【繁用漢方処方集(2)】


処方集(1)

         

処方集(2)

安中散料 四君子湯           清上防風湯 半夏瀉心湯
茵陳蒿湯 四物湯           清心蓮子飲 白虎湯
黄連解毒湯 炙甘草湯           疎経活血湯 平胃散料
葛根湯 芍薬甘草湯           大防風湯 補中益気湯
加味逍遥散料 十全大補湯           釣藤散料 防已黄耆湯
銀翹散料 十味敗毒湯           猪苓湯 防風通聖散料
桂枝湯 小建中湯           桃核承気湯 麻黄湯
桂枝茯苓丸料 小柴胡湯           当帰芍薬散料 六君子湯
荊芥連翹湯 小青竜湯           当帰飲子 苓甘姜味辛夏仁湯
五苓湯 小承気湯           二陳湯 苓桂朮甘湯
柴胡桂枝湯 消風散料           人参湯 六味地黄丸料
三黄瀉心湯 真武湯           麦門冬湯 紫雲膏(外用)
四逆散料 参蘇飲           半夏厚朴湯  

 


清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)

【処方】黄今・桔梗・山梔子・川弓・防風・白止・連翹・黄連・甘草・枳実・荊芥・薄荷

【解説】防風通聖散、荊防敗毒散、十味敗毒散などと共に解毒剤として分類する
    書物もある。体内の毒が上部、特に顔面に、熱と共に集まり瘡を為した青
    年のニキビに繁用される。顔面赤く、のぼせによる頭痛やめまい、ニキビ
    以外の皮膚病、酒焼け、中耳炎、副鼻腔炎、結膜炎などにも応用する。
    配合されている黄連が上部の熱を冷ます働きがあり、処方の要である。

【加減】ニキビ・・・ヨクイニン
    便秘・・・大黄

【合方】炎症・・・小柴胡湯
    化膿・・・排膿散及湯

【類方】防風通聖散、荊防敗毒散、十味敗毒散、排膿散及湯、治頭瘡一方

 

清心蓮子飲(せいしんれんしいん)

【処方】麦門冬・茯苓・黄今・車前子・人参・黄耆・甘草・蓮肉・地骨皮

【解説】響きの良い処方名だが病態は漢方特有の複雑な考え方をする。心は熱
    を発生させ、その熱は腎の水で冷ます。この相互作用がうまくいかず。心
    (上部)、腎(下部)ともに不調が現れる。上部症状としては、不眠、口内炎
    不安、多夢など。下部に到っては、排尿困難、頻尿、排尿痛、前立腺肥大
    慢性腎炎、不正性器出血、帯下など。体力、気力の消耗が見られる人に
    使う。膀胱炎が慢性化して炎症はそれほどないが調子が悪い、西洋医学
    では原因が不明、治療効果も思わしくなく、ただ漫然と抗菌剤など服み続
    けている人に効果がある。清心というのは心の虚熱を冷ますという意味で
    あるが、心を清らかにする意味もあるように思う。既に書いたような症状
    でイライラしたり、ノイローゼ気味の人の心が和む事がある。

【加減】口渇・・・瓜呂根、地黄、玉竹
    不眠、動悸・・・酸棗仁、黄連、百合根、竹葉

【合方】血尿・・・猪苓湯
    腎虚・・・六味地黄丸

【類方】猪苓湯、五淋散、竜胆瀉肝湯、六味地黄丸、八味地黄丸

 

疎経活血湯(そけいかっけつとう)

【処方】芍薬・地黄・川弓・蒼朮・当帰・桃仁・茯苓・牛膝・陳皮・防已・防風・竜胆
    甘草・白止・生姜・威霊仙・羌活 

【解説】筋肉や関節のしびれや痛みを「痺証」として、いくつかに分類される。こ
    の処方はそのうちの血虚の風湿卑証になる。貧血に冷えや湿気が関わり
    オケツも絡んでくる。そのため激しい疼痛が伴い、天候の如何に左右さ
    れる事もある。関節痛、変形性関節症、腰痛症、痛風、筋肉痛、慢性関節
    リウマチ、神経痛などに使われる。オケツが原因の痺証である脳卒中後
    遺症、静脈炎、静脈瘤にも応用される。配合生薬が多いので、症状に従
    い適宜、対応生薬の加減をする。この処方は神経痛薬の代表処方として
    多くの製剤(錠剤、顆粒、丸剤)が製品化されているが、残念ながら既製
    品という性質上、細かな対処が出来ず、守備範囲が広いだけで、効果が
    劣る。

【加減】冷え・痛み・・・附子、乾姜、烏頭
    浮腫・・・白朮、ヨクイニン
    熱・・・石膏、知母
    血行障害・・・紅花、益母草、丹参、赤芍

【合方】冷え、痛み・・・桂枝附子湯、甘草附子湯
    熱、浮腫・・・越婢加朮湯

【類方】桂枝茯苓丸、越婢加朮湯、ヨクイニン湯

 

大防風湯(だいぼうふうとう)

【処方】黄耆・地黄・芍薬・朮・当帰・防風・川弓・甘草・牛膝・大棗・人参・羌活
    杜仲・乾姜・附子

【解説】慢性化し栄養失調状態の運動麻痺に用いる。栄養失調気味であっても
    消化機能は衰えていない人の関節の腫れ、疼痛、変形性関節症、慢性
    関節リウマチ、痛風、神経痛など。地黄が配合されている為、胃腸の弱
    い人は胃にもたれたりなど胃腸障害のおこる恐れがあり、脾胃剤を配合
    し緩和する方法もある。栄養失調状態の為、膝の関節は痩せ衰え鶴の
    足のようになることから、この薬方の病態を「鶴膝風」とも言う。

【加減】下痢、胃弱・・・地黄を去り、ヨクイニン、陳皮、縮砂を加える。
    下肢痛・・・牛膝を増量、独活を加える。
    筋肉痙攣・・・木瓜、五加皮

【合方】腎虚・・・八味地黄丸
    炎症、熱・・・越婢加朮湯

【類方】独活寄生湯、十全大補湯、霊仙除痛湯、疎経活血湯 

 

釣藤散料(ちょうとうさんりょう)

【処方】石膏・陳皮・麦門冬・半夏・茯苓・人参・防風・甘草・生姜・釣藤鉤・菊花

【解説】肝がオーバーヒートしてくると熱が上昇気味になる。そこで頭のふらつき
    眩暈、頭痛、肩こり、耳鳴、顔面紅潮、目の充血がみられ、イライラ、不眠
    などのストレス症状も出てくる。肝の失調は脾胃にも影響し食欲不振、疲
    労感、悪心、嘔吐、痰などがみられる。中年期以降まず肝が衰えを見せ
    る。それに伴い、肝の病態が見え隠れするようになる。この年齢位にな
    れば動脈硬化も進み、それによって生じる頭痛、耳鳴り、肩こりなど高血
    圧の症状に繁用される。

【加減】のぼせ、眩暈・・・石決明、芍薬
    口渇、陰虚・・・半夏、生姜を去り、地黄、石斛、瓜呂根を加える。

【合方】のぼせ、高血圧・・・黄連解毒湯
    肩こり・・・四逆散
    ノイローゼ・・・柴胡加竜骨牡蛎湯

【類方】抑肝散、半夏白朮天麻湯、七物降下湯   

 

猪苓湯(ちょれいとう)

【処方】沢瀉・猪苓・茯苓・阿膠・滑石

【解説】泌尿器系の代表処方のひとつで体質に関わらず広く応用される。炎症
    や熱と共に尿の減少、頻尿、排尿痛、血尿、膿尿などが見られる尿道炎
    膀胱炎、尿路結石、前立腺炎、腎盂炎、ネフローゼ、下痢、浮腫などに用
    いる。配合されている阿膠は湯剤では山東阿膠を用いるが、エキス顆粒
    や錠剤ではゼラチンを阿膠と称して代用されているので効果は落ちる。
    猪苓湯は水分を引きこみ尿を薄める働きをする為、服用時、ある程度多
    くの水分を摂った方が良い。

    よく漢方家の間から漢方は病名で使っても「意味がない」「効果がない」....
    などという発言が聞かれる。しかし、病名で使っても一向に構わない漢方
    薬だってある。その代表がこの猪苓湯である。血尿、膀胱炎と聞けば、フ
    ァーストチョイスでこれを勧める。複数のお客様の相談を控え、急がれる
    人や、待つのが大儀な人があれば、ゆっくり相談に応じる事も出来ない。
    そして、これで効かなければ、次に確率の高い処方を勧める。このように
    試行錯誤し適方に辿り付く事もある。「充分に症状を聞いて、問診を重ね
    処方決定。」と言われたら返す言葉もないが、まず的中率の高いものから
    用いる処方決定も尊重されて良い。素人判断、病名漢方と揶揄する専門
    家が果たして如何ほどの治癒率を上げられると言うのだろうか?「素人判
    断は危険」「生兵法はケガのもと」と言い確固と自らの「城」を守り、素人を
    排除していはしないか?それによって漢方までもが誤解されていないか?
    私的な悩みではあるが、自問自答しながら仕事を続けている。
    時に素人判断で買い求められた漢方薬で見事な効果をまのあたりにする
    と、この思いを強くする。

    ここで取りあげた繁用処方は考え方によっては、東洋医学的にも西洋医
    学的にも症状や病名によって使われ、淘汰された結果残存していると言
    えなくも無い。ならば、逆に単なる症状や病名で使ったとしても一定の効
    果は期待できるのではないか。8割漢方という言葉を聞いたことがある。
    8割は高率であるが、単なる症状や病名で処方を用いその程度の効果を
    あげられる処方があれば、漢方も随分使いやすいものになる筈だ。
    漢方に「口訣集」というのがある。処方適用の勘所を一語のもとに記した
    書物である。有名な「方函口訣」「衆方規矩」、そして弁証論治をいう中医
    でさえ「臨床備要」という口訣集がある。大家の門下生は師匠の口訣を頼
    りに処方決定したりもする。このような現実を知れば知るほど素人判断を
    笑えない。漢方はそれほど副作用は起らない。起らないからこそ素人判
    断でも危険性は少ないといえる。「もし処方の不適応で不快な症状が出た
    としても、薬を止めれば可逆的なものである。」とは専門家の弁である。
    もちろん、例外として専門的知識を有する漢方薬もある。

【加減】炎症・・・山梔子、黄連、黄今、黄柏、車前子、木通
    貧血、陰虚・・・地黄、芍薬、当帰
    血尿・・・地黄、茅根、薊

【合方】貧血、陰虚・・・四物湯
    炎症・・・小柴胡湯
    黄疸・・・茵陳蒿湯

【類方】五苓散、五淋散、竜胆瀉肝湯、六味丸、清心蓮子飲

 

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

【処方】桃仁・桂皮・大黄・甘草・芒硝

【解説】オケツの病証で下腹部、骨盤内にうっ血が起り、化熱する。便秘、頭痛
    のぼせ、めまい、肩こり、不安、不眠、月経異常、腹痛、腰痛など見られ、
    桂枝茯苓丸より顕著な症状を呈する。下腹部の抵抗圧痛(小腹硬満)臍
    周辺圧痛(小腹急結)が認められる。激しい打撲など受けると、便や尿が
    止まり激しい痛みとなる。この処方で大便を通じさせると、便と共にうっ血
    と熱が排除され軽快する。便秘や症状の程度が桃核承気湯ほど重症で
    なければ桂枝茯苓丸加大黄で緩和に下しても良い。月経困難症、帯下、
    更年期障害、高血圧、便秘、痔、打撲症、腰痛症、不安神経症、ヒステリー
    尿道狭窄症、前立腺肥大症など。

【加減】圧痛、疼痛・・・田七人参、芍薬、紅花
    月経痛・・・当帰、芍薬、丹参、紅花
    腹満、腹張痛・・・枳殻、香附子、厚朴
    炎症・・・牡丹皮、黄連、黄今
    ノイローゼ・・・竜骨、牡蛎

【合方】胸脇張痛・・・四逆散
    貧血・・・四物湯
    炎症・・・大柴胡湯

【類方】通導散、大黄牡丹皮湯、抵当湯、桂枝茯苓丸   

 

当帰芍薬散料(とうきしゃくやくさんりょう)

【処方】芍薬・朮・沢瀉・茯苓・川弓・当帰

【解説】妊娠・安産・当帰芍薬散というほど有名である。貧血気味で体に水滞が
    あると色白で冷え症、疲れやすい、頭痛、眩暈、動悸などの症状が出て
    くる。冷え症にも手先足先などの末端冷え症と、湯上りでもすぐ冷めてし
    まう真性の冷え症がある。前者は桂枝茯苓丸で、後者は当帰芍薬散で
    対処する。末端だけの冷えは末梢で血液の流れが滞って起るが、真性の
    冷えは血液も不足気味で水滞もあり、熱産生も低下して起こるものであ
    る。比較的健康体であっても月経時や妊娠時など一時的にこれに近い状
    態になる事が考えられる。配合されている当帰、川弓は血行を改善する。
    芍薬、川弓は鎮痛作用があり、貧血、冷えによる痛みを緩和する。さらに
    利水作用のある茯苓、朮、沢瀉で水滞を排除する。血と水の状態を改善
    する為、応用範囲は広い。婦人科では、月経痛、月経困難症、不妊症、
    習慣性流産、妊娠中毒症、子宮内膜症、帯下、子宮筋腫、更年期障害。
    循環器では、貧血、低血圧症、脳血管障害、動悸。運動器では腰痛症、
    肩こり。皮膚では凍傷、肝斑。泌尿器では、慢性腎炎、膀胱炎、頻尿。
    その他、痔、脱肛、耳鳴りなど。

    応用範囲は広いが、当帰芍薬散を単独でお勧めするような人は意外に少
    なく、加減・合方でこそ持ち味を生かせる方剤だと思う。不妊症の漢方治
    療で有名な寺師睦宗先生の講義を拝聴した事がある。不妊症の基本は
    「なんと言っても当帰芍薬散です。」と力説されていた。散というのは湯剤
    を簡便化したものという考え方もあるが、散剤を酒で服用するように指示
    がある。酒によって胃腸の持たれを緩和したり、脂溶性の成分の吸収効
    率を良くしたりする意味もある。

【加減】食欲不振、疲労倦怠・・・人参、黄耆
    貧血・・・当帰、芍薬を増す。地黄、枸杞子を加える。
    浮腫、下痢・・・朮、茯苓、沢瀉を増す。
    冷え・・・桂枝、附子、乾姜
    腹痛、膨満感・・・木香、枳殻、縮砂
    オケツ・・・桃仁、紅花

【合方】食欲不振、軟便・・・四君子湯、六君子湯
    胸脇部痛・・・四逆散
    悪阻・・・二陳湯
    妊婦の風邪・・・香蘇散
    慢性腎炎・・・小柴胡湯
    低血圧・・・人参湯
    慢性膀胱炎・・・猪苓湯

【類方】当帰四逆加呉茱萸生湯、温経湯、加味逍遥散、四物湯

 

当帰飲子(とうきいんし)

【処方】当帰・地黄・芍薬・川弓・防風・黄耆・荊芥・甘草・シツリシ・何首烏

【解説】皮膚が乾燥しつやがない、落屑がみられ遊走性の痒みがあるなど皮膚
    の栄養や水分が減少気味の皮膚病、特に老人性皮膚掻痒症に用いら
    れる。血液や水分が消耗する事を陰虚(いんきょ)と言い、陰虚の状態に
    なると体の熱産生を制御する力が低下し化熱してくる。この熱は解熱剤を
    使うような炎症や発熱とは違い虚熱(きょねつ)と呼ばれる。虚熱は陰を
    補い冷ます。しかし程度が甚だしい場合は清熱剤も併用する。虚証、老
    人という目安はあっても必ずしもそれに拘る必要はない。方剤の薬能が
    わかれば自在な応用が可能である。さらに漢方的な証の把握と、西洋医
    学的証拠が一致すれば再現性ある確かな活用が出来るのだが、客観的
    検査手段を持たず自覚症状の改善にのみ頼らざるを得ない薬局漢方の
    限界も見えてくる。大家でも証の確定には困難を伴うようである。臨床報
    告や医案集など読むと試行錯誤・確認修正しながら有効な方剤を決定し
    て行くのが解かる。

    漢方薬を実証の薬、虚証の薬と分類する場合もあるが、実証の薬を虚証
    に使う事が出来ない訳ではない。病態を観察し注意配慮して使う事もあ
    るし、逆に虚証の薬を実証に使う事もある。

    この処方も乾燥性の皮膚病のみならず病態に応じ加減・合方などの工夫
    を施せば、湿疹、蕁麻疹、乾癬、アトピー性皮膚炎など広く応用できる。

【加減】血虚・・・枸杞子、胡麻、鶏血藤
    疲労倦怠・・・人参、党参
    不眠・・・柏子仁、酸棗仁、夜交藤
    便秘・・・麻子仁
    オケツ・・・赤芍、丹参、紅花

【合方】痒み、熱・・・黄連解毒湯
    炎症・・・小柴胡湯

【類方】温清飲、十味敗毒湯、消風散、六味地黄丸

 

二陳湯(にちんとう)

【処方】半夏・茯苓・陳皮・甘草・生姜

【解説】漢方の病理のひとつに「痰証」と言うのがある。オケツは血に関わるが
    痰は水に関わる。水が変化して生じる病理産物のうち薄く透き通ったもの
    を「飲」、濃く濁ったものを「痰」という。この痰によって引き起こされる病態
    に使うのが半夏・茯苓が配合される処方である。痰が生じると体の機能
    のうち脾胃や肺の働きが妨げられ胃部不快感、悪心、嘔吐、眩暈、動悸
    頭痛、喀痰、咳嗽などの症状が見られる。半夏・茯苓の組み合わせ処方
    の基本がこの二陳湯である。したがって加減・合方・類方はおびただしい
    数になる。

【加減】胸のつかえ・・・枳実、天南星
    胃痛・・・縮砂、呉茱萸
    陰虚・・・当帰、地黄
    咳、痰、呼吸困難・・・杏仁、紫蘇子
    胃腸虚弱・・・人参、白朮
    薄い痰・・・乾姜、細辛
    濃い痰・・・瓜呂根
    食滞、胃脹・・・山査子、枳実
    空咳、痰少・・・瓜呂根、貝母、杏仁
    水様性痰・・・白朮、蒼朮
    胸脇脹・・・香附子、枳殻、欝金、柴胡

【合方】食欲不振・・・四君子湯
    呼吸困難、咳・・・小青竜湯
    呼吸困難、無汗・・・麻黄湯
    痰飲・・・苓桂朮甘湯

【類方】小半夏加茯苓湯、六君子湯、半夏瀉心湯、茯苓飲、半夏厚朴湯

 

人参湯(にんじんとう)

【処方】甘草・朮・人参・乾姜

【解説】もともと胃腸の冷えやすい人は、常習的に便が軟く泥状便だったり水様
    便だったりする。健康な人でも過度に冷飲食物を摂取すると激しい腹痛
    や生唾がでたり吐気が起る事がある。冷えによる下痢は便で寒を排除す
    るとすっきりする。下痢とは逆に寒による便秘もみられる。冷えやすい人
    は凡そ食欲不振、疲労倦怠感、頭重、眩暈などを伴う事が多い。急・慢
    性胃腸炎、胃アトニー、胃拡張、胃酸過多、急・慢性下痢、悪阻、貧血症
    虚弱児の体質改善など。常識的なことだが、寒によって起る病証につき
    必ず熱くして服用するべきである。しかし現場では「1日3回食間に服用し
    て下さい。」で説明が終わる例が多い。温心堂に来店されるお客様の薬
    歴を見て人参湯の処方があると、「どのように服用されました?」と聞くと、
    「水で服みました。」という答えが返ってくる。そこでお湯での服用を勧め
    るとそれだけで効果が違ってくる。その違いを身をもって体験すると生活
    様式も冷飲食を避けるように変化して行く。

【加減】冷え・・・乾姜を増量。附子、桂皮を加える。
    水様便・・・白朮を増量。茯苓を加える。
    嘔吐、上腹部痛・・・丁字、呉茱萸、縮砂、半夏、生姜
    腹部膨満・・・甘草を去る。枳殻、陳皮を加える。

【合方】過敏性腸症候群、下痢・・・真武湯

【類方】安中散、桂枝人参湯、茯苓飲、真武湯、附子理中湯

 

麦門冬湯(ばくもんとうとう)

【処方】麦門冬・半夏・大棗・甘草・人参・粳米

【解説】咳に麦門冬湯と言われるほど繁用される。痰の少ない乾いた咳という
    ただし書きがあるが、痰の多い咳にも結構効果がある。甘味の強い処方
    なのでその甘味で痙攣性の咳を緩める為である。しかし乾燥を潤す作用
    があるので痰の多い咳に使えば逆に痰を増やす事になる。風邪などの
    熱で気管支粘膜が乾燥し、そこに外から塵埃などが付着し、それを排除
    する為、反射的に咳が出るものと思われる。そこで粘膜を潤し咳を止める。
    妊婦、高齢者の咳に繁用されるが、妊婦については咳のみならず安産薬
    として応用する事もある。しつこい甘味なので胃もたれを防ぐため陳皮、
    縮砂など配合する方法もある。

【加減】口渇・・・石斛、瓜呂根、玉竹
    炎症、熱・・・竹葉、石膏
    血痰・・・黄連、地黄、阿膠

【合方】腎虚の咳・・・六味地黄丸
    炎症・・・小柴胡湯
    声枯れ・・・半夏厚朴湯

【類方】竹如温胆湯、竹葉石膏湯、滋陰降火湯、滋陰至宝湯

 

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

【処方】半夏・茯苓・厚朴・蘇葉・生姜

【解説】半夏・茯苓が配合されているので二陳湯が基本処方となっている。梅核
    気と言って咽喉が塞がったような、異物が詰ったような不快感を目標に使
    う。ストレスや極度の緊張、ショックで咽喉が緊張すると、そのまま凝った
    状態が持続し、気血の流れが妨げられる。そこに痰が生じてくる。処方中
    重要なのは緊張を緩める作用を持つ厚朴である。咽喉の異物感を訴える
    人のうちで検査で異常なしと言われた人は、この処方を試みる価値がある
    かもしれない。異物ではなく、ただの緊張感がそのようにさせている場合
    がある。鬱状態のときも梅核気がみられ、この処方は精神科系の疾患に
    広く応用される。不安神経症、神経性胃炎、心臓神経症、不眠症、心身症
    更年期神経症、うつ状態など。さらに範囲を広げ気管支喘息、声枯れ、胃
    もたれ、胸焼けなどに加減・合方して用いる。

【加減】胸脇のつかえ・・・香附子、枳殻、青皮、柴胡
    胸脇痛・・・香附子、川楝子、延胡索
    悪心・嘔吐・・・陳皮、縮砂、丁字
    食滞・・・山査子、神麹、麦芽
    腹脹・・・木香
    咳嗽・・・麻黄、前胡

【合方】胸脇痛・・・四逆散、柴胡疏肝散
    貧血、疲労、神経症・・・逍遙散
    気管支喘息、気管支炎・・・麦門冬湯、小柴胡湯
    胃腸虚弱・・・四君子湯
    不眠・・・酸棗仁湯
    胃もたれ、目まい・・・茯苓飲    

【類方】香蘇散、加味逍遥散、柴胡桂枝乾姜湯、桂枝加竜骨牡蛎湯

 

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)

【処方】半夏・黄今・甘草・大棗・人参・黄連・乾姜

【解説】寒と熱が胃の周辺で交錯し、胃のつかえ、痛み、悪心、嘔吐、胸焼け
    食欲不振、軽度の下痢のあるものに用いる。寒には辛温の乾姜で、熱に
    は苦寒の黄連で対処する。この相反する作用の生薬で脾胃の調和を計
    る。胃炎や胃・十二指腸潰瘍、消化不良、口内炎、下痢、熱が上昇する
    事で起る軽度の不眠や不安にも応用される。

【加減】下痢、腹鳴・・・甘草を増量。(甘草瀉心湯)
    悪心、嘔吐・・・生姜 (生姜瀉心湯)
    胃のつかえ脹り・・・枳実、厚朴
    下痢・・・陳皮、蒼朮、厚朴
    冷え・・・桂枝
    食滞・・・枳実、山査子、神麹、大黄
    胸焼け・・・呉茱萸、烏賊骨
    腹痛・・・芍薬、香附子 

【合方】下痢、尿量減・・・五苓散
    胃膨満・・・小半夏加茯苓湯

【類方】黄連湯、胃苓湯、生姜瀉心湯、甘草瀉心湯

 

白虎湯(びゃっことう)

【処方】石膏・知母・甘草・粳米

【解説】発熱や炎天下で発汗すると体温の上昇と共に体の水分も消耗する。熱
    のため激しい口渇と体温の上昇がみられ、顔面は紅潮し水を欲しがる。
    損耗した水分をさらに減少させないように、発汗させることなく解熱する。
    全身的な熱ばかりではなく皮膚炎や関節炎など局所の炎症にも応用さ
    れる。石膏は持続的で強い解熱作用があり、発熱中枢、発汗中枢共に
    抑制する為、止汗して解熱するものと考えられている。石膏の成分はカ
    ルシウムであるが、薬効は石膏中に含有される微量の挾雑物であると
    言われている。普通1日15〜20g位使用するが中医では100〜200g
    配合する事もある。 

【加減】疲労・・・人参
    意識障害、痙攣・・・犀角、羚羊角
    出血、鼻血・・・地黄、芍薬、牡丹皮
    口渇・・・瓜呂根、石斛、麦門冬、地黄、沙参
    炎症・・・金銀花、連翹、板藍根
    胃炎・・・黄連、黄今
    悪心、上腹部膨満・・・半夏、竹如

【合方】炎症、熱・・・黄連解毒湯
    皮膚炎・・・消風散

【類方】白虎加人参湯、白虎加桂枝湯、竹葉石膏湯     

 

平胃散料(へいいさんりょう)

【処方】蒼朮・厚朴・陳皮・大棗・甘草・生姜

【解説】市販の漢方胃腸薬の大部分はこの平胃散と安中散である。安中散が
    胃弱の人の食べすぎに使うのに対し平胃散は普段はそれほど不調は
    見られないが少し食べ過ぎたり、疲れると胃腸の調子が悪くなる人に用
    いる。症状は上腹部膨満、胸のつかえ、腹痛、食欲不振、悪心、嘔吐、
    下痢などが見られる。胃には消化液や摂取した食物や水分が一定時間
    留まっている。しかし胃腸の働きが鈍くなるといつまでも滞ってしまい体を
    揺すると胃から振水音の聞かれる事がある。冷たいものや甘いもの、脂
    もの、粘り気のある食物は特に胃腸の動きを低下させる。食べ過ぎには
    一食抜く位の養生が望まれる。

【加減】胸焼け、ゲップ・・・神麹、麦芽、山査子
    悪心、嘔吐・・・半夏、縮砂
    冷え・・・桂皮、呉茱萸、丁字
    炎症、熱・・・黄今、黄連、山梔子
    下痢・・・蒼朮を去り、白朮、茯苓を加える。
    胃、腹部脹・・・木香、縮砂
    疲労、倦怠感・・・人参、白朮
    腹部膨満、便秘・・・檳榔子、枳殻

【合方】微熱、胸脇痛・・・小柴胡湯
    下痢、食欲不振・・・四君子湯
    水様性下痢・・・五苓散

【類方】安中散、茯苓飲、半夏瀉心湯、胃苓湯

 

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

【処方】黄耆・朮・人参・当帰・柴胡・大棗・陳皮・甘草・升麻・生姜

【解説】元気がない、疲れやすい、四肢がだるい、食欲不振、眠気、目まい、息
    切れなどありとあらゆる疲労倦怠の症状がみられる。これは食物の消化
    吸収を行なう脾胃の働きが低下したためである。脾胃を「中」と呼び、その
    機能である「中気」が落ち込んでいる事を「中気下陥」という。中気を上げ
    るという意味で付けられた処方名が補中益気湯である。繁用される重要
    な処方である。病中病後の体力低下、風邪などをこじらせ疲労のあまり
    微熱がなかなか取れない、消化機能低下に伴い治癒力の落ちた疾患、
    低血圧症、貧血など。また中気をひきあげる作用を応用し、胃下垂、内臓
    下垂、子宮脱、脱肛などにも用いる。

    虚弱体質に使うような薬方ではあるが、頑強な人が過労などで食欲が落
    ちたり、抵抗力が一時的に低下したときなどにも有効である。

【加減】子宮脱、脱肛・・・黄耆、升麻を増量。枳殻、益母草を加える。
    出血・・・艾葉
    めまい、ふらつき・・・半夏、天麻、釣藤鉤
    下痢・・・蒼朮、厚朴
    微熱・・・柴胡を増量。黄今、葛根を加える。
    感冒の熱・・・桂皮、紫蘇葉
    咳、喘息・・・麦門冬、五味子
    頭痛・・・蔓刑子、川弓
    便秘・・・麻子仁、大黄

【合方】胃腸虚弱、下痢・・・平胃散
    悪心、嘔吐・・・二陳湯
    貧血・・・四物湯
    慢性胃炎・・・六君子湯

【類方】十全大補湯、人参養栄湯、加味帰脾湯

 

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

【処方】黄耆・防已・朮・大棗・甘草・生姜

【解説】摂取した水分は脾胃で吸収され、肺、腎の働きで体に巡らせる。水がう
    まく運化せず、皮下や関節に滞ると浮腫が生じ、疲れやすく、だるく息切
    れし、関節の腫脹・疼痛、発汗などの症状が見られる。色白で、肥満気
    味、水太りタイプの肥満薬として有名である。西洋薬と違い皮下の水を
    捌くので、西洋医学的治療で解決出来ない浮腫や関節の水腫に試みる
    価値はある。慢性関節リウマチ、関節痛、腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、蕁
    麻疹、多汗症、腋臭症、陰嚢水腫など。

【加減】浮腫・・・ヨクイニン、茯苓、沢瀉、桂皮
    腹部膨満・・・枳殻、陳皮
    関節痛・・・蒼朮、独活  

【合方】浮腫、尿量減・・・五苓散
    発汗、悪寒・・・桂枝湯
    関節痛・・・麻杏意甘湯、越婢湯加減、
    慢性関節リウマチ・・・補中益気湯、大防風湯

【類方】越婢加朮湯、分消湯、木防已湯、五苓散、防已茯苓湯   

 

防風通聖散料(ぼうふうつうしょうさんりょう)

【処方】黄今・甘草・桔梗・石膏・白朮・大黄・荊芥・山梔子・芍薬・川弓・当帰
    薄荷・防風・麻黄・連翹・生姜・滑石・芒硝

【解説】漢方の流派、一貫堂の三大体質分類 (1)解毒体質、(2)オケツ体質
    (3)臓毒体質のうち、最後の(3)に分類される。飽食、過労などの負荷
    により、体内に食毒や熱毒が蓄積するものである。便秘を伴う肥満型で
    臍を中心に腹部が膨満し充実している。内部に充満した熱が上昇し、目
    の充血、口渇、咽喉痛、口苦、頭痛、のぼせなどがみられる。美食家の
    肥満薬として有名で、多くのメーカーから製剤が発売されている。生活習
    慣病と言われる病気に適応される事が多い。高血圧、動脈硬化、心臓病
    肥満症、糖尿病、痛風、高脂血症、便秘、アトピー性皮膚炎、湿疹、慢性
    腎炎、副鼻腔炎、中耳炎など。下剤として大黄と芒硝が配合されているが
    便通の状態によって分量を加減するのが望ましい。防風通聖散の病態で
    あって便通が見られる場合は、これらの下剤を除いてよい。

【加減】頭痛、目の充血・・・羌活、菊花、牛蒡子
    悪寒、発熱ナシ・・・麻黄、防風、荊芥を除く。
    熱・・・程度によって石膏を加減する。
    口苦、口乾、腹満・・・白朮、当帰を去り、牡丹、芍薬を加える。

【合方】のぼせ、いらいら・・・黄連解毒湯
    オケツ・・・桃核承気湯
    尿不利、口渇・・・五苓散
    肥満・・・大柴胡湯

【類方】通導散、大柴胡湯

 

麻黄湯(まおうとう)

【処方】杏仁・麻黄・桂枝・甘草

【解説】桂枝(桂皮)・麻黄の組み合わせ処方の基本である。桂枝・麻黄が配合
    されたものは、病邪が体表か体表に近いものを解表発汗して治す。表が
    風や寒を受けると悪寒、発熱、無汗、頭痛、身体痛、咳、呼吸困難、鼻閉
    鼻水などが見られる。これを桂枝・麻黄という生薬で体表の汗腺を開き発
    散させる。風邪などの発熱時に坐薬を使うと、まもなく発汗し解熱するの
    に似ている。しかし、体表から奥まった部位の熱は発汗では改善されな
    い。風邪をこじらせて微熱がとれないとき、漫然と解熱剤を用いても解決
    できないのは病邪が奥深く入り込んだためである。汗腺が充分機能して
    いない乳幼児の鼻閉に用いたり、気管支炎、喘息、夜尿症などに応用す
    る。桂枝・麻黄剤は中枢興奮作用があり、小児はそれほどでもないが老
    人が服むと動悸がしたり夜眠れなくなったりする。

【加減】悪寒、無汗・・・桂枝、麻黄を増量。
    咳、呼吸困難・・・杏仁を増量。桔梗、紫蘇子を加える。
    関節痛・・・蒼朮、ヨクイニン、羌活、独活
    熱・・・石膏、黄今

【合方】胸・上腹部のつかえ・・・香蘇散
    咳、痰、呼吸困難・・・二陳湯
    体力中等度・・・桂枝湯
    関節痛・・・防已黄耆湯
    副鼻腔炎・・・荊芥連翹湯

【類方】葛根湯、桂枝湯、小青竜湯、麻杏甘石湯   

 

六君子湯(りっくんしとう)

【処方】朮・人参・半夏・茯苓・大棗・陳皮・甘草・生姜

【解説】基本処方は四君子湯になる。脾胃の機能が低下したものにが絡んだ
    病態で、四君子湯合二陳湯という別名を付してもよい。六という数字なの
    に八種類の生薬が配合されているので、八君子湯ではないかと疑問が
    わいてくる。中国では脾胃剤として大棗と生姜を習慣的に加えて煎じる
    為、改めて処方に掲げないのである。

【加減】冷えて胃腹脹痛・・・木香、縮砂
    下痢・・・厚朴、蒼朮
    疲労、食欲不振・・・黄耆、山薬、白扁豆
    貧血・・・当帰、地黄、芍薬
    慢性下痢・・・升麻、葛根、柴胡、黄耆

【合方】貧血・・・四物湯
    嘔吐、下痢、腹脹・・・平胃散
    悪心、嘔吐、胸脇脹痛・・・四逆散
    咳嗽、薄痰、呼吸困難・・・苓甘姜味辛夏仁湯
    抑うつ・・・香蘇散

【類方】二陳湯、四君子湯、香砂六君子湯、茯苓飲、半夏瀉心湯     

 

苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)

【処方】杏仁・半夏・茯苓・五味子・甘草・細辛・乾姜

【解説】配合生薬の文字を並べてつけられた処方名になる。小青竜湯の加減方
    で表証がない病態に用いる。したがって悪寒、発熱、頭痛などがなく、肺
    が冷え、薄い多量の痰が見られ、喘鳴、くしゃみ、鼻水、呼吸困難などの
    症状に用いる。麻黄剤で胃腸障害や不眠の起りやすい人には、この方剤
    のほうが望ましい。

【加減】咳痰・・・款冬花、紫苑
    呼吸困難・・・麻黄、厚朴、紫蘇子
    食欲不振、疲労・・・黄耆、人参、白朮
    腹脹・・・枳殻、縮砂

【合方】気管支喘息・・・補中益気湯
    アレルギー性鼻炎・・・小柴胡湯

【類方】小青竜湯、苓桂味甘湯、苓桂朮甘湯     

 

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

【処方】茯苓・桂枝・朮・甘草

【解説】急に立ち上がるとき起る眩暈(起立性低血圧症)に繁用される。水が胃
    腸に溜まり、それが「痰飲」という病因になり冷えたものを「寒飲」という。
    その水を温め尿へと排除する働きを持っている。五苓湯に似ているが、
    五苓湯ほど水滞は多くなくむしろ冷えの度合いが強い。疲労倦怠し、食
    欲もなく、眩暈、立ちくらみ、頭痛、悪心、嘔吐があり、胃部に振水音の聞
    かれる事もある。四肢の冷え、動悸、耳鳴り、肩こりを伴うことが多い。

【加減】疲労・・・党参、黄耆
    嘔吐、涎・・・半夏、乾姜
    冷え・・・附子、桂皮
    浮腫・・・黄耆、沢瀉、猪苓
    痰、咳・・・陳皮、半夏、細辛、五味子

【合方】下痢・・・平胃散
    痰、涎・・・二陳湯
    メニエール氏病・・・加味逍遥散
    貧血・・・四物湯

【類方】五苓湯、苓姜朮甘湯、苓桂味甘湯、当帰芍薬散、真武湯    

 

六味地黄丸料(ろくみじおうがんりょう)

【処方】地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮

【解説】五臓の「腎」に働く代表処方である。腎は精を蔵し、体の基本的物質を
    涵養し、各種生理機能を維持している。その物質は腎陰、腎水などの言
    葉で表現される。これが不足すると足腰がだるく力が入らず、眩暈、ふら
    つき、耳鳴り、口渇、ほてり、寝汗など見られ。腎の症状として尿量が増え
    たり逆に減少したり、尿の回数、時間、排尿などに異常が認められる。
    冷えが伴うものには附子、桂皮を加えた八味地黄丸を用いる。これは漢
    方製剤中、最も知名度の高いもので、漢方薬局以外の薬屋で目にする事
    が多い。・・・精力減退、目のかすみ、夜間排尿3回以上、腰痛、膝痛、の
    どの乾き・・・男60歳以上、女50歳以上でこのような症状があれば、八味
    地黄丸を・・・と宣伝文句に書かれている。そのとうりに使って見ると確か
    に一定の効果は得られる。中医では腎を先天の本と言い、又肝腎同根と
    して重要視する。そのために抵抗力や免疫力を養う基本方剤として六味
    地黄丸を用いる。他の処方と併用し、また緩解期の体調の維持に長期間
    服用してもまず問題はなく、長く服用してこそ有用な薬である。

    丸剤を酒で服用するように指示されている。地黄が胃にもたれるのを防
    いだり、脂溶性の成分の吸収を助けるためである。特に六味地黄丸は
    発育不良気味の小児に使うが、小児の場合は酒服は勧められず白湯や
    水、ジュースで服むのも仕方がない。

    応用範囲は広い、慢性腎炎、ネフローゼ、膀胱炎、前立腺肥大、陰痿、
    男性不妊、排尿障害、糖尿病、高血圧、腰痛症、五十肩、骨粗鬆症、
    婦人病、白内障、皮膚病、喘息、夜尿症など。

【加減】熱・・・黄柏、知母
    息切れ、呼吸困難・・・五味子、麦門冬
    視力減退・・・菊花、枸杞子
    耳鳴り・・・石菖根、磁石、五味子
    めまい、のぼせ・・・天門冬、麦門冬、釣藤鉤、知母、黄柏
    冷え、頻尿・・・桂皮、附子
    腰痛・・・杜仲、続断、桑寄生
    咽喉痛・・・玄参、麦門冬、桔梗、甘草、牛膝
    脱毛・・・何首烏、丹参
    精力減退・・鹿茸

【合方】貧血・・・四物湯
    胃腸虚弱・・・六君子湯、安中散
    気管支喘息・・・麦門冬湯

【類方】八味地黄丸、杞菊地黄丸、知柏地黄丸

 

紫雲膏(外用)しうんこう

【処方】胡麻油・紫根・当帰・晒蜜蝋・豚脂

【解説】漢方薬の外用薬は少ない。体表に起る事は内蔵の反映であるという生
    体観による為である。しかし、この紫雲膏はどのような外用薬と比べても
    遜色のない効果を持っている。万病薬ではないが、特に火傷、凍傷に関
    しては特効薬と言っても良い。華岡青洲の創製である。胡麻油が使われ
    ているが臭いがきついので、椿油やオリーブ油で製造するとそれほど気
    にならない仕上がりになる。製造は到って簡単、胡麻油を加熱し当帰と
    紫根を揚げるような感じで作る。覚めるような紫色になったところで火を
    止め晒蜜蝋と豚脂で稠度を調節する。別名潤肌膏とも言いアトピー性皮
    膚炎の保湿剤として使う事もある。イボや魚の目、あかぎれ、脱毛症、外
    傷、痔など。あかぎれの時は裂け目を埋めるようにして塗り、テープで止
    めておくと数日でなおる。    

ここに挙げた50種程の漢方処方は、殆どが製剤として一般に流通
しているものです。薬屋で手にとって効能又は効果欄を確認し、その
ままレジで支払いを済ませれば良い。一般の人が自己判断で使用し
ても構わないと国の専門家が判断したものです。これを市井の専門
家が「素人判断は危険」と言い、孤塁を守り続けられるのかという悩
みは付きまといます。危険な漢方薬は専門家にとっても困難で、慎重
に検討し躊躇しながら運用します。

長年取り組んでいると、専門家が言うほど漢方薬は危険なものだろ
うか?と思うようになりました。むしろ、コンビニでも買える様々な栄養
ドリンク。風邪気味だからと簡単に服む総合感冒薬。食後習慣的に服
む消化剤。漠然とした疾病不安で服むサプリメント・・・こんなものが
余程危険ではないか?漢方薬はプラシーボ(偽薬)かも知れないと
いう疑問をもち始めてから悩みも増えました。しかし「いくらかは捨て
難い所もあるのではないか」と希望を抱き、その効果に一喜一憂しな
がら過ごしています。

 

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