【食・薬相互作用】


互いに働きかけ、影響を及ぼすことを相互作用というが、医薬品相互作用とは医薬品と医薬品、医薬品と食品の飲み合わせにより、医薬品の効果が予想以上に強く現れたり、逆に期待した効果が得られなくなることを言う。つまり服用の組みあわせが火に油を注いだり、水を注いだりする結果になるのだ。相互作用は数多くのものが知られているが、3〜4種類を超えて配合する医薬品の相互作用については予測がつかないという医師も居る。服薬中の異変については細心の注意を払い、病状の変化とともに副作用も疑うべきであろう。病名や愁訴が重なると、たちまち4〜5種類の薬が処方され、10種を優に超えるケースも見受けられる。最近、12種類の薬を処方され、その副作用と思われる激しい口内炎の相談があった。お粥すら食べられないと訴える患者に対し、調剤薬局は「医師に相談してください」と言い、医師に相談すると「副作用ではない」と突き放す。医薬分業が機能しないとしばしば医療難民を生み出すのだ。ここでは、食と医薬品の相互作用に絞っている。食ならば個人の注意で容易に避けることができるし、またそうしなければならない。

相互作用でもっとも報告の多い食物や嗜好品は、アルコールと煙草で大半以上を占める。言い換えればこの2つさえ避ければリスクは半減するのだ。続いて、高蛋白食、牛乳、チラミンを多く含む食物(チーズ・ワイン・ビール・コーヒー・カジキ・ニシン・タラコ・スジコ・そら豆・鶏レバー・イチジクなど)、お茶・コーヒー(カフェイン含有飲料)、魚、ビタミン剤などのサプリメント、その他の食物などの報告がある。そして、相手となる医薬品は、中枢神経薬が断然多く4割近くを占め、次いで循環器官用薬と抗生物質製剤を加えた3つで7割になる。抗生物質製剤は細菌などの微生物の発育を阻害する薬であるが、中枢神経薬と循環器用薬は以下のように細分される。

中枢神経用薬

  • 全身麻酔剤
  • 催眠鎮静剤・抗不安薬
  • 抗てんかん薬
  • 解熱鎮痛消炎剤
  • 興奮剤・覚せい剤
  • 抗パーキンソン剤
  • 精神神経用剤
  • 総合感冒剤
  • その他の中枢神経用剤
循環器用薬
  • 強心剤
  • 不整脈用剤
  • 利尿剤
  • 血圧降下剤
  • 血管補強剤
  • 血管収縮剤
  • 血管拡張剤
  • 高脂血症用剤
  • その他の循環器官用剤
青色で表示している解熱鎮痛消炎剤と精神神経用剤で中枢神経用薬のほぼ半分、同じく血圧降下剤と高脂血症用剤で循環器用薬のほぼ半分の生産量を占めている。生産量から一概に相互作用の発生頻度を論ずることはできないが、一応の目安として知っておくに越したことはない。以下は、食品や嗜好品と医薬品の相互作用の表である。

 

食品・嗜好品

医薬品

相互作用

アルコール インスリン・トルブタミド・
グリベンクラミドなどの
糖尿病薬
血糖降下作用が強く現れることがある
トリアゾラムなどのベン
ゾジアゼピン系睡眠薬・
抗不安薬
作用が強まり、ふらつき、めまい、記憶障害などが
起こることがある
煙草 テオフィリンなどの
喘息薬
テオフィリンの代謝を亢進させ、血中濃度の低下が起こり
作用が弱くなることがある
高蛋白食 レボドパなどの抗パー
キンソン氏病薬
蛋白質の消化分解によって生じたアミノ酸と競合して、レボ
ドパの腸管での吸収を低下させ作用を弱めることがある
牛乳などの
高脂肪食品
グリセオフルビン・エト
レチナートなどの抗乾
癬薬
脂溶性薬品のため、食事の脂肪によって吸収が増加し
血中濃度も上昇、作用や副作用が強く現れることがある
腸溶性(腸で溶けるよう
に設計された)製剤
牛乳によって胃酸の酸度が低下し、胃で溶解してしまい
腸での吸収が減弱したり、胃を刺激して吐き気を催す
ことがある
メナテトレノン(ビタミン
K2)・インドメタシンファ
ルネシル(消炎鎮痛薬)
脂肪とミセル(コロイド状の集合粒子)を形成し、リンパ経由
での吸収が増大し、血中濃度が上昇することがある
粉ミルク セフジニル(セフェム系
抗生物質)
粉ミルクの中の鉄分と反応して赤色を呈するが、効果に
は影響がないといわれている
グレープフルーツ
ジュース
ニフェジピンなどのカル
シウム拮抗剤といわれ
る高血圧治療薬
グレープフルーツ中のある種の物質が薬物代謝酵素の働
きを阻害し、薬品の濃度を高め作用が増強される。それに
よって血圧が下がったり、ほてり、頭痛などの副作用が起
ることがある
チーズなどチラミ
ンを多く含む食物
サフラジン(抗うつ薬)
イソニアジド(抗結核薬)
薬によりチラミンの代謝が阻害され、体内のチラミン濃度が
上昇し、頭痛、腰痛、血圧上昇が起こることがある
カフェイン含有飲
料(コーヒー・緑
茶・紅茶など)
テオフィリンなどの
喘息薬
テオフィリンはカフェイン類似の中枢神経興奮作用を持つ
ため、作用が増強され頭痛、不眠などが起こることがある
コーヒー・コーラ ニコチンガム 口腔内が酸性に傾き、ニコチンの吸収が減弱することがある
マグロなどの
赤身魚
イソニアジド(抗結核薬) 魚肉中のアミノ酸であるヒスチジンが細菌によってヒスタミン
に変化する。次にイソニアジドがヒスタミンの代謝を阻害し
体内にヒスタミンが蓄積することで、顔面紅潮、発汗、悪心
嘔吐など起こることがある
食物繊維の
多い食品
ジゴキシン(強心薬) 吸収を妨げ、作用を減弱させることがある
カルシウム・マグ
ネシウム・アルミ
ニウム・鉄など
ミネラルを多く含
む食物
テトラサイクリン系抗生
物質・ニューロキニン系
抗菌剤
金属イオンとキレート(構造の隙間に金属イオンが結合)を
形成し、吸収が阻害され、作用が減弱することがある
納豆・ほうれん
草・ブロッコリー
クロレラなどビタ
ミンKを多く含む
食品
ワーファリン(血栓症
予防・治療薬)
納豆は腸内でビタミンKを産生し、野菜類にはビタミンKが
含まれる。血液凝固因子に働くビタミンKが、抗凝固作用
を持つワーファリンの作用を減弱させることがある
 
【参考図書】薬の正しい使い方 日本医師会編/飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用 

 

【アルコール】古来から「百薬の長」と言われているが「酒に呑まれる」と言う慣用句もある。ここでは後者についての話である。よく知られているのは酒で風邪薬や睡眠薬を服むと「薬が効きすぎる」ことや、逆に常習飲酒者で「麻酔が効きにくい」というものだ。アルコールとの相互作用はもっとも多く報告されている。アルコールは中枢抑制作用を持っているため精神安定剤や催眠鎮静剤などとの併用で中枢抑制作用が増強され、降圧剤では血圧降下が起こることがある。また、アルコールは薬物代謝酵素に対し阻害と亢進の両方向に作用し、代謝酵素を阻害すると薬物の作用を増強させる。アルコール常飲者については代謝酵素自体が亢進しているため、他の薬物に対しても代謝を促進し薬効を減弱させることがある。しかし、脂肪肝などの肝障害がみられる大量飲酒者では薬物代謝能力は低下している。アルコールについては酒類以外にも市販のドリンク剤などにアルコール量として一本あたり1.6gを含むものもあり、ビールに換算するとコップ半分くらいに相当する。アルコールがまったく飲めない人は特に注意を要する。薬を服用中であればアルコールの摂取は控えるか中止するほうが望ましい。

【煙草】酒と煙草の嗜みなくして男にあらずという時代もあったわけだが、禁煙については啓蒙がすすみ、現状は好ましい傾向になりつつある。煙草の毒性については言うに及ばず。その最たるものは精神的依存性である。煙草の煙には約4000種類の化学物質が含まれ、特にニトロソ化合物やベンツピレン及びその代謝産物には発癌性が知られている。妊婦であれば胎児への影響は避けられず危険性も大きい。煙草は単独であらゆる病気へ直接・間接に悪影響を及ぼすといっても過言ではない。高血圧、狭心症、脳血管疾患、消化性潰瘍、呼吸器疾患など枚挙にいとまがない。そして、煙草に含まれるニコチンなどの化学物質と他の薬物との相互作用は様々な影響が考えられている。主に薬物代謝酵素を活性化させることで薬物の作用は減弱する。表には喘息治療薬を例に挙げているが多くの薬物でこの傾向が報告されている。

【高蛋白食】栄養学で蛋白質の所要量は1人1日あたり71.4gを目安としているが、1970年代にはほぼこのレベルに達している。飢を脱し、カロリーが満たされ、なおかつ生活に余裕が生じると徐々に動物性蛋白質や脂肪の割合が上昇してくる。ふつう新薬は食後服用が多く、そのため食物の消化管停滞時間や吸収速度との関わりが生じ、薬物の代謝にも影響を及ぼす。

【牛乳などの高脂肪食品】牛乳の成分は普通牛乳100g中に蛋白質2.9g、脂質3.2g、糖質4.5gが含まれている。これを500〜1000ml飲むと脂質量で16〜32gにもなる。脂質の割合の高い食物下で脂溶性薬品の吸収は向上し、効果も副作用も強く発現することがある。薬による胃の荒れを保護するためにと、牛乳で服用する人もいるが、薬物によっては逆効果を招くことがある。また直接の相互作用ではないが、牛乳の多飲による鉄欠乏性貧血の報告がある。これは牛乳に依存し固形食の摂取が減少することが一因とされている。

【グレープフルーツジュース】グレープフルーツジュース中に含まれるフラボノイド類が薬物相互作用の原因であると考えられるが、別の研究ではフラノクマリン類ではないかとの報告もある。これらが薬物代謝酵素を阻害するため、薬物の濃度が上昇し作用が増強することがある。特にカルシウム拮抗剤という血圧降下剤との相互作用が知られている。グレープフルーツそのものとの相互作用は報告されていないので、濃縮加工されたジュースについて注意が要るものと思う。また他の柑橘類での相互作用は認められていない。

【チラミンを多く含む食物】チラミンを多く含む食物はチーズ、ワイン、ビール、コーヒー、そら豆、鶏肝、イチジク、ニシン、サラミ、ソーセージ、カジキなどがある。チラミンはアミノ酸であるチロシンから脱炭酸酵素によって生成される物質で、ノルアドレナリンを遊離し交感神経を興奮させる。ノルアドレナリンやアドレナリンの量はMAO(モノアミンオキシダーゼ)によってコントロールされているが、サフラジンやイソニアジドなどのMAO阻害作用のある薬を服用すると、MAOの働きが抑制され交感神経が興奮状態になる。そこにチラミンを含む食物が大量に供給されると、さらに交感神経が異常に興奮し、血圧が急激に上昇することがある。MAO阻害作用と関係はないが、エフェドリン(喘息薬)などの交感神経興奮薬とチラミンの相互作用で交感神経興奮作用が増強し頭痛、胸苦しさ、血圧上昇などが見られることがある。酒宴ではチーズ、サラミ、ワイン、ビールなどが並び、さらに飲酒によるアルコールとの相互作用も考えられる。

【カフェイン含有飲料】緑茶、紅茶、ウーロン茶など茶葉中のタンニンは鉄と不溶性の塩を形成し鉄の吸収を妨げると言われてきた。タンニンは野菜や薬草など植物中に広く含まれるものであるが、現在では鉄の吸収に影響はないとされ、医学・薬学の教科書や添付文書からも鉄剤と緑茶の併用禁止は削除されつつある。さて、ここで問題にするのはカフェインである。茶葉、コーヒー、栄養ドリンク、清涼飲料水、市販の風邪薬などはカフェインを含有し、各々10g中、玉露で160mg、煎茶で20mg、番茶で10mg、紅茶50mg、コーヒー40mg、栄養ドリンクで1本あたり50mgなどとなっている。医薬品としてのカフェインの常用量は1日200〜300mgで玉露2杯で1日分を超えてしまう。これらの飲料を多量に摂取すると他の中枢興奮薬との併用で作用が増強されることがある。精神安定剤や睡眠薬などを服用中であったり、不眠やストレス症状があれば、カフェインを含有する飲料は控えるか中止するほうが望ましい。カフェインの過剰投与による副作用として不眠、不安、精神興奮、感覚障害、骨格筋緊張、振戦、頻脈、呼吸促進がみられ、妊婦であれば分子量が小さいため容易に胎盤を通過し、胎児に移行する。胎児のカフェイン代謝能力は母体に比べ未熟であるため、体内に蓄積され副作用も増幅される。業界関係者は、お茶には「テアニンやビタミンCが多い..」、「1日10杯飲めばがん予防効果がある..」と宣伝に余念がないが、カフェインのことに触れないで売り込む姿勢は、完全食品と嘯く牛乳業界に似ていなくもない。利点や欠点を知った上で利用しないとその特性も生かせないし、思わぬ被害を蒙ることがある。

【赤身魚】赤身魚、白身魚、青魚などの明確な分類があるわけではない。身が赤いか白いかで赤身魚と白身魚という2種類に分類され、赤身はミオブロビンの色になる。サケ、マスは赤身とは別物のアスタキサンチンというカロテノイド系色素なので、分類は白身魚になる。青身魚は皮にメラニン系色素を含むもので身は赤身の場合もある。赤身魚はヒスチジン含有量が高く700〜1800mg/100g(白身魚は数mg〜数10mg)あり、これが腐敗する過程で細菌によって脱炭酸されヒスタミンに変化する。マグロ、ブリ、サバ、サンマ、イワシ、アジの順でヒスチジンを含有するが、分解物のヒスタミンは鮮魚からは検出されない。傷んだものや干物、缶詰などの水産加工品ではヒスタミンが検出されているので、アレルギー性の人は注意が必要である。イソニアジドなどMAO阻害剤を併用するとヒスタミンの代謝が阻害され、ヒスタミンが蓄積し、顔面紅潮、発疹、蕁麻疹、悪心、嘔吐、発汗、動悸、全身倦怠などの中毒を起こすことがある。

【ミネラルを多く含む食品】テトラサイクリン系の抗生物質やニューキノロン系の抗菌剤はカルシウムと結合するとキレート(構造の隙間に金属イオンが結合)を形成し吸収されず、便中に排泄されてしまう。このような薬物の服用量はキレートを形成し吸収が低下する量を想定して決められているので、食事中にカルシウムが特に多くなければ、食後に服用しても薬効への影響は少ない。しかし、牛乳やヨーグルトやカルシウムのサプリメントなどを同時に摂取すれば影響は避けられない。

【ビタミンKを多く含む食品】「納豆を食べないように!」という服薬指導はあまりにも有名である。ワーファリン(一般名:ワーファリンカリウム)という薬は血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防のために用いられる。蓄積性の血液凝固阻止作用があるのでネズミに少しずつ連続して与えると、ネズミは出血を起こし死に至る。このような死に方はネズミに警戒心を与えないので殺鼠剤としても利用されている。血液の凝固因子であるビタミンKの働きを阻害することで血液の凝固を防ぎ、使用量が増せば出血を引き起こす。これと納豆、野菜などを併用するとビタミンKが増え、ワーファリンの薬効が減弱することがある。納豆の摂取を禁止するケースが多く、ビタミンKを多く含むブロッコリー、ほうれん草、キャベツなどの野菜については適量が許可される。またクロレラなどのサプリメントも効果を減弱させる。逆に「血液サラサラ...」を謳う薬やサプリメント、漢方薬などとの併用では出血傾向が増すことがある。ワーファリンは多くの薬物や食品と相互作用を持つため、生活のクオリティーまで低下しやすい。代わりになる薬が何かないものだろうか。

* * * * *

食物が薬物の吸収に及ぼす影響は、1)reduced(薬効の低下)、2)delayed(薬効の遅延)、3)not affected(薬効に影響なし)、4)increased(薬効の増大)の4群に分類される。これには食事による胃内PH(酸性度)、消化管の運動、消化液の分泌、消化管の血流が関与すると考えられている。制酸剤の炭酸水素ナトリウムと抗生物質のテトラサイクリンの併用で、胃酸のPHが低下し吸収が50%近く抑制されたという報告がある。ジュースは酸性であることが多く、これで塩基(アルカリ)性の薬物を服用すると薬効が減弱する。食物はその温度や性状で胃内排出速度に差が生じる。体温程度の流動食は、固形物に比べ胃からの排出が早く、油脂や糖分などは排出速度が遅延する。一般に空腹時服用のほうが胃内排出速度が速いが、空腹時の胃内の薬物濃度が高くなり胃を荒らすことがある。吸収が腸管上部に限られているリボフラビン(ビタミンB2)は、空腹時に服用すると一度に多量が腸管に達し十分吸収されないまま通過するため、食後服用し食物とともに徐々に吸収されるほうが効率が良い。近年注目されるようになった食物繊維は血糖値上昇抑制作用や血中コレステロール降下作用があり、特に可溶性の食物繊維は食物中の一部の脂肪や腸内に排泄されたコレステロールを含む胆汁酸を吸着して、糞便と共に体外へ排出すると考えられている。このため高脂血症や糖尿病の治療に食物繊維が使われているが、この吸着・排出作用が逆に、薬の吸収や血中濃度に負の影響を及ぼす懸念がある。強心剤のジゴキシンは食物繊維との同時摂取により、有効血中濃度が低下し、薬効が低下することがある。食物繊維のサプリメントを服用する場合は時間を空けるなどの工夫が必要であろう。

【薬草・薬相互作用】

薬 草

医薬品・食品

相互作用

ガラナ キサンチン誘導体 ガラナはカフェインを3〜5%含有することから、カフェインを
多量に含む食物やドリンク剤およびカフェインと類似構造の
テオフィリン製剤と併用すると頭痛や嘔吐などの副作用を
起こすことがある
イチョウ葉 MAO阻害剤
(イソニアジド)
(サフラジン)

チラミン含有食物
(チーズ)

MAO(モノアミンオキシダーゼ)阻害作用のある薬を服用する
と、MAOの働きが抑制され交感神経が興奮状態になる。
イチョウ葉のフラボノイドはMAO阻害物質として知られており
MAO阻害薬やチーズなどに含まれるチラミンとの相互作用
によって頭痛や高血圧などの副作用を起こすことがある
血栓予防剤
(ワーファリン)
血小板凝固抑制作用があり、併用すると出血傾向が増強
する
セントジョンズワート
(西洋弟切草)
気管支拡張剤
(アミノフィリン)
フェニトイン製剤
(アレビアチン)
カルバマゼピン
(テグレトール)
フェノバルビタール
製剤(フェノバール)
血栓予防剤
(ワーファリン)
強心剤
(ジゴシン)
抗不整脈剤
(リスモダン)
免疫抑制剤
(シクロスポリン)
タクロリムス水和物
(プログラフ)
セントジョーンズワートにはある種の薬物代謝酵素を増加
させる作用があり、そのため薬物の分解が促進され、薬物の
作用が減弱するおそれがある。しかし、セントジョーンズワート
を急に中止すると、逆に薬物代謝酵素が減少し分解が抑制
される。そのため薬物の血中濃度が高くなりすぎ、副作用の
危険性が生じるので徐々に減量するか、最初から併用しない

※薬草の中では特に広範で多種の相互作用が知られて
  いるので服用には十分な情報収集が欠かせない

抗HIV剤 薬物代謝酵素の増加により、血中の薬物濃度が低下し
HIV抑制作用が減弱されることがある
経口避妊剤 避妊効果が得られないことがある
抗うつ剤
(フルボキサミン)
抗うつ剤
(ミルナシプラン)
片頭痛治療剤
(スマトリプタン)
パーキンソン病
治療剤
(セレギリン)
併用すると脳内のセロトニンの作用が増強され、セロ
トニン症候群(落ち着かない感じ・下痢・ふるえ・発熱・
発汗・意識障害などの症状)という重大な副作用が
起こることがある。併用を禁止する
ニンニク 抗凝固剤
(血栓防止薬)
大量に摂取すると、出血傾向が強まることがある
抗ウイルス剤
(サキナビル)
ニンニクの成分が薬物代謝酵素の働きを誘導することで
サキナビルの分解が促進され効果が減弱する
西洋カノコソウ 精神安定剤 作用が増強される
麻黄 交感神経遮断剤
中枢神経興奮剤
MAO阻害剤
エフェドリンが含有され、米国では心臓発作などの副作用
が相次ぎ販売禁止となっている。
交感神興奮作用や中枢
興奮作用により血圧上昇、動悸、不整脈、不眠などが起こ
り、併用薬の作用が増強することがある
甘草 副腎皮質ホルモン 甘草の成分であるグリチルレチン酸は副腎皮質ホルモンに
類似した作用を持つため、併用により作用が増強され
偽アルドステロン症(高血圧、低カリウム血症、ミオパチー、
浮腫など)を起こすことがある
チアジド系利尿剤
(フロセミド)
利尿作用を抑制し、カリウムの排泄は促進され低カリウム
血症を起こすことがある

 

しばらく前まで、薬草や漢方薬には副作用も悪しき相互作用もないとされてきた。あってもそれは証の不適応で、未熟な技(わざ)が引き起こすものだった。悪しき作用はないが、生薬の配合により相乗的に薬効は発揮され、それが漢方処方の利点であると専門家は言い続けてきた。漢方が拠り所とする「証」は、技(わざ)や勘の域こそ広いが古い時代においては、再現性と客観性を備えた診察方法であった。臨床経験と観察によって生薬の薬理と病態を関連付けた医の文化でもある。なんらかの作用を持つものは良きにつけ悪しきにつけ反応を引き起こすだろう。薬効があるものなら、漢方家の言う「証」を無視して投与しても、水より有意差がなければならない。漢方は二重盲検法には馴染まないと、いつまでも技(わざ)を死守し続けるのも限度がある。漢方支持派は薬効を評価し副作用を軽んじる。漢方懐疑派は副作用を重視し薬効を軽んじる。

1991年の「医薬品副作用要覧」で漢方製剤によると思われる24例の副作用例が報告された。そのうち12例は偽アルドステロン症で、これらは甘草を含有する漢方薬の複数使用や、フロセミド、チアジド系利尿剤、グリチルリチン酸(甘草抽出物)系薬剤の併用によるものだった。その他の副作用は、発疹などの皮膚障害7例、軽い嘔気、便秘などの消化器障害であった。その頃、肝機能障害の治療に繁用されていた小柴胡湯による肝機能障害4例がモニター報告された。この因果関係について再投与試験、肝生検、LST(リンパ球幼若化)試験がなされ、以後「使用上の注意」に肝障害が記載されるようになった。やがて小柴胡湯によって間質性肺炎が報告され、1991年から使用上の注意の「副作用」の項にこのことを記載し、1992年12月には「一般的注意」にも記載された。さらに、インターフェロンと小柴胡湯の併用例で間質性肺炎が報告されたため、1994年1月にはインターフェロンとの併用が禁忌とされた。にも関わらず副作用は後を絶たず、1997年3月、新聞等で「漢方薬・小柴胡湯の副作用で死者10人」という報道が繰り広げられた。これを境に、売り上げ額のトップを維持していた小柴胡湯はいっきに陥落し、漢方薬のブームにも陰りが射し始める。漢方薬にも副作用があることを衆人に知らしめた事件であった。薬効成分を含むものや薬理作用を持つものは、体になんらかの影響を及ぼし、食物でさえ相互作用が起こるのだ。薬草については、いまやっと研究が始まったばかりと言っても過言ではない。「副作用はありません」「相互作用の心配はありません」「医師に相談してください」このような服薬指導が日常茶飯事であっては、医療の隙間を埋めることはできない。

 

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