【Topic(健康)】


酒に弱い体質

血液ドロドロと血液サラサラ

カイロプラクティックの副作用
コレステロール値
煙草のススメ
気功と気の存在
下腹部痛とオケツ
宿便と腸管洗浄
冬はなぜか鬱々と...

 


酒に弱い体質

大学では新入生がひしめくシーズンになると、歓迎の酒宴が催される。そこでの無念なまでの飲酒事故は後をたたない。学校側の啓蒙・警告があっても...「自分が飲めるから、、」「誰でも飲んでいるから、、」などと言う理由でハイペースで飲んだり飲まされたりする。単に酔わせるのが面白いからと強要するならそれは犯罪に等しい。酒に寛容な世の中や考え方は健全とはいえない。人に個性があるように体質にも個性があり運動能力も代謝能力も差異があるのは当然のことである。元々、アルコールを代謝する酵素が欠如した人や欠如していても訓練で飲めるようになった人は、アルコールの体に及ぼすダメージは大きいと考えたほうが良い。年配の人の話では、「酒、煙草を嗜まずして男に非ず」と言われた時代があったらしい。

厚生労働省の研究班によると、アルコール(エタノール)の代謝には、アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)が関与している。日本人の4割はこの酵素遺伝子が非活性型で、少しの飲酒でもすぐ顔が赤くなるが、飲酒習慣があるとALDH2が非活性型でも顔が赤くなりにくくなるため、本人は酒に強いと思い込んでいるケースが多いという。この検査法としてパッチテストがあるが、人によっては皮膚に赤みが出にくく精度も低くなるなどの問題があった。

そこで研究班は、「現在」と「飲酒開始から1〜2年間」の二つの時期で、少量飲酒により顔が赤くなるかを尋ねる問診法を開発。40〜79歳の男性に質問を行い、ALDH2の遺伝子解析結果と比較し酒に対する感受性を調査した。すると飲酒開始頃の問診を追加したほうが判定の精度が向上することが判った。研究の詳細は省略するが、それによって質問紙が作成された。過去の飲酒、とりわけ「酒を飲み始めた頃どうだったか?」と、ふり返ってみれば、赤くなったり、すぐに酔ったり、悪酔いの経験がある人は、残念ながらアルコールを代謝する酵素が上手く働かないタイプかも知れない。くり返し飲酒することで酒が飲めるようになった人が、病気などを機に完全に酒を断つケースがある。そのような人は飲酒を再開しても少量のアルコールで酔いが回るという初期症状を踏襲することになる。

血液ドロドロと血液サラサラ

健康情報を扱うテレビ番組や雑誌などですっかり慣れきった感じがしないでもない。アルカリ体質、酸性体質などの用語も似たようなものであろう。最近では医療現場の医師も患者への説明に用いる事があり、○○先生から「あなたの血液はドロドロです...」と言われたという話もしばしば耳にするようになった。薬や健康食の販売員に於いては、さも当然かのように「ドロドロ」「ベタベタ」などという言葉を用いている。

私がテレビで見たのは、格子の隙間を通りぬける赤血球や白血球、血小板などの映像であった。今まで軽々と通り抜けていた血液がある食物を摂取すると、たちまち通りが悪くなり格子にぶつかってしまう。さらにそのような血液が、ある健康食品や食物の摂取で再びスムーズに通り抜けられるようになる。見る限り説得力のある映像であった。この映像を見た人は早速、その日から健康の為の購買行動へと駆り立てられていく。薬屋の棚からは薬草が、食品店からは食品が消えて無くなるほど売れ尽くす。

映像で見せ付けられると説得力は高まる。生体はホメオスターシス(恒常性)といってさまざまな環境の変化に対応して内部状態を一定に保ち生存を維持する働きがある。そのなかには当然、血液の性状の恒常性も含まれる。映像ほど顕著に、簡単に性状が変化するなら大変なことになりそうな気がする。この危機感を抱かせることが目的の器械なのかも知れない。これはMC-FAN(MicroChannel array Flow ANalyzer)という検査機器で、既に取り入れている医療機関もあるらしい。しかしこの器械で見せ付けられる映像の状態と疾病のリスクに関しては、未だ充分な研究や文献データーが得られていないと言う。その日の体調によっても、性差によっても容易に変わりうる血液サラサラ映像なのだ。これを見ただけでリスクを妄想していると言えなくもない。信頼に足る研究成果のもとで広く用いられる器械なら、大概の医療機関に備えられているだろう。しかし、最先端の器械、珍妙な器械はその価格や性質上、まさに希少である。いずれも慎重に見究めなくてはならない。

カイロプラクティックの副作用

近年漢方の副作用は時々取り上げられ、メーカーからも注意を促す文書が届くようになった。優れた点ばかり吹聴していては真実の情報とは言えない。むしろ欠点をさらけ出すことによって生まれる価値もあるのだ。医療に於いては欠点以上の利点を選択の拠り所とする。そのための情報の提供は専門家の役割であり、拒んではならない義務でもある。文章にすれば、ごもっともであるが現実にはなかなか思うに任せないものである。

代替医療は副作用が無いか殆ど無いというのが最大の「売り言葉」である。有効性は二の次の問題である。ここでとり上げるのは代替医療の中でも手技系のカイロプラクティック(整体)である。鍼灸、按摩、マッサージなど体を操作する療法には一見して副作用などなさそうに思える。またその副作用の報告が大きく報じられることも少なかった。鍼灸や按摩の数日後に体が強張るという話は知っていた。これは恐らく内出血によるオケツが原因だろうと考えられる。カイロプラクティックについては2003年のアメリカの調査で首を左右に捻る手技で脳卒中を誘発する恐れあり、という報告がなされた。

若い人の脳卒中の原因のうち、首の動脈が裂ける(椎骨動脈解離)タイプのものが2割弱を占めるとされる。急に首を捻ったとき、例えば、ゴルフの球を打った直後に球の行方を追ったり、カイロプラクティックで首を捻る手技によって脳卒中が起こったという報告がある。このようにして脳卒中を起した男女(平均年齢約42歳)の調査で、発症1カ月以内にカイロプラクティックの手技を受けた人の多いことが判明した。もともと椎骨動脈の解離があり、それが原因で首や頭の痛む人が、カイロプラクティックで治そうと手技を受けたケースも考えられるが、統計的に数字を補正しても、カイロプラクティックが椎骨動脈解離のリスクを6.62倍増やす計算になるという。画像などの検査手段を欠く問診、触診だけでは実際体の中で何が起こっているのか解らない。流派によって手技の方法は違っているが、音を立てるほど激しい手技については冷静に検討して見るべきかも知れない。またカイロプラクティックなどの治療のあと、首や頭がひどく痛むようであれば、医師への受診を求めるべきである。

コレステロール値

生活習慣病の目安となってしまった感がある。心臓病や高血圧を回避し、できるだけ健やかにという願いの指標でもある。この数値を努力目標に掲げ、食や運動、薬や健康食品の摂取に躍起になり、検査に一喜一憂する。いつの間にか健康よりか数字をクリアするのが目的や喜びに変わってゆく。この数字は一体どのように決められるだろうか?これは動脈硬化学会の作った高脂血症治療ガイドラインに基づくもので、臨床試験を経て改訂されているのである。

臨床試験の信頼度は5段階に分けられ、ランクがもっとも高いレベル(T)はランダム化比較試験であり、もっとも低いレベル(X)は専門家の意見とされている。従来の高脂血症ガイドラインは最もレベルの低い根拠に基づいたものであった。その数値が220mg/dlである。つまりこの数値は専門家とされている人々が話し会い(談合?)で決定したものであった。そして、2001年脂質管理目標値という言葉で新たな数値(240mg/dl)に引き上げる案が出された。この数値は日本における最新の大規模試験(5万人規模)の結果を受けてのものである。この後、ハワイに住む日系人の血中総コレステロール値と死亡率との関係を調べたものが発表された。それによると、71歳以上の場合は血中総コレステロール値が低いほど死亡率が高いという結果で、85歳以上の高齢者でも血中コレステロール値が低い方が短命であるという結果であった。これが若年者に適用できるかどうかは不明だが、少なくとも高齢者においてはコレステロール値が高いと言って早急に下げる必要もない。

このような報告があるのに、相変わらず200mg/dlを切るようにと説明し、投薬を続けている医師を見かける。深い読みがあってのことと思うが、製薬会社にとっては貴重な存在である。

煙草のススメ

私は喫煙者に「煙草を止めて...」などとは言わない。むしろ、どんどん吸っていただき、その結果喫煙者人口が減少し、生活環境の良くなることを祈っている。したがってこの項目は喫煙者に対するものではなく、非喫煙者が煙草の害を回避するためのものであることをお断りしておきたい。

* * * * *

ひも付きでない学者の公平なリスク評価で、危険度NO1は煙草において他ないと断言できる。どうして、あそこまで無神経に傍若無人に煙を撒き散らすことが出来るのだろうか?普通の人ならば当然持ち合わせているであろう「迷惑かも?という遠慮」さえ喫煙者にはない。煙草に関する限り冷静を保って述べることが出来ない。いくぶん感情的になることをお許し願いたい。

煙草中毒者に忠告する事の一つに「本数を減らせ」というのがある。煙草は肺癌のほか胃癌や肝臓癌、頭頚部癌、膵臓癌など様々な癌にかかるリスクが高く、その他の疾病を誘発するものである。だからこそきっぱり止めるべきなのだ。愛着のある嗜好品だからと減煙を勧めても、そこは中毒者の中毒者たる面目躍如、本数は減らしても、よりフィルターに近いことろまで吸ったり、深く長く吸い込んだりするので意味がないという。中毒者の弁明に「体を悪くしてまで税金を払っている」と言うのがある。もちろん冗談であろう。払う税金以上の医療費がかかることを知らないのだ。その医療費は非喫煙者も払っているし、煙草によって非喫煙者の健康も蹂躙する二重の罪を犯しているのである。このまま煙草対策が為されないなら煙草関連死は21世紀中には20世紀の10倍(10億人)に達すると言う。

中毒者のほぼ半数が煙草関連の病気で死亡している。そしてこの結末は、喫煙開始から数十年遅れて出現する。2000年現在の煙草関連死は1970〜80年頃からの喫煙が影響していることになる。アメリカでは中毒性のある危険なものを販売する煙草会社を相手に訴訟も起こっているが、例え金をせしめたところで失った健康は戻らない。そして、自らが非喫煙者を蹂躙した罪はどのようにして償うのだろう?私は、こういう人々に対する不快感を隠しきれない。

煙草の害は最早周知の事実。滔々と述べ続けても収拾はつかない。せめて非喫煙者が、この毒物から身を守るために嫌煙(または憎煙)を主張し中毒者の蹂躙から逃れるしかない。煙草の議論で健康に対する危険性は随所で指摘されるが、ただこれだけで終わるわけにはいかない。社会的、文化的、、、諸々の地点からの考察を重ねるとより真実が見え説得力を増すであろう。参考までに以下、ネットで見つけた文章を紹介する。出所を明らかにすれば引用・転載を許可する旨の記載があったので敢えて全文を引用。

---以下引用---

【JTがひた隠す「たばこ情報」】:保坂義久・北健一

「たばこが体に悪いって? それはわかっているよ。でも一服つけるとほっとするし、ストレス解消になるし・・・」。スモーカーの気持ちはそんなところだろうか。いまどきたばこの害を認めない人はまずいない。けれどもどのような害があるか、詳しいことは意外と知られていない。「たばこがまずくなるようなことは聞きたくない」というスモーカーの態度のためもあるかもしれないが、大きな原因はたばこ会社がリスク情報をひた隠しにしていることにある。

アメリカでは、たばこ会社がたばこの危険性を熟知しながら嘘をついてきたことが内部告発者(インサイダー)によって赤裸々に暴かれた。WHO(世界保健機構)の今年の世界禁煙デースローガンは「Tobacco Kills Don't be duped」、直訳すると「騙されるな、たばこは人殺しだ」だった。私たちは騙されていないだろうか。

(ディーゼル車の排ガスより危険)

メーカーが自社製品のリスクについて研究するのは当然のことだろう。専売公社/JTは二通りの仕方で「たばこの害」に関する研究を蓄積してきた。ひとつは自分たち自身による研究であり、もう一つは外部への委託研究である。前者は秘密のベールに覆われており、JTはそうした研究の存在自体を認めないという態度をとっている。今回私たちは、委託研究の成果の一部を入手し、研究者の協力を得て多角的に検討した。以下はそのエッセンスである(詳しくは禁煙ジャーナル編『たばこ産業を裁く』〈実践社〉、とくに保坂ほか「JTの秘密ファイル」と林俊郎「肺がんの流行と医学界の功罪」を参照していただきたい)。

JTは1986年に喫煙科学研究財団という財団法人をつくり、そこが全国の大学や研究機関に対する研究の委託をコーディネートしている。委託研究への助成は年間160件、助成金の総額は3億5000万円にのぼる(先頃WHOが、JTが金を渡した研究者を使って国際会議に不正工作をしようとした旨告発した。JT側は全否定したが、これも財団を通じた委託研究と関係があると思われる)。財団による委託研究の成果は毎年『喫煙科学研究財団研究年報』という本にまとめられ、財団設立10周年には『喫煙科学研究 10年の歩み』という本も出されている。ともに非売品で、なぜか普通は財団に行っても見せてもらうことさえできない(ただし年報は国立国会図書館には納本されている)。

そうした委託研究ではどんなことがわかっているのか。交渉の末に財団から提供してもらった『喫煙科学研究 10年の歩み』から、まず「喫煙とがん」との関係について研究のごく一部を紹介しよう。

埼玉医科大の竹本和夫氏は「喫煙と肺癌およびその他の癌」という論文でこう書いている。「竹本らは肺腫瘍嫌発性マウスを用い、妊娠中、皮下、腹腔内および吸入により、肺発癌物質であるウレタン、ENUを投与し、これに喫煙暴露を負荷して肺腫瘍発生を比較した。喫煙はイニシエーターとしての作用は不確実であるが、プロモート作用は明確であり、同時に実施したディーゼルエンジン排ガスより強い発癌作用を示した」。

マウスを使って、「喫煙」=たばこの煙と「ディーゼルエンジンの排ガス」とどちらが「プロモート作用」(がん化を促進する作用)があるかを比較した動物実験の結果、たばこの煙の方がプロモート作用が強いことがわかったということだ。

慢性気管支炎の原因にも呼吸器疾患に関してもみておこう。順天堂大学医学部の高橋英気・吉良枝郎両氏は論文「喫煙と呼吸器疾患」で、「喫煙の健康に及ぼす影響については長い研究の歴史がある。そして喫煙が肺癌などの悪性腫瘍、虚血性心疾患、慢性呼吸器疾患などの主要な原因となりうることが証明されてきた。現在少なくとも先進国と呼ばれている国々では、これらの疾患を単独で予防しうる最大の病因は喫煙であるといわれている」と書いている。これは「たばこの害」を概括的に説いたものだが、高橋氏らは次のような病理学的研究も紹介している。

慢性気管支炎という病気は、「喀痰を伴った咳が三カ月以上、しかも二年以上の期間にわたって反復するという臨床所見にもとづいて定義される」。しつこい痰(たん)が喉に絡み咳がつづくということだが、たんの増加は病理学的には「気管支粘膜腺の腫大と対応する」。そこで山中氏らは、喫煙によって気管支腺組織にどのような影響があるのかを評価したところ、喫煙者の方が非喫煙者にくらべて腺組織が大きかった。これは、「喫煙刺激が気管支腺組織の肥大をもたらし、気道分泌亢進の一因となることが病理学的にも確認された」ことを意味する。

喫煙科学研究財団の委託研究には「受動喫煙の害」を否定したり「たばこの益」/ダイエットにいいとかアルツハイマーを予防するとか、はたまた「たばこに抗がん成分が含まれている」!などなど.../を強調するといった多くの問題がある。だがそれでも、喫煙の健康リスクを隠し通すことはできない。アメリカのたばこ会社が危険性をうち消すために始めた研究で、有害性や依存性を示す証拠が次々に見つかったこととよく似ている。

(JT社内での秘密研究)

JT社内ではどのような研究をしているのか。同社広報部に質問すると、広報部林田主任は、「喫煙と健康に関しての研究というのはJT自体でやってはおりません。JTでやっている研究といいますと、やはり味であるとか製品についての研究ということになります。JTでやっても『たばこの会社』だということでなかなか信じていただけないというようなこともありまして、健康影響に関しては喫煙科学研究財団で外部に委託して中立な形でやっています」と答えた。「JTが危険性を示すデータを隠し持っていることはありませんか」と聞くと、林田主任は「もしそんなものがあったら、私どももこんな風にプカプカ吸えないですよ」とも語った。

ところがこれは嘘だった。JTはまさにそうした研究成果を膨大に隠し持っていたのだ。専売公社が編集・発行した『たばこ専売史』第三巻(1964年刊)には、「喫煙科学」という名のリスク研究が1935年にはじまり52年に「本格的な研究」になったと明記されている。大蔵大臣の諮問機関「専売事業審議会」が1971年に出した答申でも、今後の課題として「喫煙と健康に対する影響については、公社内の研究および委託研究を拡充し・・・その成果を公表(する)・・・必要がある」と提言されている。

そしてJTのホームページには、横浜にあるJTの中央研究所では「喫煙科学の研究」がおこなわれていると明記されている。横浜の研究所が専売公社からJTにひきつがれたように、たばこの有害性(健康影響)の研究もJTにひきつがれたのだ。

どうしてJTは現におこなっている研究を「やっていない」と言ったのか。広報部に再び質問すると、今度は「専売時代に一部内部で研究していたのは事実ですね。資料は当社が引き継いでいますが、それも整理がついていないような状況で。決して隠しているわけではありません」(林田主任)と回答を変えてきた。「隠していない」とはいっても、JTがそうした資料を公開したことは一度もない。

(米・研究員の内部告発)

JTがいかなる情報を隠し、研究所でなにがおこなわれているのか。すべては秘密のベールに包まれている。だが、アメリカのたばこ会社の場合には、勇気ある内部告発者の手によって貴重な情報が明るみに出された。

5月31日の世界禁煙デーを前に、アメリカたばこ会社の一連の内部告発者(インサイダー)の先駆けとなったフィリップ・モリス元研究員ビクター・デノーブル博士が来日し各地で講演した。招いたのは「STOP!未成年の喫煙実行委員会」(宮崎恭一事務局長)だ。薬物依存(drug addiction)の専門家であるデノーブル博士の話は、たばこ会社が真実を隠し人々を騙していることを明らかにするものだった。

デノーブル博士が世界一のたばこ会社フィリップ・モリスに雇われたのは1980年、ニコチンにかわる依存性薬物をふくんだ、いわゆる「安全たばこ」(ニコチンのたばこと違って心臓に害がないけれども依存性はちゃんとあるもの)を開発する研究のためだ。

与えられた研究室は不思議な部屋だった。フィリップ・モリスの研究所はすべてガラス張りなのに、その部屋だけ真っ黒な壁で囲まれ外部からいっさい遮断されていたのだ。デノーブル博士はそこで、ネズミを使ってたばこに含まれるニコチンの依存性を調べはじめた。

ネズミがスイッチを押すとポンプが働いて、薬物が脳に達する装置を使って実験した結果、30日たつとネズミたちは(人間でいえば)1日に90本分のニコチンを脳に入れるようになった。「ニコチンによって脳の働きが変わった(braine changes)」のだ。

会社にとって危険な真実を明らかにしたデノーブル博士は守秘契約を結ばされた上で解雇された。その時密かに持ち出した実験記録(document)も、会社側に取り戻されてしまった。会社が雇った人間につけ回され、脅迫電話も受けたが、彼は屈しなかった。1994年4月、7つのたばこ会社の幹部たちが連邦議会で「ニコチンに中毒性はない」などと証言したことに対し、それが偽証であると証言したのだ。

博士の、そして後に続いた研究者たちの勇気ある証言は、たばこの危険性・中毒性を知り尽くしながらデータを隠し喫煙者を欺いてきたアメリカたばこ帝国の「終わりの始まり」となった。たばこ訴訟の流れは変わり、たばこ会社自身が喫煙の発がん性や依存性を認めるようになった。

デノーブル博士は東京での記者会見で、私たちの質問に答え、「アメリカでも、たばこ会社は内部の研究と委託研究を両方やっていますが、トップシークレットに属する研究は会社の内部でやっています」と語った。隠さなければならない研究は内部でやっているというのである。黒い壁に囲まれた部屋でニコチンの中毒性に関する実験をしていた研究者の「証言」だけに説得力がある。

(情報隠しを容認する大蔵省)

日本のたばこ会社だけが社内でリスク研究をしていないというJTの主張は崩壊したといっていい。最後にだめ押しで、たばこ事業の監督官庁である大蔵省に見解をもとめた。すると同省たばこ塩事業室は、「たばこ産業株式会社法(JT法)で専売公社の権利・義務のすべてをJTが引き継ぐことになっており、専売公社の研究成果も同社が引き継いでいます。JTもたばこ会社ですから、当然健康影響に関する研究を内部でやっていると思いますよ」(手持総括係長)と答えた。つまり、JTは専売時代からの膨大なリスク研究を隠し持っているだけでなく、現在も密かにリスク研究を続けていると大蔵省が告白したのである。

「では大蔵省からJTに、たばこのリスク情報の公開をもとめる考えはありませんか」と聞くと、「法的根拠がないので情報公開を指導することはできません。JTが持っている情報については、公開した方が得だと考えれば公開されるでしょうし、隠した方が得だと考えれば公開されないという、経営上の判断かなと」と手持氏。何と大蔵省は、国民の命と健康に関わる情報を、私企業の経営上の損得だけで隠しても構わないと言うのだ(なお手持氏はその後地方に異動した)。

ニューヨーク・タイムズ紙のベテラン記者、フィリップ・J・ヒルツは『タバコ・ウォーズ』(小林薫訳、早川書房)で「危険があるのに沈黙しているというごまかしは許されない。・・・他のいかなるビジネスも顧客のために発生する危険性を少なくする努力をしている中で、タバコ・ビジネスだけが異なる基準に立った企業行動を認めるというのは、正しくないというだけでなく、腐敗しているとも言える」と指摘し、「タバコ会社のファイルを強制的に公開させよ」と提案している。

これは、日本のたばこ問題の解決のためにも最重要の視点ではないか。日本の場合、アメリカと違って専売公社時代が長く、いまでもJTの株の約7割は大蔵大臣名義で国が持っている。これでは大蔵省は情報隠しの共犯と言われてもやむをえない。

厚生省の最新報告によれば、たばこに起因する死者(超過死亡数)は年間9万5000人にのぼる(「健康日本21」報告書)。たばこ会社の情報操作に騙されないために、大切な人と自分の健康を守るために、日本でもたばこ会社の秘密ファイルを公開させなければならない。

(ほさかよしひさ・ルポライター/きたけんいち・編集者)『技術と人間』2000年7月号初出のレポートに部分的に加筆。

※なおこの文章の引用・転載は自由ですが、執筆者と出所を明記して下さい。

---引用終---

上記のように引用・転載の許可を示す文があったので、全てを紹介した次第。煙草の広告やテレビCMは減少傾向にある。それは喜ばしいことであるが、実はテレビドラマなどには煙草の登場する場面が増えているという。これを即、煙草戦略と決め付けることは出来ないが、かたや煙草の害を放送する同じテレビ局から、人気俳優が煙草を吸うドラマが平然と流れてくるのだ。

気功と気の存在

生と死を分かつものは何か?心臓死や脳死を死とするにしてもそれらを機能させているものは何か?その何かを「気」と仮定してみる。このように物事を突詰めていくとついに解明に窮する所に達する。それは問わずにおこうではないか。「神」であっても「自然の節理」と称しても良い。それを問い始めると先が見えないばかりか、不毛な議論に精力を空費し意義ある時間を失ってしまう。しかし、「気」と言うものが実態として、技術として紹介され取り入れられると、俄かに根拠の存在が気になり始める。

漢方では気と物質をもって病理、病態を説明する。物質を動かすものが気であり、その気の動作によって、機能が亢進したり減退する。時には留滞し、生体に影響を及ぼす。気は概念だと思っていたが、蒸気のような精微物質と唱える漢方家もあるようだ。物質であるなら何らかの方法で捕らえる事が出来るかもしれない。気功家の中には気は全ての物を動かす「エネルギー体」として、それを操ることにより、自らも他も動かし得ると考える人がある。ここに宗教や超能力との曖昧な境界が生まれてくる。最も警戒すべき点である。

東洋医学の問題点の一つは、3000年の歴史という根拠だけで古典を聖典として信奉するところにある。古典に書かれているから間違いない。古典に記載されたことが現代科学で実証された。だから他の古典も間違いない。と、一つ一つの検証を怠る傾向がありはしないだろうか。これが中国の寓話と結びついた古典であれば神や仙人が超能力を発揮するような物語になる。気功の本を読むと大概そのような寓話を元に気の存在と可能性を探る。

「気」は現代科学で検知不可能だから存在が認められない、と言うのは科学的ではない。ごもっともな意見である。そして科学的証拠を探すかのように器械を用いて画像や数値で説明していく。気の送り手と受け手の血液成分の定量、サーモグラフによる体温の上昇、脳波の変化、、、しかし、これらを使って一体何を証明したいのか意図の測れない実験がある。だから、どう影響し、体がどう変わったのかと再度問いたくなる。数人の被験者のみで、ただ気がありそうだと思わせるだけの公開実験に過ぎない。被験者少数のうえ、数値や画像の処理にも問題があり、対照実験もしないため信頼度は薄れる。自分を動かす気(内気)は否定できないが、その気を外に発する外気になると大きな疑問を持たざるを得ない。気で物を動かしたり、血液の性状を変えられるなら物理学の常識をさえ覆すものであろう。超能力者が見せてくれるものは手品師が殆ど再現できるものと言われる。

下腹部痛とオケツ

オケツ(ふる血)と言うのは漢方特有の用語で血行障害を意味する。単に血行障害といってもその病態はいくつかに分類され、それぞれに適用される薬草も違いがある。お客様との相談中、男女問わず必ず尋ねるのが「下腹部のどこかに痛みや異常はありませんか?」と言うことである。すると時に、下肢の付け根から盲腸あたりに痛みないし圧痛のみられる人が出てくる。盲腸は右であるが、左やまさに下腹部に見られる場合もある。

この痛みについて心療内科学会で取り上げられたことがある。骨盤内うっ血症候群と言い、下腹部が重苦しく痛むが、その原因となる胃や腸、子宮や卵巣などに器質的疾患や炎症も見当たらず鎮痛剤を服んでもあまり効かない。そして下腹部痛を訴える女性の半数がこの病態に当てはまるという。原因不明なだけに、せいぜい鎮痛剤を渡すだけに終始する医療機関が多いと思われる。

報告によると下腹部に痛みを訴えているものの、炎症や器質的疾患がみられない女性の腹部のどの部位に圧痛があるかを調べた。子宮や卵巣などの部位を押すと痛む人は全体の2割弱で、8割強の人では骨盤壁や腹壁に圧痛を感じていることがわかった。また、圧痛の部位には左右差があり、左側を痛がる人の方が有意に多かった。漢方では右の盲腸周辺に多く見られる圧痛を小腹急結としている。確かにその部位の痛みが多いように思われる。左に圧痛を感じるのは便秘を伴う場合によく見受けられる。下腹部の痛みは腰にまで波及することがあり盲腸が原因だと思い込んでいる人もある。

この病態から東洋医学のオケツではないかと考え、漢方治療を試みたところ1〜2週間の服用で9割の患者さんに症状の改善が見られた。用いた処方は桂枝茯苓丸が多く、便秘傾向の人には桃核承気湯、貧血傾向のある人は当帰芍薬散であった。残りの1割の人は漢方薬だけでは改善が見られなかった。漢方のオケツに思いあたらなかったなら、おそらく苦痛は軽減できなかったであろう。これが漢方のオケツと同一のものと断言はできないが、近いか、似たようなものかも知れない。漢方薬のevidenceは充分とは言えないまでも、その治療体系についての知識があれば、とりあえず苦痛を取り除くことができるし、病態の考察にも広がりが出てくるのではないだろうか。

宿便と腸管洗浄

胎児の頃の老廃物は消化管に蓄積し、チョコレート状の胎便となって出生後に排出される。この胎便の排出が上手くいかないと、「それが胎毒となってアトピーや成長してからの生活習慣病の原因になる」と言う漢方理論がある。宿便とはこれと同じく、病の原因を「毒」によるものとする古典的な考え方の一つである。病院の直腸検査で多量の下剤を服み腸をすっかり空っぽにして内視鏡で覗くと、腸壁に粘った便が付着しているのを確認されることがある。それ以外は無いのだから多分これが宿便と称する「毒」であろう。

重症の便秘であれば、便から水分が抜け糞塊となり腸管に長く留まることもあるが、それほど頻度の高いものではない。便秘が続くとのぼせたり、吹き出物が出ることは知られている。さらに糞便中の有害成分が再吸収されたり、発酵によって生じる物質が肝障害を起したり、直腸がんの原因になったりすると言う。このあたりが、宿便害毒説の根拠になっていると思われる。昔、万病一毒説を唱えた漢方家がいたがこれに近い。熱心な治療家は病気や不調の全ての原因を宿便に求める。嘘ではない、実際にそのような考えのもとで行われているのが腸管洗浄である。

もともと代替医療のひとつであったが、最近ではエステなどでダイエット目的に行い、医師法違反で摘発された例がある。これは肛門から管を入れ、それを通して水やコーヒー、石鹸水などを注入、しばらくして便を排出させる浣腸と同じものである。古代医学では重要な位置を占める療法だった。ヨーロッパには19世紀頃から広がりをみせるが、20世紀に入ると誤りであることが指弾され一度は消えてしまったかのように見えた。ところが最近30年の間に復活し、コーヒー浣腸という方法で食事療法との組み合わせで行われるようになった。調べてみると医師が行っているケースもあり、既に書いたように宿便害毒説が述べられている。確かに解りやすく単純なだけに支持されやすい理屈である。しかし、死亡例や感染例などが報告され安全性の面での不安は残る。また不快感や出費に見合うほどの利益があるのかも疑問である。

冬はなぜか鬱々と...

冬か夏かと、問われるなら、冬を好む人、夏を好む人に分かれるだろう。しかし、四季を問えば春と秋が快適で良いという人が多いであろう。春と秋の日照時間はほぼ等しいが、春分の日の最高気温16度、最低気温5度。秋分の日はそれぞれ28度、18度となっている。流れゆく前後の季節で四季の在り様も変化する。春の兆しはなにかときめくものががあり、秋はもの寂しさがつきまとう。冬の入りと冬の終わりでもそれぞれ感じるものに違いがある。漢方では五行にもとづき各季節に配当する「五志」を次のように表現する。春--怒、夏--笑、土用--思、秋--憂、冬--恐。

冬至といえば最も日照時間が短く、長い穏やかな日差しがほのぼのと感じられ、正月を迎える準備で活気づく時期でもある。やがて年が明け大寒の頃、最も厳しい寒さが訪れる。私はこの頃、最も気分が鬱々となり、目覚めてもまだ暗く寒い外を恐れる。病気というのではなく、そのような傾向になりがちという話なのだ。しかし「冬季うつ病」というのがあり、その原因を探る研究報告がある。

健康人を対象にした研究で、神経伝達物質である血中セロトニン量を測定したところ、脳内でのセロトニン回転速度は冬季が最も遅くなることが解った。影響があるのは冬季の日照時間のみで、気温や気圧など他の要因との関連はなかった。さらにほかの神経伝達物質であるドパミンやノルエピネフリンについては季節変動は認められなかった。セロトニンは気分や意欲などの情動に関与しており、これが減少するとうつ病やうつ状態になるとされる。「冬季うつ病」にはセロトニンに働きかける薬がよく効き、明るい光を一定時間浴びる光線療法でも気分が改善することから、日照時間が短くなると、脳内のセロトニン量が減り、うつ状態を引き起こすのではないかと考えられてきた。

この研究で、太陽の光線量が脳のセロトニン産生に影響している事が解り、季節による気分の変化や季節性の疾患にも影響を及ぼすのではないかと考えられる。脳内セロトニン代謝回転速度は、採血を行った当日の日照時間と強い相関があったが、前日の日照時間とは相関がみられなかった。採血当日の朝の光の強さで、セロトニン代謝回転速度がすばやく調節されるのではないかと言う。また、煙草やカフェインはセロトニン量に影響を与えることが知られている。心のストレスでいくらか落ち込んだとき、これらの嗜好品から離れることも検討課題である。

 

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