薬・当帰
を配合する/清熱燥湿:清熱・化湿・利尿・利胆の作用があり、肝胆湿熱のイライラ・易怒・口苦
・胸脇苦満・悪心・黄疸に茵陳蒿・黄柏・竜胆・黄今・大黄・芒硝と伴に用いる。脾胃湿熱の
悪心・嘔吐・腹満・下痢に半夏・厚朴・黄連を、膀胱湿熱の排尿痛・頻尿・残尿感・混濁尿に
木通・車前子・滑石・沢瀉・茯苓を配合する/清熱涼血・止血:消炎・血管収縮作用で炎症性の
出血を止める。鮮紅色の出血・発疹・皮下出血に黄連・黄今・牡丹皮・薊・茅根・茜根を、慢性
化して血虚・陰虚を伴えば地黄・芍薬・阿膠を配合する

軽度の瀉下作用があるため、脾虚の軟便〜下痢には注意がいる。寒証には禁忌

処 方 茵陳蒿湯・温清飲・黄連解毒湯・加味逍遥散・五淋散・荊芥連翹湯・柴胡清肝湯・
梔子柏皮湯・清上防風湯・清肺湯・防風通聖散・竜胆瀉肝湯

 

地黄(ジオウ)Rehmanniae Radix

基 原 ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)のアカヤジオウRehmanniaglutinosa glutinosa
LIBOSCH.var.purupurea MAKINO.またはその他同属植物の根をそのまま乾燥(乾地黄)
または蒸した(熟地黄)もの

日本で流通する地黄には乾地黄と熟地黄があり、地黄とは主に乾(乾燥)地黄をさす。中薬
では地黄の新鮮な塊根を鮮地黄といい一般に入手は困難である。これを日干ししたものを
生地黄といいこれが乾地黄になる。これに酒を加え蒸して日干ししたものが熟地黄である。
鮮地黄は清熱涼血、生地黄は涼血滋陰、熟地黄は補血滋陰に用いる

成 分 スタキオース・マンニット・β-シトステロール
薬 理 血糖降下作用・血液凝固抑制作用・利尿作用・緩下作用
応 用 補血・強壮・貧血・止血
古 典 血液に関連して起こる種々の症候を治す。水分代謝・循環障害を治す
中 医 乾:甘・苦・寒/清熱滋陰・涼血・潤腸通便/熟地黄:甘・微温/補血滋陰・潤腸通便

<乾地黄>
清熱滋陰:清熱と同時に滋陰生津を行い、肝腎陰虚ののぼせ・熱感・ほてり・口乾・咽痛・
盗汗などの虚熱を治す。牡丹皮・黄柏・知母と伴に用い、滋陰効果を高めるため熟地黄・
亀板・別甲など配合する。肺腎陰虚の乾咳・無痰・少痰・血痰に麦門冬・貝母・玄参を加える
滋陰生津:熱盛傷津により熱消退後、余熱で起こる口渇・咽の乾燥・微熱に玄参・麦門冬・
沙参を、熱結の高熱・腹痛・便秘に大黄・芒硝を加える/涼血止血:血分の熱を冷まし止血に
働くので、血熱による出血・発疹に赤芍・牡丹皮・丹参・茅根と伴に用いる/柔肝:肝血・肝陰
を滋養することで肝の疏泄を調整し肝気鬱結・肝火・肝陽上亢を緩和する。疏肝薬による傷陰
の防止に配合する/潤腸通便:腸管内を滋潤して排便を促すので、腸燥便秘に麻子仁・桃仁・
杏仁などの補助として用いる

<熟地黄>
補血:甘温で味が濃く柔潤で、補血の目的で血虚に常用される。肝血虚の顔色不良・めまい・
目のかすみ・四肢のしびれ・筋肉のひきつり・月経過少に当帰・芍薬・何首烏を配合する。
心血虚の不安・焦燥感・不眠・多夢・動悸に酸棗仁・柏子仁・遠志・五味子を配合する。血虚
生風の痒み・皮膚の萎縮・皸裂・落屑に防風・荊芥・疾藜子・黄耆を、気血両虚には人参・黄耆
を配合する/滋陰:滋陰養血し精・髄を生じ骨を強壮にするので、肝腎陰虚の主薬とされる。
腎精不足で腰や膝の無力・記銘力減退・インポテンツ・遺精・不妊に山茱萸・山薬・何首烏を
配合する。腎陰虚ののぼせ・ほてり・身体熱感・口乾・咽乾に牡丹皮・沢瀉・知母・黄柏を配合
する。腎陽虚の冷えや痺れに附子・桂皮・杜仲・肉縦容を配合する。心腎陰虚の不眠・多夢・
動悸・不安に酸棗仁・柏子仁・遠志を、肺腎陰虚の乾咳・呼吸困難・少痰〜無痰に麦門冬・
天門冬・百合・五味子を配合する/柔肝・潤腸通便は乾地黄とほぼ同様である

滋膩性のため消化管にもたれ吸収されにくいので、陳皮・縮砂など配合する。脾胃気虚・陽虚
の泥状〜水様便や食欲不振には用いない。外感病には用いない。肝腎陰虚をともなう場合に
用いる。乾地黄は寒涼性があるので、気虚・陽虚・寒証には用いない

処 方 温清飲・弓帰膠艾湯・荊芥連翹湯・牛膝腎気丸・五淋散・柴胡清肝湯・滋陰降火湯・
七物降下湯・四物湯・炙甘草湯・十全大補湯・潤腸湯・消風散・疎経活血湯・当帰飲子・
人参養栄湯・八味地黄丸・竜胆瀉肝湯・六味地黄丸

 

芍薬(シャクヤク)Paeoniae Radix

基 原 ボタン科(Paeoniaceae)のシャクヤクPaeonia lactiflora PALL.の根

芍薬に関して、日本漢方では産地を良品か否かの目安にするが、中薬では芍薬の根を赤芍、
根の外皮を除いたものを白芍として区別する。効能にも違いがある。日本漢方では白芍を主に
芍薬という

成 分 ペオニフロリン・モノテルペン・タンニン
薬 理 鎮静鎮痙鎮痛作用・末梢血管拡張作用・抗炎症作用・抗アレルギー作用・免疫賦活作用・
胃腸運動促進作用・抗胃潰瘍作用・抗菌作用
応 用 頭痛・神経痛・胃痙攣
古 典 筋肉が硬くなってひきつるものを治す。腹痛、頭痛、知覚麻痺、疼痛、腹部膨満、咳、
下痢、化膿性のできものを治す
中 医 酸・苦・微寒/補血斂陰・調経・緩急止痛・柔肝・平肝

<白芍>
補血収斂・調経:補血の常用薬として肝血虚の顔色不良・皮膚の荒れ・めまい・目のかすみ・
四肢のしびれ・筋肉痙攣・月経過少・月経遅延に熟地黄・何首烏・当帰・阿膠と伴に用いる。
補血するとともに酸味の収渋性で陰液の損耗を防ぐため、陰虚・陰虚火旺などに対する滋陰薬
に配合される/柔肝・平肝・斂陰:肝血を滋潤し肝陰の消耗を防ぎ保護することで肝陽の調整
を図り肝気鬱結・肝陽上亢を収める。肝火による肝血の消耗や疏肝薬による傷陰を防ぐ。
肝風内動による四肢や体のふるえ・痙攣を鎮める。肝気鬱結のイライラ・憂鬱・ヒステリック反応
・胸脇苦満に柴胡・鬱金・青皮・香附子を配合するが、特に芍薬+柴胡の組み合わせは重要で
ある。肝脾不和で精神的要因も兼ねた腹痛・腹鳴・下痢に白朮・茯苓・柴胡を用いる。肝鬱に
よる月経周期の不定・月経痛には当帰・川弓・柴胡を配合する。肝風内動で筋肉の引きつり・
ふるえ・痺れ・ふらつきに釣藤鈎・石決明・龍骨・牡蠣・菊花・天麻を配合する/緩急止痛:
骨格筋・平滑筋の痙攣を緩解して鎮痛する。一般に甘草とともに用いる。寒証があれば附子・
桂皮・当帰・川弓を配合する/調和栄衛:収斂作用があるため陰液の漏出を防止する。表寒に用
いる発汗剤の桂皮・麻黄に芍薬を配合することで発散の行きすぎを抑制し営衛の調和を保つ

微寒性なので、陽虚には単独で用いない。寒証の腹痛には散寒薬と併用するか、酒炒りして
寒性を和らげる

<赤芍>苦・微寒/清熱涼血・活血散於・止痛・清肝明目
清熱涼血:血分に入り血熱を涼散し於血を散じ経脈を通じる。消炎と同時に血管透過性を抑制
し止血し、微小循環障害を改善する。高熱が続き、脱水・栄養不良から意識障害・発疹・皮下
出血がみられるとき地黄・玄参・牡丹皮を、炎症性の出血・発疹に黄連・黄今を配合する/活血
散於・止痛:微寒性なので熱証の血於に適するが、桂皮・当帰・川弓など温性の薬物を配合す
ると寒性が緩和され血於一般に用いる。血於の疼痛・出血・腫瘤・うっ血・月経異常に桃仁・
紅花・当帰・川弓・桂枝・枳実・乳香・没薬・柴胡など配合する。気虚を伴えば黄耆を、血虚が
伴えば熟地黄・当帰・芍薬を配合する/清肝明目:肝火を鎮め目の充血を改善する。肝火の
イライラ・易怒・頭痛・目の充血・眼痛に石決明・菊花・薄荷を配合する

寒証の血於には、十分な量の散寒薬を併用する。補血が必要な場合は芍薬(白)と伴に
用いる

処 方 温清飲・黄耆建中湯・葛根湯・加味逍遥散・弓帰膠艾湯・桂枝湯・桂枝加芍薬湯・
桂枝加朮附湯・桂枝茯苓丸・桂麻各半湯・五積散・柴胡桂枝湯・柴胡清肝湯・四逆散・
七物降下湯・四物湯・芍薬甘草湯・十全大補湯・小建中湯・小青竜湯・真武湯・大柴胡湯・
当帰飲子・当帰芍薬散・人参養栄湯・排膿散・防風通聖散・麻子仁丸

 

十薬(ジュウヤク)Houttuyniae Herba

基 原 ドクダミ科(Saururaceae)のドクダミHouttuynia cordataTHUMBの花期の地上部
成 分 デカノイルアセトアルデヒド・クエルチトリン
薬 理 中枢抑制作用・利尿作用
応 用 緩下剤・利尿剤・毒下し(民間)
古 典 熱毒を下し、腫れものを治す
中 医 辛・微寒/清熱解毒・消癰腫・化湿(中薬では魚腥草という)

清熱解毒・消癰腫:消炎・排膿作用があり化膿症全般に使用する。肺化膿症には桔梗を、
肺熱の咳嗽・黄痰・胸痛に桔梗・杏仁・芦根・冬瓜子・麻黄を配合。皮膚化膿症(癰疽疔節)
に単独又は他の清熱薬を併用/清熱化湿:消炎・滲出抑制作用で大腸湿熱の下痢・しぶり
腹、膀胱湿熱の頻尿・排尿痛・尿混濁に他の処方に加える

長時間煎じてはならない。生は特有の臭気があるが、乾燥物は芳香があり苦味もなく服用
しやすい

処 方 諸々の方剤に加方として用いる

 

生姜(ショウキョウ)Zingiberis Rhizoma

基 原 ショウガ科(Zingiberaceae)のショウガZingiber officinale ROSCOEの根茎

中国では生のひねしょうがを生姜というが、日本では乾燥したひねしょうがを含めて生姜と
いい、時に乾生姜ということもある。乾燥したひねしょうがは、中国で乾姜といい、日本では
蒸して乾燥したひねしょうがを乾姜という。ここでは日本の生姜を取り上げる

成 分 ジンギベロール・ジンゲロン・ショウガオール
薬 理 中枢抑制作用・解熱作用・鎮痛作用・抗痙攣作用・鎮咳作用・鎮吐作用・鎮痙作用・唾液
分泌亢進作用・抗消化性潰瘍作用・腸管内輸送促進作用・抗炎症作用・強心作用
応 用 芳香性辛味健胃薬
古 典 吐気、嘔気するものを治す。乾嘔、おくび、しゃっくりなどを治す
中 医 辛・微温/辛温解表・化痰燥湿・温中止嘔・解毒

辛温解表:表寒の悪寒・発熱・頭痛・身体痛・無汗又は自汗に麻黄・桂皮・紫蘇葉・白止・
荊芥・防風などの補助に用いる/温中止嘔:悪心・嘔気に主薬として単独でも効果があり
「嘔家の聖薬」とも言われる(生を生姜汁として用いるのが良い)。漢方では半夏と組み合わ
せて用い、半夏の毒性を緩和し制吐効果を高める。胃気虚の悪心・嘔吐・食不振・食後の
上腹部の脹りに半夏・縮砂・橘皮とともに用いる。胃熱の悪心・嘔吐・口苦・胸焼けに黄連・
竹如を補助する/化痰燥湿:痰の生成を抑制し、消化管内の水分の吸収を高め燥湿する。
湿や痰による悪心・口粘・腹満・多痰・に蒼朮・茯苓・陳皮・半夏の補助として用いる/解毒:
半夏・天南星などの毒性・刺激性を緩和したり、生魚や蟹などの中毒に紫蘇と併用する/
通陽:胃腸の動きを良くしたり、血管拡張・血行促進作用がある。他の薬の効果を高めるので
多くの処方に配合される/散寒:体表の血管を拡張し循環を促進する/開胃:胃腸の蠕動運動
を促進し食欲を増す/調和栄衛:生姜の辛温で衛気を振興し、大棗によって営を補い調和を
はかる。大棗の滋潤の過剰を生姜が抑え、生姜による陰の損耗を大棗が補し陰陽のバランス
を保つ

胃陰虚の乾嘔には禁忌。熱証には、通陽に少量用いる以外は禁忌。燥性があるため陰虚・
燥証には用いない。有効成分は精油中にあるので、生を用い、長く煎じないほうが好ましい

処 方 殆どの漢方処方に配合される
 
【参考図書】
常用漢薬ハンドブック 神戸中医学研究会編 /生薬ハンドブック 津村順天堂/平成薬証論 渡辺 武 /生薬学 長沢元夫共著    
>>繁用生薬メモ(2)

 

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