【処方系統図】


知識や経験はやがて網のように繋がり、また繋がった網を俯瞰することで再認識し、そこから閃きや反省がもたらされる事がある。漢方の「いろは」を学んだ頃、相関連する処方を繋いだ系統図に随分助けられた。いまだ初学の域を抜け出せないでいるが、再学習を兼ねてまとめてみた。漢方処方の基本とも言ふべき「桂枝湯」を基点に生薬と効能から大雑把に網を広げている。やや苦しい配置もあるが、別途、代表処方をとり上げて類方を実〜虚と降順に表示している。

 


 

       

麻黄湯

 

大青竜湯

   
       


関節痛・咳嗽

 


煩躁・発熱

   
   

白虎湯

←―
灼熱・口渇

葛根湯

―→
痰・喘咳

小青竜湯

―→
口渇・多汗

越婢湯

       


肩こり・無汗

       

大承気湯

←―
熱・便秘

大柴胡湯

 

桂枝湯

―→
腹痛・腹満

桂枝加芍薬湯

―→
於血

桂枝茯苓丸


常習便秘

 


便秘・腹満

 


微熱・胸脇苦満

 


 


冷え・貧血

調胃承気湯  

小柴胡湯

←―
嘔吐・悪心

柴胡桂枝湯  

  当帰芍薬散
   


胃痛・下痢

 


食欲不振・疲労

 


疲労・盗汗

   
三黄瀉心湯

←―
便秘・出血

半夏瀉心湯   補中益気湯  

小建中湯

―→
下痢・冷え

人参湯


便秘なし・のぼせ

 



咽異物感

     



めまい

 



体力減・冷え

黄連解毒湯  

     

 

    半夏厚朴湯   八味地黄丸  

苓桂朮甘湯

 

四逆湯

   

 

 

   
   


胃弱・疲労

 

頻尿・腎虚

 


口渇・浮腫

   
   

六君子湯

―→
めまい・下痢

真武湯

―→
熱・嘔吐

五苓散

―→
膀胱炎

猪苓湯

                 

 

桂枝湯は桂皮・芍薬・大棗・生姜・甘草で構成された代表的な漢方処方である。単独で用いる頻度は少ないが、加減・合方によって様々な病態に対応可能な処方でもある。桂皮は表へ芍薬は裏へと作用し、大棗、生姜で脾胃を助け、甘草は諸薬を馴染ませる。調和営衛といい表の衛(気)と裏の営(津液)の調和を図るものである。桂枝湯は体表から汗が漏れ出ている状態であるが、発汗が見られなくなると葛根湯や麻黄湯などでさらに陽気を補い発汗を促す。また腹痛など裏の症状が顕著であれば、芍薬を増量した桂枝加芍薬湯。水毒に対応した加減方は苓桂朮甘湯。於血には桂枝茯苓丸で対応する。

表証と半表半裏証が同時に存在すれば、和解剤の小柴胡湯を合方し柴胡桂枝湯として用いる。小柴胡湯から大柴胡湯を経て腹痛、腹部膨満、便秘に用いる大承気湯へ、小柴胡湯の誤治により生じた半夏瀉心湯から、より虚状を帯びた六君子湯へと進んでいく・・・以下、表に作用するもの、消化管などの裏に作用するもの、また利水、於血、和解、補益など..薬理や配合生薬をもとに系統別に表記してみる。

 


【桂枝・麻黄系】

       

麻杏意甘湯

   
       


神経痛・イボ

   
   

麻黄湯

―→
喘咳・熱

麻杏甘石湯

―→
熱・浮腫

大青竜湯

桂枝ニ越婢一湯
桂枝ニ麻黄一湯
発熱頻回
発熱少ない


肩こり

     


寒痰・喘咳

桂枝麻黄各半湯

←―
悪寒・発熱

葛根湯

―→
神経痛

葛根加朮附湯

 

小青竜湯

   


発汗あり

 


関節リウマチ

 


口渇・多汗

桂枝加桂湯

←―
のぼせ

桂枝湯

 

桂枝芍薬知母湯

 

越婢湯

桂枝加葛根湯
桂枝加黄耆湯

肩こり

盗汗


腹痛

     


熱・口渇

桂枝加朮附子湯

神経痛 桂枝加芍薬湯  

白虎加人参湯

←―
体液減少

白虎湯

桂姜棗草黄辛附子湯
虚弱者の感冒・神経痛


虚労

       
   

小建中湯

―→
盗汗

黄耆建中湯

   

中建中湯

←―
腹冷・腹痛


腸虚寒

腰痛・於血
気血表裏の虚

当帰建中湯
帰耆建中湯

―→
於血・冷え

当帰四逆湯
   

大建中湯

 

   
   


腹痛・腹冷

 

補血・補気

十全大補湯

   
   

附子粳米湯

       

 

桂枝や麻黄の配合は主に体表の病理に対応するが、麻黄を去り芍薬を加えたものは裏へ向かう。また麻黄、石膏の配合では利尿作用が得られ炎症性の浮腫に用いる。桂枝湯を加減し、のぼせ、肩こり、神経痛などに...芍薬を増量した桂枝加芍薬湯から、更に加減した建中湯系は疲労回復、盗汗、於血、腰痛などに応用される。大建中湯は名は建中湯でも構成生薬は小建中湯と全く異なり、蜀椒や乾姜で腹中の冷えを強力に温補する。この二つを合方して中建中湯として用いることがある。帰耆建中湯から血虚、気虚が進むと十全大補湯になり、陽虚になると当帰四逆湯になる。

麻黄湯は発汗により体表で水滞を解消する。麻杏甘石湯は体表よりやや深い部位に熱と水毒があり、石膏を配合して利尿する。筋肉に水毒が及んだものが麻杏意甘湯で、筋骨に熱と水毒のあるものが大青竜湯である。水毒が胸部や心下で寒を帯びたものは小青竜湯で温補する。越婢湯は発汗が多く、汗や浮腫を尿に導き解消する。

麻黄、石膏の組み合わせ処方から、石膏剤である白虎湯系に行く。熱病、日射病など体液減少の見られる病態に津液を潤して清熱する。重症のものは更に人参を加え体液を保持させる。

 


【柴胡・大黄系】

   

大承気湯

←―
熱・便秘

大柴胡湯

 

防風通聖散

   


腹満・便秘

 


便秘・腹痛・嘔吐

 


肥満・高血圧

大黄牡丹皮湯  

小承気湯

  柴胡加龍骨牡蛎湯  

清上防風湯


便秘・炎症

 


便秘

 


動悸・精神不安

 


上部炎症

桃核承気湯

←―
於血

調胃承気湯  

四逆散

 

荊防敗毒散


便秘なし

     


腹痛・痙攣

 


化膿性皮膚疾患

桂枝茯苓丸

 

乙字湯

←―
痔・脱肛

小柴胡湯

―→
皮膚病

十味敗毒湯

       


発熱・悪寒

   
       

柴胡桂枝湯

   
       


動悸・のぼせ

   
       

柴胡桂枝乾姜湯

   
       


於血・更年期障害

   
       

加味逍遙散

―→
痙攣

抑肝散

       


疲労・食欲不振

 

抑肝散加芍薬
抑肝散加半夏陳皮

       

補中益気湯

   

 

柴胡の配合されたものは柴胡剤(または和解剤)といわれ、少陽(胸膈)にある病邪に用いられる。大黄はさらに病邪が腸管に達したものに用いる。柴胡剤で最も繁用されるのは小柴胡湯であるが、少し学習を積むと柴胡桂枝湯、加味逍遙散、補中益気湯のほうがより便利で応用の広い処方であることが解る。小柴胡湯より病状が実したものは腸管に便が滞ってくる。胸脇苦満や往来寒熱、嘔吐の症状とともに便秘、腹満が見られ、大柴胡湯を用いる。便秘や腹満、発熱のときは腸管の病毒を下し排除する承気湯系を用いる。大小承気湯、調胃承気湯など瀉下作用のあるものは実証の処方になる。承気湯に於血が加わると、桃核承気湯や大黄牡丹皮湯を用いる。小柴胡湯から虚の方向へ進むと、自汗や盗汗、疲労、食欲不振がみられる。

柴胡は肝の血液浄化作用、解毒作用を助けるので、於血薬との配合に理と利が認められる。加味逍遙散はその代表処方になる。とくに慢性病で、柴胡剤は於血薬と、於血薬は柴胡剤と配合することで働きが向上する。柴胡の升提作用を応用したものが痔に用いる乙字湯、柴胡の抗炎症作用を体表・皮膚へと応用したものが十味敗毒湯である。これよりさらに炎症が強いものに荊防敗毒散。柴胡は配合されていないがニキビなど上部の炎症に用いる清上防風湯へ進んでいく。解毒剤の代表は防風通聖散で、表裏すべてに毒邪があり、表は発汗し、裏は瀉下し、半表半裏は和解して排除する。18味もの生薬が配合され、病態によって分量比率や生薬を加減すると応用範囲は広がる。

 


【活血化於剤系】

        大黄牡丹皮湯    
       


便秘・炎症・充血

   
   

大承気湯

←―
腹満・潮熱

桃核承気湯

―→
陳旧性於血

抵当丸
       


便秘・のぼせ

   
       

桂枝茯苓丸

   
       


生理痛

   
   

小柴胡湯

 

折衝飲

   
   


 


冷え症・水滞

   
黄連解毒湯   加味逍遙散

←―
胸脇苦満

当帰芍薬散

   


皮膚炎

     


血虚

   
荊芥連翹湯

←―
皮膚炎

温清飲

←―
出血(熱)

四物湯

―→
出血(寒)

弓帰膠艾湯
       


脾虚

―→
水毒

連珠飲

       

八物湯

 


血虚

       


気虚・血虚

  苓桂朮甘湯
       

十全大補湯

   

 

血行障害という病態に縦横に対応するのが活血化於剤である。桂枝茯苓丸に便秘が加わると桃核承気湯に、さらに古い(陳旧性)於血になると動物生薬(虻、蛭)を配合した抵当丸になる。便秘を伴う血行障害は於血を排除するため大黄を配合する。桂枝茯苓丸、折衝飲に加えることもある。便秘や熱や炎症の見られるものが大黄牡丹皮湯である。小腹急結という於血の腹証は盲腸周辺に高頻度で出現する。そこで、盲腸に大黄牡丹皮湯を用い好成績を収めた治験がある。

於血に血虚が伴うときは血液を増加させつつ血行を改善する。折衝飲は於血と血虚が混在し痛みの強い於血に用いる。於血に水毒が伴うと冷えたり、血が薄くなり血行障害が起こる。当帰芍薬散は利水して冷えや水滞を改善する。四物湯は血虚の基本処方で、寒性の出血には弓帰膠艾湯、熱性の出血には温清飲を用いる。当帰芍薬散と半表半裏証(往来寒熱、胸脇苦満など)の合病が加味逍遙散である。四物湯と脾虚の四君子湯を合方すると八物湯や十全大補湯になり、水毒のあるものは苓桂朮甘湯と合方した連珠飲を用いる。

 


【黄連・黄今系】

大黄黄連瀉心湯        


黄今を加える

       

三黄瀉心湯

―→
悪寒

附子瀉心湯    


便秘なし・下部出血

       

黄連解毒湯

―→
胃痛・嘔吐

黄連湯

   


血虚

 


嘔吐・下痢

   

温清飲

  半夏瀉心湯

―→
腹鳴・不安

甘草瀉心湯
   


胃痛・寒

―→
噫気・嘔吐

生姜瀉心湯
    椒梅瀉心湯    

 

心下や胃部がつかえ重苦しい状態を心下痞硬と言い、心下の熱によって発生する。黄連、黄今の配合剤で清熱し瀉するため瀉心湯と呼ばれる。出血、炎症のとき心下や体に発生した熱を除くのが大黄黄連瀉心湯、三黄瀉心湯、黄連解毒湯で、清熱剤のみで構成されている。附子瀉心湯は三黄瀉心湯に寒の症状が見られるため附子を配合したものだ。血虚があれば四物湯との合方である温清飲を用いる。

上記は清熱剤に分類されるが、黄連湯に続く瀉心湯は和解剤になる。小柴胡湯で和解すべきところを下したため上部に熱が残り、下部(胃腸)は冷え、胃痛、嘔吐、腹鳴、下痢などを呈するものに用いる。熱を黄連、黄今で除き、寒を乾姜、桂枝、半夏で温める。黄連湯の桂枝を黄今に替えると半夏瀉心湯になる。半夏瀉心湯で腹鳴が強く、不安症状の生じたものには甘草を増量した甘草瀉心湯を、噫気や嘔吐の強いものに鎮吐作用のある生姜を加えた生姜瀉心湯を用いる。熱と寒が同時に同一の身体に混在し、またそれを寒薬と温薬を用いて、同時に治療するという漢方ならではの処方である。

 


【脾胃剤系】

   

小柴胡湯

 

香蘇散

   
   


往来寒熱

 


気鬱

   

安中散

←―
胃痛(寒)

半夏瀉心湯

―→

半夏厚朴湯

―→
食滞

平胃散
   


嘔吐・下痢

 


咽異物感

   

香砂六君子湯

←―
食滞・腹満

六君子湯

←―
脾虚

二陳湯

   


めまい・頭痛

 


胃腸虚弱

       

半夏白朮天麻湯

 

四君子湯

―→
微熱・疲労

補中益気湯    


胃寒・頭痛

 


脾胃陽虚

―→
血虚

十全大補湯    

呉茱萸湯

 

人参湯

       

 

消化機能の衰退や消化能力が弱いという素因があって発症するものに用いる。脾胃の虚には機能の衰退である脾虚と温熱産生が低下したり、寒を受けたために生じる脾陽虚がある。四君子湯が基本処方になり、主薬は人参で白朮や茯苓がこれを補佐する。嘔吐、胃のつかえ、消化機能を助けるため、半夏、陳皮を配合した六君子湯が繁用される。食滞や胃のつかえが顕著であれば縮砂、霍香、香附子などの芳香性健胃薬を加えた香砂六君子湯を用いる。胃が虚弱になると胃に水滞がおこり、胃気を十分升提できなくなる。それによって、めまいや動揺感、頭痛など生じたものが半夏白朮天麻湯である。さらに、冷えが絡み激しい頭痛の起こるものは呉茱萸湯を用いる。四君子湯からは補中益気湯や十全大補湯など多くの補益剤が作り出されている。四君子湯に陽虚が加わると乾姜で温補する人参湯を用いる。

六君子湯は二陳湯の加減方と見ることができる。二陳湯と香蘇散の加減から気鬱に用いる半夏厚朴湯ができる。これは咽の緊張により気滞が起こったもので、厚朴で緊張を緩め気を巡らせるものだ。厚朴は食滞を除くための平胃散にも配合されている。平胃散は安中散と共に一般用の漢方胃腸薬に繁用される。平胃散は食滞による胃のつかえ、嘔吐、悪心、胃痛、下痢、食欲不振に、安中散は寒冷による胃痛、胸焼け、腹満、食欲不振、下痢に用いる。この二つの処方を合方すれば守備範囲の広い優れた胃腸薬が得られる。

 


【乾姜・附子系】

   

四君子湯

       
   


脾虚

       
甘草乾姜湯

―→
疲労・冷え

人参湯

―→
頭痛・発熱

桂枝人参湯    


関節痛・筋肉痛

 


悪寒・四肢冷

      杞菊地黄丸
知柏地黄丸
麦味地黄丸
甘草附子湯  

附子理中湯

―→
水滞・悪寒

附子湯

  六味地黄丸
   


脱水・疲労

 


脾腎陽虚・水滞

 


肝腎陰虚

    四逆加人参湯  

真武湯

―→
腎陽虚
八味地黄丸
   


四肢冷(重症)

       
   

四逆湯

―→
四肢冷(最重症)

通脉四逆湯    

 

乾姜、附子ともに薬味、薬性は大辛・大熱(温熱数+4.0)で生薬の中でもっとも強力な温熱作用がある。陽が虚し、熱産生などの新陳代謝機能が衰弱したものを奮い起こす働きがある。体表の寒は桂枝、麻黄系で発表して治すが、裏の寒は乾姜、附子、人参で温補して治す。基本処方は甘草乾姜湯である。体内の湿が寒邪に犯され激しい痛みを引き起こしたものに附子、桂枝、白朮を配合した甘草附子湯を用いる。疲労が伴えば人参を加え人参湯とする。さらに頭痛、発熱など表証のあるものには桂枝を加えた桂枝人参湯を、悪寒や四肢の冷えが顕著であれば附子を加えた附子理中湯を用いる。四逆湯は甘草、乾姜、附子、3味だけの補陽剤である。疲労の激しいものには人参を加えた四逆加人参湯、冷えがさらに強く脉をとっても触れないほど衰退したときは、乾姜を増量した通脉四逆湯を用いる。

体内の水毒が寒に感受すると悪寒や四肢寒冷とともに関節痛や筋肉痛が起こる。虚状を帯び抵抗力も低下しているだけに重症化し易い。水毒を捌くために朮、茯苓を配合したものが附子湯で、さらに寒と水滞が消化管にまで及んだものを脾腎陽虚と言い、真武湯で脾胃と腎の双方を補陽して水を排除する。処方内容は異なるが腎の血流を増やし、陽気を助けて機能を改善するのが八味地黄丸で別名、腎気丸とも呼び、いくつもの加減方が用いられる。真武湯からの処方は次の利水剤系に繋がるものだ。

 


【利水剤系】

大青竜湯

←―
関節痛・喘咳

越婢湯

―→
浮腫(重症)

越婢加朮湯


煩躁・発熱

 


発熱・浮腫

   

小青竜湯

 

分消湯

  茵陳蒿湯


喘咳・浮腫

 


腹水・浮腫

 


便秘・黄疸

苓甘姜味辛夏仁湯  

五苓散

―→
浮腫・黄疸

茵陳五苓散


嘔吐・喘咳

 


吐気・悪心

―→
血尿・膀胱炎

猪苓湯

苓桂味甘湯

  茯苓沢瀉湯

―→
体表の水毒

防已黄耆湯


咳嗽

 


頭痛・めまい

   

苓桂甘棗湯

←―
のぼせ・動悸

苓桂朮甘湯   牛車腎気丸

茯苓甘草湯

動悸     八味地黄丸


下半身の冷え・水滞

     


腎陽虚

苓姜朮甘湯

←―
水毒(下部)

人参湯

―→
水毒・寒

真武湯

 

漢方の利水剤は所謂、利尿剤ではない。尿利があっても水の偏在があれば体調万全とはいかない。偏在する部位によって病態にも変化がみられる。利水剤の代表は五苓散で、消化管の水滞が組織へと移行しないために口渇、尿利減少が起こる。黄疸を伴うときは茵陳蒿を加えた茵陳五苓散を、血尿や尿路の炎症には猪苓湯を用いる。実証の浮腫には分消湯、熱のあるものには石膏を配合した越婢湯などを用いる。五苓散より水滞が軽度になると猪苓を去り甘草、生姜を加えた茯苓沢瀉湯になる。体表の水毒には防已黄耆湯を用いる。頭痛、めまいなどを治す苓桂朮甘湯は胃気を押し上げるために桂枝が増量されている。水毒による下半身の冷えには桂枝を去り乾姜を加えて対処する。のぼせや動悸に苓桂甘棗湯、水毒の影響が肺へと及んだものに苓桂味甘湯を用いる。

体内の水分は腎から尿として排泄され、肺と皮膚から蒸気として発散される。このため腎の水分代謝を促すことは肺機能を助け。肺や皮膚での発散を促すことは腎機能を助ける。苓甘姜味辛夏仁湯や小青竜湯は消化管や肺などを温めて、水毒を尿に排泄したり体表に発散させる働きがある。

 

BACK  NEXT